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シングルマザーが転生した冒険者は女神様でした!  作者: 珠々菜
冒険者ギルド編

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13話 試される力

巨大な白い柱が立ち並び、空間全体が金色の光に包まれている。

天井のステンドグラスには無数の稲妻が走っていた。

世界樹の枝に築かれた神殿――ゼウスの玉座は、天空の中心だった。


聖騎士に謁見を伝えると、巨大で重い扉が開く。中に入った瞬間、雷鳴が「ドンッ」と鳴り響き、ジーノが飛び上がった。


「うおおお!?爆発したかと思った!!」

思わずリオに抱き着いた。


「ジーノ、落ち着いてください」

冷静なリオの声が響く。だが、尻尾の毛はふわっと逆立っていた。


雷鳴と共にゼウスが姿を現したのだ。

「おぉ!アテナ!それに……これが、例の娘か!」


玉座の上から響く豪快な声。

雷雲を背負ったような圧――それがゼウスだった。

アテナが一歩前に進み、膝をつく。

「お父様、彼女がエレニです」


エレニは少し緊張しながら腰を低くし、頭を下げる。

「……初めまして、ゼウス様」


「うむ。顔を上げよ」


その声は雷のように重く、しかしどこか温かみがあった。

ゼウスはゆっくりと玉座から立ち上がり、娘を見下ろす。


「確かに……レダによく似ておる」


「お、おい……エレニの親父、ちょっとスケールでかすぎねぇか……?」

ジーノがリオの袖を引っ張る。


「“ちょっと”どころではありませんね。王族でも、こんな威圧感はそうありません」

リオは小声で答えるが、耳がぴくぴくしていた。


アテナが静かに口を開く。


「お父様。彼女には雷を操る力があり、封印された神の力が混じっております。

 その力が、どれほどのものかを見極めていただきたいのです」

「血を継ぐ者か――雷の試練で確かめようではないか!」

「え……試練って……」


ゼウスは頷き、右手をゆっくりと上げた。

空気が徐々にビリビリとしてくる。


「では――試させてもらうぞ」


彼は天に雷を放ち、それが大きな光の球となってエレニの頭上に現れた。

「この『裁雷さいらい』を、己の力で受け止めてみせよ」

「まてまてまて…いきなり大丈夫かよ???」


アテナが慌てて口を開く。

「お父様!それは神でも防げる者は限られて――」


「案ずるな、アテナ。

 もし本当に我が血を継ぐなら、雷は彼女を傷つけぬ」


エレニは杖を構え、息を整える。

ビリビリとした空気で髪が逆立つ

「えええええ!?」

(これが……神の力……)


次の瞬間、

天雷が一直線に彼女へ落ちた。


――ドオオオオオオオオオン!!!!!!


天が裂けるような雷鳴と共に、黄金の稲光がエレニに直撃――

……するはずだった。


アテナが思わず目を閉じる。

リオとジーノは耳を塞いで小さくなる。

だが、光が収まると――。


エレニは、無傷のまま立っていた。

彼女の杖の先には、小さな雷の球が静かに揺らめいている。


「え……?」

「え……?」(ジーノとリオもハモる)

「……あれ…なんともない…」

「なんだこれ……すっげぇ……!」


ジーノの目が丸くなる。


リオは瞬きを一度だけして、淡々と呟いた。

「……完璧な魔力同調ですね」

「見たか、アテナ!」ゼウスが高らかに笑う。

「雷を“抱いた”ぞ!撃たれず、包み込んだのだ!」


「つまり……あの雷、エレニの方が勝ってたってことか?」

「はい。普通なら即死です」

「そっ、即死!?」


「……完全に制御していますね」

アテナも感心していた。


雷の光が静かに消えると、ジーノがボソッと呟く。

「なぁ……エレニ、やっぱ人間じゃねぇよな」


「今さら気づきましたか。」リオがさらりと返す。


ゼウスは満足そうに歩み寄り、堂々と娘の前に立つ。

ゼウスは口元を緩めた。

「ほう、受け止めただけでなく、形を変えて制御したか」


「見事です」

アテナが感嘆の声を漏らす。


ゼウスは玉座に戻り、深く頷いた。

「エレニよ。おぬしは間違いなく我が血を引く者。

 雷を“裁き”ではなく“守護”として使う――それが真なる神の娘の証だ!」


エレニは胸に手を当て、小さく息を吸う。

「……ありがとうございます。ちょっと怖かったけど……不思議と、暖かかったです。しかし……私は、人として生きてきました。神の力を持っていても、どうすればいいのか分かりません」


