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1話  むつが

この作品はオムニバス風に進めたいな……(言ってみるだけ)

 そこは魔物の巣窟だ――。


 扉の前に――そこはかつて資料室で、データーベース化してから使われなくなったのをそっくりもらい受けたらしい――立ち、溜息を吐く。


 特殊犯罪対策課――通称ゼロ課。(異能課とも呼ばれているが)

 その扉の向こうにそれがある。


 ――腹をくくるか。


 とんとん


「――どうぞ」

 声を掛けられる。

「失礼します」

 中に入る。


 中に居るのは渋い男性が一人――。

 他の奴らはどうしたんだ?


「学人としぃちゃん……静姫は隣の部屋にいるよ。学人が眠ってくれないと心配していたけど、静かになったから寝てくれたのかね。後の子達は学業を優先してるよ。あれでも義務教育の年齢だからね」

「………」

 食えない曲者――それがこの課の課長。近藤智和(こんどうともかず)である。


 噂じゃ同性愛者で学人はそのお手付きだとか……。学人は、この人の養子であるが、その養子の内容が同性愛者の婚姻じゃないかともっぱらの噂。

 あの彫刻のように顔の変わらないアイツがそんな事するとは思えないが、綺麗すぎるからの噂。

 ゼロ課の実用を知らない奴からすればゼロ課は近藤(ヘンタイ)のハーレムだと言われている。


「私が同性愛者だとは隠さないけど、うちの子を手を出すわけないだろう。それに――」

 にやり

「学人は観賞用。好みで言えば」

 にたり

 ぞくぅぅぅぅっ

「………その含み笑いは止めてくれ……下さい」

 この人は役職からすると俺より上だ。丁寧に冷静に。

「ええ~。冗談なのに~」

「………」

 相変わらず腹立つ。

 この人がまだ子供と呼べる年齢のゼロ課を面々の保護者――学人を除けば唯一の大人だ。


「――で、君がここに来たのは私達の力が必要なのかい」

 相変わらず見透かしてくる。


「お前……失礼。貴方方の管轄の仕事が来たので協力を仰ぎたい」

 本当は嫌だが。


「内容は?」

「放火です。――殺人目当ての」

 先日。ある木造の家で火事が起きた。幸いにも初期消火で広がらなかったが、その中で暮らしていた老夫婦が重体で発見された。


「ふうん。初期消火でそこまで燃えなかったんだよね」

「はい。――おそらく先に二人に危害を加えて火を放って証拠を隠滅しようとしたが火に気付くのが早く二人は助かったのだと思われます」

 火元はその老夫婦の寝室で二人はその火の煙を吸い込んでいたのか酸素が足りなくて意識はまだ戻らない。

「じゃあ、どうして。気付いたの? 夜中だろう」

 相変わらず鋭い。


「その家の庭にあった木が倒れて、その音で近隣住民が異変に気付いたのだ。その切り口が不自然で。それが、貴方達の管轄ではないかというのが上層部(うえ)の判断で……」

「まあ、確かにそうだね……」

 近藤は笑みを浮かべながらぼそりと、

「それぐらいでしか判断できないのか……」

 やや呆れているようだ。


「協力はするけど、おそらくその事件に適しているのはお嬢かな」

「お嬢?」

「――その呼び方は止めて下さい」

 扉を開き、セーラー服姿の少女が入ってくる。

「お帰りお嬢」

「――お嬢は止めて下さい」

「じゃあ、むつが」

「ただいま帰りました」

 むつが――鈴木むつがはこちらを見て、ツンと反っ歯向く。

 その様が気難しい猫の様だと感想を抱いてしまう。


「という事でお嬢」

「むつがです」

「ごめんごめん。お嬢にこのお仕事行ってもらえるかな」

「だから……まあいいです」

 むつがは諦めた。


「現場に行ってきます」

「行ってらっしゃい。神崎君が現場に送ってくれるようだから」

「はぁ⁉」

 なんでそうなった!!


「貴方ですか……。まあいいでしょう」

 どこぞのお姫様かとばかりにお高く告げてくるむつがに内心苛立つがそれを抑えて、現場に向かう事にした。



「見事に切られてますね」

 彼女が最初に見たのは庭にあった樹。その樹の断面は綺麗なモノで斧で切った物とは思えない。何というか加工前の木材ならこんな綺麗に切ってあるかもしれないが倒れた樹木だと思えないほどの代物だ。

