01話 誕生?
パチパチと何かが燃えてるような音がする。
木の香りと、ほんのり甘いミルクの匂いが漂っていた。
私、どうしたんだっけ…。
薄っすらと目を開けると、そこは丸太でできた家の中のようだった。
パチパチとする音は、暖炉の薪が燃えている音だった。
ここは、どこだろう?
たしか、大雨で土砂に埋もれて…あまりにもあっけない最期を迎えた気がする。
そして……あれ?私、死んだ…はず…?
頭の中が混乱している。
死んだはずなのに意識がある…というか、息もしてる。
声だって「ア~ア~」ほら!出てる!
でも…、なんかいまの赤ちゃんっぽい声だったような…。
「あらあら、起きたのね。良かったわ~。寒空の下に置き去りにされてて心配だったのよ~。」
そう言って、優しそうな女性が私を抱き上げた。
(待って! 私すごく重い…あれ? 重くないの?)
状況が把握できない! 私一体どうしちゃったの?
「お腹空いてるわよね。いま、ミルク持って来てあげるから待っててね。」
そう言うと、女性は私をブランケットの敷かれた籠の中に入れ、ミルクを用意した。
「さぁさぁ、ミルクよ。ちゃんと飲んでね~。」と哺乳瓶を口に突っ込まれる。
(まさか、私転生した?でも、私だけ?麗は?)
「可哀相になぁ。フィーロに頼まれて薪を取りに外に出てみれば、赤ん坊が泣いてるんだから驚いたよ。おまけに妖精も一緒とはなぁ。この子の傍に、小さな光のようなものが寄り添っているから、何だろうと思ってよく見たら妖精だったんだから。しかし、妖精のほうはずっと寝たままだな。」
「ねぇハルマ。私たちずっと子どもが居ないし、これも何かの縁じゃないかしら?」
どうやら、優しそうな女性はフィーロ、もう一人の優しそうな男性はハルマというらしい。
「フィーロ、子供を育てるって簡単な事じゃないし、もしかしたら親だって探してるかもしれないぞ?」
「そうかしら、普通の親ならこんな赤ん坊を寒空に置き去りなんてするかしら…。」
「うーん…。いずれにしも、親が見つかるまでは面倒見てあげないとだな。」
「そうね。でも、この子名前もなさそうだし名前を付けてあげましょうよ。」
「そうだなぁ…。エレニ…。エレニはどうだ?妖精連れてる子なんだから、女神様っぽい名前でいいだろ?」
「素敵な名前ね!それに、この可愛らしい赤ちゃんにピッタリよ!エレニ、元気で大きく育ってね。」
(エレニかぁ。異国の名前みたいだなぁ…あれ?そういえば、ここ日本じゃない?それから妖精がどうのこうの言ってた気がするけど…まぁいいか。また、眠くなってきた…)
「あらあら。ミルク飲んでお腹いっぱいなったら眠くなったのかしら。」
「寝る子は育つって言うしな。健康そうで良かった。」
「この妖精ちゃんは、赤ちゃんと一緒にいたのよね?」
「あぁ、でも連れて来てからまだ目が覚めないなぁ。まぁ時期に目を覚ますだろうよ。」
「そうねぇ、この赤ちゃんと何か関わりがあるのかしらね。心配だわ。」