「よし、行くか!」
遂に高砂の退院が決まる。その事で、どんな顔をして高砂の家族に会えばいいかわからない吉沢。高砂の家へと着くと吉沢は立ち止まってしまう。そんな背中を押したのは高砂だ。高砂から勇気をもらった吉沢は意を決して玄関を叩く。そこに現れたのは・・・・・・・。
【高砂の居る病室にて】
更に時は立ち、1週間が過ぎた。そんなある日の事、
「良かったな百合、今日で退院だってさ!この病室ともおさらばだ。これでやっと皐月や柚子に会えるな!」
高砂が入院して2週間の間、高砂は妹達と会っていない。高砂の当時の姿を見たら、今度は妹達の精神がおかしくなってしまうからと、母親以外は面会を許していなかった。そして、ようやく妹達に合わせても平気だろうと病院側も認め退院が認められた。
今までは、無表情だった高砂もたまにではあるが少しだけ笑顔を見せる時があるのだ。そして、荷造りも終え高砂の家へと向かう吉沢達。そこには夜桜の姿もあった。以前、吉沢達は散歩の途中で絡まれていたため、今回は最初からついていくと夜桜自らお願いしたのだ。
「紅葉さんありがとうございます。では、行きましょう。」
夜桜は、吉沢には弐式のエグい条件の事は話していない。それこそ、今度は吉沢が病んでしまうからと皆内緒にしている。神妙な面持ちで歩く夜桜。そんな顔を、高砂はジッと見ていた。やがて3人は高砂の家族が居る家へと着いた。玄関の前で深呼吸をする吉沢。事件後、吉沢は高砂の家族に会っていない。会う勇気が無かったのだ。
しかし今は覚悟を決め会う事を決意した。中々動かない吉沢の洋服を引っ張る高砂。その顔は少し笑っていたふうに見えた。
「よし、行くか!」
【コンッコンッ】
「はーい!」
ノックをすると、まだ幼い女の子の声がする。声の主柚子が玄関を開けると、ドアの前には車椅子に乗る高砂が居た。柚子は、姉を見るや否や全力で泣きながら抱き着く。
「おねいちゃん、おねいちゃん、おねいちゃん・・・う・・ううう・・うう・・・・」
高砂は柚子の頭を優しくなでる。すると、その後すぐに皐月も現れる。
「柚子?誰か来たの?」
【トンっトンっトンっトンっ】
階段から降りてくる皐月。そして玄関で高砂をみつける。
「おねいちゃん・・・・・・・・・・う・・うう・・うぅう・・・・。」
皐月も泣きながら高砂に抱き着く。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん。おねいちゃん・・・・・う・・うぅ・・・うぅぅ・・・・・」
そんな3人を見た吉沢と夜桜は何とも言えない表情をしていた。そして、皐月が吉沢が居ることに気が付き、
「豪君・・・・・・・・。」
泣きながら吉沢の名前を呼ぶ皐月。その時、吉沢は4人の目の前で土下座をした。
「すまない、皐月、柚子。百合をこんな風にしたのは俺なんだ。許してくれとは言わない。何なら気が済むまで殴ってくれても構わない。だが、この通りだ本当にすまない。」
皐月は泣きながらプルプルと右手を震わせる。だが、ここで百合が皐月の手を握り落ち着かせる。
「おねいちゃん・・・・・・」
百合はとても悲しい顔をして皐月を見る。やがて皐月の手の震えは納まる。と、ここで夜桜が口を開く。
「初めまして、私は夜桜紅葉。高等部の1年よ。あなた達が百合りゃんの言っていた皐月ちゃんと柚子ちゃんね。私から説明させてもらっていいかな?」
「――――――――――――――――わかりました。」
皐月がそう言うと、夜桜達は高砂の家へと入る。そして事の顛末を皐月と柚子に話す。皐月は納得したが柚子はまだ幼いため話が分かっていない。
「そうだったんですね。そんなことが。」
「えぇ、だから吉沢君を責めないでほしいの。いいかな?」
「はい、わかりました。豪君ごめんなさい。そんな事があったなんて知らずに私は。」
「いいんだ。皐月のしようとしたことは決して間違っていない。当然の反応だ。」
「さ、暗い話しはこれぐらいにして今日は百合ちゃんの退院祝いをしましょう!」
「「えっ!?」」
突然の夜桜の提案に吉沢と皐月が困惑する?ただ一人喜ぶものも居た。
「わーい!おいわい!おいわいする――――――!」
柚子だ。まだ幼い柚子はお祝いという単語に反応した。誕生日か何かと勘違いしている。
「よし!じゃ、お買い物に行かないとね!」
「わーい!ゆずもいく!」
「あら!?じゃ、おねいちゃんと行きましょう!」
「うん!」
「じゃ、吉沢君と皐月ちゃんは部屋の飾りつけをお願いね!」
「えっ!?あ、あぁ・・・・・・。」
「じゃ、行きましょうか柚子ちゃん!」
「うん!いくー!」
この後、盛大に高砂の退院祝いは続いた。
「やった―――――!またゆずのかち!ごうくんビリ!」
「ぬぬぬぬぬ。もう一回だ柚子!」
「いいよ!ごうくんじゃ、ゆずにはいっしょうかてないけどね」
ゲームで盛り上がる吉沢と柚子。その様子を他の3人は眺めていた。
「吉沢君てあんなに柚子ちゃんと仲いいの?」
「うん、柚子って言うか昔から私達3人とすごく仲いいよ。」
「そうなんだ。すごい羨ましい。」
「羨ましいんですか?」
「うん。実に羨ましい。私ね、1人っ子だから兄弟が居るのが羨ましいの。姉妹ならなおさらね。」
「まぁ、うちは特別仲が良い姉妹ですからね。父親は居なくて、お母さんは私達の為に働きづめで夜遅くに帰ってくるから、自然とお姉ちゃんが私達の面倒を見てくれているから。特に柚子はまだ小さいから特に愛情を注いでくれていて。柚子も、私よりお姉ちゃんに懐いてるし。そりゃ、お姉ちゃんがこんな事になったって聞いた時の柚子の取り乱しは凄くて。しばらく話しをしてくれなかったんです。部屋に引きこもっちゃって。でも、お姉ちゃんが帰ってくる聞いた時から、嬉しくて居ても立っても居られないみたいでして。」
「そうだったのね。」
【ピリィィィィィィィィィィィィィ】
するとここで夜桜のデバイスが鳴る。
「ちょっとごめんね。」
「あ、はい。」
「もしもし、はい・・・・・・・え!?一ノ瀬君が目を覚ました?」
「!!!」
夜桜の話し声に吉沢が反応する。
「えぇ、わかりました。では・・・。」
「紅葉さん、今のって・・」
「えぇ、栞菜さんから。一ノ瀬君が目を覚ましたって。」




