メリウェザー家のわがまま娘
よろしくお願いします。
メリウェザー家には、わがまま娘と評判のご令嬢がいる。
名をレウイシア。メリウェザー家特有のピンクがかったオレンジの髪色をしっかり受け継ぎ、緩いカーブを描く髪質は、ふんわりと優雅に広がり華やかで、小柄な体躯も手伝ってスープカップの妖精などと囁かれたりもする。
スープ=スモール……どこが、とはゲフンゲフン。
さて、このレウイシア。男ばかり五人続いた末にやっと授かった女児とあって、生まれた時はそれはもう大騒ぎだったらしい。ちなみに、一番上の長兄との年齢差は十七。少し頑張れば、ほぼわが子な心理状態である。
次兄とは十五、三兄とは十二、四兄とは十一、五兄とは五つ。
すぐ上の五兄とは、それなりによくある兄妹の範囲だが、次兄から四兄までは親戚のお兄さんな年齢差だ。実際、レウイシアが物心ついた頃には五兄以外は離れて暮らしていたので、会ったときの甘やかしっぷりは自分も似たような環境だった五兄ですら危ぶむくらいであった。
だが、そんな五兄もかわいい妹であるレウイシアには甘く、いつも妹を守るのだと気にかけ極力傍にいる始末。
両親は、年齢的にこれ以上子をもうけるのは難しいだろうの最後の最後に授かった待望の娘とあって蝶よ花よと溺愛するのは止めようもなく。
さて、そんな激甘環境で育った娘が思ったことを思ったままに口にするのは、まぁ……当たり前といったら当たり前というか……。
日差しが強ければ、「眩しいわね」と、目を細め日陰を所望し。暑い日が続けば、「少しは涼しい風が吹いたらよろしいのに」と、ボヤいて大地を湿らせ。
長雨が続けば、「外で遊べないじゃない」と、庭に散歩に出れないことを嘆いて自身に雨粒が掛からないようにさせ。
冬の寒さが厳しければ、「少しは加減をしなさいよね、寒すぎて指がかじかんでしまうわ」と、怒り出す始末。暖かい風を所望して、「何事も程々がいいのよ。冬の寒さも好きだもの」と庭の池に張った氷でスケートを楽しむ所業。
そんな彼女は、間違いなくメリウェザー家のわがまま娘であった。
そして、そんなわがまま娘にも年少期に決められた婚約者がいた。
レウイシアが望んだわけではない。レウイシアたちが暮らすモンティア王国、その王族であるブラキカリクスから打診があったのだ。
ようやく我が家にやってきた妖精を王家に嫁がせるなんてと難色を示したメリウェザー家であったが、コティレドン伯爵としてモンティア王国を支える務めを果たせと迫られれば放棄することはできない。泣く泣く王太子であるブラキカリクスの長男でレウイシアと二つ違いのペンデンス王子との婚約を認めることとなった。
ペンデンス七歳、レウイシア五歳の頃の出来事で、三歳辺りから疑い始めたレウイシアのわがままが我がままだと家族が確信した年でもある。
王家の対応は早かった。
そんなわけで。
わがまま娘は、わがままなまま。
貴族令嬢としてのマナーや貴族社会のルールは勿論、年の離れた兄たちがいる事で社会経済にも強く、三番目の兄が外交官になったこともあり、諸外国との繋がりが出来て王都の屋敷では滞在する兄の友人たちの外国語が飛び交うのが当たり前の環境。自然と多言語話者となったレウイシアの優位性は高い。
五歳から続くペンデンスとの婚約も良好で、ペンデンスが二十一になる直前あたりで挙式を行ったらどうかと話が詰められている。
レウイシアに、不満はない。お天気が良くて、花でも降ってくれれば幸せね。くらいのわがままを口にするくらいだ。
きっとその日は天気が良く、花もたくさん降るだろう。そうペンデンスは思っている。
婚約者との関係は良好。
レウイシアのわがままも絶好調。
