お互いの記憶を全て消す?そして、ごめんなさい。
最も愛すべき人間を失うか、それともここに居る多くの人間の命を失うか。究極の選択を迫られる高砂。どちらを選択しても高砂に良いことは1つもない。そして、高槻の他に更に1人の生徒が犠牲になる。絶望でしかない状況で、高砂はどんな選択をするのか?そして、高砂の前に現れた救世主とは?野外実習編これにて完結。
グリモアの出した条件に困惑する高砂百合。最も愛すべき人間双方の記憶を全て消す。高砂にとって最も恐ろしい選択を迫ってきたグリモア。
「お互いの記憶を全て消す?」
《そうだ。高砂百合及び吉沢豪の両者からお互いの記憶を全て取り除かせてもらう。すなわち、赤の他人に戻るという事だ。》
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
《さぁ、選べ高砂百合。最も愛すべき人間を失うか、それともここに居る多くの人間の命を失うか。――――――さぁ。》
「イヤャャャャャャャャャャャ!山内君!」
「山内、しっかりしろ!大丈夫だ!直ぐに助けが来る!」
「みんな、お願いだからバラバラにならないで!」
次々と現れる魔物達の群れ。もはや、高等部1年A組の生徒の数の3倍も居るであろう魔物の数。どうにも出来ない現状へと追い込まれる。
「くそ!どうすりゃいい、夜桜!」
「とりあえず、誰か佐藤君達を連れ戻してきてくれる!?そして、私も戦うわ!」
「わかった!じゃ、俺が呼んでくる!その間、みんな耐えてくれ!直ぐに戻る!」
1人の生徒が前方でジャイアントオーガと戦っている佐藤達を呼び戻しに向かう。そして、ボロボロの夜桜も戦いに参戦しようとした時。
「――――――――ごめんなさい。」
「え!?」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさ・・・・・・・・・・・」
「どうしたの!?百合ちゃん!?」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。」
「ちょっと、百合ちゃん!?何があったの!?どうして謝るの?」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。」
《そうか。汝の答えは分かった。いずれまた会おう。さらばだ。》
身体を震わせながら必死に泣きながら謝る高砂。そして、高砂のイリュージョンウェポンは消える。そんな高砂を見た夜桜は何が彼女の中で起こっているのか分からなかった。
「う・・・・・うぅ・・・うぅぅ・・・ごめんなさい。」
その時だった。直ぐ近くで、聞き覚えのある声がした。吉沢豪だ。吉沢はイリュージョンウェポンでゴブリン達を斬り刻みながら高砂の側へとやってきた。
「百合――――――――――――――――!」
「・・・・う・・・うぅ・・うぅぅ・・・ごめんなさい。う・・・うぅ・・・ごめんなさい。許してください。」
「おい、百合!何があった!何を謝っている?俺なら、お前のおかげで無事だ!もちろん、青柳も無事だ!お前のおかげで俺達助かったんだよ!それなのになぜ謝る!」
突然の吉沢の登場により益々混乱する夜桜。
「君は確か吉沢君だったわね?どうしてここへ?」
「んなことより、百合の奴はどうしちまったんだよ!?謝ってばかりじゃねーか!」
精神が完全に崩壊した高砂。1人でずっと謝り続けている。なぜ謝っているのか分からない夜桜と吉沢の2人。
「百合!俺の事が分かるか!?豪だ!お前の幼馴染の吉沢豪だ!百合、俺の顔を見ろ!」
吉沢は強引に俯いて謝り続ける高砂の顔を無理やり持ち上げてあげて、自分の顔を見せる。しかし、
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。」
それでも、謝り続ける高砂。まるで吉沢の事が見えていないかのように謝り続ける高砂。
「――――――――――いったいどうしちまったんだ百合」
そして、吉沢から遅れる事数分。今度は夜桜達が聞き覚えのある声がする。
「紅葉!助っ人連れて来たわよ!」
「空木!」
そこには、大勢のクラスメイトとnumbers1の松風栞菜が居た。栞菜はすぐに状況を理解する。そして、
「来なさい、童子切安綱」
