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シングルマザーが転生した冒険者は女神様でした!  作者: 珠々菜
アカデミー編

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24話 狩猟大会

 

 ビフレスト・アカデミー講堂。

 学生たちのざわめきが波のように広がり、壇上のアテナ教官が一歩前へと進む。


「静粛に。――本日、重大な発表があります」

 その声が響いた瞬間、講堂の空気がぴたりと止まった。

 翡翠の瞳を持つ講師のアルテミスは、ゆっくりと視線を巡らせる。


「今年より、新たな実戦演習として《狩猟大会》を実施します。

 剣技科と魔法科の合同演習――すなわち、異なる技を持つ者が共に戦う初の試みです」


 ざわ……と会場が揺れた。

 前列の剣技科の生徒たちはざわつき、魔法科の生徒たちは顔を見合わせる。


「最近、世界樹中層域で魔獣の発生が急増しているのは知っているな?」

 アルテミスは手にした巻物を開き、そこに刻まれた地図を指し示した。

「この異常を“演習”として利用する。各チームは森に入り、魔獣をより多く集めよ」


 その説明に、エレニは眉をひそめた。

 隣でリオが静かに囁く。


「実戦形式……しかも魔獣の異常発生下ですか。

 随分と危うい賭けに出ましたね、アカデミーも」

「でも、悪くない。退屈な座学より、俺はこっちの方が燃えるぜ」

「はぁ……まったく、ジーノは血の気が多すぎます。」

 リオは緑色の瞳を細め、尻尾の先をわずかに揺らした。


 壇上では、アテナが続けて告げる。


「優勝チームには――“上層通行許可証”と“神造装具”を授与します。

 これはゼウス神殿が後援する、正式な競技です」


 その瞬間、学生たちの間にどよめきが走る。

 神造装具。ゼウスの名が出る。

 それは単なる学内行事ではなく、“神々の注視する試練”であることを意味していた。


 エレニの胸の奥で、鼓動がわずかに鳴る。

 ――誰かに呼ばれている。

 遠く、空の向こうから。


 アテナは最後にエレニの方へ目を向け、ほんのわずかに微笑んだ。


「娘よ――剣と魔法が交わる時、真の力が問われる」


 ゼウス《お父様》の声が聞こえた気がした。


 ーー大会当日ーー


 世界樹の下層域――“翠の回廊”と呼ばれる入り口には、

 朝靄(あさもや)が漂っており、森の中は遠く霞んで見える。


「よし、作戦会議だ!」

 ジーノが腰の剣を軽く叩きながら言った。

「俺たちの目標は――生きて帰ることだ!!」


「……え?…それだけ?」

 エレニが眉をひそめる。


「現実的だろ? お前、方向音痴なんだから余計にな」

「え? 私、今日はちゃんと地図持ってるよ?」

「その地図、上下逆だ」

「……えっと、この印って……こっちが南?」

「北です。」リオが即答した。

「じゃあ、私たち今……逆方向に向かってた?」

「はい。あと十歩で崖でした」

「えぇっ!?」

 慌てて後ずさるエレニの肩を、ジーノが笑いながら支える。


「ははっ、さすが方向音痴。開幕五分で転落エンドは勘弁してくれよ?」

「ちょっと! わざとじゃないー!」

「はいはい」

「むー」


 ジーノは頭を抱え、メリノエは淡々と肩をすくめた。

「彼女の方向感覚に関しては……どんな魔法より危険ね」

「確かに!」とマカエリエが笑いながらうなずく。


 そんな中、背後から重い金属音が響いた。

 振り返ると、アイアス教官が白銀の鎧をまとい、ペガサスに跨って現れた。


「各チーム、準備を整えよ! この先は訓練用ではなく、本物の魔獣がいる。恐れるな、だが油断もするな。」


 ディオが剣を抜き、仲間たちとすれ違う際にエレニへ一言。

「ジーノ。派手にやらかすなよ」

「気を付けてやるさ!」

「……いや、気をつけるって言葉が既に信用ならねぇんだが」


 笑いがこぼれるの中、周囲の学生たちは次々に森へ入っていく。


 アイアスがエレニに声をかける。


