02.はじめての魔法を使ってみた
あれから、どれぐらいの年月が経ったのだろう。
ハルマとフィーロに育てられた私は、自分で歩き話せるようになっていた。
推定5歳といったところ?
転生した私は、以前の記憶や知識は残っていた。
ハルマもフィーロも会話も文字を書くのも覚えが早いとすごく驚いた。
一方、私と一緒にいた妖精はいまだに目を覚ます事はなかった。
ハルマの話によると普通、妖精は単独行だが女神と契約を結んだ妖精は従事するようになるらしい。
私は人間だけど、この妖精が麗だと思わずにいられなかった。
見た目は違うけど、母親としての勘を疑う余地はなかった。
しかし、この妖精の目を覚まさせる方法が見つからない…。
そりゃあ、赤ちゃんに比べたらだいぶ自分の事は、出来るようになってきたけど力も背丈もまだまだ足りないなぁ。
今の私では、幼すぎて街へ出て情報収集するのも難儀である。
早く自立して、方法を見つけ出さないと!
「エレニ!洗濯物干すの手伝って頂戴。」
「はーい。」
フィーロに呼ばれ、庭に出る。
「エレニ、ちょっと待ってて他の洗濯物も持ってくるから。」
そう言って、フィーロは井戸のほうへ向かった。
洗濯機とか乾燥機があったあの頃が懐かしい…。
魔法でも使えたらなぁ…。いや待てよ?妖精がいるんだから魔法があっても良さそうな?
でも、魔法なんて使ったことないしどうやって使うんだろう…。
魔法って、難しい呪文を唱えたりとかするのかな…。
やってみたい事を頭の中で、イメージして…。念じてみるとか??
例えば…このシーツを一枚ずつ取り出して広げ…。
フワリと物干しの紐にかける…。
!!!ええええ!で、で、で、出来てる…。
いま私、魔法使ったの?呪文とか唱えてないけど!?
もう一度、別のシーツで同じように試してみる。
ほ、ほ、ほ、本当に出来た…。
いやいや、まてまてまて!落ち着け私。
魔法といっても火を出したり水を出したりとかしてないし…。
火は危ないから…とりあえず水?
よし、水で試してみよう。
えーっと…ちょっと離れて、広いところで…。
「エレニお待たせ。あら?エレニ、一人でシーツ干せたの?」
「う、うん…。」
「よく手が届いたわね。大変だったでしょう。ありがとうね。」
「うん…。ママ、私ちょっと遊んできていい?」
「いいけど、森にはいかないでね。最近、魔物が多いから気を付けて。」
「はーい。」
そう言って、家から少し離れた草原に向かった。
うっかりママの前で、魔法試すところだったよ…。
そもそも、人間が魔法使えるのかどうか聞いてないしなぁ。
あとで聞いてみよ…。
「さて、さっきと同じ要領で水をイメージしてみるか~。」
最初は、やさしい水のイメージがいいかな…。
ホースからシャワーが出るような感じに…。
シャー!!!!
「キャー!!!頭の上にかかって来たー!」
頭の上からびっしょに濡れてしまった…。
でも、水が出せた!ってことは魔法が使える!!
とは言え、まだまだ不安定な魔法だから練習しないとダメだ…。
あと、指定する場所や方向を定めるためにも、
魔法の杖みたいな魔道具が必要な気がする。
魔道具なんて売ってるのかなぁ?
それとも作る?拾う?
うーん、この辺も調べてみなきゃ。
取り合えず、ずぶ濡れだし一度帰ろう…。
「ただいまー。」
「エレニ!どうしたの?ずぶ濡れじゃない?」
「えへへ、ちょっと川で転んじゃって…。」
「仕方ないわね、急いで着替えてらっしゃい。いま、暖かいミルク入れるわ。」
「はーい。」
着替えてから、椅子に座るとフィーロが暖かいミルクを差し出してくれた。
「身体冷やさないようにしてね。」
「うん…。ママ、ちょっと聞いていい?」
「なぁに?」
「人間でも、魔法って使えるの?」
「え?魔法?そうねぇ…人間の場合は、適正能力があれば勉強や訓練は必要だけど、使えるようになるわよ。」
「そうなんだ~。ママやパパは、魔法使える?」
「ママもパパも魔法は使えないわ。」
「それじゃあ、魔法使うときに道具とか必要?」
話を聞いていたハルマーが話に入る。
「どうした、エレニ魔法に興味でもあるのか?」
「う、うんちょっとね。」
「そうだなぁ。冒険者ギルドで魔導士達も杖を使っているな。」
「そうなんだ~。」
フィーロもハルマーも不思議そうな顔をして見合わせていた。
「ほら、魔法が使えたら便利そうじゃない?」
と、適当に誤魔化した。
「こんにちはー!」
元気よく扉を開けて挨拶して一人の少年が入ってきた。
「あら、ジーノ。いらっしゃい。」
「これ、うちの母さんから」
そう言って、野菜が沢山入った籠をテーブルに置く。
「いつも、ありがとうね。助かるわ。」
彼は、隣の家に住むジーノ。いわゆる幼馴染ってところかな。
「よう、エレニ元気か?一緒に遊ぼうぜ。」
「いいけど…。」
(本当は、魔法の練習したかったんだけどな…。)
「暗くなる前には、帰ってくるのよ。」
「はーい。」
そう言って、私とジーノは先ほど魔法の練習していた草原へ向かった。