誰も信用できない
この世界は、魔物が蔓延る世界である。故に魔物と人類の争いが幾度となく繰り広げてられている。そんな世界で、人類は対魔物に対抗する手段としてイリュージョンウェポン(幻想武器)を神から授かるのであった。しかしそれは成人になるまでの子供たちのみ授かる事許されており、成人を迎えた者は自然と使えなくなる。マナという能力により創り出され、各々が創造する物一つだけ与えられる唯一の対魔物に特化した武器である。全ての子供が創り出されると言うわけでもなく、何かしらの力が働いて創り出されるもの。その何かしらの力と言うものは未だに解明出来ていない。そんな中で今日もまた一人の少年が理不尽なこの世界で必死に生きているのであった。
高砂はその日の放課後、体育教師に進路相談室へと来るようにと呼び出された。
「高砂、体育の授業の時のあれはなんだ?あんな格好で誰が授業を受けろと言った。先生をバカにしているのか?」
「い、いえ。違うんです。体操着を忘れてしまい、桜子先生に相談したらあれを渡されて。でも、時間が無かったのでそれに着替えるしかなくて。ごめんなさい。」
高砂は、下を向き体育教師の真島瑛太に事情を説明し謝った。すると真島は、
「何!?渡辺先生が渡しただと?他にもサイズはあるはずだが。一体どうしてだ・・・・・・。」
真島は考えた。
(どうして、高砂にわざわざサイズの合わない体操着を渡したのか。そんな物を渡せば、あんな格好になるのも分かるはず。それとも知っていて渡したのか?なら、なぜだ?)
真島はしばらく考えた後、一つの結論を出す。
「高砂。お前は渡辺先生から嫌がらせを受けているのではないか?」
「え!?嫌がらせですか?えーっと、そんなことは無いと思うのですが。」
「だとしたらなぜ、わざわざあの体操着を高砂に渡す?サイズが合わないのは分かっていたはずだ。それに、先程も行ったが生徒が忘れてきたときように各サイズで何着か予備があるはずだ。その予備が全部ではからっているとは考えにくい。その体操着はどの場所にあった?」
「体操着の場所ですか?えっと、職員室に入ってすぐ左側の棚の中に一着だけありましたけど?それがどうかしましたか?」
「棚の中・・・・・。いつもは、職員室のロッカーの中に掛けてあるんだが。高砂、本当に体操着を忘れたのか?持っていても着られる状態じゃなかった?とかじゃないのか?」
「え!?」
「何らかの形で、体操着が着られる状態ではなく初めから借りるしかない状況とかじゃないのか?」
「そ、それは・・・・。」
「本当の事を言ってくれ。もし、借りる事しか出来ない状況ならこれは渡辺先生が仕組んだことになる。大丈夫、大事にはせず、後で俺がこっそり学園長に言っておいてやる。だから、本当のことを話してくれ。」
高砂は黙る。桜子から嫌がらせを受けていることは本人もうすうす感じていた。でも、この人を信じていいべきなのか。仮にも教師ではあるが、その教師であるべく人間が自分に対して嫌がらせをしているのも事実。
真島に全部を話して、事が全て終わるのか?話したことで、ますますエスカレートするのではないのか。いくつもの考えが頭の中に過る。そして、
「実は、入学してから桜子先生やクラスのみんなから嫌がらせを受けているんです。でも、誰かに話したらもっと酷いことをされるんじゃないかと考えると、怖くて誰にも相談できなかったんです。」
高砂の頬に大粒の涙が流れる。誰かに話したことにより、安堵して今まで溜まっていた不安や恐怖が全て取り除かれた感じがしたからだ。
「そうか、そうだったのか。大丈夫だ、これからは先生が味方になってやる。だから安心しろ高砂。」
そう言って、真島はゆっくり高砂が入ってきたドアの方に行き、鍵を閉めた後、高砂に近づいていく。そして、高砂を抱きしめて体を触り始める。背中に、お尻、そして胸まで触り始める。
「きゃ!な、何するんですか真島先生!放してください!」
「いいじゃないか高砂!これからは先生が味方になるんだからこれぐらいいいだろ?」
真島は、いやらしい顔をして高砂を見て唇にキスをしようとする。それを、高砂は全力で拒否する。
「いやっ!放して!」
高砂は、思わず真島を突き飛ばす。突き飛ばされた真島は、フラフラと後退し、尻もちをつく。涙目の高砂は真島を睨みつけて、
「何でこんなことするんですか!信じていたからすべてを話したのに!」
真島は立ち上がり、ものすごい剣幕で高砂に近づいていき高砂を押し倒す。
「止めてください!嫌です!放して!」
必死に抵抗する高砂であったが中等部の高砂では力では勝てない。
「静かにしろ!すぐ終わらせてやる!」
真島はジタバタする高砂の顔を平手打ちして高砂を黙らせる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
