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第一章 「導く者 」【一日目】

第一章 「導く者 」【一日目】




201X年3月末のある晴れた休日。

私はいつものようになかなか起き上がる事が出来なかった。

不眠症の一つの症状だ。


ベッドから上半身だけを起こして部屋を眺めた。


パソコンの電源が入ったままになっている。

私は基本的に、部屋にいる間はパソコンの電源は落とさない。

音楽を聞いたり動画を見たりする為の「部屋内サーバ」的な扱いをしている為だ。


カーテンは閉めたまま、太陽の日差しをシャットアウトしてはいるが

外は晴れている事は分かる。


テレビもつけっぱなしだ。

そうだ、昨日はパソコンに入っている映画をテレビに転送して見ていて

そのまま眠ってしまったのだ。


私はやっとベッドから起き上がり、パソコンの前の椅子に座った。


そしていつものようにネットニュースから確認しようとした。ところが、だ。


普段はメールが数件届いていても大して気にもせず、後からゆっくり確認するのだが、

その日だけは違った。

「まずメールを確認しないと」

私は直感的にそう思った。


案の定、メールは深夜のうちに数件届いていた。

転職支援サイトからのお知らせメール、広告メールなどだ。


しかしそのメール達の中に、全く見覚えのない差出人からのメールがあった。

差出人の名前は




「導く者」




件名は無題だった。


私は全く見に覚えの無いこの「導く者」という者からのメールに早速目を通した。

そのメールの内容をここにも転機しておく。



『サムライ様


201X年 3月11日 午前2時、埼玉県 にある 「氷川神社」 参道 入り口の


鳥居 の前に 集合 すること


※このメールはある特定の方だけに送信しています』



たったこれだけの内容だった。


なぜ私が、真夜中の2時に、神社の参道入り口の鳥居の前に集合しなければならないのだろうか。全く見覚えがなかった。


ただの悪戯メールなのか?


しかしたったこれだけの内容なだけに、逆に単なる悪戯には思えなかった。

これが悪戯だったとして、いったいこの差出人になんのメリットがあるのだ?


いわゆるチェーンメールのようなものかと思い、ネットで検索したが、

一致しそうな事柄は一切見つけられなかった。


私は個人のメールアドレスは、必要最低限の相手にしか教えていない。

だから、知り合いからですら、ほとんどメールはくる事はない。


しかも、このメールの最も恐ろしいところは文章ではないのだ。



「サムライ様」



私はハンドルネームとして「サムライ」という名前で主に政治や事件に関するブログを書いている。時には、政府への抗議活動を呼びかけたりもしている。はっきりいって、身元がバレると色々と厄介な事になる。


ブログ経由で「サムライ」つまり私に対してメールが届いているのであれば何ら不思議な事はない。問題は、


ブログサイトなどからの経由では無く、直接、私のプライベートメールアドレスに

メールを送っていること。


そして、この差出人は私が「サムライ」の名前でブログサイトを運営し政治活動をしている事を知っていると言う事だ。


今はネット時代。ネットがあらゆる手段で便利に使われている。

しかしそれが故に、ネット上で軽薄に個人情報などを出すのは危険きわまりないのだ。


当然私も、「サムライ」と名乗っている者が私であるという事は一切公言していないし、

誰にも話していない。


私はメールの内容よりもむしろ、なぜ私が「サムライ」だとバレたのか怖くて

仕方なかった。


いくら思い出しても、思い当たらない。


私はネット上で活動している時は「サムライ」という人物になりきっている。

だから、自分の個人情報には一切触れていないはずだ。


なぜ、バレた?しかも、「導く者」などという意味不明な人間に。


しばらく考えたが、全く見覚えがないし、混乱しても仕方ないと自分を落ち着かせた。

しかしこの件に関しては無かった事にはできなかった。


どうしてもこの「導く者」に会ってみたい。

そうでなければ、この件は解決しない。


「導く者」に会って話さえ聞けば、なぜ私が「サムライ」の名前で

活動していたのかを知ったのか、理由が分かるはずだ。

逆に言えば、「導く者」に会わなければ、この謎は解決する事はない。


私は、「導く者」の指示通り、201X年3月11日午前2時に 氷川神社の鳥居前に

行く事を決心した。


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