オリエンテーション
この世界は、魔物が蔓延る世界である。故に魔物と人類の争いが幾度となく繰り広げてられている。そんな世界で、人類は対魔物に対抗する手段としてイリュージョンウェポン(幻想武器)を神から授かるのであった。しかしそれは成人になるまでの子供たちのみ授かる事許されており、成人を迎えた者は自然と使えなくなる。マナという能力により創り出され、各々が創造する物一つだけ与えられる唯一の対魔物に特化した武器である。全ての子供が創り出されると言うわけでもなく、何かしらの力が働いて創り出されるもの。その何かしらの力と言うものは未だに解明出来ていない。そんな中で今日もまた一人の少年が理不尽なこの世界で必死に生きているのであった。
足早に学園に着くと、オリエンテーションに参加する新入生でごった返している。各々掲示板に貼られているクラス分けの紙を見ている。
今年の新入生はざっと二百人と言ったところだ。ひとクラス四十人の五クラスに分かれており、真斗はBクラスだった。
教室に着いた真斗は、早速自分の席を確認して席に着く。程なくして、隣に一人の女子が席に着く。銀髪でストレートで楓より少し長い腰の上まであろう髪の毛している女子。一際目立つ美少女で、クラスの男子全員の視線はその美少女に向いている。
その中で、いくつかの視線もとい敵意剥き出しの視線を感じる。俺の席は何故か窓際の一番後ろの席で、角にあたるところだ。その右側に例の美少女がいる。
俺がこの席なのは理由がある。担任の教員は、俺がNumbersだった事を知っている。そして、何があっても直ぐに外を確認出来る位置にしてくれとお願いしたのだ。
そして、その美少女が真斗に対して
『ごきげんよう、わたくしの名前は夜桜枯葉、以後お見知り置きを!』
(ごぎげんよう?わたくし?こいつはいつの時代の奴だ?貴族制度など遥か昔に無くなっているぞ)
『あぁ。俺の名前は一ノ瀬真斗だ。これからよろしく!』
そう簡単に言うと、夜桜は笑顔で手を振る。
死にたい。周りの敵意剥き出しの視線が痛すぎて。
チャイムがなり、一通り自己紹介を終えると訓練所であろう場所に移動して、生徒の実力を測る為に実技の試験が行われる。ここからは、出席番号順に試験が行われる分けだが、俺にはとある計画がある。
その名も、
《クラスで目立たない位置につけ、ボッチでこの三年間やり過ごす作戦》
完璧だ、この作戦は!クラスでボッチになって、モブになる。周りと関わると色々面倒事に巻き込まれ、楓と居る時間が減るからだ!
実に我ながら完璧とうんうんと頷いて居ると名前を呼ばれる。
『次、一ノ瀬』
『はーい!』
わざとらしくやる気に満ち溢れているかの如く声を上げる。
正直、こんな生ぬるい実技やりたくは無いのだけれども、こればかりはしょうがない。
(さて、適当にやるか・・・・。えー、何々各自のイリュージョンウェポンであの的に攻撃を当てる?そんな事で良いのか?楽勝じゃないか!!まぁ、本気でやるつもりはない。
出来るだけ弱く見せないと)
『それでは始め!』
試験官の声と同時にまずはイリュージョンウェポンを構築する。
(出来るだけ遅く練らないと。)
そう思いながら叫ぶ。
『イリュージョンウェポン』
物凄い遅い速度で構築していく。
(何だこれ!!物凄く難しいぞ!遅く構築するのに、こんなにも集中しないといけないなんて)
俺が、イリュージョンウェポンを構築してる最中に、周りからは物凄く多くの罵声が飛び交う。
『何やってんだ!おせーぞ!』『イリュージョンウェポンも構築出来ねーのか』『中等部より遅いんじゃねーか?もう一回、中等部からやり直してこいよ』など様々である。
中には
『あははははっ!あいつまだ出来ねーぞ!クズだ!クズ!』
『あいつの名前は、今日からクズノ瀬だ!』
『いっぺん死んで出直して来い、クズやろう』など物凄く泣きそうになる罵声もあげられる。
(あー。これ、ここに楓が居たらいつぞやのゴブリン時みたく、死体山で溢れかえるんだろうな。とりあえず、この学年で上位五番目位までは即死だろうなぁ。)
きっと楓はお兄ちゃん大好きっ子だからこう言うんだろうな?
(はぁ?何なの?その人の形をしたゴミクズどもは?馬鹿なんですか?頭のネジが何本も足りないんですか?誰のおかげで、今まで安心して暮らせてこれたと思ってるんですか?実力で、お兄ちゃんの足の爪の垢にも及ば無いクズどもが。全員殺しても良いですか?良いですよね?はい、全員死刑!一万回死んでお詫びしなさい。お兄ちゃんが道を歩く時は、全員端っこに避けて土下座しながら、どうぞお通り下さい、お兄ちゃん様と言うよう教育してあげますよ)と。
間違いなく絶対に言うな。
そして、20秒ほどかけてイリュージョンウェポン構築させ、いよいよ的に向かって撃つわけなのだが、どうしたものか下手に外し過ぎても怪しまれるし・・・・。
ん?隣で教官やってるのはNo.10の近藤先輩じゃないか!
