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シングルマザーが転生した冒険者は女神様でした!  作者: 珠々菜
アカデミー編

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29話 森と霧のセレネア王国

 オピオタウロス討伐後、エレニも回復し穏やかな日常を取り戻していた。


 ーランチタイムー


 カフェ・テラスにいつもの一緒に集まる六人で集まっていた。


 妖精の森メニュー

 前菜  :妖精の森で採れたハーブ入りサラダ

 メイン :きのこのクリームパスタ

 サイド :フライドポテト

 デザート:花びら入りフルーツゼリー

 ドリンク:果実水


 エレニはグラスを見つめ、にやりと笑った。

「そうだ、この果実水で前から挑戦したいと思った事があるんだよね…」

「なになに?」


 マカリアが興味津々に身を乗り出す。


 エレニは、果実水の入ったピッチャーに魔法をかける。


 ”シュワワワア~”


「おお、なんだこの音?」

「泡が……湧いている?」リオが目を丸くする。


 グラスに注ぐと、果実水が細やかな泡を立てて光る。


 エレニは嬉しそうにひと口飲んで微笑む。

「うん! いい感じ! 果実ソーダ、完成!」

(くぅ~久しぶりの炭酸!!やっぱり美味しい~!)


「ええっ!? 何それ、飲みたい!」

「俺も俺も!」


 皆のグラスにソーダを分ける。


「おお!なんだ、このピリピリ感!」

「のど越しが爽やか!」

「美味しい!!」


 リオは、半信半疑でグラスを傾けた。

「……悪くない。刺激的です」


「だろ? なんか舌がピリッとする感じ癖になりそうだ!」

 ジーノが嬉しそうに笑う。


(ふふっ……この世界に炭酸がないって、気づいちゃったんだよね)


 エレニは満足げに微笑み、グラスを掲げる。

「新発明、成功ね!」


「エレニ印の魔法飲料だな!」

「やめてよ、その名前」


 空気が弾む中、マカリアが話題を変える。

「ところで、明日から三日間はお休みだけど、みんなどうするの?」


「メリノエと私は冥界に戻るわ。お父様とお母様に会わないと」

「俺も家に戻る予定さ」

「それじゃ、お土産にこの果実ソーダを持っていく?瓶に詰めて」

「いいの? 嬉しい!!」

「ありがとう!」


「私たちは、これからケット・シー王国に向かうよ」

「リオの故郷か」

「楽しそう! 気をつけて行ってきてね」

「うん、ありがとう」


 柔らかい風がテーブルを抜け、花びらがふわりと舞った。

 今はただ――仲間と笑い合う時間を楽しんでいた。


 ☆ ☆ ☆


 昼食を終え、アイアスを含んだ四人は出発の準備をしていた。


 《エレニ、まだかよー?》

 《今、行くー!》

 《忘れ物がないように、気を付けてください》

 《はーい》

 小さな足音を立てて、エレニは寄宿舎の階段を駆け下りた。

 待ち構えていたのは、落ち着いた表情のリオ、いつも冷静アイアス、そしてどこか楽しそうに笑うジーノ。

 馬がゆったりとを首をふり蹄を響かせて待っている。


「よし、出発だね」

 エレニがにこりと笑うと、リオも小さくうなずいた。

「久しぶりです、セレニア王国。夜になると現れる幻想の王国……」


 馬は森の小道を進む。夕陽はまだ空に残っているが、森の奥からは淡い霧が立ち上り、木々の間に神秘的な光を宿していた。光の粒が漂うように見え、まるで魔法の世界に迷い込んだかのようだ。


「霧が深くなってきたね」

 ジーノが手綱を引き、目を細める。


「この霧があるから、セレネア王国は夜にだけ姿を現せるんです。

 夜になると月光で輝き、昼間はただの森にしか見えません」


「そうやって、国を守ってるんだね」

 エレニの声には、緊張が混じる。母に会うと思うと、胸が高鳴る瞬間でもあった。


 森を抜けると、前方に淡く光る城の輪郭が見えてきた。塔の先端は月光を反射して銀色に輝き、霧の中に浮かぶその姿は、まるで夢の中の城そのものだった。


「すごい……幻想的すぎる……」

 アイアスが息を呑む。

「まるで絵本の中の世界だな」


 馬に乗った四人が王国の入り口に差し掛かる。

 霧のベールが少しずつ城の形を露わにし、幻想的な光が四方から降り注ぐ。


「いよいよだね……お母様に会える」

 エレニは静かに手を握りしめる。胸の奥がわずかに熱くなる。


 リオが優しく声をかける。

「大丈夫だ、俺たちも一緒だ」

 ジーノも頷き、アイアスはにこやかに笑った。


 ――森と霧の間に浮かぶセレニア王国。夜の光に包まれた幻想の城に、エレニはゆっくりと足を踏み入れた。


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