今日も今日とて、気になったことを口にしてはわがままを貫いている。
しかし、そんなレウイシアに物申す者が現れた。
クレイトニア・シベリカ男爵令嬢である。
生まれてまもなく何者かによって誘拐され、行方不明となっていた彼女だが、娘を諦めきれなかった男爵夫妻が探し続け、十二歳の時に修道院で保護されているところを見つかったのだ。
幸いにも、読み書き算盤は修道女たちに教えてもらっており。礼儀も、時折行儀見習いとして貴族令嬢を預かる修道院であったが為によく身についていたという。
とはいえ、あくまで平民のそれ以上でしかないため、貴族社会で難なく生きられるようにと我が子を取り戻してから三年。みっちり貴族令嬢としての立ち振舞を覚えさせ、貴族階級や上流階級と呼ばれる一部の平民が通う学院に十五から通い始め今に至る。
そんな彼女がゆえに、レウイシアのわがままぶりを知らなかったのだろう。
「レウイシア様、どうしてあの様な酷いことをなさるのです!」
突然、庭園の小道を駆ける足音が響き、クレイトニアが息を切らして現れた。
昼食後のひととき、レウイシアと散歩を楽しんでいたペンデンスは、突如として現れた令嬢に静かに驚き、レウイシアを庇うように彼女の前に立つ。ペンデンスの動きに合わせ、彼のご学友という名目で傍に侍っていた護衛たちも動き、おいそれとレウイシアたちに近づけさせない人の壁ができた。
「何者だ!」
「あっ……」
一言、レウイシアに物申してやりたい。
そんな気概から真っ直ぐにレウイシアに向かって来たクレイトニアは、そこで王子殿下や護衛たちが目に入り足を止めた。
「ロ、ロアーシックス、クレイトニア・シベリカです」
ペンデンスたちが通う学院は、下級6年生、中級6年生、上級6年生の三学年ある。
クレイトニアはレウイシアと同じL6、ペンデンスはU6に身を置いていた。
「それで、シベリカ嬢は何用か」
「あっ、……その」
ペンデンスたちから一番遠い場所、クレイトニアに一番近い場所に立つ護衛兼側近である騎士見習いのルーカスが声を上げた。
最初の勢いは何処へやら、クレイトニアは思い立ったが吉日と猪突猛進が掛け合わさった自分の性格に反省しきりでペンデンスと彼の護衛たちに萎縮し頭を垂れるばかりだ。
「あの様な酷いこととは、何だ」
一向に頭を上げないクレイトニアに、ペンデンスはレウイシアに向かい一直線に駆け寄りながら叫んでいた文言を問う。
「ぅ……」
王族からの問いかけに無視を決め込むことは出来ず、おずおずといった具合にクレイトニアは顔を上げた。
「わ……わたしたちの花壇がレウイシア様によって荒らされたのです」
「なんだと?」
「まさか」
「そのような」
「……」
クレイトニアの発言にペンデンスのみならず、護衛たちも戸惑う。
「クレイトニア・シベリカ。あなたは確か、西塔の修道院から引き揚げられたシベリカ男爵の娘ね?」
レウイシアの傍らに侍っていた伯爵令嬢ソフィアがクレイトニアに声を掛けた。彼女も将来は、レウイシアの侍女として王宮に上がることが決まっている。
「はい。そうです」
答えながら、クレイトニアは顔面蒼白だ。
自分の考えなしの行動が、ようやく会えた父や母、ひいては親類縁者まで累が及ぶのではと汗が止まらない。
「シベリカ男爵って確か」
「西塔の娘?」
「ほら、あの」
「攫われた子ね」
「治癒の力があるとか」
「綺麗な子だわ」
なんの騒ぎかと集まってきた生徒たちは興味津々で、しかし、少しばかり遠巻きで見守るばかりで口も手も出さない。
「わたしたちの花壇とは?」
野次馬たちを一瞥し、ソフィアは視線をクレイトニアに戻した。
「そ、そこにあるバラの生け垣のむこうにある花壇です。学院の許可を得て、薬効のある花を植えて育てていました」
