最終話 選ばれ続ける世界で
神々の戦いが終わり、世界は静かに再生を始めていた。
世界樹は、完全にその機能を取り戻し、
枯れかけていた大地には緑が戻り、
各地の復興作業も、驚くほど順調に進められている。
それは奇跡ではない。
守られ、繋がれ、選ばれた“今”の積み重ねだった。
そして――
再び、オリンポス会議が開かれた。
その場で、エレニは正式に
雷の女神として迎え入れられた。
ざわめく神々の中、
ゼウスが重々しく口を開く。
「アレス」
名を呼ばれた瞬間、戦神は身じろぎした。
「お前は、私にとって――
オリュンポスに住む神々の中で、最も憎むべき存在だ」
会議場が静まり返る。
「争いと戦いが、常にお前の心を満たしている。
だが……それでも、お前は私の子だ」
ゼウスは、一瞬だけ目を伏せた。
「そして今回の混乱は、
ワシ自身の行いが招いたものでもある」
低い溜息。
「長く苦しむ姿を見るのは、耐えられぬ。
今回の件は深く反省し、
しばらくは大人しくしていろ」
アレスは唇を噛み、何も言わずに頭を下げた。
同様に、エニオも処分を言い渡される。
――アカデミーより、謹慎。
戦いを煽る神々は、
しばし表舞台から退くこととなった。
会議がひと段落したころ。
アテナが、静かに口を開く。
「父上。
今後は、レダ様とヘラ様だけを大切にしてください」
「……む」
ゼウスは腕を組み、唸る。
「そうはいってもだな。
イケてる神王を、女神や人間の女性たちが放っておかんのだ」
「……お父様?」
エレニの冷たい視線。
「わかった、わかった!!
もう何も言うな。今後は……慎むことにする!」
「ゼウス様の事は、私にお任せください!
いつでもどこでも、ご一緒致します!!」
レモンが胸を張って宣言する。
「ええぃ……神王も、息抜きが欲しい……」
「ゼウス様、何か言いましたか?」
「何も言っておらん!」
アテナとエレニは、顔を見合わせて笑った。
戦いの終わりに、
ようやく訪れた穏やかな時間。
オリンポスを離れ、
アカデミーの中庭で仲間たちが集まっていた。
「エレニ。
お前は、今後もアカデミーで学ぶのか?」
ストスの問いに、エレニは少し考える。
「学びたいことは、まだ沢山あります。
でも……この世界の、まだ知らない場所を見たい気もします」
「お前らしいな」
レイが、すかさず前に出た。
「今度こそ、連れてってよね!
冥界だって、まだ行ってないんだから!」
「冥界めっちゃ楽しいぞ」
ジーノが即答する。
「その割に、一番手を掛けられましたが」
リオの冷静な一言。
「それ言うなって!!」
笑い声が広がる。
「それなら、私たちも一緒に行きたい!」
マカリアが手を挙げ、メリノエを見る。
「……そうしたいところだけど、ね?」
視線の先にはディオ。
「そうだなー。
俺、アカデミー卒業したら聖騎士になる予定だし」
「え?」
ジーノが目を丸くする。
「ディオとメリノエって、いつの間に?」
「うそー!?
メリノエ、全然そんな話してなかったじゃん!」
「……」
メリノエは視線を逸らした。
「そうですよ。
てっきり、エレニ様とアイアス殿だけかと」
「ゲホッ、ゲホゲホッ!!」
アイアスが盛大に咳き込む。
「ちょっと、アイアス。落ち着いて」
「いや、リオが変なこと言うから……」
「え?変なことなの?」
「い、いや、そうではなくて……ゴホン」
アイアスは気を取り直す。
「俺は各国を回って、魔獣の動向を確認しに行く予定だ」
「それなら、一緒に行けるね!!」
レイが満面の笑みを浮かべる。
「え?それ、俺も入ってるのか?」
「当然でしょー!」
マカリアがジーノの腕を組む。
「……こんなにアカデミーから人が抜けて、大丈夫なんでしょうか」
リオが真顔で呟く。
「ははは。何を心配しておる」
ストスは豪快に笑った。
「お前たちが来る前から、アカデミーは機能しておる。
そして――」
優しく、言葉を続ける。
「いつでも、帰ってくればいい」
新たな旅立ち。
笑顔と、約束と、未来への一歩。
――だが。
その光の外側。
ひとつの影が、静かに残っていた。
「やはり……神々は、あてにならん……」
低く呟く声。
アルプは、物陰に身を潜め、
去っていく背中を見つめていた。
その瞳に宿るのは、諦めか、
それとも――次なる意志か。
世界は、救われた。
だが、“物語”はまだ続いていく。
選ばれ続ける“今”の中で。
活動報告にて後書きを載せるので、よければ一読して下さい。
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また、今後この作品の推敲の為、改稿があると思います。
大幅な変更の際は、活動報告にてお知らせいたします。
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