「それでよい」

ゼウスは優しく言った。

「お前が人として生き、人を想い、守るために雷を振るうならば…その力は、神よりも尊いものとなる」


アテナが微笑みながら頷く。


「エレニよ、母親のレダは、ヘラから身を隠すためにケット・シーの国セレネア王国におる」

「セレネア王国…」

「私がいた国ですね。レダ様が王国にいらっしゃるという噂は本当だったんですね…」

「お前が良ければ、一度会いに行ってみるがよい。それから、お前と共にいる眠ったままの妖精の事だが

世界樹(ユグラドシル)の花蜜を与えるのだ。そうすれば、その妖精は目覚める。しかし、今は世界樹の異変のせいで花が咲かない」

「そんな…」

「お前の力は尋常ではない。しかし、力だけでは世界樹の異変を調査することはできん」


アテナは静かに頷き、エレニの隣に立つ。

「お父様、彼女は世界樹ユグドラシルの異変を調査するために、より多くの知識と技術を学ぶ必要があります」


ジーノが腕を組んで小さく鼻で笑う。

「勉強か…まあ、俺は剣でなんとかなると思ったけど」

「世界樹の異変…放置できませんね。学ぶのは当然です」

「ふむ。ならば、お前たちは”ビフレスト・アカデミー”に通い、世界樹の調査隊になるための訓練を受けよ」

「え、マジで?調査隊って、剣振って魔物倒すだけじゃないのか?」


ゼウスが微笑む。

「もちろん、剣も役に立つ。だが知識、魔法制御、危険察知…すべてが必要だ。君たちはこの世界を守る存在になるのだぞ。アカデミーの費用や準備物は、全てこちらで用意する。アテナから後で必要な物は受け取るように」


「ありがとうございます!」


ジーノは小声でリオに囁く。

「ってことは、勉強とか試験もあるのか…俺、落第したらどうしよ…」


リオは少し苦笑いしながら、

「いや、ジーノ…そこは頑張りましょう」


アテナはエレニの肩を軽く叩き、

「ほら、ジーノも文句言いながら楽しそうな顔してるでしょ?」


ジーノは顔を赤らめる。

「そ、そんなことない!ちょっとワクワクしてきただけだ!」


リオは真面目な表情で頷く。

「全力で取り組みます。世界樹の異変を解明し、人々を守るために」


ゼウスは雷の玉座に手をつき、大げさに頷く。

「よし、ならば祝福を与えよう。お前たちの未来に雷の加護と、世界樹の力が共にあらんことを」


雷鳴が微かに響き渡り、玉座の間は一瞬、光で包まれた。


アテナはエレニの手を軽く握る。

「さあ、これで正式に世界樹調査隊への第一歩が始まるわ。アカデミーでしっかり学んで、実地調査に備えましょう」


「アカデミー…」


ジーノが小声でつぶやく。

「……てか雷の祝福って、なんか服とか焦げないよな?」


リオが苦笑いしながら呆れる。

「焦げたらアカデミーどころじゃないですよ」


アテナが深刻な顔で口を開く。

「ところで、お父様。彼女にとってお母さま(ヘラ)の存在は脅威となります…」


(ヘラ様って…ゼウス様の正妻か…。確かに、前世でギリシャ神話読んだ感じだと凄く嫉妬深いって書いてあった…。レダ様が、身を隠しているという事はそういう事か…)


「ふむ。確かに危険はある。だが、私を信じよ。入学して力を磨き慎重に行動すれば、ヘラにはすぐには気づかれぬ。アテナ、私もヘラを警戒しエレニを見守るがお前も同じようにせよ」


「かしこまりました」


ジーノが小声でリオに囁く。

「……でもさ、魔法の授業で爆発したらどうすんの?」


リオは苦笑しながら答える。

「大丈夫です、ジーノ。エレニの制御なら安全でしょう。むしろ私たちが焦るだけです」


エレニは笑いながら二人を見る。

「冒険も、勉強も、ユーモアは忘れずにね」


ゼウスは最後に右手を掲げ、エレニの杖に雷の印を刻んだ。

「行くがよい、エレニ。ヘラには気をつけつつも、お前の道はまだ始まったばかりだ」


エレニは深く頭を下げ、静かに答えた。

「はい。必ず、この力で誰かを守ってみせます」


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