プロセスすっ飛ばして映像化
意外なことにお客さんたちは皆静聴している。話そのものが面白いのか、僕たちの朗読や台詞回しが上手いのか、あるいはその両方か。
当然全部通して朗読する時間などないので、第1章でタイシとシナリが高校を休学して同居を始め、戦いの生活に入っていくまでを読んだ。
「いやー、お疲れさんお疲れさん。やっぱりミツキさんとヒロオくんユウリちゃんはその筋では知られてるんだね」
「その筋って・・・」
店長の話に僕がそう反応すると長谷ちゃんも僕らを労ってくれた。
「ほんとに3人のお陰だよ〜。ネット小説の大海原の中に埋もれて消えてっちゃうかなって悲しい気持ちになってたんだけど、今日だけでかなりの数の人たちに読んでもらえたもん。ほんとにありがとね〜」
「じゃあ、次はどうする?」
ユウリが冷静に今後の話をし始める。僕も自分の意見を言ってみる。
「あのさ。確かにPVとかリツイートは増えたと思うけど、長谷ちゃんの伝えたいことを汲み取ってもらえてるかな?」
「ヒロオくん、どういうこと〜?」
「だってさ、真正面から『仏壇・神棚・お墓を守っていくのは義務だ』ってことをメッセージとして含んでるじゃない?」
「うん〜。そうだよ〜」
「ウケないでしょ」
「う〜ん〜。だからストーリーの中に散りばめる感じにはしてるんだけどね〜」
「ウチの案だけど、聞くかい?」
セヨがやたら気取って言うので期待せずに手振りだけで続きを促した。
「映像化するのだよ」
「だから、それができれば苦労しないよ」
「できるさ」
「どうやって。映像化どころか書籍化すらどうにもならない状況じゃないか」
「自主制作映画を作るんだよ」
「はあ?」
長谷ちゃんには失礼かと思ったけれども、僕は夢物語でも聞くような反応をしてしまった。セヨは怯まずに続ける。
「やれやれ。ヒロオは言動は非常識なくせに思考は常識的でつまらん奴だな。こちらで企画してやればいくらでも動く人間はいるだろうが」
「お金になるかどうかも分かんないのに時間と労力を使ってやってくれる会社なんてあるもんか」
「ウチは会社などと一言も言ってないぞ」
「じゃあ、誰に頼むんだよ」
「ヒロオ、セヨちゃんの言うこと、当たってみてもいいと思うよ。例えば大学の映画研究会とか」
「ユウリ。そういうアマチュアレベルの話なのか」
「ヒロオ、情熱を持ってれば思いがけずすごい映画ができるかもしれないよ。長谷ちゃん、カネカシ大学には映画研究会とかないんですか?」
「あるよ〜。オカモ先輩が部長だよ〜」
「え? そうなんですか?」
「うん〜。でもね〜、部員が2人なんだ〜」