「よぅ、エレニ、あまり無茶するなよ」

「わかってますよ」

「何か、問題があったら必ず報告する事」

「はーい」


 エレニたちの前方には、霧に包まれた“翠の門”が待ち構えていた。

 森の中からは、低く唸るような音――風ではない、獣の声。


 リオがピン!と耳を立てる。

「……どうやら、既に“想定外”の魔物がいるようですね」

「ふむ、実戦の香りがしてきたな」

 ジーノが剣を抜くと、刃が光を反射した。

「よし、迷子でも、戦いでは迷わねぇ。行くか、隊長?」


 エレニは地図を丸め、胸を張る。

「うん、出発――たぶん、こっち!」

「“たぶん”ですか……」

 リオのため息が、霧の中に溶けていった。


 いくつかの魔獣を倒し森の奥へ進むにつれ、空気は重く、湿り気を帯びていった。

 本来ならば鳥の(さえず)りが響く穏やかな場所のはずだった。


 だが、今は違う。

 風は止み、木々の葉がざわめきもせず、霧が漂い森はただ息を潜めている。


「……静かだな」

 ジーノが剣の柄に手を置いた。

「さっきまで魔獣の気配があったのに、急に消えた。嫌な感じだ」

「魔力の流れが不自然です」

 リオが草を踏みしめながら低く呟く。

「まるで……何かが“飲み込んで”いるような」


「飲み込んでる?」

 エレニはきょとんと首を傾げ、足元の地面を指先でなぞった。

 薄く光る紋様が走る――封印術の痕跡だ。


「これ、古代式の結界……だよね?」

「ええ。しかも、相当古い」

 リオが冷ややかに見やる。

「管理されているはずの聖林で、封印がこれほど劣化しているとは……異常です」


 その時だった。

 木々の間から冷たい風が吹き抜け、草葉をなぎ倒す。

 霧を裂け、奥に黒い岩肌がのぞく。


「……洞窟?」

 ジーノが前に出る。

「地図には載ってねぇな…」


 洞窟の入り口には、大きな扉があった。


 扉の表面には、古い神代文字が浮かび上がっていた。


『三位が揃う時、汝、真に目覚めん』


 エレニは無意識に手を伸ばした時に、扉の欠けた断片で指が切れた。


「痛っ!」


 雷の紋章がかすかに光り、ぱちりと小さな電流が走る。


「エレニ様!」

 リオが咄嗟に止めようとしたが、遅かった。

 封印陣が一瞬にして溶け、ドォオオオン!という重い響きと共に扉が開く。


 しかし、その奥にまた封印された扉があった。


 低い呻き声が響いく。


 ――グゥゥゥ……オォォォ……


 扉の奥底から、獣の咆哮が響き渡る。


「……今の、何?」

 エレニが顔を上げると、最初の扉の上にある紋章がじわりと赤く染まり始めていた。

 封印が溶け始めている。


 リオが眉をひそめ、扉の縁に手を当てる。

「封印が……歪んでいる。これは自然劣化ではありません。

 ――誰かが意図的に、魔法で“捻じ曲げた”…」


「誰がそんなことを?」

 ジーノの問いに、リオの声が低く落ちる。


「この印……“婚姻の女神”の象徴です」


 エレニがはっと息を呑む。

 扉の隅に、花弁のような文様――ヘラの印章がかすかに刻まれていた。


「“婚姻の女神”ってヘラ……?」

 エレニの指先が震える。


 リオは静かに言う。

「ええ、間違いありません。ヘラがこの封印を解こうとしたのです」

「嫌な予感しかしないぜ」

 ジーノが呟いた。

 それでも笑みを崩さず、剣は構えたまま。

「ま、こういう“事件”に巻き込まれるの、俺たちらしいな」


「軽口を叩いている場合ではありません」

 リオの声音が鋭くなる。

「この封印、崩壊寸前です。早急に退避を――」

「うん、一度撤退して報告しよう」


 エレニは、転移魔法の印を残し三人は、その場を去った。


読んでみて


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「この先、どうなるのっ……?」


と思ったら


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