06.魔法の杖と契約の印 ー最初の覚醒ー
魔法を使う際に、杖が必要だと言うことをパパとリオに伝え、魔道具店に付き合って貰う事にした。
「確か、ここが魔道具店だな。」
「なんか、ワクワクする!」
店のドアを開けて入ると、おばあさんが水晶を磨いていた。
店の中は、整然とされてるが壁いっぱいに杖や本がびっしり並んでいた。
「おや、いらっしゃい。何か探し物かい?」
「あの、魔法を使う時の杖を探しているんです。」
「ほほぉ。魔法を使うのは、お嬢さんかい?」
「はい。」
「どれどれ…。身体もまだ小さいし、この辺りが良いかしら。自分で手に取って見るといいよ。」
「ありがとう。」
私は、おばあさんが数本選んでくれた杖をひとつひとつ手に取ってみた。
「どうだい。気に入ったものはありそうかい?」
「う〜ん」
正直、似たり寄ったりでしっくりこないというのが本音だった。
ふっと辺りを見た時に、微かに光って見える棚があった。
「おばあさん、あの棚の引き出し見ても良い?」
「あぁ、いいよ。」
私は、脚立によじ登って引き出しを開けた。
そこには、ガラスのような杖が入っていた。
手に持ってみると、じんわりと暖かくそれでいて手に吸い付くような感覚があった。
「これ、いいかも……。」
でも…こんな綺麗な杖高そう!!!
「おやおや、この杖にするのかい。ようやっと買主が見つかったようだね…。」
「そうなの?」
「この杖はね、みんな見た目が綺麗だから1度惹かれるが、手にすると痛みが走るらしくてねぇ。誰も買おうとしなかったのさ。」
「そうなんだ…。」
「お嬢ちゃんは、手にしてみても平気だったんじゃろう?」
「はい。手に取ったらじんわり暖かくなって手に吸い付くような感じでした。」
「そうかい。そうかい。なら、大丈夫なようだね。どうやら杖が、お前さんさんを選んだようじゃな。」
「エリニ、それにするのか?」
「うん、いいかな?」
「売れ残りの杖だったから、まけとくよ。」
「本当?おばあさん、ありがとう!」
こうして、魔法の杖を手に入れた私たちは店を後にした。
箱に入っていた杖を取り出し、改めて手にする。
握ると、やはりじんわりと暖かく手に吸い付く感じがある。
(ちょっと、試してみたいな・・・。)
杖をギュッ!と握りしめたら、細く短かった杖が、瞬時に地面に突いて歩けるくらいの長さに変化した。
「あわわわ…。」
「おおぉ!?」
それを見ていたパパとリオも驚いた。
「不思議な杖ですね。」
まるで、意思疎通できるかのように自分が思い描くとその形に杖が変化する。
「この杖、賢い!!まるで生きてるみたい…。」
益々、この杖が気に入ってしまった。
「相棒、よろしくね!大事に使うからね。」
杖に語り掛けると、杖も答えるかのようにキラリと光った気がした。
魔法の杖を手にした3人は、家に帰宅した。
「ただいま~!」
「おかえり、もうすぐ夕飯ができるから待ってね。」
「はぁ~疲れたー。」
私は、ベッドにゴロンと横になった。
「エリニ様、お疲れさまでした。今日は魔法も使ってだいぶお疲れなのでは?」
「うん…初めて、街にも行ったしね!でも、楽しかったよ!」
「それは何よりです。」
そうだ!こういう疲れた時は・・・。
「リオ、こっちに来て。」
「どうしました?」
「猫吸いだー!」
そう言って、リオの懐にギューっと抱きついた。
と、その時・・・・。
パアアアア!!!!っと二人の間に眩い光と共になにか魔法陣のようなものが浮かび上がり身体がカァアアと熱くなった。
「な、なに???」
それは、ほんの一瞬の事で身体の熱さもなくなった。
「え?何があった?」とキョトンとした顔をした。
「エリニ様、これは契約の印ですね。」
「契約?」
「はい、正式にあなたは私の主となったのです。」
「いまの、ハグしたことで?」
「恐らく、そうだと思います。」
確かに、リオと出会ってからハグはしてなかったな…。
「しかし、人間と妖精が契約したという話は聞いたことがありません。」
「え?そうなの?」
「はい。通常は、女神様と契約になるんです。」
「へぇ~・・・。」
リオとは特別なのかなぁ?だけど、眠っている妖精はどうなんだろう・・・。
「何か、身体に変化はありましたか?」
「うーん…。光った時に身体が熱くなったけど今は大丈夫。」
「そうですか・・・。今はまだ、わからないですが、もしかしたら他にもなにかあるかもしれませんね。」
「うん…。」
「心配するような事ではありません。契約によって、悪い事より良い事のほうが多いと思います。」
「良い事?」
「はい」
「例えば、お互いの身の危険を察知することができたり、新しい力が備わったりとかですね。」
「人間でも、身につくのかなぁ?」
「どうでしょう。無いとも言いきれませんね。」
「そうだね。明日、魔法とか強くなってないか試してみよう。」
「はい。」
「ごはん出来たわよー。」
「はーい!」
私たちは、食事や入浴を済ませた後眠りについた。