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10 枕営業?※

 黒子が去ってから数カ月後、冬の冷たい風が吹きすさぶ中、マスクに大きなマフラー、サングラスに起毛のバケットハットといかにも変装をしている人の雰囲気丸出しの見た目でアヤは街を歩いていた。


 元々アヤは街を歩く時に一切変装をしなかった。街を歩けばファンが押し寄せる。ファンサービスとちやほやされたい欲を満たすために変装は不要だった。


 だが、このところは風向きが全く逆方向になってしまったので周囲の人にバレないように変装をしている。


 ファンだと言っていた人の殆どは離れ、一部は愉快犯としてアンチになっていった。結局世の中の風潮として『叩いていい人』というレッテルが貼られてしまった以上はどうしようもない、今だけの辛抱だとアヤは自分に言い聞かせる。


 仕事のスケジュールはスカスカ。元々、レギュラーで定期的に発生する仕事が好きではなかった。それでも、黒子が取ってきていた単発の仕事で埋まっていたのだが、それらが捌けきってしまい、新しいマネージャーは仕事を取ってこられないのでスケジュール帳は真っ白なままだ。


 信号待ちをしていると、アヤの携帯が鳴動する。事務所の社長からの電話だ。


「もしもし」


「おう、俺だ。今日は暇だろ? 急だが仕事が決まったぞ。ゴールデン帯のバラエティだ。爪痕を残せよ?」


「えっ……ご、ゴールデン!?」


 アヤは久しく聞かなかった言葉に自分の耳を疑う。


「収録は明後日。今日は事前準備があるからとある場所に行ってほしいんだ。すぐにメッセージで住所を送るからな。必ず行けよ」


「はいはい。分かってるわよ」


 プツッと電話が切れる。すぐに送られてきた住所を見てアヤは首を傾げた。その住所は高級外資系ホテルの場所をさしていた。


 ◆


 アヤは社長の指示通りにフロントを素通りし、とある部屋の扉をノックした。


 ガチャリと扉が開いて出てきたのは、サングラスに髭、ギラギラしたアクセサリーといかにも業界人という風貌の男性。


 高級ホテルの一室で待機している業界人の男性。そこに単身向かわされた自分。アヤはここに来て自分がどういう扱いをされているのか察した。


 枕営業。その言葉が頭をよぎる。


「アヤちゃん? さ、入って入って」


 男に腕を掴まれ部屋に引きずり込まれる。


 部屋の中では5人の男が酒を片手に談笑をしていた。アヤが部屋に来たと分かるや会話を止め、全員が舐め回すような視線をアヤに送る。


「そういうことね……」


 ここではあらゆる尊厳を捨てないといけない、と自覚する。年齢なんて関係ない。これも生き残るために必要なことなのだ、と自分に言い聞かせる。これからここで起こることはすべて合意なのだ、と。


 ダンスも歌もスランプに入っているだけ。それを脱出したらまたスターに返り咲く。死ぬほど稼いだらこいつらを顎で使ってやる。


 そんな決意を胸にアヤはシャワールームへと向かった。

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