「ほう」
感心した様な声がペンデンスの口から漏れる。クレイトニアの試みに興味が惹かれたようだった。
貴族女性の嗜みとして、薬草園の世話がある。過去に猛威を振るった流行病から学び、どの貴族でも自分の邸に庭があるなら規模の大小は問わず薬草園を持つ。
「少し、毛色の違う花が咲いていると思ったら、あなたたちだったのね」
合点がいったとソフィアは頷いた。
西塔の修道院の薬草園は、モンティア王国のみならず周辺国にも名が知られるほど有名であった。
そこで育ったクレイトニアに、栽培が難しい珍しい薬効を持つ植物の育て方など直接手ほどきして欲しいと請う者が現れても不思議ではなかった。実際、現れたのだろう。
見る限り、貴族然として育った者に比べ、どうにもクレイトニアは正直者に見えるとソフィアは僅かだが困ったように眉を寄せた。
「それで、どうしてレウイシア様が花壇を荒らさなければならないの?」
「それは……」
そもそも、レウイシアが学院にいる間は常に誰かが付き従っている。一人になるのは、パウダールームに消えた時くらいだろう。
どんな行き違いがあったのかと、困惑するソフィアの思考は奇妙な形で裏切られた。
「昨日、花壇の前でレウイシア様が『たくさんは要らない』と、仰有っていたんです」
「ん? そうなのかい?」
ペンデンスは、肩から振り返って自分の後方に控えていたレウイシアを見る。彼女は、いつもと変わらぬ穏やかな笑みを浮かべていたが、見るものが見れば、いまいち状況がわかってなさそうな顔だというのは一目瞭然だった。
「レウイシア」
「はい、殿下」
「昨日、この辺りを散歩した?」
方向性を変えて問い直す。
なんとなくだが、レウイシアのわがままが炸裂したのではないかと確信めいたものがある。
「はい。昨日はソフィアがおりませんでしたから、クラウディアと一緒に歩きましたわ」
「そうなんだね。では、昨日歩いた道をもう一度辿ってみようか」
「はい、殿下」
おっとりとにこやかに返事を返すレウイシアを見て、クレイトニアは首を傾げる。彼女は有名なわがまま令嬢なのではなかったのか。
それとも婚約者の前では何十枚も猫を被るとか?
クレイトニアだって修道院に客がやってきた時はお行儀よく猫を被った。人はそれなりに外向けの顔というものを持っているものだと思う。けれど、どうにも……。
何かが違うような……。
そんな気持ちで、「君たちの花壇まで案内を頼むよ」と、ペンデンスに言われるまま自分たちの花壇まで彼らを連れて行った。
勿論、ペンデンス御一行の後ろからゾロゾロと遠巻きな見物人たちも付いてくる。
なんだかなぁ……と、天を仰ぎたい気持ちになった。
「まぁ、ひどい」
「これは、なかなか」
花壇を前にして、最初に声を上げたのはソフィアだ。次いで、ルーカスと同じ騎士見習いのクンツェが思わずと言った具合に零した。
クレイトニアが言った通り、彼女が仲間とともに世話を焼く花壇は見るも無残な姿に変えられていた。
所々、鋭い何かで掘り返したような狭く深い穴が地面に空いていて、数の多さに執念深さすら感じる。救いがあるとしたら、植えられている花に被害がさほど無いところか。
「確かに、何かに荒らされたようだね」
実際の光景を目の当たりにすれば、犯人が誰かは置いておいて被害の実状は把握できる。
「ねぇ、レウイシア。昨日、ここを通った時、何か変わったことはなかったかい?」
「変わったこと、ですか?」
「うん。いつもと違う何かだよ」
「いつもと違う、なにか……」
頬に手を当て、小さく息を吐いて考えるレウイシアの姿はペンデンスから見るとなんとも愛らしい。ただ、本人は真剣なので妙な横やりは入れず、思い出すまで見守るのみだ。
