黒髪の、女の子がね、立っていた。 ~そんな川柳のような状況で見せられた、白いもの。それは、あなたの求めていたものでしょうか? ここっここれは、地味な女の子好きさんに捧げます~
今回は三つ編みの少女が出ません。
あなたは閑静な郊外の住宅街を歩いていました。こちらの周辺の道は細くて複雑で、信号もありませんでした。自動車は庭の敷地に置かれているものしか見かけません。
アパートらしき建物の前で、長い黒髪の少女が立っているのが見えました。青い長袖と白いミニスカート姿です。特に目立つような要素のない少女でした。
少女へと近づいた際、彼女があなたの前にやって来ます。先に進むのを妨げられ、あなたは足を止めました。
何か用があるのかと、あなたが尋ねます。
少女は頷きました。
それから、おもむろに長袖の裾を引っ張り出しました。
おもむろに……という言葉は、落ち着いて、ゆっくりとするさま、という意味が正しいらしいですね。
そのような動きで、少女はスカートの中に入れていた裾を完全に出しました。
さらには、その場で長袖を脱ぎ始めます。
あなたはきっと、困惑したでしょう。
脱いだ長袖を、少女は渡してきました。
要らないのかと聞いたら、少女は首を横に振るのです。長袖をくれるわけではないようです。
少女の上半身は、綿無地の白いタンクトップだけになりました。
その袖がない肌着の肩紐部分には、かわいらしいレースがついています。また、胸元よりも少し上に、小さな白いリボンがついていました。
素敵な品質。コットン無地。白いベスト。
イギリスでは、下着のタンクトップがvestと呼ばれるようです。
vestとbestを掛けましょう。少女の白い下着は、女の子らしさという面では、すごく好ましいですよね。しかしながら、あまりジロジロと目に入れるのは、好ましくないはずです。
丈の長いタンクトップの裾は、彼女のスカートの内側に収まっています。
白一色の下着をずっと晒し続ける少女。じっと、あなたを見ています。いつまで彼女は、上半身肌着姿でいるのでしょうか?
あなたも少女から視線を逸らさずにいると、数秒後、動きがありました。少女が細くて白い右手を動かしたのです。
よく見ると、タンクトップの左肩部分の内側に、何かが挟まっています。それを少女は、そっと引っ張り出しました。
出て来たものは、肌着とほとんど同じ色の、白い名刺です。日本では一般的な大きさの、縦91ミリで横が55ミリのものでしょうか。
少女はその名刺をあなたに差し出します。挟まっていた部分が少し折れ曲がっているため、中古品の趣がありました。
次に、少女はあなたがずっと預かっていた長袖を取ろうします。名刺を受け取ったあなたは、彼女に服を返してあげました。
少女が長袖を着る間、あなたは名刺に目をやります。
黒い印刷で、こう書かれているのが分かりました。
『あなたなら 勇気を出せば 救えるよ 読まれていない 作品だって』
五・七・五・七・七。
あなたに対する短歌でした。
あなたはその意図が分かりませんでした。
でも、いいことが書いてあるような気はしました。
少女のほうを見ると、彼女は長袖に両手を通し終えています。出ていた裾をスカートの中へと完全に入れ込みました。
「名刺を、こちらにお入れ下さい」
なんと、かわいくて落ち着いた声で、少女が喋ったのです。
あなたは少女が喋らないと思っていたので、びっくりしました。
少女は両手で長袖の襟を大胆に引っ張ります。そこに入れるように、ということなのでしょう。
あなたは名刺を襟の内側へと落としました。
その際に、白い下着がチラ見えしました。
下着は、先ほどまで丸見えになっていた部分だったため、あなたはすでに知っています。それがブラではなく、胸部が未発達の子供向けインナーだということを。
それでも、あなたは白いレースやリボンのついた下着が気になってしまうのです。
その後、少女は二歩下がり、両手を重ねて深くお辞儀しました。
上半身を戻すと、少女はスカートをつまんで、軽く持ち上げます。
大人びていて、それでいてかわいかったです。
スカートから手を放した少女はあなたに背を向け、アパートの一室へと入って行きました。
それからは、特に何もありませんでした。
あなたは歩くのを再開しました。
帰ったら、何か物語でも読もうと思いながら。
(〆)
『パンツより ブラがいいなら ブラを見て タンクトップも ブラに見えるよ』
という短歌にしても良かったかと思いました。こちらが好きな方は、こちらでお受け取り下さい。
今回はパンツ丸見えにはなりませんでしたが、設定では白パンツとなっています。
……出来れば、別作品のサキュリバーズも、お読み頂ければありがたいです。
最後までおつき合い下さり、ありがとうございました。