At highway ≪恋人≫
一つ目は恋人がテーマの物語です。
↓どうぞ!
「――ジングルベル、ジングルベル、鈴が鳴る~」
どこかでジングルベルの歌声が聴こえる。
もうクリスマスの時期か。早いな。
おもむろについたため息は、12月の冷たい風によって真っ白に染まり、暗い夜空に消えた。
僕は一人、表参道の街道を歩いていた。
これには理由がある。かな恵さんから、記憶を取り戻すためにもこの街道を歩いてみてはどうかと、この街道を散歩するのを勧められたのだ。別に断る理由もなかった僕は、彼女に言われた通りこの街道を歩いてみることにした。
それにしても、人がたくさんいるな。
街は夜にもかかわらず、買い物客やカップルなどの多くの通行人で、予想以上の賑わいを見せていた。こんな夜でも、賑わうものなのだろうか。
夜の街には行ったことがない――いや、行っていたとしてもその記憶がないから、こういう経験はとても不思議なものだった。
さて、これ以上もったいぶるのもなんなので、僕が記憶を失った理由をお話ししよう。
これはかな恵さんやそのほかの人から聞いた話だが。
僕――醍醐正樹と柊かな恵さんは、会社で知り合ったのがきっかけで付き合っていたらしい。そして、僕とかな恵さんが付き合って一年経った日――ちょうど一か月前の日に、僕は記憶を失ったんだそうだ。
話によると、その日僕等はデートでこの街道を歩いていて、その途中で僕は、猛突進してきた車にはねられてしまったのだそうだ。そうして僕は意識を失い、次に目が覚めた時には、過去の記憶をきれいさっぱり失ってしまった、ということである。
僕はといえば、周りの人たちの話が、どうしても現実味を帯びて聞こえてこなかった。
何せ過去の記憶が一切ないから、自分の過去の話についてあれこれ言われても、実感がわかないのだ。医師からの病の話も、かな恵さんの話も、全てがまるで他人事のように聞こえて、僕はただ、彼らの機嫌を損ねないように相槌を打っているしかなかった。
何なんだよ、もう・・・・・・。
僕は心の中でそう思った。
そうだ。かな恵さんに必ず行って欲しいと言われた場所があるんだった。
確かこの地図によると――ここだ。
かな恵さんも案内ぐらいしてくれればいいのに、と心の中で愚痴りながら、僕はかな恵さんに言われた場所に向かった。
ここか。
僕は、明治神宮の入り口まで来ていた。
明治神宮の入り口から前方へと続いている並木道は、イルミネーションの装飾が施されていた。青や白の淡い光を放っており、それがまるで光のアーチのように前方へと立ち並んでいて、とても綺麗だった。
かな恵さんが言っていた、見せたいと思っているものがあるというのは、これの事なのか。確かに、とても綺麗だ。
僕は地図に描かれている通りの場所に向かった。
そこは、何の変哲もない街路樹の下だった。
ここに何があるというのだろう。
『まるで、シャンデリアみたいだね』
!
なぜだか、ふいにそんな言葉が浮かんで、僕ははっとなった。
何で今、こんな言葉が浮かんだのだろう。
『まるで、シャンデリアみたいだね』
優しく囁いているように聞こえたその声は、どこか聞き覚えのある声だった。確実に、僕はこの声をどこかで聞いたことがある。でも、どこで聞いたのだろう・・・・・・。
僕は顎をかいつまんで、必死に思い出そうとする。
・・・・・・だめだ。いくら考えても、思い出せない。
僕は深いため息をついた。
ここへ来れば、何か収穫があるとかな恵さんは言っていたが、結局何の収穫もなかったじゃないか。
僕はそう愚痴りながら、帰途につくことにした。
イルミネーションの光が、シャンデリアのように光り輝く、東京の街角でのことだった。
こちらの作者は…ataruさんでした!
ありがとうございました。




