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【11日目】

【11日目】



私は今日3月10日の26時、つまり夜中の2時に氷川神社の鳥居の前に集まれという

「導く者」の指示通り、真夜中の道を歩き目的地に向かっていた。


こんな時間では電車もないし、運が良いのか悪いのか、私の家は

氷川神社からそう遠い場所ではないのだ。だから、歩いていた。


持ち物は、いつも手放さないiPhoneとiPad、イヤフォン、折り畳み傘、

ティッシュ、財布だ。それらを肩掛けの小型のバッグにいれておいた。


私は歩きながら、iPhoneで自分のブログサイトをチェックし、ついでに

ニュースをチェックした。

いつもの通り、マスコミが報道しないC国やK国の裏暗いニュースをいくつか

見つけたが、今話題にするほどの事ではない。


私の家から氷川神社までの道筋は、数箇所の曲がり角を曲がってしまえば、

後は道なりに歩くだけで着くという位置関係なので、

道に迷うという事はない。

ついさっき、三つ目の角を曲がったので後はただ道なりに進むだけだ。


途中、商店街を通り抜けるので、その中のコンビニエンスストアに寄って

飲み物を買った。


買った飲み物を一口飲んだ時、私の携帯にメールが着信した。

そのメールをみた時、私は驚きのあまり

むせてしまった。





『サムライさん、もうすぐで約束の場所におつきになりますね。


お待ちしております


導く者 より』



今度はパソコンのメールではなく携帯のアドレス宛に届いたのだ。


何度も言うが、私は自分が「サムライ」というハンドルネームでブログ活動などを行っている事など他人には全く知らせていない。


無論、携帯電話のメールアドレスなどに「サムライ」宛にメールが来る事など

ないはずだ。


しかも、私がもうすぐ約束の場所に着く事を何処かから「見ている?」


まさか、ただの偶然だろうとは思うが。

どちらにせよ、もう 目的地に向かうしかなさそうだ。

そして、「導く者」 に会って、なぜ私がサムライというハンドルネームでネット活動をしているのかが分かったのかを聞き出すしかないのだ。


メールを初めて受け取ったあの日から、

目的地に向かって歩く今もずっと考えている事が他にもある。


「導く者」 と名乗る者は、私以外にもコンタクトを取っている人間がいると

言っていたが、

私を含め、そんな人間を集めて、いったい何をしようというのだろうか?


まさか、「導く者」 にとって都合の悪い人間を集めて全員殺すとか?

そんなことできる訳がない。

では、何か重要な話があるとでもいうのだろうか?


