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シングルマザーが転生した冒険者は女神様でした!――猫と娘と世界を救う物語  作者: 織田珠々菜
戦闘準備編

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87話 花蜜による覚醒と副作用


 世界樹の光が静かに落ち着きを取り戻す中、ゼウスは振り返り、エレニとレイを正面から見据えた。


「さて……花が咲いたことで、お前たちには大きな力が流れ込んだ。

 だが同時に、“代償”もある。覚えておけ」


 エレニは姿勢を正し、レイはエレニの肩の上で、服をぎゅっと掴む。


「お父様、花蜜の副作用とは……?」


 ゼウスは世界樹の花弁を一つ摘み、手のひらで光らせながら説明を始めた。


「世界樹の花は、祝福の力と生命の源を宿している。

 飲んだ者の魔力を一時的に、過剰覚醒 させることがある」


「過剰……?」


「簡単に言えば“力が流れ込みすぎる”ということだ。

  慣れないうちは、感情の揺れひとつで魔力が溢れ、

 意図せぬ力が発動する可能性がある」


 レイは目を見開く。


「どういうこと?」


「心配するな。妖精は元々、魔力をもつ生き物だ。

 ただし——心が乱れれば、翼が暴れ出すかもしれん」


「えぇぇ!?」レイが驚きの声を上げる。


「暴れる……ほどではないが、勝手に出てしまうことはある。

 寝ている間に暴発して天井へ頭をぶつける者もおったな」


「痛そう!!」


 ゼウスはエレニの額に軽く指を当て、そこに宿る微かな光を示す。


「世界樹の花は、“時”の流れにも干渉する。

 妖精と女神の契約を結んだことで、お前たちには“時空共鳴”が起きている」


「時空……共鳴?」とレイ。


「互いの感情、危機、痛み……それらが僅かだが共有される。

 レイに危険が迫れば、エレニの翼が勝手に反応する。

 エレニの魔力が乱れれば、レイの体に負担がかかる」


 リオが、納得するように呟く。

「……私とエレニ様みたいな感じですね」


「そうだ。

 嬉しい時は強く、悲しい時は儚く……

 お前たちの力は互いの感情で変動する」


 レイはエレニの手を握り直し、ぎゅっと胸を張る。


「じゃあママ! いっぱい笑ってて! そしたら私も強くなるでしょ!」


「レイ……」


 エレニの胸がじんと熱くなった。


「エレニ。

 お前が覚醒した翼は“調律のハルモニア”。

 魔力の流れを整え、乱れを鎮め、世界そのものの歪みさえ修復できる」


「世界の……歪み……?」


「時や空間が歪んだ場所、呪いの地、破壊された魔力の循環……

 お前の力は、それらを“調和”へ導く。

 これから訪れる戦いで、最も必要とされる力だ」


 エレニの背の黄金の翼がふわりと光り、

 世界を優しく撫でるような、魔力の波が広がった。

 レイの羽根は桜色に揺れ、小花のような光を散らす。


「レイ。

 お前はドリュアスだ。その力は“息吹”。

 枯れた場所に命を戻し、毒を清め、傷を癒す。

 ときには——“死の淵にある者を呼び戻す”こともできる」


「えっ……そんなすごい事、できちゃうの!?」


「ただし、それは命の流れを強く消耗する。

 お前の小さな体では、一度使えばしばらく眠り続けるだろう」


 レイは真剣な表情で頷いた。


「わかった。無茶はしない。ママを困らせるの嫌だし!」


 ふふっとエレニが笑った。


 ゼウスは世界樹の花を見上げ、重々しく告げた。


「そして——

 女神と妖精の契約が完全に成立した今、

 お前たちにはもう一つ、“特別な技”が使えるようになった」


「特別な……?」


「“ホロウ・サンクチュアリ(虚空の聖域)”。

 お前たちが触れる空間そのものを保護し、

 外からの攻撃を一切通さない絶対領域だ」


 アイアスが息を呑む。


「そんな……伝説でしか聞いたことのない力だ……!」


 ゼウスは静かに頷く。


「ただし、この力は“二人が揃っている時だけ”。

 どちらかが欠ければ発動せぬ。

 ゆえに——互いを見失うな」


 レイはエレニの耳元で、声を弾ませた。


「大丈夫! ママからはなれないよ!」


 すべての説明を終えると、ゼウスは二人の頭に手を置いた。


「エレニ、レイ。

 お前たちは今、“世界樹に祝福された存在”となった。

 だがその力は——剣ではなく、守るためのものだ。

 そのことだけは忘れるな」


 風が吹き、世界樹の花びらが黄金色に舞った。


「お父さま、たまにはお母さまに会いに行ってあげてください。

 きっと、喜ぶと思います」

「何を言っとる。レダが回復した翌日には、会いに行っている」


「いつの間に! あとは、ヘラ様にも面会に行ってあげてくださいね」

「わかっておる。お前もアテナに似てきたな……」


「え……?」

「なんでもないわ」


 女神として、母として。

 妖精として、娘として。


 二人の旅はここから本当の意味で始まった。

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