俺は直ぐ様、Numbersから支給されてるインカムで近藤先輩に繋いだ!一通り、説明を終えたのだが、
『いやいや、待てよ!この状況で真斗の弾を避けるだと?無理に決まっているだろ!俺を殺す気か?』
『いや、最低マナでうちますので簡単に避けられます。精々、中等部の子がボールを全力で投げるぐらいの速度なので。お願いします。助けて下さい。』
そー言うと、近藤先輩は諦めたように承諾する。
『行きます!』
俺がそう言うと、近藤先輩と目が合い近藤先輩の方に向けて銃を撃つ!案の定、近藤先輩は軽々しく避けてくれた。
(ありがとう先輩。今度ご飯奢ります。)
と心から思う。
すると周りは、
『がはははははっ!腹痛ぇ!あんまり笑わすなよ、クズノ瀬!』
『どこ狙ってんだ!人を殺す気か!』
『しっかし、おせー弾だなぁ!そんな亀でも当たらねーぞ!』
『あははははははははっ』男女構わず笑いが起こる。
そう、これでいいんだ!これで!こうすれば、俺はモブになれる。後でメッチャ楓で怒られそうだけど!
そして、実技もすべての生徒が終わり、その後行われた筆記試験も数問だけ解いて試験は終わる。そして俺は隣に居るもはや学年なマドンナ的存在の夜桜に声をかける。
夜桜と言えば、間違いなく今年の新入生のルーキーだ!実技試験は完璧(イリュージョンウェポンは大剣だったなぁ。
中々の筋はある。恐らく、今の楓よりは強いだろ。)
『お疲れ様、夜桜さん!いやー、すごかったね夜桜さんの実技の試験。思わず見惚れちゃったよ』と言ったのだが・・・・。
『・・・・・・・・・。』
(あれ?シカトされてる)
『夜桜さん?どうかした?』
『・・・・・・・・キモッ。』
(えっ?)
『これから先、私に声をかけ無いでもらえるかしら?クズノ瀬君!クズがうつるか、こっちも見ないで、マジでキモイから』
(うわぁ、メッチャ嫌われた。ショックで立ち直れないよこれ。)
『はい。わかりました。』
こうして、無事?オリエンテーションが終わり楓の待つ家に帰って来て、今日の出来事の話しをしたのだけれども。予想以上に、楓がキレている。
『はぁ?何なの?その人の形をしたゴミクズどもは?馬鹿なんですか?頭のネジが何本も足りないんですか?誰のおかげで、今まで安心して暮らせてこれたと思ってるんですか?お兄ちゃんの足の爪の垢にも及ば無いクズどもが。全員殺しても良いですか?良いですよね?はい、全員死刑!一万回死んでお詫びしなさい。お兄ちゃんが道を歩く時は、全員端っこに避けて土下座しながら、どうぞお通り下さい、お兄ちゃん様と言うよう教育してあげますよ』ここまでは、予想なのだけれども先がある。
夜桜に対しての事だ・・・・。
『それに、何なのその夜桜って女は?お兄ちゃんがキモイ?てめーの面を鏡で一億回みてからものを言えって!!おめーの顔のがよっぽどキモ過ぎだろ!絶対に許さない。楓は怒った!今から、その夜桜って女の家に行って、その女を整形しても外を歩けなくなるぐらいまでボコボコにして、その後全裸にしてデカデカと名前を書いて学園の校庭の真ん中で十字架に貼り付けの刑だわ!』
(いやいや、それはやり過ぎでしょ。お兄ちゃんとしては嬉しいけど)
『いや、楓ちゃん?』
『なーに?私の大好きなお兄ちゃん!』
『多分だけど、今の楓じゃ夜桜さんには勝てないかなぁって、お兄ちゃんは思うぞ。』
『そんなのやってみなくちゃわからない。』
すごく冷たい口調で楓が言った。
『まぁまぁ。楓落ち着いて。お兄ちゃんは平気だから。楓が怒ってくれるのは嬉しいけど楓にもしもの事があったらお兄ちゃん泣いちゃうよ?』
『それはダメ・・・・・。お兄ちゃんは泣かせない』
急にしょんぼりする楓を抱きしめて頭を撫でる
『ありがとうな、楓。でも、本当に楓に何かあったら、楓の両親に顔向け出来ないよ。天国に居る二人だって悲しむよ?お兄ちゃんは大丈夫だから。』
『うん、ごめん。お兄ちゃん、わかった。』
『そうかそうか。わかってくれたか、楓!よしよし』
『でもね、その夜桜って女だけは殺す。何が何でも殺す。』
(全然わかってねーけど、この子!頭のネジ吹っ飛んじゃったよ。)
『あはははは・・・・・。ご飯にしよう。』
(あー、もっと上手く立ち回れば良かった。絶対に楓と夜桜さんは合わせたらダメだ)と誓う真斗であった