11話 新情報
執筆ペースが遅くなってるなぁ~
「カンザキさん。昨日はごめんなさい!!」
「神崎だ」
朝。会ってすぐに静姫が謝ってくる。
だが、きっかけは洋酒の入ったケーキをお土産に渡した事だし。静姫が悪いわけではない。多分……。
ああ。そういえば。
「………酒弱いのか」
その割の勤務中に飲んでいるよな。
「うっ⁉」
図星とばかりに胸を押さえ――そのオーバーリアクション止めろよ――目を泳がせる。
「そうです……でも、お酒飲んだ方が能力が高まるので」
ごにょごにょと小声。どうやら勤務中にお酒を飲む事がいけないのは分かっているがそれでも飲まないといけない事情があって、仕方なしに飲んでいると言いたいのだろう。
「で、それだけで声掛けたのか?」
確認すると。
「いや、それだけじゃないけどね」
にこっ
「………」
こいつの笑い方って裏があるように思えるんだよな。
「――なんだ?」
要件をさっさと言え。
「じゃあ、言わせてもらうね。――捜査課の情報の提示」
そっちの握っている情報を見えてもらいたい。
そう告げる静姫の顔は、笑みからほど遠い真剣な物。
「………」
溜息。
「――俺の一存じゃ無理だな」
「でしょうね」
あっさり受け入れて引く。
「やけにあっさり引くんだな」
「そこら辺はね」
そう告げると静姫は去っていく。
「先輩。あいつらにほだされてませんか?」
それをどこからか見ていたのか後輩がいそいそと現れて、にやにやと笑いながら、
「可愛い子だからって、ほだされて」
「あ~。そりゃあない」
可愛いと言われれば可愛いかもしれないが、あれは……。
(相手を油断させて丸呑みしようとしている獣のたぐいだぞ)
そう。実際にしないがこっちが油断してると掌に踊らされる。
現にあいつは捜査課の握っている情報を欲していただろうが。
「お前女見る目が無いぞ」
そんな事に気付かない後輩に忠告する。
「先輩に言われたくないですよっ!!」
それどういう事だ。俺が朴念仁だとか……。
「この前綺麗なお姉さんに迫られていたじゃないですかっ⁉」
「あれはホシの身内だ」
俺が握っている証拠を知って、ホシを逃がそうとしてただけだ。
…………本当にこいつ大丈夫か。
後輩の見る目が無い事に本気で心配になってきた。
「でも、いったい異能課は何を欲しがってたんですかね~」
今調べている仕事は確かに異能課に関係あるだろう案件だが、
「あいつらの方が情報を持っていそうなのに~」
「………」
ああ。言われてみたば。そうだな。
「聞いてみるか」
「ちょっ、ちょっと先輩っ⁉」
決断すると早々に異能課に向かう。
……どこ行くんですか~と涙目になって読んでいる後輩はまあ置いておく。
(あっ、上司に報告書渡しておかないといけなかった)
まあ、いいか。
実際にはよくないが、そう判断して異能課――魔の巣窟に向かう。
「いらっしゃい」
………ノックする前にドアが開いたぞ。
「優慈郎……」
にこっ
微笑んで歓迎してくれるけど視線が合わない。
「……よく分かったな」
「精霊が教えてくれたから」
「………」
電波な発言だ。でも、実際こいつは感じているみたいだからな。
「……あんまりそういうのを口にしない方がいいぞ」
「そう?」
首を傾げて、意味が分からないという感じだ。こいつと言いむつがといい。平気で電波発言をするからな。
「――わたくしは場所を選んでますよ」
居たのかむつが。
「いらっしゃいませ。来ると思いましたよ」
むつがはドアを開いて招き入れる。
「聞きたい事があるんだが……」
何で探りを入れた?