「ああ、そういえば」
パッと花開いたかのような明るい表情になったレウイシアは、ニコニコと上機嫌な笑みを浮かべてペンデンスを見上げた。
「コウが出ましたの」
「コウ?」
「はい。コウです」
さて。レウイシアの思考を読み取るぞとペンデンス含め、周囲の取り巻きたちも『コウ』が何かを考える。
「丁度、この前を通りがかりましたらコウがわたくしの前を横切りまして」
「ふむ」
「驚いて足を止め、花壇をみましたら、何頭も飛び交っているではありませんか」
「それで?」
これはレウイシアのわがまま案件だ。と、ペンデンスは察しながら続きを促す。
「コウは、縄張り意識が強く、同じ場所に複数棲息するのが難しいと聞きます」
「うん」
「ですので、たくさんは要らないと」
レウイシアのわがまま案件が確定した。
「そう、願ったのかい?」
「はい。命あるものですから、全てを奪うのもどうかと思いはしたのですが」
「うん」
「羽がありますから、飛んできますでしょ」
「そうだね」
レウイシアの言うコウの正体に行き着いたものは、納得と諦めの混ざった複雑な表情となり。未だたどり着けていないものは、ぽかんとしたままだ。
「あの……、やはり犯人はレウイシア様で?」
おっとり、ゆったりとした高貴な方々の会話に水を差すのもと思いつつ、クレイトニアは責任の所在を明らかにしてほしいと口を挟む。
「そうだね。犯人はレウイシア……かな」
眉を下げるペンデンスにクレイトニアの頬が少し熱くなった。気さくというか、分け隔てない態度に好感が持てる。
「ルーカス」
「はい」
「レウイシアのわがまま案件だ。国中と、もしかしたら隣接する国の一部にも影響が出ているかもしれない。直ぐに各関係各所に連絡を。レウイシアが蝗害を懸念し、蝗を根絶やしにしたと」
――――えっ?!
ペンデンスの言葉にクレイトニアを含め、遠巻きにしていた見物人たちに衝撃が走った。
「給わりました」
しかし、王子殿下を取り囲む人間に動揺は見られない。
ペンデンスから命を受けたルーカスは即座に駆け出し、自身も領地を持つ貴族の子息なのだろうか。同じようにルーカスの背を追って駆けていく生徒がいた。
「あの……」
「ああ、すまないね」
何が何やらの急展開についていけないクレイトニアに向き直ったペンデンスが気遣うていで謝る。なんだか爽やかな風が吹いてきそうな微笑みにトキメキを覚えなくもないが同時に胡散臭さも感じた。修道院で修道女たちからしっかりみっちり、ロクデナシについて教育を受けたクレイトニアの危機管理能力は高い。
「君たちの花壇に、蝗がいたようだ」
「ロクタ……バッタの変異種ですね?」
「ああ。数頭ならレウイシアも見逃してくれただろうが、気になる数が飛び交っていたのだろう。実際、掘り返された幼虫の数を見れば明らか。蝗害が起こる事を懸念して始末することにしたようだ」
それが何でどうすればこのような状態になるのか。理解が追いつかないとクレイトニアの表情から汲み取ったペンデンスは、花壇の方へ顔を向けた。
「ご覧」
「えっ?」
ペンデンスの視線の先を追うと、小さな竜巻が起こり。まるでドリルのように土に穴を開けて地中から何かを巻き上げる。だが、巻き上げられたそれは、巻き上がっていく途中で霞と消え、モノが消えれば竜巻もまた解けて消える。
「い……今のは……」
きっとアレは鎌鼬。
顔を青くするクレイトニアに、彼女が理解してくれたのだとペンデンスは満足気に笑った。
「レウイシアのわがままだね」
いや、わがままで土の中にいるバッタの幼虫が竜巻で巻き上げられて粉微塵に粉砕されるとか、どんな恐ろしい現象ですか?!
