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10話 手札

もっと早く投稿する予定だったのに…

 ……夕飯は美味かった。

 中身はともかく可愛らしい女性二人と食事というのは眼福だった。

 だが、まさか………。


「寝てる……」

「……このケーキ。洋酒入ってたんだね」

 木綿子が告げる。


 食事に招かれたので、お土産をと思い巷で有名なケーキ屋(パティスリーとかではなくケーキ屋と書かれているのだ)のお薦めケーキ(お薦めを聞いたら全部だと店員ではなく大勢のお客さんに言われたのだが、男前の店員がこれを薦めてくれた)を一口口に運んだとたん静姫がテーブルに伏してしまったのだ。


「洋酒って……」

「姉さん。酒に弱いの」

 酒に弱い……。


 たまに異能課と手を組む事があるが(ホントたまにだ。たまに)その際静姫は勤務中にもかかわらず酒を飲んでいるのを見かける。

 それが余計捜査課とか諸々の怒りを買っているのだが――。


 いや、それよりも……。


「アルコールとんでいるんと思うけど……」

「姉さん。料理酒も駄目だから」

 知らなかった。


「このケーキ《ファンタジア》の?」

「あっ。ああ……知ってるのか?」

「有名だからね。この近隣じゃ。イケメンが多くて味も確かなケーキ屋。女子高生とか女子大生が平日は多く訪れるから洋酒のケーキはあんまり売れないみたいなのよね」

「………だから薦められたのか」

「金曜はそっちの方が売れるらしいけどね」

「………………詳しいな」

「……………………うちのクラスに《ファンタジア》でアルバイトしている子がいるのよ」

 バイトも居るのか。


「えっと、カンザキさんだっけ?」

神崎(かみざき)だ」

「……神崎(かみざき)さんが珍しい、男性客だから余計洋酒の物を薦められたんでしょうね」

「……………………」

 そういや、あのイケメン店員(女の子の扱い得意そうな)にやにやと妙な笑いをしていたな……。


 それにしても。

「参ったな……」

 この家に来た目的が果たせないな。


「何が?」

「仕事場では言いにくい内容な事を話し合うために来たんだよ」

「……探偵でしょ?」

 何で探偵?


『警察だという事は黙っててね』

 静姫に言われた事を思い出す。


「依頼主が聞き耳を立ててるんだよ……音は遮られているが今度は密室に二人だと穿った見方をする輩も居るしな」

「……探偵も大変ね」

 うん誤魔化せた。


「まあ、姉さんと打ち合わせは次回にしたら」

 さっさと帰れと言外に告げられる。


「ああ。そうする……」

 無駄足だった。

(まあ、飯は美味かったけど)

 そう思って、静姫の家を出る。


 取り敢えず、この事は異能課の連中に報告しておかないとな。聞いたものだという前提で情報を提示されたら二度手間になるだろうし。


 携帯を取り出して繋げると。

『聞けなかったみたいだな』

 こっちが口を開く前に一言。

 その声はどうやら学人のようだ。


「……ああ」

 何で分かるんだこいつ。

『仕方ない。うちに来い』

 うち?

『静姫の書類は残っているからな』

「………」

 なら最初からそっちに呼べ!!


『人は嫌いだ。それに、そこまでの付き合いじゃないだろう』

 だから呼びたくないと言われる。

「お前な……」

 だったら静姫の家に送るのもどういう事なんだと突っ込みたかった。


『まあ、いい。切るぞ』

「おいっ⁉ 家の住所はっ……⁉」

 そんな事言おうとしたが通話が切れて、メール。


 そこには地図。


「結構近いな」

 もう突っ込むの放棄した。


 仕方ないので、タクシーを呼んで――ああ。無駄金――そっちに向かうと。


「早かったな」

 とあるマンションの一室で学人は待っていた。


(一人暮らしだよな……ここ一人で暮らすには広くないか?)

 つい外から見たイメージで中に入ったが、中に入ると意外に狭い。


 いや、パソコンとか精密機械が多くて狭く見えるだけのようだ。


 ――というか機械以外の物が無い。

 生活感がまるでないのだ。


「――生活感が無いと思ったか」

 学人は折り畳み椅子を持ってきてそこに座るように告げる。

「ま、まあ……」

「良く言われるからな」

 まあ、そうだよな。


「静姫からの情報は二の次だ。――本当の事を言うとあの妹に会わせたかっただけだ」

「あの妹……」

「静姫の能力に関してはあの子は何も知らなされてない。静姫と血は繋がっているが能力は覚醒しなかった」

「覚醒……」

「あの静姫の能力。血縁があるから同様の能力があるのかと組織が秘かに調べたそうだが、それらしい反応は無かった。――つまり身を守る術がなく、人質に取られて静姫の動きは拘束された」

 本人は人質になった覚えはないがな。


「組織……」

「――お前の……火事で行方不明になった身内。人体実験の可能性がある。それを言っておこうと思ってな」

 まあ、最悪の場合だけど。


「なんで……」

 何で、その情報を。

 言ったつもりはなかったのに何で知っていると同様すると。


「――情報で俺が知らない事はない」

 学人の後ろ。パソコンに一切触れてない。


 そのはずだ。そのはずなのに。

 パソコンのモニターにいろんな字が浮かんでくる。


「かの組織の名は仮名≪カオス≫と命名。人体実験を繰り返し、人をヒトではないモノに作り替えている。かの組織曰く、人はかつて人ではなかった記憶があるとの事で。特殊な因子を持つ者を薬で反応させてその能力を覚醒させている」

 パソコンモニターに全く同じ文が書かれている。


「警察の一部と繋がりがあり、その手の犯罪はもみ消されている事がある」

 そこまで告げるとモニターの字が消える。


「この件をそのまま調べるか?」

 確認。

「ああ。そのつもりだ」

 頷く。

「家族の事もか」

「……当然だ」

「なら、異能課(うち)に入った方がいい」

 捜査課では消される可能性は高い。


「それを言いたくて、呼んだのか……」

「静姫もそのつもりだったんだろうな」

 酒で倒れなければ。

 やれやれとため息を吐いて。


「――それがこちらの手札だ」

 選択は任せる。


 それだけ告げるともう興味がないと言わんばかりにパソコンの前に行き、モニターに視線をを送って振り向きもしなかった。


 

静姫「出番が……」

 お酒が回って頭が痛い。

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