流れ星の夜に願う
明日は、流れ星が見えるらしい。
流れ星にお願いをすると叶うんだって、お父さんが言ってた。
ぼくは…、きょうだいが欲しいな。妹でも弟でも。いっしょにいっぱい遊ぶんだ。
お父さんと一緒にグラタンを食べながら、そんな話をしていました。
たくとはお父さんと2人暮らし。
お母さんはたくとが幼稚園に入る前に遠くにいっちゃったとお父さんが言ってた。
ある日のこと、たくとが幼稚園から帰っていると、ゴミ捨て場が
キラキラ光っていました。
「あれ。すげえ。なんか光ってる!」
近づいてみると、なんと猫の赤ちゃんでした。
たくとは、その猫がどうしても気になってしまい、その場を離れることができず、
家に連れて帰ってきました。
家に着くころには、その猫は光らなくなっていましたが、
たくとはどうしてもその猫が気になってしまい、お父さんに
この猫を飼いたいとお願いしました。
お父さんは普段から家で仕事をしているので、たくとといつも一緒に
過ごせていましたが、お母さんが居ないことで、寂しい思いをさせて
いなかったか気になっていたため、大事に飼うことを約束して、
その猫を飼うことをOKしました。
それからというもの、たくとは明るくなり、幼稚園でも、家でも、
元気に育っていきました。
猫もすくすくと育ち、とても大きい猫になりました。
虎みたいな、豹みたいな毛並みで、とても大きく育ち、
たくとが小学生になるころには、大型犬のようにとても大きく育ちました。
その美しさは口コミで広がり、SNSで拡散された散歩の様子を見た、
テレビ局や雑誌やユーチューバーがいっぱい取材に来ました。
なかには、お金を払うので譲ってほしいという人も居ました。
ついには、無理やり連れて行こうとした、悪い大人が捕まりました。
そのころから、夜になると、猫は毛づくろいもせずに、窓の外を見上げることが
増えました。
お父さんは、たくとの身に危険が及ぶことを恐れて、ちゃんと育ててくれそうな
人に、猫を譲ることを考え出しました。
でも、たくとは絶対嫌だと譲りませんでした。
ある夜、いつものように窓を見てる猫を見たたくとは、
「どうしたの?外に行きたいの?悲しそうに見えるよ?」
と、呟きました。
「ぼくは君のきょうだいになりに来たんだ。でも、ぼくがここに居ると、
いつか君が傷つくかもしれない。だから君と離れないとと思ってたんだけど、
それが悲しいんだ。」
なんと猫が答えたのです。
驚くたくとに猫は追い打ちをかけるように言います。
「明日、ぼくは出ていくことにするよ。」
「いやだ!ずっと一緒に居るんだ!」
たくとは思わず叫んでいました。
そしてそのまま猫に抱き着きながら大泣きしてしまいました。
自分の部屋でテレビ会議をしていたお父さんが会議を終わってから、
たくとを見に来ると、たくとは猫の上でぐっすり眠っていました。
「たくとといつも遊んでくれてありがとう。」
お父さんは、猫に話しかながら、たくとが風邪をひかないように、
そっと、タオルケットを掛けて、晩ご飯を作るためにキッチンに向かいました。
「あの猫がアシェラじゃなければ、変な人が寄ってくることもなかったのかな。」
お父さんは、インターネットで調べて、猫がとても貴重な猫であることを知っていました。
たくとの安全のことを考えると手放そうと思いつつ、さっきの寝顔を見て、
やっぱり、一緒に居させてあげたいとあらためて思いました。
その夜、たくとは猫と離れず、一緒に寝ていました。
お父さんは、そんなこともあるのかなと、たくとを寝かしつけた後、
部屋に戻って、明日の会議の資料を作っていました。
お父さんが仕事を仕事を頑張っていると、
ガチャ!ガチャ!
玄関のほうから変な音が聞こえてきました。
気になったお父さんが様子を見に来ると、何もありません。
のぞき穴を見て誰も居ないのを見てから、ドアを開けて周りも見直しても誰も居ませんでした。
すると
ニャアアアアアア!!!
部屋の奥から、猫の叫び声がしました。
お父さんが慌てて部屋の中に戻ると、見知らぬ黒い服を着た人が猫を抱きかかえ、
無理やり連れて行こうとしています。
「たくと!」
お父さんは思わず黒い服を着た男に向かっていきました。
男が猫を抱えたたまま、すっと、お父さんをかわすと、
床で眠っていたたくとがむくっと起き上がりました。
「たくと!」
お父さんはたくとを抱きかかえ、黒い男の服と距離を取りました。
すると、
「誰?何で!ぼくのきょうだいを勝手に連れて行くな!」
たくとは叫び、お父さんの手をするっと抜けて、黒い男の服に向かっていきます。
すると、男は、猫を離したかと思うと、なんとギラギラ光る、包丁を取り出したのです。
「顔を見られたからには仕方ねぇ!」
男は包丁を振り回します。
包丁がたくとに向いたと思った瞬間、猫が光りました。たくとが見つけたときのように
とても眩しい光を放ちました。
すると、光を浴びた黒い服の男は、気を失い、倒れてしまいました。
「たくと、いままでありがとう。楽しかったよ。そして、ごめんね。」
猫はそういうと、すーっと、光の中に泡のように消えていきます。
「嫌だー!」
たくとは叫びました。
そして、光が収まって、たくとが気が付くと、
「熱い!」
「大丈夫かたくと!よく冷まさないと火傷するぞ、口の中は大丈夫か?」
たくとは、熱々のグラタンが熱すぎて、思わず、口からこぼしていました。
「大丈夫か?ゆっくり食べないと。」
そう言いながら、お父さんが口の周りをタオルで拭いてくれました。
「あれ?おとうさん。猫が!猫が!猫が連れていかれちゃう!」
「猫?たくと、急にどうしたんだい?猫がなんだって?」
「あれ?さっきの悪いやつは?」
「どうしたんだい?幼稚園でヒーローごっこでもしたのかな?お父さんにも聞かせてよ。」
「猫が連れていかれるんだ!」
「それは悪い奴が居るね。そうだ、明日は流れ星がいっぱい見えるらしい。流れ星に願い事をすると叶うというよ。その猫のことを願ってみたらどうだい?」
夢だったのかな?たくとはすごく不思議でした。
そして…
今度は悪いやつになんて負けない!だからぼくはきょうだいが欲しい。たくとは流れ星に祈るのでした。