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Numbers  作者: 雨のち晴れ
王立学園編
19/24

楓の入学式 其の二

この世界は、魔物が蔓延る世界である。故に魔物と人類の争いが幾度となく繰り広げてられている。そんな世界で、人類は対魔物に対抗する手段としてイリュージョンウェポン(幻想武器)を神から授かるのであった。しかしそれは成人になるまでの子供たちのみ授かる事許されており、成人を迎えた者は自然と使えなくなる。マナという能力により創り出され、各々が創造する物一つだけ与えられる唯一の対魔物に特化した武器である。全ての子供が創り出されると言うわけでもなく、何かしらの力が働いて創り出されるもの。その何かしらの力と言うものは未だに解明出来ていない。そんな中で今日もまた一人の少年が理不尽なこの世界で必死に生きているのであった。

無事に入学式が終わり、新一年生たちは自分達の教室へと戻って来た。式も終わり、生徒たちは緊張の糸が切れたかのように皆リラックスしている。おしゃべりをしている者、机に伏せて寝ている者、読書をしている者、各自担任教師が来るまで各々の時間を過ごしていた。もちろん楓達も自分たちの席に座り、隣の席の椿と仲良く話している。


「ふぅ、やっと終わった。疲れたな・・・・。帰って兄様エキスを補充しなくては死んでしまう。」


「兄様エキス?」


「そそ!兄様に抱き着いて、頭を撫でてもらいエキスを補充するの!」


「な、何てことをしてるの・・・(羨ましい)」


「はぁ、早く終わらないかな。兄さんが私を呼んでいる気がする!」


「ヘックシュ!誰かに噂されている気が・・・・。」


「ねぇ、この後何があるんだっけ?」


「え!?知らないの?学年主席様があろうことかこの後の流れを知らないとは。」


「いやー、特に興味もないし。私が興味あるのは兄さんだけ!」


「いったい、楓ちゃんの頭の中はどうなっているんだか。」


すると、教室の扉が開き担任教師の桜子が入ってくる。その顔は非常に険しく、入るや否や楓を睨みつける。それを察した生徒たちは無言で席に着く。


「えー、これからホームルームを始めます。早速ですが、このクラスの学級委員長を決めたいと思います。誰かやりたい方が居たら挙手してください。」


生徒たちはざわつき始め辺りを見回し、そんなめんどくさい事をわざわざやりたがる物好きは居ないかと見ている。もちろん、誰も手を挙げない。


「はい、静かにしなさい。では、誰か推薦者はいますか?この人ならクラスを引っ張れるであろうと生徒は?」


さらにざわつき始める。この学校の生徒は、各方面の村や街から入学する者が多く、今日初めて顔を合わせた生徒たちばかりでいきなりそんな重大なことを誰かに押し付けるなど出来たものかと誰もが思う。誰も手を挙げない状況が続き桜子が苛立ち始めたのか、皆に問いかける。