大人しくなってしまった高砂は、諦めて真島に体を許す。真島は高砂の服を脱がせようとしたその時、
【コンッコンッ】
誰かが進路相談室の扉をノックした。真島は、急いで高砂の口を手で塞ぎ喋らせないようにした。
「んー。んー。んー。」
高砂は助けを求めて声を上げるが、口を塞がれているため助けを求められない。次第に、ドアには鍵が掛かっていたため、ドアの前からは人影がなくなり真島は安心して続きを始めようとするが、
【ドーーンっ】
突然、進路相談室のドアが蹴り飛ばされ、教室の窓の方まで吹き飛ぶ。
「はーい。先生そこまでです!」
吹き飛ばされたドアの入り口から若い男性の声がした。おもわず真島は言う、
「誰だお前は!」
すると若い男は、静かに教室に入ってくる。顔は仮面で隠し顔が分からないようにしている。そして、その人物が誰なのか決定づけるかのようにnumbersのコートを着ている。番号は七番だ。一ノ瀬真斗だ。
「先生、こんな所で何やってんですか!?女子生徒を羽交い絞めにして?あんた、教師の自覚あります?」
「うるさい!これは、言う事を聞かない生徒への指導だ!お前には関係ないだろ!それに何でこんな所にnumbersが居るんだ!ここは中等部だぞ!」
「何でここに居るかって?そんなの決まってんじゃん!通報があったからだよ!」
「通報?いったい誰からの通報だ!」
「それは秘密ですね!通報者の情報は厳密には教えられません。」
真島は黙って考える。どうにかしてこの状況を打破できないかと。すると真島は一つの提案を持ち掛ける。
「そ、そうだ!この事を黙っていてくれるなら、まずはお前がこの子を相手していいぞ!俺はその後で良いから!どうだ!?いい提案だろ!?」
真斗は、しばらく考えているふりをする。その事を、見ている真島は、「そうだ!俺の言う通りにしろ」と言わんばかりの顔をしている。そして
「そうですね!こんなに可愛い子なら悪くないかも!」
「だろ!?そうだろ!?なら、ほらお前が先にやっていいぞ!」
真島は高砂から離れ距離を置く。真斗はコートを脱ぎながら高砂に近づく。そして、高砂は震える声で
「い、いや。近づかないで!お願い、許して。」
泣きながら、真斗に謝る。そして、高砂の目の前まで来た真斗は自分のコートを高砂に掛ける。
「え!?」
「いやー、先生。こんなに可愛い子なら、無理やりじゃなくお互い合意の上でしたいもんですねぇ。」
「な、なんだと!貴様、せっかく私が与えたチャンスをみすみす潰す気か?」
「チャンス?これが?寝言は寝てから言えよ、クソ教師!」
真斗は、イリュージョンウェポンを構築し真島に向けて構える。
「や、やめろ!こんなこと許されると思うのか!学園の中や街中ではイリュージョンウェポンの具現化は禁止されているはずだ。お前こそ、どうなるか分からないぞ!」
「あれ!?先生、知らないんですか?numbersは、緊急時にはイリュージョンウェポンを具現化する事許されてるんですよ?だから、俺は何の罰も受けません。」
「なっ!」
「じゃ、死んでください。」
「や、やめろ!私はまだ死にたくない!」
「バンっ」
真斗は、銃を撃つことは無く大声でバンッと言っただけなのに、真島は撃たれたと思い気絶してしまう。
「お前は死にたくないって言っても、この子は死にたいとすら思ったはずだ。今後の人生は、獄中で過ごすんだな。」
そう言うと真斗は、イリュージョンウェポンをしまい高砂に声を掛け手を差し出す。
「立てるか?」
「は、はい。助けていただいてありがとうございます。」
高砂は、真斗の手を取り立ち上がる。真斗はゆっくり高砂を立たせる。
「さてと、じゃ帰るか。荷物は教室か?教室にあるのなら俺もついて行ってあげるよ。」
「あ、ありがとうございます。」
二人は進路相談室から出て教室に向かおうとした時、都合よく椿をみつける。
「あっ!椿ちゃん!」
声を掛けられた椿は振り返り、誰!?と思うのだが、高砂の着ているnumbersのコートの番号見て直ぐに状況を理解する。
「こ、こんにちは!どうしたんですか?」
「いや、この子の教室まで行こうとしたんだけど、丁度同じクラスの椿ちゃんを見つけたから、この子と一緒に帰ってくれないかな?とお願いしようと思って・・・。ダメかな?」
「え!?高砂と?私は全然構わないけど。」
「じゃ、お願い!女の子同士のが帰りやすいだろうし。帰り道に何かあればイリュージョンウェポンを出しても構わないよ!後で俺に事の顛末を話してくれれば!」
「そんな事にならないように、祈りながら帰ります。」
「はははははっ!というわけで、この後は椿ちゃんと帰ってね!俺は、あの教師をnumbersに突き出すから!ってことで後は椿ちゃんよろしく!」
そう言うと真斗は、もう一度進路相談室に入り真島の首根っこを掴み、引きずりながら学校を後にするのであった!




