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設定考察シリーズ

倒錯するヘビーノイズ

作者: 和琴
掲載日:2026/09/29

狂う、狂う世界

俺は勇者ホルン。

俺が生を受けたとき、何者でもなかった。

ただ名前だけを知っていた。


いつの間にか地に降り立っていた俺は、最初から人の姿をしていた。

地に立つ二つの足を備え、両腕は獣なら仕留められるほどの剛腕。

だが、それでも怖いものはあった。


人里を見つけたが、遠くから獣を仕留める彼らを見て

恐ろしく、近づく気もしなかった。


俺は仕留め、喰らい、生水を飲んで生活したが力は増していくばかりだった。

やがてはより効率的な食糧を追い求め、地底に飛び込み

悪魔たちの羽を喰らうようになった。


悪魔たちは俺を崇拝した。

血沸く杯、勇気ある者との余興。


意味もなく殺し合いをし、それを笑うものを又殺す。

何気ない日常で淘汰されゆく中で、悪魔たちは血を浴び…

力を身につけていくのを感じた。


そんな中、地上に居る魔王の存在を知る。

全人類を束ねる、魔王デュムヘイムの存在だ。


奴は人を守り束ね…そして支配地を広げることを至上命題としている。

俺はさっそくそいつと殴り合うために、

昔人間の騎士から強奪したと言われる漆黒の鎧を着て

魔王城の地下まで穴をあけながら登って行くことにした。


血のなだらかな抱擁、そして暗く微笑んだ際の美しい反響を糧に

俺たちは掘り進む。

そうして穴が崩れた先には、広々とした牢屋で

丸々と太ったゼブラ柄の男たちが出迎えてくれる。


ご馳走をしばし頂いた後、俺は悪魔と共に突き進む。

騎士と数人殴り合い、ギザギザとした槍をへし折り

鎧を胸から引き裂いて血を飲んだ。


そうして扉を開く。

そこには魔王がいた、思わず心が震える。


光り輝く金の衣をまとう聖女を従えた

黄金の盾を持ち赤い椅子に座るもの。


魔王だ。


「勇者よ、よく来たな。

語り部の主導権”勇”を持つ者よ。」


そして魔王は震えながら椅子を立つ。

俺は兜を外し…剣を咥える。


「神は言った、我に勝ち目はないと。

だがお前の様なものを、私は心から生かして置くつもりはないらしい。」


魔王は剣を掲げ、宣言する。


「一騎打ちだ!お前と我、どちらが死ぬか。

だが心せよ、魔王を倒せば勇者は終わるという事をな。」


小癪で、邪悪なる魔王の言葉に…俺は一人で前に出た。

元々そのつもりだ、全員ぶっ殺す。


俺は地上を駆け、四足歩行から二足へ。

飛び回り、斬り回り、光の波動を避けて回る。


「皆のものよ、我に主導権を、我に魂の声を!!!」

周囲の者の聖歌は、残酷なヘビーノイズ。

気も淀むような重低音が、この世に鳴り響いた。


届くことはない…魂の言葉で無ければ。


「力が足りねぇんだよ!

俺は天からこの役割を授かった!

マォー!!てめーはこれで終わりだ!!!」


俺のその飛びつきを、生意気にも魔王は躱した。


「我に力を、主導権を!

声よ響け!!導きの声よ!!」


そんな魔王に、俺の鎧の背中に刺さっている

悪魔たちの羽を投げた。

空気を切り裂いて、魔王の鎧に突き刺さっていく。


「もし我に、我を選ぶ声さえあれば…

我に物語の力があれば…!!」


「勝負ありだな、あばよ!!!」


俺は剣を振り下ろす。


そこには、鮮血が満ちていった。

物語の…力を授かれば…

誰でもいい…我を主役に…

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