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シングルマザーが転生した冒険者は女神様でした!――猫と娘と世界を救う物語  作者: 織田珠々菜
戦闘準備編

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86話 世界樹の開花と妖精の目覚め

 

 寄宿舎の石造りのエントランスに、

 エレニ、レオ、ジーノ、アイアスが揃った。

 窓から差し込む朝光が、床の大理石に淡く反射してゆらめく。


「世界樹、花咲いてるかな……」

 エレニは籠を抱き、眠る妖精をそっと守るように見下ろす。


「この日を待ち望んでいただけに、不安もありますよね」

 レオが小さく吐息を漏らす。


「大丈夫だ。世界樹の機能は復活したんだ。信じるんだ、女神たちの力を」

 アイアスが声をかける。ジーノも、穏やかに頷いた。


 エレニは深呼吸し、両手に籠をしっかり抱き直す。

 心の奥で、守りたいもの――家族、仲間、妖精たち――を思った。


「では、行きましょう。寄宿舎からビフレストへ――」

 彼女の小さな声に合わせ、光の転移魔法が柔らかく空間を包み込む。


 虹色に輝く光の橋、ビフレストの入口に、エレニたちは足を踏み入れた。

 橋の両脇には、淡い光の柱が立ち、空気にはほのかな振動が伝わる。

 上層階への通路でありながら、まるで神殿の門のような神聖な気配が漂っていた。


「ひさしぶりの……ビフレストか」

 ジーノが息を呑む。虹の光に照らされ、彼らの影が長く伸びる。


 その時、橋の向こうから、背の高い人物が姿を現した。

 金の装飾が施された深緑のマントを纏い、顔には穏やかな微笑みが浮かぶ。

 ヘルダイム――光の守護者であり、ビフレストの管理者だった。


「やあ、君たちか」

 ヘルダイムの声は澄み渡るようで、虹の橋の光に溶け込むようだった。


 エレニは深く一礼する。

「ヘルダイム様、お久しぶりです」

 籠を抱え、妖精を守るように慎重に身を低くする。


「エレニ。変わりないようだな」

 ヘルダイムは目を細め、優しく頷く。

「ビフレストを渡るのは二度目だろう。今回は、心を迷わせることなく通れるだろうか?」


「はい……迷いません」

 エレニはしっかりと目を合わせる。

「守りたいものがあるから、迷わず進めます」


「ふむ、頼もしいな」

 ヘルダイムは静かに笑った。

「では、通行の準備は整っている。橋を渡る間、光と風の感覚を信じるのだ。心の迷いがあると、橋は揺れる」


「わかりました」

 アイアスが一歩前に出て、仲間たちを見渡す。

「皆、準備はいいか?」


「はい!」

 リオもジーノも頷き、エレニも籠を抱き直す。


 ヘルダイムが槍を掲げると、虹色の光をさらに輝かせた。

「では、気をつけて行け。上層階はもうすぐだ」


 虹の橋が光を増し、足元の道が柔らかく光る。

 エレニたちは息を整え、一歩ずつ上層階へと進み始めた。


 虹色に輝く光の橋、ビフレストを慎重に渡り終えると、

 エレニたちは上層階の柔らかな草地に足を踏み入れた。

 見慣れたはずの上層階も、今日ばかりは特別に感じられる。

 風は穏やかで、鳥のさえずりがどこか神聖さを帯びている。


「ここ……すごいですね」

 レオが周囲を見渡す。草や木々は光を反射し、まるで静かに祝福しているかのように揺れていた。


「でも、花が咲く場所は初めて……」

 エレニは小さな声でつぶやき、心の奥で少し緊張を感じていた。

 世界樹は上層階でも圧倒的な存在感を持つが、咲き誇る花のもとに立つのは別格だ。


 やがて、光の間を縫うようにして、世界樹の幹が目の前に現れる。

 幹の周囲には、蕾がわずかに膨らみ、花の気配を漂わせている。


「……花は、まだ……」

 エレニがつぶやき、手元の杖にそっと触れる。

 花が自然に開く瞬間を待つ。


 ジーノも静かに息を飲む。

「こんなに神聖な場所……言葉も出ないな」


 リオは目を細め、空気の微妙な振動を感じ取る。

「魔力の流れが……普段とは全く違う。生命そのものがここに満ちている」


 アイアスはエレニの隣に立ち、肩越しに花のつぼみを見上げる。

「花が開く瞬間、見逃すなよ」


