入学式
何処まで続く空、雲一つない快晴。今日は、高等部の入学式だ。オリエンテーションでの結果も発表され、晴れて俺は【最下位のクズで何も出来ない男】という称号を手に入れた。普通の人間なら、そんな称号を手に入れた瞬間、死にたいとか、もうダメだ、生きていけないなど思うだろう。
学園の校門前で俺は、
『しっゃーーー!やったぞ俺!実に素晴らしいぞ俺!見てるか楓、俺は最強の称号を手に入れ、晴れてこの学園の生徒になったぞ!しっゃーーーー!』
当然、楓は見ていない。今頃、家で鍛錬をしているからだ。楓の中等部は、この後数日後に行われる。もちろん、保護者として、兄として行くつもりだ!
そんな風に、真斗が思い叫んでいると周りの登校中の生徒たちは、【なんだあいつ!?頭がおかしいのか?】【うわぁ、キモイ。関わらない様にしないと、】【クソみたいな称号を得たのに、あいつ喜んでるぞ!自分が何て言われてるのか知ってるのか?】など様々な残念な会話が聞こえてくる。
そして俺は、ルンルン気分で教室入る!
勢いよくドアを開け、そして叫ぶ!
『おはようみんな!今日もいい天気!みんなもより良い学園生活が送れる様、日々努力しようでは無いか!フッハッハッハッハッ!』
クラス一同、『・・・・・・・・・。』
もちろん、真斗に声をかける者などいない。
誰しもが、あいつとは関わってはダメなのだ。っと思っているからだ。もちろん、そんな事と気にする真斗ではない。
真斗は、自分の席につき、ホームルームの準備をする。
すると、一人の男子生徒が真斗に声をかける。
『よう、クズノ瀬!俺は佐藤幸一って言うんだ!よろしくなっ!』
金髪でロン毛、耳にはピアスが何個も開いている、いかにもチンピラって感じの男だ。
『おはよう、佐藤君!これからよろしくね!』
そう笑顔で返す真斗を見て佐藤は、若干の苛つきを覚えて続けてこう言う、
『良かったな、クズノ瀬!今日からお前を俺の子分にしてやる!光栄に思え!何てったって俺の家は、この王都じゃ誰もが知っている佐藤財閥の一人息子なんだからなっ!お前の、おれに対する貢献次第では、学園卒業後に俺の会社で雇ってやる。(死ぬまでこき使うがなっ)』
真斗は、佐藤の家のことなど知らない。楓と暮らすのに必要な情報以外は興味が無いからだ。しかし、ここはあえてのかって行こうと真斗は考える。
『えっ!?ほんと!?あの佐藤財閥の一人息子だったの?す、すごーい!』
全然、すごいと思っていない真斗であった。
親の権力を使ってやりたい放題やっている佐藤は、真斗と同じくらいに周りから煙たがられている。悪事に手を染め、やりたい放題。気にいる女子が居れば、権力と暴力使って強引に自分の女にし、正義感の強い人間が居れば、子分達を使ってボコボコにして、盗みはもちろんの事、子供にさえ手を出す始末どうしようもない、クズなのである。
いつも佐藤の周りには取り巻きが何人も居る。そいつらは、佐藤の権力と金目当てに、自ら進んで子分になった者達。
『なぁ、クズノ瀬。早速なんだが、今日の放課後暇か?ちょっと街パトロールに行こうとしてるのだが・・・・・。』
もちろん、普段ならそんな余裕はない。何せ真斗は楓といる時間を物凄く大切にしているからだ。Numbersの要請以外は楓といつも居るようにしている。しかし、
『今日の放課後?うーん、平気だよ!何の予定もない。』
実は、王都からNumbersに要請があり、佐藤財閥の一人息子が今年から高等部にはいり、このまま佐藤の悪態が続くと学園の信用問題になるからどうにかしろと言う事だ。そして、その任務を任されたのが真斗なのである。その為、貴重な楓との時間を割いてまで佐藤の身辺調査をする事にした。
本当なら、すぐにでもボコボコにして終わらせたいのだが、なるべく穏便にとNumbers本部から言われている。
『じゃ、放課後校門の前で落ち合おう。またなっ!』と言って佐藤は真斗の前から離れていく。
その話しを隣で聞いていた夜桜が、チラッと真斗の方を見ると、真斗は去り行く佐藤背中に中指を立てて小さな声で、
『死ね、コラッ』っと言っているのを見る。その姿を見て、夜桜が【クスッと】笑って、続けて『大変ねっ』っと小さく真斗に向けて話した。
それを聞いた、真斗が瞬時に反応し、
『えっ!?夜桜さん今、俺に話しかけた?』と言うと夜桜
は、
『・・・・・・・・・。』黙りを決める。
『今、絶対に俺に言ったよねぇ?絶対言った!間違いなく聞こえた!』と真斗は言うが、夜桜はシカトする。
『えぇ!?また無視?無視しないでよ!俺何にも悪い事してないよ』
無視を続ける夜桜に対して真斗はしょんぼりするのであった。その後、無事に入学式も終わり、生徒代表の夜桜のスピーチ大盛況で終わり、放課後を迎えるのであった。