お願い
この世界は、魔物が蔓延る世界である。故に魔物と人類の争いが幾度となく繰り広げてられている。そんな世界で、人類は対魔物に対抗する手段としてイリュージョンウェポン(幻想武器)を神から授かるのであった。しかしそれは成人になるまでの子供たちのみ授かる事許されており、成人を迎えた者は自然と使えなくなる。マナという能力により創り出され、各々が創造する物一つだけ与えられる唯一の対魔物に特化した武器である。全ての子供が創り出されると言うわけでもなく、何かしらの力が働いて創り出されるもの。その何かしらの力と言うものは未だに解明出来ていない。そんな中で今日もまた一人の少年が理不尽なこの世界で必死に生きているのであった。
時は、楓の入学式が終わった後の夕方まで遡る。
「ただいま!兄さん、兄さん!兄さんエキスの補充を要求する!」
「おいおい、楓さんよ!帰ってくるなり、何をいきなりわけのわからんことを言っている!」
「な、何だと!今日に限って兄さんが冷たいだと。これは一大事だ!今日、世界が滅ぶかもしれん!こうしちゃいられない!早く兄さんの枕の匂いを嗅がなくては!それいけー!」
「それいけーじゃない!勝手に人の枕の匂いを嗅ごうとするな!」
「グェっ」
真斗は、楓の首根っこを掴み止めに入る。すると、
「こんにちは!って何やってるんですか?」
椿が元気よく挨拶をする。これは珍しいお客さんが来たもんだと真斗は驚く。
「こんにちは、椿ちゃん。どうしたの?うちに来るなんて?もしかして、楓に強引に連れてこられた?」
「いえ、自分の意思で来ました。今日は真斗さんにお願いと相談がありまして・・・・。」
「お願いと相談!?」
真斗は、椿が真剣な顔をしてお願いしてきたことに疑問を持つ。見当がつかず直接本人に聞いてみる真斗。
「お願いと相談って言うのは何?俺が出来る事ならいいんだけど!」
するとそこへ、さらに真斗の家に訪問者が現れる。
「こ、こんにちは。一ノ瀬君は居るかしら?ちょっとお願いがあるんだけど。」
そこに現れたのは何と夜桜だ。学校が終わり直接一ノ瀬の家に来たみたいだ。今日はやたらと訪問者が多い日だと真斗は苦笑いをする。
「お、おう。」
「兄さん、私もお願いがあります!」
今度は元気よく楓が手を挙げ真斗に言い放つ!しかし、
「楓はどうせろくでもない事だから却下!んで、まずは椿ちゃんのお願いから聞こう。その次は、夜桜お願い事。椿ちゃんの相談事はその後だ。」
「何でよ!私、まだ何も言ってないじゃんかー!聞く前に却下とかひどくない?」
「決してひどくない。楓のお願いはこれまでにまともなこと言ったことあるか?」
「あるよ!いつもまともなこと言ってんじゃん!一緒にお風呂に入ろうとか、一緒のベットで寝ようとか、今日はムラムラするからキスしてとか!全部まともな事じゃん!」
「「えっ!?何そのご褒美イベント!」」
椿と夜桜はまるでシンクロしたかのように同時に反応する!
「全然まとこなこと言ってねーな、楓さんよぅ!兄妹でそんな事してるのは居ないぞ!」
「居ないんじゃ、私達が第一号になれば問題なしじゃん!」
「問題大ありだ!はぁ。さて、楓の事はほっておいて椿ちゃんのお願いというのは何かな?」
「はい!私のお願い事というのは、とある事情からもっと強くなりたいと思い、真斗さんに修行をつけてもらいたいんですけど・・・。ダメでしょうか?」
「とある事情ね。それは相談事と関係してるのかい?」
真斗の鋭い突っ込みに思わずドキッとする椿。
「流石は真斗さん、鋭いですね。まぁ、そんなとこです。」
「なるほど。じゃ、まずは相談事を聞かないとダメか。では、相談事というのは何かな?」
椿は唾を飲み、真剣な趣で話し始める。
「実は、クラスにとある女の子が居まして、その子が今日学級委員長に選ばれたんですけど、どうやらクラスの男子に嫌がらせを受けている所を目撃してしまったんです。まだ初日なのに、いきなりそんな事され少し心配になっちゃって。どうにかその子を守れる力が欲しいと思いまして。」
「なるほど。その子を助けるためにその男子とやりあおうと?」
「いえ、争いごとは避けたいのでなるべく話し合いで済まそうとしているのですが、それが無理だった場合、争う事になると思うので。そのために私は、負けない力が欲しいんです。」
「椿ちゃん、一つ言っておくことがある。」
「はい」
「争いは、争いを呼ぶことになるよ?やがて憎しみに代わり終わる事のない争いがまた始まる。それでも助けたいのか?」
「それは・・・・・・。」
「俺は、力をつけることはまだお勧めしないかな。今はまだ、普通に学校生活を楽しむべきだ。それに、嫌がらせの事は担任教師に相談することをお勧めするよ。」
椿は、真斗が言っていることが正しいと納得する。力で抑え込むことがどれほど哀れな事か考えてみる。
「んじゃ、次は夜桜だが・・・。どんなお願いだ?」
「私も、そこの子と似たようなものね。ただ、目的が違うけど。私の場合は、この前見たい事が起きても自分でどうにか出来る力が欲しい。そして、今度の七月に行われるnumbers選抜試験で何としてでもnumbersになるためよ。」
「numbersになりたいのか?」
「私はnumbersになりたい。そして、苦しんでいる人たちに手を差し伸べる事が出来るようになりたい。あなたと同じで。」
「なるほどね。まぁ、入学試験の内容を見る限りだとギリギリ入れるぐらいの強さはあるけど。それでもギリギリだ。俺の指導はきついけどやれるのか?」
「もちろんよ!私はその覚悟で来たのだから。」
「よし、わかった。じゃ、さっそく明日から朝の四時に俺んちに来い。修行をつけてやる。」
「わかったわ!朝四時ね・・・・・・。四時!?え!?いくら何でも早すぎじゃない?その時間、私いつも寝てるわよ?」
「それがどうした?起きれば済むことじゃないか!何もそんな驚くことないだろ?」
「い、いや。それだと寝る時間が・・・。」
「睡眠なんて、一日一時間か二時間あれば十分だろ?俺はそうやっているが?」
「噓でしょ?ねぇ、楓ちゃん!嘘よね?」
「え!?嘘じゃないよ?兄さんはいつもそんな生活してるよ?たまに夜中に依頼が来て、一睡もしてないことも多々あるし。numbersだからそれぐらい当たり前じゃない?ちなみに、私も時間こそ一時間遅いけど朝の特訓してるよ?」
「だから一ノ瀬君はあんなに強くて、楓ちゃんはぶっちぎりで首席で入学・・・・。この兄弟はいったい何なの。」
「まぁ、朝練の件は楓と一緒にやればいいか。楓も言ってたけど、毎日は教えられないぞ?依頼もあるしな。」
「あははははは。じゃ、それでお願いしようかしら。明日から、朝の五時に来るわね。」




