博士と人工知能のホログラムデート
秋の紅葉を見ていると思うことがある。
あれらの木々は、まるで死んでいった生物の命を吸い上げているようだ。
鮮やかでさっぱりとした赤の葉は、生き物の体液の色を思い起こさせられる。
土に還った者たちの命が、他の生物の中に流れ込んでいるのかもしれない。
そう考えると、命が巡っている様子を、視覚的に確認出来る、日常的でとても身近にあるものだ。だから何だと言われると、何でもないことなのだけれど、ふいにそういう無駄なことに頭を回転させてしまうのだ。考えても無駄なこと、考えてもどうなるものでもないことを考えるのは、本当に無駄なのだろうか?
そんなにストイックに生きて、何か掴めるとでもいうのだろうか?
僕の視界一杯に広がる血の海を、鈍行電車に揺られながら見ていると、気持ちが少し緩んでいく。緩やかに睡魔に誘われ、まぶたが下り、一面の赤は真っ黒に塗りつぶされた。
宙に漂うようなこの感じ。上も下も右も左もなくなって、自分が浮遊するこの感じ。
誰か僕を受け止めてくれないだろうか?
誰も彼も、どいつもこいつも、僕に深くは関わろうとしない。もし、そんな輩が現れたら、そいつは相当なお人好しか、おつむのネジが足りてないのか、トラブルを持っているやつだけだ。
どちらにしろ「変わり者」であることに変わりはない。
夢の中だと知っていて、どこか遠くの場所に移動したいとき、ふとその場所の光景を、まぶたを閉じてイメージする。すると、目を開けた瞬間には、望みの場所に立っている。
現実と夢の区別がつかないくらい鮮明で、感覚の全てが機能しているのだ。
ただ現実と違うことがただ一つだけある。
なんとなく夢うつつなのだ。どう書けば上手く伝わるのか分からないので、直感的に文章にするとそういうことになってしまうのだ。
だから、現実のような夢から覚めた時のあの感覚が、夢を見ている時に非常に近い。
だから起きた時に、現実に戻ってきたのか、まだ夢の中にいるのか分からなくなる時が何度もある。
だから何が言いたいんだろう?
頭の中が全然整理されていない。
そりゃぁ、僕のことなんか掴めるはずがない。
漠然と考えていることを延々と書いているだけなのだから。
前を向くと、彼女がふくれっ面でこっちを見ている。
「だから何が言いたいの?」
何か言いたいことがあるのだろうか?そのことにすら自信が持てない。
そっと彼女の頬へ手を伸ばす。
割れ物に触れるように撫でていると、彼女の頬が淡い赤に染まっていく。
生きている。
「そりゃそうよ。」
まるで僕の手で遊ぶように顔を動かし、そのきめの細かい肌をじっと見ていた。
「さて、これは夢が現実か、どっちだと思う?」
目の前から声が聞こえた。
ふと不安になって、彼女に触れている手の感触が、錯覚でないかどうか確かめるように、撫でていた。