単刀直入に聞いてみる。こいつらに腹芸は通じない。
「――学人」
「聞きに来たよ」
むつがと優慈郎が、奥に居る学人に声を掛ける。
「入ってもらって」
答えるのは学人ではなく静姫。
「分かりました」
「こっち」
二人に案内――される必要もないけどな――されると学人はパソコンのモニターと睨めっこしている。
その近くでは静姫が近藤と共に地図を開いている。
「何をして……?」
問い掛けようとして止まる。
――地図にはマークが付いている。主に事件が起きたところで。
「――やっぱ。その情報。正しいみたいだね」
「だな」
地図の中心。というか事件はある範囲で起きているのだが、その中心には病院跡がある。
「何をして……」
「――今は使われてない病院。そこでどうして電気が使われているか」
学人の声。
「……相変わらずだね。その情報源」
静姫が感心したように――それでいて苛立って告げている。
「ああ。――犯罪者だがな」
「はッ、犯罪者⁉」
一体どういう事だ。
「捜査課に探りを入れたのはこいつらの事があるからなんだ」
ごめんね。
にこにこと笑って謝るけど。静姫の目は笑ってない。
「――正体不明。暗殺集団【ルシフェル】」
ルシフェル?
「堕天使だっけ? 何その中二病?」
「そう名乗っているんですよ。捜査課にこいつらの情報ないんですか?」
いや……。無いが。というか初めて聞いたぞ。
「……使えない」
ぼそっ
おい小声でも聞こえたぞ。
「で、その暗殺集団がなんでお前に情報を与えてるんだ?」
さっさと話しを変えよう。
「与えてるんじゃない。盗んでいるんだ」
「おいっ!!」
堂々と言うな!!
ってか……。
「盗んでいるのなら分かるんじゃないのか」
相手の居場所を。
「それがそうもいかないのよね~」
困った困った。静姫がお手上げとばかりに告げる。
「――彼らは巧妙でね」
近藤が口を開く。ようやく口開いたな。
「盗ませてくれるけど、その言葉通り盗ませてくれるんだ」
盗ませてくれるって……。
「はっきり言うと学人よりも実力は上」
「………」
この人外よりも上って………。
「人外って、まあ人外だけど……」
しまった声に出てたか。
「静姫」
「はいはい」
学人の言葉に静姫は返事する。
「――簡潔に言えば。異能課で追っている事件はその【ルシフェル】によって犯人が抹殺されている事があるんだよ」
はぁ。やれやれ。
ため息交じりに報告されて、
「捜査課ならこの情報が掴めるかもな~と期待したのに~」
知らん。
「まあ、いいや。この情報捜査課に持って行っていいよ」
あっさりと言うな。
「――ついでに【ルシフェル】の事も臭わせておいて」
「まあ、いいけど……捜査課が掴んでない情報ならデマだと片づけられるぞ」
「それでもいいよ。――耳に入れるだけでも」
ってか。その情報を捜査課が握ってない方が妙だからね。
静姫に言われてさっさと追い出される。
その廃病院の地図は渡されたからまあいいかと思いつつ、捜査課に戻ると――。
「遅い!!」
上司に怒られた。
先輩すみませんと手を合わせる後輩が目に入ったからあとで覚えておけよと睨んでおく。
「お前どこにほっつき歩いていた!!」
「……異能課から有力な情報をいただきました」
地図を見せると被害のあった場所。そして、その中心地の病院跡を指さして、
「異能課によるとこの病院跡地に異様な電力の流れがあると調べているようです」
その言葉にざわざわと他の事をしていた面々も集まる。
「……直ちに管理者に連絡をしろ!!」
不自然な電力の流れ。その言葉に捜査状を用意するように働きかけ、いつでも動けるように準備をする面々。
「後……」
上司の耳元に。
「異能課から調べて欲しい物があるとの事ですが。――ルシフェルってご存知ですか?」
その言葉に上司が目を大きく見開いた。
――それが答えだった。
さて、廃病院にレッツゴー!!




