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シングルマザーが転生した冒険者は女神様でした!――猫と娘と世界を救う物語  作者: 織田珠々菜
戦闘準備編

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78話 世界の分岐

 夕暮れのアカデミー。

 風に揺れる樹々の葉が、淡く赤く染まる空を静かに映していた。


 その穏やかさが、オリンポスで味わった重苦しさとあまりに対照的で、

 エレニは胸の奥がざわつくのを感じた。


 隣のアイアスも、深く息を吐く。


「……どう切り出すべきだろうな。

 まさか“戦神が敵に回った”なんて、さらっと言えないぞ」


「言わないわけにはいかないしね。

 でも、あの二人なら……きっと受け止めてくれる」


 エレニは自分に言い聞かせるように頷き、寮の扉を押し開けた。


 共用ラウンジでは、リオとジーノがソファに沈み込んでいた。

 メリノエとマカリアは、湯気の立つハーブティーを配っているところだった。


「おかえり、エレニ」

「どうだった?」


 ジーノがぱっと顔を上げ、

 リオは心配そうに、エレニの表情を覗き込む。


「オリンポス会議……ヘラ様の裁定とか、いろいろあったんだろ?」


「顔色が……良くありませんね? 何かありましたか?」


 エレニは笑ってごまかそうとしたが――無理だった。


 代わりに、アイアスが静かに前へ出る。


「……戦神アレスが、クロノス側についた」


 その一言で、部屋の空気が凍りついた。


 リオの瞳が大きく揺れ、

 ジーノは手に持っていたカップを落としそうになる。


「……は?」


「え、いや、それ……本当なんですか?」


 メリノエは両手で口元を覆い、息を呑んだ。


「アレス様が……どうして……?」


 エレニは、会議室での戦神の表情を思い返す。


「ヘラ様の幽閉が決まって……その後でアレスが言ったの。

 納得いかないって。

 お父様を責め、私の力によってヘラ様を追い詰めたとも……」


 リオが頭を抱える。


「戦神が敵側に……そんなの、天界の戦力バランス崩壊ですよ……!」


「ただでさえ、クロノス復活が迫ってんのに……」

 ジーノも顔色を失って呟いた。


 そのときだった。


 マカリアが、静かにカップを置いた。

 その表情はいつもの柔らかさを失い、どこか震えていた。


「あのね……冥界で、私たちが襲われた時のことなんだけど」


 メリノエがマカリアの肩にそっと手を置きながら続ける。


「……ヘラ様が、関わっていたの」


「ヘラが……?」

 リオが息を呑む。


 マカリアは小さく頷き、胸元を押さえた。


「ペイリトオスとテセウスが……

「ヘラ様から結婚相手として紹介された」って言ってきて……」


 その声は微かに震え、瞳が潤む。


「無理矢理、連れて行こうとしたの……」


 エレニの胸が苦しくなる。


「マカリア……」


「それで、俺に連絡してきたんだな……」

 ジーノが呆然と呟く。


 エレニはメリノエとマカリアを同時に抱きしめた。


「怖かったよね……本当に、二人が無事で良かった……」


 マカリアは小さく頷き、


「エレニの魔道通信機がなかったら、本当に危なかった……」


 エレニは深く息を吸い込んで言った。


「ヘラ様は、魔力を失って幽閉が言い渡された。

 だから……もう私たちに危害を加えることはできない」


「それじゃあ……冥界の襲撃は……」

 リオが唾を飲む。


「ヘラ様が、メリノエとマカリアのことを彼らに伝えた。

 ただ、危害を加えろとは指示していないと言ってた……」


「危険な目に遭うのを分かってて、紹介したんだろ……」

 ジーノが固く拳を握る。


「それから……クロノスとアルプは、ヘラ様を切り捨てた」


「利用して、不要になったら捨てたってことかよ……」


「こっちのほうが、納得いかないですね」

 リオも歯を食いしばる。


 アイアスが静かに言葉を継いだ。


「そこに、アレスが加わった。

 復活前のクロノスが手に入れるには……危険すぎる戦力だ」


「つまり……」

 ジーノが呟く。


「神々の戦争が始まるってこと?」


「たぶん……」

 エレニは強く頷いた。


 夕暮れの光が消えるように、

 部屋を満たす空気もまた、静かに緊張へと沈んでいった。

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