 しばらくの沈黙の後、枝先のつぼみがゆっくりと震え始めた。

 淡い光が内部から滲み出し、花弁がほんの少しずつほころぶ。


「……あっ……!」


 その瞬間、つぼみはぱっと色鮮やかに咲き広がり、甘い香りと柔らかな光が空間を満たした。


「美しい……」

 リオの声も思わず震える。


 その時、背後から深く響く声がした。

「ようやく咲いたな、エレニ」


 振り返ると、空間の光の中に一人の威厳ある姿が現れた。


「お父様……」

 エレニは、ゆっくりと頭を下げた。


 ゼウスは優しい笑みを浮かべる。

「まずは、花蜜を取って妖精に飲ませなさい。」

 その視線は、花の咲く世界樹を、そしてエレニたちを温かく包んでいた。


 花は完全に開き、空間全体が柔らかな黄金色の光に染まる。

 風が優しく吹き抜け、光と香りが調和し、まるで世界そのものが祝福しているかのようだった。


 エレニは、花蜜を小さな瓶に入れ小さなスプーンで、すくうとレイの口に注いだ。


 レイがゆっくりと瞬きをして、目を擦りながら手足を伸ばす。


「う~ん……」


「レイ……?」

「ふぁ~あ……めっちゃ寝た……あれ?ここ、どこ?」


「レイ、起きたんだね!!」

「ちょっ……待って!ここどこ?あなた達だれ?」


(そうだった……。異世界から転移して、はじめて目覚めたばかりだから無理もない)


「レイ、リオです。覚えていますか?」


「ええ?リオ?リオが服を着て、喋ってる???

 ていうか、わたし小さくない?

 めっちゃ小さいんだけど!?」


「落ち着いて聞いて。

 私たち土砂災害の後、転移してこの世界に来たの。

 レイ、あなたは妖精として生まれ変わったのよ」


「わたしが、妖精……? ママは……?

ママは、どこ?」

「ここ……」


「え!? ママ?? ママなの??

めっちゃ若っ!!」

「色々、言いたい事はわかるけど……

落ち着いて……」


「だって!髪の毛とか目の色とか……」


「レイ!」

「なに?」


 エレニは、レイを優しく抱きしめた。

 その瞬間、光が二人を包み、魔道陣が現れた。

レイの背には淡い桜色の羽が咲き、

髪の先がふわりと光に染まった。


 また、エレニの体は熱で火照り背中から、黄金の翼が広がる。

 その輝きは、世界を包むように波動し、類を見ない荘厳さだった。


 妖精の小さな光が、彼女の胸へ吸い込まれ、

心臓の鼓動と同じリズムで輝き始めた。

 

 契約は完了した。

 

 その光景を見た、リオ、ジーノ、アイアスは

目を見開き、息を呑む。

 ただゼウスだけは、静かにその光景を

見守っていた。


「レイ……。良かった……本当に目が覚めて良かった。

 ずっと……ずっとこの時を待っていた」


 エレニは、涙をこぼしながら声を絞り出す。


「ママ……ママなんだね。

 でも、背中に翼があるよ?」


 エレニは涙ぐんで、頷き笑いながら言う。

「レイの背中にも、翼があるよ」


「本当だ!! 私、飛べるの? すごいすごい!!」


「どうやら、エレニは完全に女神として覚醒したようだな」


「私が……女神……!?」


「今更、驚くことじゃないだろ。ワシの娘なんだから」


「え? ママが女神? って、この人だれ?」


 リオが小声でレイに語りかける。

「この世界で、一番偉い神様。ゼウス様ですよ」


 レイも小声で質問する。

「この人が、じーじなの?」


「ブハッ」

 小声でも、しっかり聞こえる会話にゼウスも吹き出す。

 リオ、ジーノ、アイアスも必死で笑いをこらえる。


「オホン……とにかく、妖精が眠りから覚めたようで良かった。

 そして、妖精との契約で完全に女神として覚醒したようだな。

 もう、この世界のどこにでも自由に行けるというわけだ」


「その為の翼なんですね……」


「そうだ。飛びたいと思ったときだけ翼が出てくるから心配するな。

 しかし、女神になった以上責任も重くなる。

 特に、いまは……」


「わかってます」


「しかし、クロノスとアレスの件はワシの問題だ。

 ワシが解決する。今は、妖精の傍にいてあげなさい」


 ゼウスは、そう言葉を残して神殿のほうへ去っていった。


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