14話 出生の真実
父ゼウスに会った、その日の夜。
エレニの心中は、アカデミー入学へのワクワク感もあったが、真実をハルマとフィーロに伝える事に不安を感じていた。
(いつ、なんて話そう…)
「ねぇ、リオ。私…パパとママに本当の事を話さなくちゃ…。だけど、話したら二人は何て思うだろう。ここまで育ててくれた二人にゼウスとレダが本当の親で、しかもアカデミーに行くなんて話をして受け入れてくれるかしら…」
リオは、読んでいた本を閉じる。
「エレニ様、大丈夫ですよ。あのお二人なら、必ずわかっていただけるはずです。幼い頃からエレニ様を愛を持って育て、守り抜いてきた方々です。私は、それをずっと傍で見てきました。例え真実を伝えようとも、あなたの成長を足止めすることなどありません」
「うん…」
「勇気をだして、お伝えください。私が着いております」
「ありがとう。リオ…」
「夕食が出来たわよ~」
各自がテーブルに集まる。
「ハルマの特製ハンバーグよ~」
「モンスターウルフの肉なんて入ってないよね?」
「エレニに教わった料理だぞ!入れるわけないだろう。あいつらの肉はクセがありすぎる」
「良かった!」
前菜:彩り野菜のマリネ(ニンジン、パプリカ、ハーブ入り)フルーツとチーズの盛り合わせ
スープ:カボチャのスープ
メイン:ハルマ特製ハンバーグ(モンスターウルフの肉は入ってない)きのことハーブのソテー添えとパン
デザート:フィーロ手作りのフルーツタルト(小さな花が飾ってある)
飲み物:フレッシュハーブティー
「わぁ、美味しそう!」
「とても、美味しそうですね」
「さぁ、座って食べましょ」
「いただきまーす!」(みんな一斉に)
「うん!カボチャのスープ美味しい~!」
「ハルマ様が作られたハンバーグも、肉汁がたっぷりで美味しいです」
「良かった良かった。しっかり食べろ」
「おかわりもあるからね」
さっきまで、くよくよ悩んでいたのも忘れて夢中で食事をした。
食事を終えた頃、フィーロが話を切り出す。
「ねぇ。エレニ、何か私たちに話したい事があるんじゃないの?」
「え……。」
エレニは、動かしてたティースプーンの手を止めた。
「今日、帰ってきてからいつもと様子が違うから…」
「そっか…。パパもママも気づいてたか」
「何年一緒に住んでると思てるんだ?」
「えへへ」
エレニは、大きく息を吸い背筋を伸ばす。
「実は、今日アテナ先生とリオとジーノの3人で世界樹の上層階に行き、ある方に会いしたの」
「上層階??」
二人は、驚くと同時にハモる。
「うん…。ある方とは、私の実の父親で誰もが知る…ゼウス様よ」
二人は、顔を見合わせ驚くと同時に声も出ない感じだ。
「驚くよね…。私もアテナ様からこの話を聞いた時、すごく驚いたわ」
頭をかきながら言うハルマ
「あ…あぁ…。まさか、本当に神の子供だったとはな」
「えぇ…。でも、私たちも心のどこかで、もしかして…という気持ちがあったのは本当よ」
「そうだな…。赤ん坊の頃から妖精と一緒に居たし、しかも、威力の強い雷魔法が使える」
「ごめんなさい。すぐに言わなくて…。でも、ようやく分かったの。眠ったままの妖精を目覚めさせる方法が”世界樹の花蜜”だって」
「世界樹の花蜜…?」
「それじゃ、この妖精はもうすぐ目覚めるのか?」
ハーブティーを飲むエレニの代わりにリオが話す。
「それが、そうでもないんです」
「どういうこと?」
「いま、世界樹に異変が起きていて、花が咲かないんです。実は、その原因を探るためにゼウス様からアカデミーに入るよう言われております」
「アカデミーって、あの”ビフレスト・アカデミー”の事か」
「はい。世界樹の研究も行われておりますし知識、魔法制御、危険察知といった事を世界樹の調査において必要だと仰っていました」
「なるほどな…」
「エレニ…。あなたが、どんな遠くに行っても、私たちは家族よ。神の娘でも、人間の子でも、あなたは”私たちのエレニ”なの。アカデミーに行く事をどうか躊躇わないで」
「そうだな。そして、いつでも好きな時に帰ってくるがいい。ここは、お前の家でいつでも帰りを待っている」
エレニの目に涙が浮かぶ。
「パパ…ママ…ありがとう」
「さぁ、明日は入学の準備があるでしょ。今日はもうゆっくり休んで」
「うん…」
リオに促され、エレニは部屋へ戻ったのだった。