栞菜はイリュージョンウェポン弐式を構築する。目に留まらぬ速さで蟻の魔物とカマキリの魔物を一瞬で全てバラバラにする栞菜。そこへ、前線で戦っていた佐藤達も合流する。
「夜桜!どうなってる!?あそこで倒れているのは、山内と誰だ!?」
前線で戦っていた佐藤達は高槻と山内が死んだことは知らない。ただ、とてつもなく悲惨な現状だったことだけは理解する。
「あそこに倒れているのは高槻君よ。蟻の魔物の蟻酸によって殺されてしまったの。」
「――――――――なっ!」
「全て指揮を取っていた私のミスよ。――ごめんなさい。」
夜桜が唇を噛みしめながら佐藤に謝る。
「違う!紅葉ちゃんは悪くない!あんなのどうしようも無かったの!誰が指揮してたって、犠牲は出たはずよ!それに、山内は紅葉ちゃんがバラバラにならないでって言ったのに、言う事を聞かずに逃げ出そうとしたんだから、自業自得よ!」
「あんた何よ!それじゃ、まるで山内が悪いって言うの?」
「そうよ!逃げ出そうとするから死んだんじゃない!あそこで留まっていれば死なずに済んだかもしれなかったのに!」
「言わせておけば――――――――!」
「はい、そこまで!まずはこの状況をどうにかするのが先よ!」
A組の言い争いを止めたのは栞菜だった。栞菜は辺り一面の魔物を全て倒していた。ゴブリン達も、佐藤達が戦っていたジャイアントオーガも。1人、余裕を見せる栞菜。彼女は、こういった事も過去に経験済みだから今何を優先すべきか知っている。栞菜の一言で皆栞菜の方を見る。
「あんた何者だ?そのコートを着ている限りnumbersって事はわかるが――――――――。」
「私の名前は松風栞菜。numbers1よ。わけあってこの野外実習での異常事態の沈静化をしに来たのよ。」
「栞菜さん・・・・・・・。」
「あら!?さっきぶりね紅葉ちゃん。」
「栞菜さんどうしてここに?一ノ瀬君の方の助けに向かったんじゃ・・・・・・。」
「えぇ。もちろん向かったわよ。そして、救助してきたわ。真斗も酷い状態だったけど、それでもあの子よりはだいぶましだと思うけど。」
そう言って栞菜は高砂の方を見る。相変わらずブツブツ1人で謝り続ける高砂。A組の生徒も高砂を見る。その目は哀れみや怒りの眼差しであった。そして、
「こんなことになるんじゃ、あんな子の助けになんか来るんじゃなかった。そうすれば高槻も山内君も死なずに済んだのに。」
「ちょっと・・・・・。」
すると、その発言を聞いた吉沢がキレる。
「何だとコラァ!テメー等こそ、よえーから百合がこんなことになってんじゃねーかよ!どうすんだよこれ!」
「うるせーよ、中等部!だいたいよ、一ノ瀬と柊木先輩が居ながら何でこんなことが起きる!あの2人責任じゃねーのか!あいつらがちゃんとしてたらこんな事にはならなかったはずだ!悪いのは全て一ノ瀬と柊木先輩だ!そうだろみんな?」
「そ、それもそうだな。numbersが2人も居ながら何でこんな事が起こる?あの2人の実力不足がもたらしたことだ。」
「「そうだ!そうだ」」
「ちょっと・・・。何でそうなるのよ!」
「そりゃ、そうだろうよ!あの2人が油断したからこうなったんだ!自分達の力に自惚れていたからこうなった!そうじゃなきゃこんな悲惨なことは起きなかった!」
【ドンッ】
あまりにも的外れな事を言い出したA組の生徒達を黙らせたのは栞菜だった。
「ねぇ、あんまりおかしなこと言わないでくれる?これ以上おかしなこと言って真斗の事を悪く言うと私頭に血が上って全員殺しちゃうよ?」
【ゾクッ】
栞菜の全力の殺気で佐藤と夜桜以外は腰を抜かして尻もちをつく。
「ひぃ!!!!ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。」
その殺気は高砂にも届き、更に泣きながら謝り始める高砂。
「ちょっと栞菜さん、これ以上百合を刺激しないでください。お願いします!」
「あら、ごめんね吉沢君。でもあまりにもこの子達が可笑しなことを言うもんだからつい。」
A組の生徒達は2人を除いて青ざめている。それからというもの、誰一人言葉を発さなかった。
「さて、じゃぁこの先にあるゲートを破壊してみんなも学園へもどりましょ!」
この後、無事に栞菜によってゲートは破壊され魔物達は1匹たりとも現れなかった。




