たこ焼きではなかったか・・・
長谷ちゃんは楽しそう。ユウリは微妙。僕は不機嫌。
セヨは僕に白のオーバーニーソックスまで装着するように指示した。僕は不機嫌ついでに足を組んで腕も組んでセヨをにらみつける。
「覚えてろよ」
「えーと、ヒロオだっけか。もう忘れた」
「この・・・」
「ほら、ニーソ履かないと汚い男子の足が隠せないだろ? そっちの女子2人はまあ素足でも構わんのだろうけど」
メイド服を着た長谷ちゃんは大学生のくせにやたら幼く見える。ニコニコしてコンデンスミルクを入れた『ちょ甘ミルクティー』を飲んでいる。
ユウリはまあ似合っている。年齢相応だし、まあ・・・かわいい・・・と、思う。
「ヒロオ、かわいーよ」
ユウリが僕に囁いてきた。それをセヨは見逃さない。
「何だ。お前ら付き合ってんのか」
「付き合ってるかどうか自分たちでも分かんないけど、一応一緒に暮らしてる」
「リア充が・・・」
「セヨ、お前は何なんだ。女が好きなのか?」
「違う。現にその2人は別にどうでもいい。ウチはミツキ様だけが好きなんだ」
「ミツキ・・・様?」
「そうだ。あのマフィアをやっつけた動画を見た時からずっとフォローしてた」
「フォローじゃなくって、ストークだろうが」
「やかましい! あれ? そういえばヒロオとユウリってあの動画に映ってなかったか?」
「今更何言ってんだ。ミツキさんと僕とユウリとで力を合わせてあの場を収めたんだよ」
「いーや。活躍したのはミツキ様だけだ。お前らバカップルはただうろたえてただけだ」
「セヨちゃん〜」
突然、長谷ちゃんが話に割って入ってきた。
「なんだよ」
「セヨちゃんってさ、大阪出身〜?」
「あ? 何でだよ」
「だって、たこ焼きひっくり返すやつ持ってるし、イントネーション大阪風だし、自分のこと『ウチ』って言うし〜」
「・・・広島出身だよ」
「何だお前、広島ならお好み焼きだろうが」
「えーい、名物なんて今はどうでもいいんだよ。それより、ウチはミツキ様を広島に連れて帰るからな」
「はあ? 小学生かよ。っていうか、ほんとはなに学生なんだ」
「中学生だよ」
「何年生だ」
「2年だよ」
「はあ・・・ほんとに中ニ病の中学生か・・・」
「セヨ様。わたしはこの店での勤めを辞めるわけにはいきませんわ」
「ミツキ様・・・」
「もしわたしのことをご贔屓にしてくださるのでしたら、お出でになった時には必ず精一杯のおもてなしをさせていただきます。どうぞ、早く広島へ帰られてご両親を安心させてあげてください」
「あ? なんだ、セヨは家出してきてんのか?」
「違う! 行き先を告げずに外出してるだけだ」
「それを家出というんだよ。なんだ、親御さんと喧嘩でもしたのか」
「うるさい!」
「あ〜、分かった〜」
長谷ちゃん、ほんとに分かったの?
「テストで悪い点とったんでしょぉ〜」
いや・・・いくらなんでも中学生ならそんなことで家ではしないだろう。進路とか何かもう少し深刻な・・・
「うるさい! だったらどうだってんだ」
「あ〜、当たった〜」
これが大学生と中学生の会話だろうか。




