08話 世界樹の異変
あれから、更に年月が過ぎた。
鏡の中に映る私は、
もはや「女の子」というより「若い女性」と呼ぶにふさわしい姿になっていた。
翡翠のように澄んだ緑の瞳、
髪は艶やかで――グラデーションのかかったピンクベージュ。
(地毛でこの色は、我ながら驚きだわ。まるでお人形さんみたい……)
そんな感傷に浸る間もなく、私はキッチンに立つ。
(食材を集めて、魔法でチョイチョイっと……。
目玉焼きに、チーズを乗せて焼いたパンにスープ、
果物をそれぞれお皿に乗せて完成!
自分が、食べたことのある物や、
イメージ出来る料理は魔法で作れるのよね~。
前世で魔法が使えてたらワンオペ育児も楽勝だったのになぁ……)
ふと、懐かしい苦労を思い出しつつ、外で野良仕事をしている家族を呼ぶ。
「朝食できたよー!」
みんな、家に入り食卓に座る。
「いただきます!」
「エレニとリオの今日の予定は、どうなっているんだ?」
「今日も、冒険者ギルドに行って依頼受けるつもりだよ」
「そうか、昨日魔物討伐の依頼をやったんだが、
以前に比べてかなり魔物が増えてきてる。気をつけなさい」
「はーい」
「エレニ、お弁当この籠に詰めておいたから忘れないで持っていくのよ」
「うん」
「荷物は、私がお持ちしますね」
リオが頼もしく微笑む。
「ありがとう」
食後の片付けも魔法で瞬時に終わらせた。
「エレニ様、準備は出来ましたか?」
「うん、大丈夫! それじゃ、行こうか」
エレニは杖を頭上で円を描き、冒険者ギルドに転移した。
(一度訪れたところに、目印を付けると
転移魔法が使えるようになったんだよね~。
本当に、魔法って便利!!)
冒険者ギルドのドアの前に、到着した。
街についた途端、僅かだけど異臭がしている。
「ねぇ、リオ……なんか変な感じしない?」
「エレニ様も気づかれましたか?」
「上手く言えないけど、街全体がどんよりしてる……?」
「そうですね、僅かな腐敗臭を感じます」
私たちはドアを開ける。
今日も、依頼が貼られている掲示板の前に沢山の冒険者達が立っていた。
「最近、魔物討伐の依頼が多いな」
「しかも、BランクAランクなど強いやつ魔物討伐が増えてるよなぁ」
そんな会話に聞き耳立てつつ、掲示板を覗き込む。
確かに、危険なだけに魔物討伐の報酬も大きい。
「どの依頼にしようか……」
「あら、エレニ」
「アテナ先生」
「今のあなたなら、もう自分の思い描いたことが、
ほとんど魔法で解決できてるんじゃない?」
「そうですね」
「だいぶ成長したわね。 ただ今は、解毒や呪いなどの浄化魔法は無理そうね」
「え?」
「いま、原因を突き止めてるところなんだけど、
恐らくウルズの泉が関係していると思うわ」
「ウルズの泉……?」
「世界樹の根元にウルズの泉というのがあるんだけど、
その泉水は強力な浄化作用があって、
この世界の水、毒や呪いなども浄化したりする作用があるの。
私たちは、その泉から流れてくる水で生活しているから、
本来なら毒や呪いを解くことが出来るはずなんだけど、
今は、その浄化作用が弱くなっているのよ」
「泉の力が……? だから、街の空気まで淀んでいるんですか?」
「ええ。このままだと、飲み水さえ汚染されてしまうかもしれない。
魔物の凶暴化も、その影響である可能性が高いわ」
ウルズの泉かぁ……。
「エレニ様、ダメですよ」
「う……」
「ウルズの泉に行こうとか考えていませんでしたか?」
「ず、図星……」
「さすがに、二人だけで世界樹に向かうのは危険過ぎます」
「そうだよねぇ……」
「今は、今の私たちができることをしましょう」
後ろから、肩をポンッと叩かれる。
振り返ると、そこには背丈の伸びた、
精悍な顔つきの青年――ジーノが立っていた。
「よう、エレニ。ひさしぶりだな」
「ジーノ!」
「こんにちは、ジーノ」
「2人とも、依頼探しか?」
「うん。ただ、魔物討伐依頼ばかりで悩んでた」
「なら、俺を仲間に入れないか?」
「いいの?」
「俺も、依頼探しに来たけど、一人じゃきつそうだし……
かといって知らないやつらとパーティ組むのも気が引けてさ」
「ありがとう! 助かる!」
「3人なら、強くなくてもCランクで魔物の数が多い依頼がこなせそうですね」
「この、Cランクのモンスターウルフ討伐、七匹の依頼はどうかな?」
「エレニ様の魔法もあるので、いけそうですね」
「モンスターウルフは、リオが襲われた時に、エレニが倒したやつだな」
「そうですね。あの頃は私もまだ未熟でしたが、今では余裕で倒せます」
「決まりだな! 受付してくるぜ」
ジーノは、張り出してあった依頼を剥がして受付に行く。
「3人になるので、持ってる武器の確認や、
戦闘での立ち回りを相談してから行ったほうが良さそうですね」
「うん」
「受付してきたぜ!」
「リオの武器はレイピアだけど、ジーノは武器何を使ってるの?」
「オレは、ナイフと剣だ。
ナイフは投げたりできるが、投げた後の攻撃に剣を使ってる」
「そっか、私は防御魔法をみんなにかけてから、雷魔法で攻撃かな」
「オッケー!」
「かしこまりました」
「それじゃ、移動しようか。
一度、行ったことのある場所だから転移するね!」
杖が温かく手に吸い付く感触と共に、光の円が足元に広がった。
家族同然のリオ、そして信頼できる幼馴染のジーノ。
初めてのパーティ結成に高揚する胸を抑えながら、
私たちは戦いの地へと転移した。
読んでみて
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「この先、どうなるのっ……?」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。ゎーぃ!ゎーぃ!




