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私の取り戻し方  作者: うかんるり
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その後

その後、私は被害を訴えに警察署に行きました。

当時は被害者が成人の場合、加害者から暴行を受けていない限り事件として扱うことはできませんでした。


被害者が成人の場合、同意がなかったことを証明するのが困難だからだと説明されました。


最初に私が被害を受けた時、飲み物に薬物が混入され、私は意識が朦朧としている状態でした。

証拠を残すなんて、無理です!


加害者の計画性を訴えましたが、そもそも上司とはいえ、プライベートで異性と二人きりになる状況を避けられなかったあなたも悪いと言われました。


お前も悪いんだから、これ以上何も言うなと圧力をかけられたように感じて、何も言い返すことができませんでした。


警察署を出てから、悔しくて全身の血液が沸騰しそうな程熱くなり、鼓動が激しく高鳴りました。


加害者はなんのお咎めもなく、普通に生活していくのに、私はこんなに苦しいのに、お前が悪いと言われて生きていかなきゃいけないのかと思うと、やるせなかった。


こんなに苦しい思いをするぐらいなら、いっそのこと殺された方がよかった。


熱い涙が次々と溢れ、人目もはばからずに、しゃくり上げて泣きました。


こんなに泣きじゃくったのは子どもの頃以来でした。

悔し涙って、どうして悲しみの涙よりしょっぱいんでしょうね。



次の生理がくるまでは、気が気じゃなかった。


当時、アフターピルは承認前で、妊娠を防ぐ方法はありませんでした。


もし妊娠をしたら、無職の状態でどうやって子どもを産み育てたらいいのか悩みました。

愛せるのか、育てられるかもわかないような子を産むだなんて、無責任なのかもしれません。 


だけど生きようとしている命を私の勝手で奪うなんて怖くてできないって思った。


命の責任が私ひとりの判断にかかっているなんて、とても耐えられなかった。


生理がきた時は、もう、ほんっと心からホッとしました。


もう二度とこんな辛い悩みを抱えたくないから、セックスなんてしたくないって思った。



最大の悩みは解決したものの、心のモヤモヤは一向に治りませんでした。

不安で夜も眠れなかったけれど、シェアメイトに気を遣われたくなくて、何もなかった様に振舞った。

元気なふりして、無理に笑って、ある日、通過列車に飛び込みたい衝動に駆られました。

色々と疲れて楽になりたかった。



このままじゃいけないって焦っりました。

この辛さをなんとかする方法を見つけないと、いつか電車に飛びこみたい衝動が抑えられなくなるかもしれない。


被害にあった時、意識が朦朧としながら死を覚悟しました。

このまま死にたくないって、あれだけ願った命なのに手放したくない。



まず、親友に性被害にあったことや今の辛い気持ちを打ち明けてみました。

親友は驚きのあまり戸惑っていましたが、何でも力になるから、元気をだしてと優しく励ましてくれました。

話した直後は心が軽くになったけれど、やっぱりしんどい。


次は気持ちを別のことで紛らわそうと、フットサルに参加したり、料理教室に通ってみたり、色々と今までしたことがなかったことに挑戦してみました。

体を動かしている時、何かに集中している時は、気持ちが紛れるけれど、やっぱり辛い。


何をしても気持ちは落ち込むばかりで、まるで私が私じゃなくなってしまったみたいに感じるようになりました。

変わってしまった私を誰にも知られたくないと思うようになりました。

そうして昔からの友人を避けるようになりました。

もう、どうしたらいいのか完全に分からなくなっていました。



知人に風俗の内勤の仕事を紹介されたのは、そんな時でした。

(勿論、知人には性被害にあったことは伝えていません)


嫌な記憶を思い出してしまうのではと、一瞬不安がよぎりました。

だけど、いつまでも傷心に浸っていられません。

生活のためには働かなくてはいけない。


それなのに面接時に前職の退職理由を尋ねられるのが怖くてたまらなくて、就活を躊躇っていました。

だって、自己都合と言ったら印象悪いだろうし、本当のことを言ったら絶対に空気が凍るでしょう。


その点、風俗の仕事なら、過去について聞かれることはなさそうだし、働いてみて無理そうなら直ぐに断ろう。

そんな理由で、次の就職先が決まるまでの繋ぎの仕事として、引き受けてみることにしました。



私が働いていたのは、人妻ヘルスの受付の仕事でした。

前任の受付スタッフがキャストに転身したので、女性スタッフを探していたそうです。

キャストさんはみんな私より年上の大人の女性で、和気藹々としていました。


風俗嬢といったら派手なイメージだったのですが、どこにでもいそうな普通の人ばかりでした。

店長の第一印象は、絶対に怒らせてはいけないヤバい人といった感じだったのですが、話してみると家族思いの可愛い人でした。

心配していた、嫌な記憶が蘇ることもありませんでした。


基本的に私は入口付近にいて、キャストさん達の仕事部屋から離れた場所にいます。

ただしトイレは接客部屋の近くにあるため、トイレに行くとキャストさんのお仕事中の声が聞こえます。


初日はドキッとして、うわっ!ここって本当に風俗なんだと実感がわきました。


この仕事を体験してみて、あんなに辛かった気持ちが、なぜか少し楽になっていることに気がつきました。


薄暗いし、目のやり場に困るようなポスターが所狭しと並べられているようお店なのに、なーんか居心地がいいんです。


時間の経過が影響したせいなのかもしれませんが、少しだけ前進できたことが嬉しかった。

繋ぎで始めた風俗の仕事ですが、ここでなら心の辛さが楽になる方法を見つけられるような気がした。

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[一言] いつかソイツがこの出来事を心から後悔しますように。そして心を入れ替えますように。 しんどい思い出を書いてくださって、本当にありがとうございます。感謝しています。 そしてうかんるりさんの気…
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