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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

"毎日存在感"

掲載日:2026/02/27

殺害した少年は、食用以外は総て死蝋に加工し、冷暗所で保管して居る


救い主たる『悪魔』は、まだ僕の元を訪れてくださらない



───ちょっと歩きながら、一緒に話さない?


とても凡庸であるに関わらず、こんな言葉でも人を拐う事が出来る


真面目で優しい大人だと、僕を信じる者は多い

もしかすれば言葉自体ではなく、外見や仕草の信頼で人は騙されるのかの知れない

郊外の一軒家で少年だったものを煮込みながら、僕は取り留めもなく、そう考えて居た



彼の肌や汗はとても味わい深かったが、では肉はどうだろう?

トングで小皿に肉片を拾うと、粗熱を落として口に入れる


咀嚼の度、柔らかな肉の繊維が解れていく

香味野菜、胡椒、紅い紅いトマト……様々な装飾の中で臭みを失い、引き換えに甘美さを強調された味が、液躰の形で舌に浸透していく


確実に、作るたび上達を感じる

美少年の肉である事を差し引いても、美味だった



彼の血で作られたソースの、その最後の一匙まで味わったが、それでも満たされる事は無かった


当然の事なのかも知れない

血に飢えたものが満たされる事など、果たして有るのだろうか?

或いは、『飢餓は、食事によって増えて居るのではないか』とすら感じた



夜は街灯に照らされて居るが、照らされるべき人間の姿は視当たらない

反対に、僕のような獣が照らされて居る

面白い事だと感じた


こうまでも人が居ないと、『何でも良いから早く殺したい』という気持ちすら脳裏に浮かぶ

しかし、こんな時に限って、現れた相手は僕にとっての危険そのものだった



「───先生?」


知って居る

高校の教え子だ


平素は他人の事など憶えて居ないが、彼はうなじの匂いが甘く涼やかで、いつも耐え難かった

しかし、『面識が有れば発覚する事も有るかも知れない』と思い、彼に手を出そうと思った事は一度も無い


それにしても、驚いて居るのが僕だけで無い事は意外だった

聞けば、我慢出来ない事が有り、家出をしたという

「先生の家であれば」

「両親も不服は無いと思います」


そう言って、僕の家に泊まろうとする

その間も『あの匂い』がする、気が狂いそうだった


「帰れ」


日頃とは違う強い口調で言ったが、反対に刺激してしまったらしく、彼は断固として「先生の家に泊まります」と言って聞かなかった


ばかりか、絶対に着いていく為なのか、僕の腕に抱き付きすらする


「解った」


「好きにしろ」


根負けした様には視せたが、算段は在った

『ありのままの家の様子を視せて、拒むようなら殺す』

ただ単に『殺す覚悟を決めただけ』の様な作戦だったが、そう決めると少し心は楽になった




帰宅する

解錠した玄関に、先に彼を招き入れる


最早、緊張は無かった

コートのポケットには、折りたたみナイフが在る

経験から言って、仕損じる事は無い


どういう反応を視せる?


玄関をくぐりながら様子を伺おうとした時、よりによって教え子の少年は、向かい合った姿勢で僕の背に腕を回すと、胸に顔を埋めながら言った


「僕は、先生が欲しい」


あの良い匂いがする


そこから先は、まるで自分では無いように躰が勝手に動く事だけが、朦朧の中でうっすらと解った




結局、僕たちは朝まで玄関で過ごした


彼は何も視て居ない




救い主たる『悪魔』は、まだ僕の元を訪れてくださらない

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