「燃えてます」

 その大木は燃えた跡がある。


「この樹が倒れなかったら火事に気付かず、老夫婦も亡くなっていただろうというのが消防の見解だ」

「――その為に倒れたんです」

 悲しげに切なげに、

「頑張りました」

 いたわるようにその樹に触れる。


「深夜二時。30代から40代くらいの帽子を深く被ったよれよれのコートを着た男」

「はあ?」

「おそらくコンビニの監視カメラに映っていると思います。――そいつが犯人です」

 顔をこちらに向ける。夜空を思わせる深い深い黒い瞳。


「なんで⁉ 証拠は⁉」

「そこら辺は捜査課(あなたがた)の仕事でしょう。答えを教えました。わたくしはこれでお役目ごめんでしょう」

 むつがはさっさとこの場を後にする。

「――どこに行く?」

 その姿がどこか不振だったので尋ねる。

「………どこでもいいでしょう」

 その言い方がいつものこのお嬢さんと違う…違和感を覚える。

「いや」

 面倒だけど。このお嬢さんを一人にしたら危険な気がする。

「近藤さんに保護者として付き添えって言われてるからな。――最後まで付き合いますよ」

「……あの人はそこまで言ってませんよ」

「同じ事だろう」

 そう告げると。

「ホント人間って面倒ですね」

 いや、お前も人間だろう。


「まあ、学人や静姫を起こしてまで迎えを頼むのは迷いましたからちょうどいいでしょう。――足代わりに」

 足代わりって、ほんとゼロ課の奴ら人を何だと思っているんだ。

「そうですね。信用はしてますよ。――人の中では」

 お前も人だろう。

 そう言葉を返そうとしたが、

「わたくしは――人じゃないので」

 さあぁぁぁぁぁ

 タイミングよく風が吹く。

 むつがの長い黒髪が風で棚引く。

 その姿がどこか恐怖を煽る。

「――馬鹿か」

 その雰囲気にのまれない様に声を出す。

「お前のどこが人間じゃないというんだ」

 その返答に、

「――そういう事を言えるのは貴方と近藤さんぐらいです」

「近藤さんと一緒にされるのは……」

 くすっ

むつがが笑う。

「行きましょう。――間に合えばいいのですが……」

 間に合う?

 どういう事だと尋ねようとするが返事は無い。先に車に向かって、さっさと開けろと待っている。


「お前な……」

 その態度に苛立つが、そんな事言ってられない。

「どこに行くんだ?」

 尋ねると即答。

 それは老夫婦の入院している先――むつがにはまだ教えて無かったところだった。


 病院に辿り着くとすぐに二人のいる病室に向かう。

 むつがはお見舞い用にと花を――最初鉢植えを用意しようとしたので慌てて止めた。その際むつがは『切り花では少し難しいのですけど……』と意味不明な事を言っていた――藤の籠にたくさんの花をアレンジして入れてもらい老夫婦のいると教えられた病室に行くと。

 面会謝絶。そう書いてあるが、中に人が居る気配がする。

「あらあら。――先客がいるようですね」

「家族なら入れるからな」

 確か息子がいたはずだ。

「どうする? 待っているか」

「物分かりが悪いですね」

 静かに――それでも有無を言わずに中に入る。

「なっ、何なんだ⁉ あんたらっ!!」

 病室の中にはその当の息子――その手には二人の命を繋ぎ止める機械のコード。


「カンザキさん」

神崎かみざきだ!!」

「捕らえて下さい。放火の容疑……殺人未遂です」

 聞いてないな。じゃなくて、殺人と放火っ⁉

「なっ、何の事だっ⁉」

 動揺してる。まあ、急に殺人の容疑が掛かれば動揺もするが、

「まあ、証拠はこれからですけど………その手で何をするつもりですか?」

 むつがの視線の先には男が握っている機械のコード。

「賢明な判断ですね。病院まるまる貴方の力を使われたらわたくしでは対処できませんでした」

 理解できないむつがの言葉。


「ちッ!!」

 男がコードから手を放して逃げようとする。手を放したコードをまじまじと見ると若干溶けている。

「――逃げても無駄ですよ。身元がはっきり割れてますから」

 ここであなたがする事は証拠隠滅としてわたくしたちを殺す事でしたけどそこまで力を扱えませんか。

 などと物騒な事を言っている。


「――そうか。なら殺せばいいんだろ」

 男の手から炎が出現する。

「それで放火ですか。遠隔操作は出来ないようですね」

 感心したように呟いて、

「静姫の方が向いているんですが」

 持っていた藤の籠が解けていく。

 

 しゅるるっ


 藤の枝は生き物のように男の動きを封じる。

「これで解決です」

「………」

 藤の籠……より長い気が………伸びてないか?

「さっさと連れて行ってください。現行犯ですので」

 手錠をはめて命じられる。

「俺が連れていくのか?」

「わたくしに力仕事は向いてません」

「………」

 どこのお嬢様だよ。ほんと……。

 呆れつつも男を取り押さえて署まで戻ると。


「警部!! コンビニの防犯カメラから映像で犯人と思わしき人物が……」

 部下の報告が途中で止まった。

「………映像の解析をしたら老夫婦の息子だった。という事なんだな………」

「はい…………」

「病院で殺人未遂の罪で捕まえたんだが」

「………」

 この気まずさはどう反応すればいいのか。

 長期戦になると思われた事件があっさり解決するなんて……。


 はぁ

「マスコミにどう説明しよう……」

 説明しても納得いかないだろう。自分がマスコミだったら納得いかない。

「……何で分かったんだ」

 犯人が。

 まだ側にいるむつがに尋ねると。

「樹が教えてくれました」

 ふうん樹がね……。

「大好きな主を守るために自ら折れたんですよ。――誰かが折ったんじゃなく」

 それで倒れた。

「樹に心がある様な事を言うんだな」

「――ありますよ」

 むつがはそれだけ告げるとさっさと去っていく。


「これだからゼロ課は……」

 説明も礼も無しか。お高くとまっている。

 だけど、早々に事件も解決したからいろいろと心中は複雑だった。






神崎視点だ話を進めるから説明が足りません(笑)

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