いったい、この先どのような出来事が待っているのか。

その時の私には、全く予想出来なかった事柄が、起ころうとしていた。




いろいろ考えを巡らせているうちに、道の先にやっと氷川神社の鳥居が見えてきた。

導く者 が、待ち合わせ場所として指定してきた場所である。


鳥居の周りは大きな国道に面しており、尚且つ目立つ場所にあるので、

オカルト話によく出てくるような、不気味な雰囲気などはない。


人通りもそれなりにある場所なので、真夜中に人がいても特に不思議ではないような場所だ。打ち上げ終わりの学生がたむろしていてもおかしくはない。


遠目からその鳥居の周りを観察しながら歩いていたが

その時は通行人がいるだけで人が集まっている様子はなかった。


私は少し不安を覚えながら、鳥居に近づいて行った。


時間が25時55分を超える頃には、私は鳥居のすぐそばに立っていた。

しかし周りを見渡しても、私を呼び出した人物らしき人間は見当たらない。


私のネット上でのハンドルネームから私本人を導き出した人間と、このまま

会わずにはいかない。納得がいかない。

何かヒントをもらえればそれだけでも良い…


そんな事を考えている私に、ある女性が近づいてきた。


「あの、すみません。貴方も、導く者 とかいう人に呼び出された方ですか?」


突然だったので、私はビクッとしてしまった。

その女性は、申し訳なさそうに私に語りかけてきた。


「そ、そうです。メールで呼び出された者です」


私は少しだけ震えた声でそう告げた。


「メールには、他にも呼び出した人がいる、と書かれてましたが本当だったんですね」

「私もちょっとビックリしています…」


そんな話をしていると、鳥居の周りからまるで私達を囲い込むように、

数人の人間がこちらに近づいて来るのが分かった。


「あのメール、マジだったのかよ…」

「本当に人が集まってる…なんなのあのメール」


そんな事を言いながら近づいて来る人達は、私を含めて

11人となった。


そのうち二人の男は友達同士のようで、小さい声でしゃべりながら

周りの様子を伺っているようだった。


その友達同士と見られる二人のうちの一人が言った。


「…で、導く者 って人はこの中にいるんですか?」


誰も、自分が「導く者」だとは言わない。

どういうことだ。他にまだ人が来るのか。


「どうなんです、あのメールを送信してきた人は

この中にいらっしゃるんですか?」


一番最初に私に声をかけてきた女が、たまりかねてその場にいた人間全員に語りかけた。

辺り、一斉にシーンとなった。どうやらこの中には 「導く者」 はいないらしい。



次の瞬間、集まった人間の全員の携帯電話の呼び出し音が鳴った。


全員の携帯の呼び出し音が一度に鳴るなんて事は、偶然にしてはあり得ないだろう。

当然、マナーモードにしている者の携帯電話はバイブレーションでコールを知らせている。

呼び出し音と、ブーン…というマナーモードのバイブレーション音が一斉に鳴り響く光景は不気味だ。


最初に私に話しかけてきた女性が自分の携帯を取り出し、受話ボタンを押した。


「もしもし?どちら様ですか?…え?」


女性は受話器に向かってそう話すやいなや、こう言った。


「ここにいる皆さんも自分の電話に出てください!そう言えと言われました…」



私達は言われた通り、それぞれ自分の電話の受話ボタンを押し、耳にあてた。

全員が携帯を耳にしたその瞬間、受話器の向こうから声が聞こえた。



「皆さんおつかれさまです。

私の指示通り、ここに集まっていただきありがとうございます。

私は皆さんを今日ここにお招きした、導く者 です」




「導く者」は、姿を現さずに電話で現れたという事だ。


当然、彼はここに居る我々11人を相手に一人で受話器に向かってしゃべりかけていると言う事になる。


こちらにいる誰かが何かを話しかければ、「導く者」は一人であるわけだから、

他の相手を無視して、話しかけてきた人間に答える事になる。


ここに集まった人間はそれを分かっていたのだろう、誰も一言もしゃべりだす者はいなかった。


しばらく沈黙が続いた後、「導く者」はこう言った。


「今日、この場所に、皆さんに集まってもらったのは、

確認をさせていただく為だけのものです。

私は今日、その場所には行きません。

皆さんはそれぞれ、私に対する疑問などが

あるでしょうから、今日は本筋だけをお話しします」


そして、この後の「導く者」が話した内容は、普段何気なく暮らしている人間には信じられないであろう内容だった。


彼の口から発した言葉を、箇条書きで書く事にする。





① 日本という国は、世界の縮図であり、良い意味でも悪い意味でも

  「世界の中心的存在」であること

  (原子力災害に関しても、広島、長崎、福島、と数十年という短期間でこのような

   大災害が起るのは日本が世界の「縮図」たる所以)


② 某軍事大国家やアジア諸国から日本が狙われるのは、日本が「世界の中心」

  だからである事。それ故に常に危機に瀕している事。


③ この世界の国々は常に日本を奪い合う事に躍起になっているが、日本の価値を

  一番理解していないのが我々日本国民である事。マスコミが本当の事を隠して

  報道している事


以上の事に関しては、私は政治分野や裏社会の出来事などもそこそこ知ってはいたので、

全くその通りだという印象だけが残った。

しかし、これから先の「導く者」からの言葉は、ある一定の人間達を除いて、現実離れしていると感じられる人間も多いのではないだろうか。


彼は続けて、このような言葉を述べた。




④ この世界のあらゆる出来事、事件、災害、全ての事象は、起るべくして

  起っているという事。


⑤ しかし決められた事象が実際に起る際には、ある程度の時間軸の誤差が生じる事。


⑥ ノストラダムスの大予言やマヤの予言のようなものは、秘密裏で行われている

 「本当の計画」を隠す為の隠れ蓑でしかないという事。




以上の事は、昔から言い伝えられているアカシック・レコード(全宇宙の現在・過去・

未来の出来事が全て記されているとされる記録)の説などもある事から、私はあまり意外性を感じなかった。


「導く者」の言う通り、この世界の出来事は起るべくして起っている。少なくとも私は

そう感じていたし、私がこの時代、この日本という国に生まれ生きている事が

どれだけの意味を持つのか、常に考えていたのだから。


しかし、「導く者」から発せられた次の言葉は、さすがの私も驚きを隠せずには

いられなかった。



⑦ この世界には、同じ時間軸上に、別の世界が存在する事。つまり「異次元の世界」

  が存在し、その世界にもこちらの世界と同様に人が生活を営んでいる事


⑧ 「こちらの世界」では「向こうの世界」の存在を認識していないのが一般的だが、

  「向こうの世界」では「こちらの世界」の存在を認識しているのが一般的である事


⑨ 「向こうの世界」の人間達は、「こちらの世界」を自分達のものにしようと企ん

  でいる事




異次元の存在などは、物理学の分野などで散々研究されているテーマであった事などは

知ってはいたものの、こうもあっさりと言われてしまうと、私は肩すかしをくらったような気分になった。


鳥居に集まった11人全員が、多分そんな状態だったのだろうと思う。


そして最後に、「導く者」はこう締めくくった。



「これからの指示は個別にメールでお知らせします。今日のところはご帰宅ください」


そう言い残すと、「導く者」は電話を切った。

「ツーツー」と通話終了の信号が受話器から空しく聞こえていた。


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