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第六羽 微睡の夢と美月少年の五月二十日

続きです!


修正

主人公達を一年生、先輩を二年生と

表記されている場所があり修正しました……。

正しくは 主人公達は二年生、先輩は三年生です。

申し訳ありません……。



「みずきちゃん!」


 ——懐かしい声が聞こえてきた。

 この声の主は、一時期一緒に暮らしていた女の子だった。


「みずきちゃーん! 柔道の大会、どうだったの?」


 柔道……ああ、そうだ! 僕はたしか昨日、小学三年生の部の県大会で、それなりに良い成績を残せたんだ……!


 昨日……小学校? これって夢なのかな?


「うん、良い成績だったよ」


「……? そのわりに、あんまり嬉しそうじゃないね?」


「え? そう見える?」


 そうだった。この時——なぜか燕には、僕が柔道を心から楽しんでやっているわけじゃないことを見抜かれていたんだ。そして……。


「ねぇ、みずきちゃん! 良かったらカードゲームの相手してくれない? この辺だと、みんなサモザやってなくて……誰も対戦してくれなくてさ」


「カードゲーム?」


「うん! 戦術性があって楽しいんだよ!」


 ああ……そうだった。このとき初めて僕はサモザをやったんだ。


「まず、手札が六枚になるようにデッキから引いてね! デッキは“ライブラリー”って呼ぶんだけど」


「う……うん! 引いたよ!」


「そしたら、今回はルール説明だから、私が先攻ね! 進めていくよー!」


 そう言って、燕はゲームを進めていった。


「まずは、ライブラリーからカードを一枚ドロー! 次にマナフェイズ! ライブラリーの上から一枚をマナゾーンに置きます! 次はアクティブフェイズ! 横向きになってる行動完了のカードを縦向きに戻すんだけど……今は最初のターンだからスキップ!」


「へぇ〜、こんな感じで進めていくんだね!」


「うん! 次はカードの使い方!」


 そう言うと、燕はマナゾーンにあるカードを一枚、横向きにした。


「マナゾーンのカードを横向きにすることで、そのコスト分だけカードが使えるの。召喚獣なら召喚レベル、スペルカードならマナの枚数分が必要!」


「そして私は今! 一コスト分のマナを横向きにして——手札から《四季見獣・冬に訪れるもの・つぐみ》を召喚!」


 ※※※


「——美月!」


 誰かの声が聞こえる……晶の声だ!

 僕はその声で目を覚ました。


「晶? あれ……?」


「美月……今日はどうしたんだ? 部活の時間、ずっと寝てたけど?」


 僕が席から立ち上がると、部室に福田さんが入ってきた。


「やっほー晶! 帰ろ〜!」


「紅江……俺、まだ部活中なんだけど?」


「だって誰とも対戦してないじゃん?」


「ちょうど美月と対戦しようとしてたところなんだよ」


 福田さんと晶は本当に仲が良さそうだ。


「あと、美月……」


「ん? 福田さん、どうかしたの?」


「えっと……あの女、鳥羽に……一応、謝ってきた。そしたらね……」


 福田さんの話に、晶は驚いた表情を見せた。


「紅江! 鳥羽に何かされたとかじゃないよな!?」


「うん、ていうか……案外、美月の言ってた通りの子だったかも」


 話によると、福田さんが鳥羽さんに謝りに行ったら、「絡まれ慣れてるから気にしてないよ」って言われたらしい。そしてちゃんと謝罪した福田さんのことを「カッコいい」とまで言ったそうだ。

 結局、福田さんも自分の勘違いで手を出してしまったことを、ずっと気にしていたみたいだった。


「ふふ、福田さんって流石だね?」


「ま、私が悪かったんだから……当然だよ」


「……そうだな。俺もそのうち謝らないとな……」


「鳥羽さんは普通に話が通じる人だと思うから、今度ちゃんと謝罪しなよ? 晶」


 しばらくして、僕は部室を出た。

 晶と福田さんとは風紀委員会の集まりがあるため、ここで別れる。


 なぜか僕は、一年生のときに風紀委員に立候補され、そのまま委員の一員になっていた。今日はその定例の集まりがあり、会議室へ向かう。


 会議室で話し合いが始まってしばらくすると、遅れてやって来た三年生の先輩が僕に話しかけてきた。


「月元くん。君、たしか——あの二年の鳥羽さんと話したりするそうだよね?」


「はい、話しますけど……鳥羽さんが何か?」


 話を聞くと、どうやら鳥羽さんが屋上にずっといて、なかなか下校してくれないらしい。

 誰も声をかけられない雰囲気があるようで、僕に代わりにお願いしたいとのことだった。


(鳥羽さんが……この時間まで学校にいるなんて珍しいな)


 なんだかんだで、この一週間ほどは鳥羽さんもちゃんと学校に来ている。とはいえ、途中で抜け出したりすることも多く、こんなふうに放課後の時間まで学校に残っているのは確かに珍しかった。


 屋上に向かうと、そこには確かに鳥羽さんの後ろ姿があった。


「鳥羽さん?」


「あれ、美月ちゃんじゃん! こんな時間まで残ってたんだ〜」


「うん、まぁね?」


 僕は、風紀委員の用事で来たことを伝える。


「あー、つまり『早く帰れ』ってことね?」


「うん、まぁそういうこと。暗くなってから女の子が一人で帰るのは危ないでしょ?」


「えー? 私の話、知ってるでしょ?」


「あー、高校生をコテンパンにしたとかいう話? それでもさ、女の子が一人で暗くなってから帰るのはやっぱり危ないよ」


 そう話すと、それまで夕焼けを眺めていた鳥羽さんが、僕の方を向いた。


「美月ちゃんって……モテるでしょ?」


「は?」


「私みたいなめんどくさい奴にだって、そうやって声かけてくれる男子がモテないわけないでしょーが」


「鳥羽さんは、別にめんどくさい人じゃないよ?」


「え……?」


「人の話をちゃんと聞ける人は、めんどくさくなんかないよ。ほんとにめんどくさい人って、最初から人の話なんて聞かないから。

 鳥羽さんは注意したらちゃんとやめるし、ちゃんと話も聞いてくれるでしょ?」


「そっかぁ……」


 鳥羽さんはそう言って、僕の近くまで歩いてきた。


「じゃあさ、美月ちゃんが手を繋いで一緒に下校してくれるなら〜すぐに帰ってあげるよ〜?」


 この悪戯っぽい笑みは、明らかにふざけているのだろうけど——。


「うん、いいよ? 女の子が一人で帰るのはやっぱり危ないし」


 僕は右手を差し出し、鳥羽さんの左手をそっと握る。

 すると彼女は、まさか本当に僕がそうすると思ってなかったのか、「えぇ……?」と目を丸くしていた。

変な時間の投稿になってしまいましたが……

今回も読んでくださり、ありがとうございます♪

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