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シングルマザーが転生した冒険者は女神様でした!  作者: 珠々菜
冒険者ギルド編

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11話 アテナの導き

翌日、冒険者ギルドのドアを押し開け、私はリオ、ジークと共に受付に向かう。


「こんにちは、エレニさん」


受付の女性がにこやかに声をかけてくる。


「アテナ様がエレニさんをお待ちです。書斎でのほうでお話があるとのことです」


「エレニ様、私たちはここで、お待ちしております」

リオとジークは、テーブルの席に座った。


「ちょっと行ってくるね」

私はギルド奥の扉へ案内された。扉の前に立つと、彼女は軽く会釈してにっこり微笑み引き返す。

ノックをし扉を開けると。


「失礼します…」

「どうぞ」


大きな机の向こう側に座るアテナは、いつも通りの落ち着きと温かみのある表情で私を見つめていた。


「エレニ、待ってたわ。とりあえず、座って」

「ありがとうございます」


私は、礼を尽くして椅子に座る。


「エレニ。お疲れ様。昨日の討伐は大変だったでしょ?」

「はい……オルトロスに出会った時は、本当に危なかったです」


アテナは微笑み、立ち上がって自分の剣を手に取り磨きながら話す。


「あなたには力があるわ。だけど、力だけじゃ駄目。状況を読む目と、仲間を信じる心も必要よ」

「……はい。昨日はアイアスさん、ジーノ、リオの3人のおかげで、なんとか」

「そう。仲間の存在は、何より大切なもの。あなたにはそれを活かす力があるわ」


アテナは立ち上がり、エレニの肩に手を置いた。

「これからも、ただ力を磨くだけでなく、自分自身の心も鍛えなさい」


エレニは頷き、背筋を伸ばす。


「そして…あなたに伝えなければならないことがあるの」


アテナは剣を置き、椅子にすわる。

深呼吸をひとつしてから、ゆっくりと話しだす。


「エレニ、あなたに会わせたい人がいるの。あなたの……父親よ」

「父……?」

この時、ハルマの事ではないと悟り心臓が高鳴る。


「あなたの本当の父親よ…。その方は、この世界で誰もが知る神。ゼウス…」

「え……。私が……ゼウス様のむ、娘……?」

「そう、ゼウス様からあなたが生まれた時のこと、そしてあなたの力のことなど色々話したいそうよ」

「わ、私が、ゼ、ゼ、ゼ、ゼウス様に…会う…ですか?」


信じられない気持ちと、胸の奥が熱くなる感覚が入り混じって声が震える。


「急に会わせるわけではないわ。でもあなたが上層階へ行けるよう準備していく。エレニも自分の力や過去、そして今の立場を頭の中でよく理解してから会うべきよ」

「わかりました…」

「焦る必要はないわ。でも、確実にね。あなたなら、きっと大丈夫」

「はい…ありがとうございます」


アテナは、私の肩に軽く手を置き、力強くうなずく。


書斎を出ると、外の空気がひんやりと感じた。

テーブルの席に、ジークとリオが静かに待っていた。

二人とも私の顔を見るなり、すぐ立ち上がる。


「おかえりエレニ。随分と話し込んでたな」

ジーノがやや心配そうにした顔で笑う。


「大丈夫でしたか?」

とリオも続く。


私は軽く深呼吸をし、二人の顔を順見つめた。

「うん……大丈夫。大事なことを話されたの」


「私……アテナ様に、父に会うように言われたの。ゼウス様に」


「ゼウス……!?」

ジークが目を見開く。

リオは尻尾をぴんと立て、耳を伏せたまま固まっている。


「まさか、あの上層階の……?」

「うん。信じられないけど、そうみたい。……それで、アテナ様が一緒に行ってくれるって。でも、できればジークとリオにも同行してほしいの」

「マジで!?俺たちも一緒に行けるのか!」


ジーノは即座に言った。その目は真っ直ぐだった。


「どんな場所でどんな相手だろうが、俺はお前の護衛だからな。お前を一人で行かせるわけにはいかない」

「ありがとう、ジーノ」


その言葉に胸が少し温かくなる。


リオも一歩前に出て、小さく頷いた。


「もちろん私もご一緒します。ゼウス様がどんな方でも、エレニ様のお傍にいます」

「リオ……ありがとう」


少しの沈黙のあと、ジークが腕を組んで軽く息を吐く。

「ははっ…。上層階か……。オレみたいな地上の冒険者が足を踏み入れていいのか、ちょっと不安だな」

「大丈夫よ。アテナ様が案内してくださる、正式な謁見になるから」

「そっか。なら安心だ」


リオが小さく笑う。

「ゼウス様に会うなんて、普通は一生に一度もない事ですもんね」

「……そうね」


私は空を見上げた。

遠い存在だった神が、今は父として少しだけ近くに感じられる。


「じゃあ決まりね。アテナ様の準備が整ったら、出発しましょう」

「おう、任せとけ」

「はい、エレ二様」


その瞬間、私たちは小さくうなずき合い、新たな旅の決意を胸に刻んだ。


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