5※サプラ視点
「ふふ。また気になっていた魔法書を手に入れられました」
半ば無理やりウルドによって獣人国から出てきたサプラだったが、それは無益な旅ではなかった。宰相としての仕事がなくなり、自由な時間が増え、趣味に没頭することができた。
ウルドを監視する必要はあったが、テトラやナディアも居るので、サプラの負担は重くなかった。
(最初は気を揉みましたけど、この生活も悪くはないですね)
幼い頃から見聞を広げたいと思っていたので、サプラにとって今の状況は、またとない機会だった。
(こんな時も来るだろうと、私の代わりを務めることが出来る人材を育成して正解でした)
獣人国では兄弟たちと、競い合うようにして成長する。
ところが、兄弟の大半はウルドのように本能のまま生きている脳筋ばかりで、軍を志望する者が多く、政に興味がない者が多かった。
サプラの計算高い性格は獣人としては稀な性格で、父親である国王からも厚い信頼を得て、宰相として確固たる地位を築き上げた。
だが、獣人国は資源に乏しい国だ。
魔法書や魔道具は需要も供給もなく、魔法使いの待遇も悪かった。大半の魔法使いは獣人国に滞在することを選ばなかった。
そのため、魔法の素質があったサプラには長い間、師匠がいなかった。
(そろそろ、独学には限界を感じていたところです)
獣人国に居てもサプラの魔法使いとしての成長は見込めなかった。
他国に留学することも検討していたが、隣国との戦争があったため、国内の財政が悪く、既に宰相候補として頭角を現していたサプラは、その計画を断念するしかなかった。
(しかし人間は愚かですね。こんなに露骨に差別するなんて)
サプラは魔法使いだ。強力な魔法を扱うことが出来るが、ウルドのようには肉体的には恵まれていない。そのためか、人間から差別的な扱いを受けやすかった。
買い物をする時、サプラが獣人と知るや否や、値上げしたり、「獣人なんかに売るものはない」と面と向かって言われたこともあった。
獣人は長い間、人間の奴隷だった。大分前に獣人を奴隷にすることは禁止されたはずなのに、根強く人間の中にその意識が残っている。
(トールも苦労したはずです。なんとかして、この差別を解消したいものですが……我々獣人がSランク冒険者になれば、少しは変わるのでしょうか?)
サプラは冒険者として活動する一方で、人間の獣人への差別意識に懸念を抱き、少しでも改善させるために、動き出した。