「やりたい者はいないのだな。では、くじ引きで決めるとしよう。このままじゃ無駄に時間が過ぎるだけだ。決まったものは文句を言わないように。」


桜子がそう言うと生徒達は一斉にブーイングを始める。それを聞いた桜子が、額に青筋浮かべ、


「黙れ!貴様らがグズグズしてるからこうなるんだ。黙って出席番号順にくじを引け!」


桜子は、あらかじめこうなるだろうと予測しくじを作っておいた。生徒達は渋々順番にくじを引く。そして、一人の女子のが当たりを引き当てる。途端にクラス全体が、


「よっしゃー!」「あぶねー!。」「良かった俺の番の前に当たりが出て!」「学級委員長なんて絶対ごめんだわ!」


など、それぞれ思いを口にする。当たりを引き当てた女子は、


「あ、あ、あ、あ、あ・・・・あたしなの・・。なんで私が。」


「お前はえっと・・・・・。高砂百合(たかさごゆり)だったか?お前が当たりを引いた以上お前に学級委員長をやってもらう。いいな。」


「は、はい。」


高砂百合。ロングの黒髪で眼鏡をかけて物静かな内気でコミュ障な女子。そんな彼女が学級委員長になってしまった。そして、


「では、続いては副委員長を決める。こちらは男子にやってもらう。」


すると、男子生徒達が一斉にブーイングを始める。そんな中、一人の男子生徒が手を挙げる。


「先生、僕が副委員長に立候補します。」


「お前は確か、吉沢豪だったか。ま、成績優秀のお前がやりたいと言うなら私は構わないが、他の奴はどうだ?やりたい奴は居るか?」


男子生徒は黙り込み皆、下を向き言葉を発さない。


「他に居ないようだな。では、副委員長は吉沢で決まりだ。二人は後で職員室に来い。いいな!」


「は、はい。」「はい」


吉沢豪。茶髪で成績は学年二位で優秀、外見も誰が見ても納得のイケメン男子。


「よろしくね、高砂さん!二人で頑張ろう!僕がサポートするよ。」


「は、はい。よ、よろしくお願いいたします。」


こうしてこの後、明日からの日程が話されこの日は解散となった。この後、高砂と吉沢は桜子に言われた通り、職員室にむかった。二人は職員室のドアをノックして中に入る。すると、机に座っていた桜子が、


「高砂、そこにあるプリントと教科書を全部教室に持っていき、生徒達の机の上に配っておけ。いいな。」


高砂達は、桜子が指さす方向を見るとそこには(おびただ)しい数のプリントと教科書が置いてあった。これを二人はだけで運ぶのとなると相当な重労働だ。そんなプリントと教科書を見た吉沢が真っ先に動く。


「高砂さん、ごめんね。実は僕怪我をしてて重いものが運べないんだ。だから、教科書は高砂さんが運んでよ!」


「え!?私が、この量の教科書を一人で?そ、そんなのとてもじゃないけど無理だよ。」


「二人とも何をグズグズしている。さっさと言われた通り運べ!」


「はーい!」「は、はい。」


「じゃ、運ぼうか高砂さん。」


吉沢は満面の笑みで高砂に言う。もちろん吉沢は軽い方のプリントに手を伸ばす。高砂は、しょうがなく教科書を取る。


(くっ。お、重い)


物静かで内気な高砂には友達と呼べるものは今までの人生で一人も居なかった。そんな彼女は、どうにか喋りかけようとしても中々勇気が出なく喋りかけても話しが続かず、挙句の果てには黙ってしまう始末。

そんな彼女は、人と関わるのを止めてやがて一人になってしまう。唯一の救いは本である。

本を読んでいる時は、嫌なことを全て忘れさせてくれる百合にとっては本を読んでいる時が一番幸せな時間。

そんな生活をしていたため、体力は全く無い。


それから少し時間が経ち、プリントを全て運び終えた吉沢が、


「じゃ、僕は帰るね。プリント全て持ってきたから。」


「え!?ちょっと、待ってよ!まだ、教科書も運び終えてないし、プリントだって配り終えてないじゃん。」


「いやー、ごめん。これから僕、遊ぶ約束してるんだ。友達を待たせるわけにもいかないしね。」


「遊びにいくって、副委員長でしょ?こういうことは二人で力を合わせてやらないと。」


すると、突然吉沢が壁を殴る。その音で高砂がビックリする。


【ドンッ】


「ひぃ。」


「いちいちうるせー女だな!いいから黙ってやれよ!死にてーのか!?」


高砂と吉沢しかいない教室。そんななか、突然吉沢が身の丈ほどある鎌の形を成したイリュージョンウェポン出す。突然吉沢がイリュージョンウェポンを出したことに驚き、高砂は尻もちをついてしまう。


「ご、ご、ご、ごめんなさい。許してください。」


高砂は泣きだしてしまい、尻もちをついている場所から液体のような物が溢れ出す。


「何ビビって、もらしてんだよ!きたねーな。」


泣きながら謝る高砂。


「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」


「ちゃんとやっておけよ!あと、そこをちゃんと掃除しておけよ!明日、匂ってどうなるかわかってんだろうな」


謝る事しか出来ない高砂を見かねた吉沢は、捨て台詞を吐いてその場から立ち去る。


教室のドアの側で一人の人物が一部始終を見ていた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


吉沢が出て行ったあと、一人その場の掃除をし始める高砂。


【グスンっ】


(どうしていつもこうなるの。この学校に来れば友達が出来ると思ったのに。どうして私だけいつもこうなるの)


結局、この日は遅くまでやって作業をしていたが高砂一人では終わらず、翌朝誰よりも早く登校して何とか皆が来るまでにすべての作業を終わらせた高砂であった。

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