#3 毎朝のルーティン
皆さん、こんにちは!アオです!
それでは「静かな恋愛~朝にしか会えない君と~ 」をどうぞ!
翌日、好きな歌手の曲を聞きながら電車に揺られて数分……
視線をふと上げるととある駅に到着していた。
そう言えば前の先輩とはこの駅であったな、今日もいるのかなと
思いながら曲を聴く。すると隣に見たことのある制服に身を包んだ
女子が座ってきた。その人は俺の肩をたたき
「おはよう」
そう書いたメモ帳を見せられて俺も挨拶をする。
「今聴いている曲も前話した歌手さんの?」
「そうですよ。暇があればずっと聴いています」
「わかる!私もずっと聴いちゃう!」
俺の話に食いつくようにして大野宮さんはメモ帳に書く手を休めない。
「そういえば新曲のビジュ見ましたか?」
「えっ!?そんなの発表されてたの!まだ見てない!」
そう言われたので俺はスマホを少しだけ操作して新曲のビジュを見せる。
「お~、このビジュ一枚だけで新曲の楽しみさがめちゃくちゃ上がる!」
ただメモ帳でのやり取りなのになぜか大野宮さんのうれしさが
声と一緒になって脳内に聞こえているような感じがした。
「声が発せないということはカラオケで歌ったりもしないんですよね?」
「うん、声を出すってことがどういうことかよくわからないから
よく言われる"つらい"って感覚もないんだけどね~。
凌君はよくカラオケで歌ったりするの?」
「はい。ただ周りに知っている人が少ないのでヒトカラのときだけ
歌うようにしていますよ」
「そうなんだ。結構気を使ったりするから大変そうだね~」
なるほど……そういう考えもあるのか。
これまで大野宮さんは俺がしたことない体験を数々したから
こうやって全然俺が思わないことも思うのだろう。
「声が出ないって結構大変ですね」
「確かに小学校の時とかはよく"変なの"って言われてたけど
生まれつきでこれが当たり前だから別にそこまで不便じゃないよ」
そうか、自分が今日いきなり話せなくなったらめちゃくちゃ怖いんだろうな。
「凌君は高校何とかやっていけそう?」
「はい!自分で言うのもあれですが、結構人と仲良くなれるのは上手なので!」
俺がそう返事を書くと大野宮さんは笑って
「確かに凌君と話してるとそんな感じがする」
大野宮さんに言われて俺も笑う。
なんだかこうやって話していないのに話している特別な感じが
楽しいなって思うようになった気がする。
そして学校への最寄り駅に到着したため俺は大野宮さんに
ペコリとお辞儀をして電車から去って行った。
その次の日もさらに次の日も朝電車に乗っていると隣に
大野宮さんが座ってくる。そしてメモ帳で話始めるのだ。
さすがにずっと大野宮さんからメモ帳を借りているのはまずいので
週末、文房具屋で自分用のメモ帳を購入した。
翌週。それを胸ポケットに忍ばせて会話で使っていると
「わざわざ新しいメモ帳買ってくれたの?」
「はい。毎日話しているとさすがに大野宮さんに申し訳なくなるので」
「別にいいのに。学校で話すのは親友とかだけだし。
それに家では家族とは手話で会話しているからね」
なるほど手話で会話か……確か小学校の時に一時間だけ手話の口座教室が
あってそのときに手話について触れたくらいだな……
「そうなんですね。でもこれからはこっちのメモ帳で話しますよ!」
「実は結構新鮮なんだよね。こうやって知らない人とメモ帳でやり取りするの」
「俺もそうですよ。というかこんなの初めですし」
「だよね。さっき親友とかだけって言ったけど私がこの状態だからさ
親友以外とはめったにやり取りすることがないの」
そこには大野宮さんならではの悩みがある気がした。
「人によると思いますが俺は別にそれこそ"個性"だと思いますよ」
俺がそう返事を書くと大野宮さんは笑って
「ありがとう。そんなこと言われるの初めてかも」
俺が言ったのが面白かったのか大野宮さんは声を出さずにずっと笑っている。
なんだかそれがおかしくて俺も笑い始める。
しかし大野宮さんと違って声が出てしまい電車内で
"いきなり笑い始めた変な人"という目で見られていた。
それに気が付き思わず笑うのを止めてうつむく。
それが面白かったのか大野宮さんがさらに笑う。
「そんなに笑わないでくださいよ。結構恥ずかしいので……」
その文章を見て腹を抱えながら返事を書く大野宮さん。
「ごめんって、やっぱり凌君って面白いよ」
「なんかそれバカにしていませんか?」
「してないしてない。でも朝から元気出たよありがとう」
大野宮さんと会話をしているとあっという間に学校の最寄り駅に着く。
「じゃあまた明日」
「うん、また明日!」
大野宮さんはその言葉を俺に見せてニコニコと手を振ってくれた。
俺はなんだか手を振り返すのが恥ずかしくてそのまま電車から去った。
琴音「おっ、おはよう凌。そっ、その胸ポケットにあるやつはなんだ?」
思わずメモ帳で会話をしそうになったのを止めて
俺「おはよう……メモ帳だよ、少し意識高い感じに見えるだろう?」
琴音「……そんなん、どうでもいいだろう」
なんだか理由を言うのが気恥ずかしくて思わずはぐらかす。
読んでいただきありがとうございました!
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それでは次回お会いしましょう!アオでした~!




