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(なんで、こんなことになったんだろう……)
ガタガタと揺れる馬車の中で、トールは肩身の狭い思いをしていた。
左には長兄のサプラ、右には六男のウルド、手前には三女の聖母テトラ、五女の魔眼ナディアが居た。
それぞれが獣国でも名の知れた実力者で、トールにとって雲の上の存在だった。
弟たちと遊んでいたら国王である父に呼び出され、この4名とパーティーを組むように言われた。
ウルド兄は鼻息荒く「人間どもを見返してやろうぜ!」と張り切っているし、サプラ兄には疲れた顔で「貴方に拒否権などありませんよ。あきらめなさい」と言われた。
ギルドに到着すると、すぐにウルドが冒険者として登録をしようとしたが、受付のお姉さんの笑顔がひきつり、ギルド長と話をするように言われた。
数日前まで宰相と将軍という要職に就いていた獣人が、いきなり冒険者になるなど、想定外だったのだろう。
特に継承順位が高く、国内外で知名度の高いサプラは本来、国賓扱いにしなければならないらしい。
「見聞を広めるために来たので、特別扱いは不要ですよ」
ギルドに加入するための講習で、試験官を一撃で倒したため、特例でAランクの昇級も打診されたが、実績が伴っていないと断った。
「我々、獣人国から出るのが初めてなんですよ。」
まずは初心者用の依頼を受ける話になった。
(そういえば、前衛も後衛も、希少な回復役までいる……)
それは予期せぬことに、バランスの良いパーティーだった。
特にテトラのような回復スキル持ちは希少なので、レベルが低くても引く手あまただ。
道中、運悪くA級の魔物が出たが、彼らはいとも容易く倒してしまった。
(凄い。パーティーを組んだばかりなのに、息がぴったりだ)
血の繋がった兄弟だが、性格はバラバラで、喧嘩も多かった。
個々の力は強くても、連携が難しいだろうと思っていた。
まるでバラバラだったパズルが組み合わさって、1つの絵となったような感覚だった。
「そういえば、誰をリーダーで登録しよう?」
ギルドにはリーダーを登録しないといけない。
「何を言っている。俺たちはギルドに登録したばかりでF級なんだから、Cランクのトールがリーダーだろ」
「ええ……!? でも、僕がいちばん弱いのに……!」
ランクは低くても、トール以外は軍に所属していた時期がある。
戦場に身を置いていた兄弟のレベルと素質は群を抜いており、各々が希少な固有スキルを持っている。
一定数の依頼をこなし、昇格試験さえ受ければS級になれる能力だった。
「そんなの関係ないだろ。弱ければ強くなればいいだけだ」
こともなげにウルドはそう答えた。
こうして、獣人国の最強パーティーが出来たのだった。