まだまだ、貴族となって日が浅いクレイトニアは、のんびりとした笑みを浮かべ、ペンデンスの傍らに寄り添うレウイシアの噂されるわがままが恐怖の大魔王レベルであるとこの時初めて知ったのであった。
レウイシア・メリウェザーは、わがままである。
強すぎる日差しが続けば、植物が弱り人々に病が広がるので文句を言って空を曇らせる。
暑すぎる日々が続けば、大地が干上がり作物は枯れて実りを得られなくなるので、そうなる前に文句を言って雨を求める。
雨は大地を潤すが、降り過ぎる雨は地盤を滑らせ災害を起こすかもしれない。そうなる前に雨は止まなければならない。これは命令である。
厳しすぎる冬の寒さは、人の命を縮ませる。そうなってはならないと、夜眠り、朝目覚めるだけの寒さに留まらせる。暖かくなりすぎないのは、レウイシアがスケートを楽しみたいから。
神と精霊は同義語で、世界には隈無く溢れるほどに精霊=神が存在する。という考えがこの国の信仰だ。
雨女、雨男。晴れ女、晴れ男。そんな迷信もこの国では迷信でなく現実であった。
とはいえ、神や精霊は強く人の世に力を貸すことはなく、ささやかに助力する存在で、人々は物事がうまくいったり、良いことが起これば神や精霊に感謝する。
そんな関係にあって、メリウェザー家は、天気の精霊に愛された一族だった。加護の強さはそれぞれだが、当主であるコティレドン伯爵が出かける時は常に晴れ。それに対して、彼の四番目の息子は、常に雨。楽しみにすればするほど柔らかで、ほのかに暖かい雨が降る。
レウイシアが生まれた夜は大嵐で、空も大地も荒れ狂っていた。それが彼女が産声を上げた途端、それまでが嘘のように雲は晴れ、星が瞬き、大地はみずみずしく、海は凪いで煌めき、月は優しく世界を照らした。
そんなわけで。
過去の経験則から、なんとなくこの子は大物なのでは? という疑念を抱いた。
だが、それ以上に念願の女の子に加護の強さは些細なことと流され忘れたことも事実。
そうして迎えた三歳。
長雨が続き、麦が病気になるという兄たちの会話を聞いたレウイシアが言ったのだ。
「雨ばかりイヤ。お外で遊びたい」
途端に晴れた。
晴れてしまった。
ああ、これはダメなやつだとコティレドン伯爵は天を仰いだ。
そうして五歳。
まんまと王族と婚約を結ばされ、悔しがるコティレドン伯爵を尻目に王子ペンデンスは一目見てレウイシアに恋をした。
恋をしてしまった。
「ウエディングドレスをきたレウイシアは、きっといつも以上に綺麗なんだろうなぁ」
二人でお茶を飲みながら、ガゼポで寛ぐ。
「お天気が良くて、花でも降ってくれれば幸せね」
レウイシアが五歳、ペンデンスが七歳の頃から変わらない受け答えに相好を崩す。
「そうだね。きっと皆、幸せな気持ちになるね」
ペンデンスは、きっとその日は天気が良く、花もたくさん降るだろうと思っている。
だって、レウイシアはわがままだから。
「でも、その日いちばん幸せなのは僕だと思うんだ」
色とりどりの花に彩られた花嫁姿のレウイシアを想像するだけで倒れそうだ。
「……いいえ」
うっとりとした顔を見せるペンデンスをちらりと見たレウイシアは、きゅっと唇を結んで澄まし顔をつくる。
「きっとその日は、わたくしがいちばん幸せですわ」
驚きに目を丸めたペンデンスは、
「えぇ……、もう。レウイシアはわがままだなぁ」
耳や首の裏まで赤くし、身悶えたいのを必死にこらえてプルプルする。
そんな婚約者を見て、レウイシアは優雅に微笑むのだ。
「ご安心くださいませ。そんな幸せなわたくしが、わたくしのいちばんに殿下を幸せにしてさしあげますわ」
ああ、本当に。
レウイシア・メリウェザーは、わがままである。
お時間頂きありがとうございました。




