第六六六話 魔王降臨
運営にそれとなく自分の要求を伝えた後は、ハイエルン城へ。
最近は似たようなルーティンをこなす毎日になってしまっていたが、昨日は自分のダンジョン関係で少し遠征したりもしていた。
ただそれが余計に呼び水となって、また久しぶりに冒険がしたいなと思いつつ、着実に前に進んでいる実感はあるため充実はしていた。
上位精霊のロー夫妻に、ワーアイアン、トール=ルニルの関係者であるトール隊を皮切りに、ハイエルンに移住を希望するNPCもまた少しだけ増えてた。
さすがにワーアイアンのような英傑級は来てくれないが、賊たちと同等かそれ以上の力を持った住民が。
まだまだ領土面積に対して住民は少ないが、全員が戦士。選定魔王の嫌がらせに立ち向かう覚悟を決めた者たちだ。
「あ、モドキさんだ」
「ほんとだ! ヤッバーはじめて生で見ちゃったかも~」
あとはブラットの領地となったハイエルン領に来られるようになったプレイヤーも、随分と増えてきている。
日を追うごとにそれは増えていき、そのプレイヤーの数だけザファーンが悲鳴を上げていると思うと、少し笑ってしまうブラットだった。
推しを見つけたファンのような反応を示すプレイヤーたちのひそひそ話を、聞かなかったとして目的地に到着した。
「来たな。中々良い感じの雰囲気じゃないか?」
「お~、確かに魔王城の入り口っぽい」
はるるんたちにほとんど丸投げしてしまった魔王城型ダンジョンが、完成(仮)したとのことで、見に来てほしいと連絡を受けてやってきた。
課金も有りにしたため、ダンジョンの入り口となる門も思い通りに改造されている。
ボスであるクロミアの美しさと、魔王という恐怖の象徴らしさを合わせた、優美な装飾と荒々しいデザインの立派な門が聳え立っていた。
一見するとそれは門が衝立のように立っているだけで、向こう側には何もない。
「くっくっくー、勇者にもそれが分かるとは──ね。中々やるではないか、ふふふ」
そのデザインを褒めていると、ゴスロリ眼帯、右手に包帯、腰には日本刀、首元にはロザリオのネックレスをかけた、病的なまでに白い肌の小さな少女が、中二っぽいポーズを取りながら、意味ありげな笑みを浮かべていた。
彼女は機械人形タイプのアバターを持つプレイヤーで、このダンジョンの製作に携わってくれた百家争鳴のメンバー「チュニ」。
こてこての中二病キャラに、ブラットも振り切ってるなぁと感心してしまう。
互いに顔合わせくらいは済ませてあるため、今更自己紹介はしない。
ブラット、はるるん、サクラ、そしてチュニの四人でさっそく魔王城の最終チェックをすることに。
ブラットが門に触れると、不気味なオーラのエフェクトが零れだし、不吉な音楽と微かな女性の笑い声が聞こえるといった演出を入れながら扉が開く。
「課金しないとほとんど選べないけど、課金すると無限に演出とかも拘れるんだよね」
「他にもガッツリ課金してる作り込んでる人が結構いるんだっけ? ここで運営資金を回収ってところかな」
「そんなことしなくても、儲かってるらしいがな」
なんともメタな会話をしながら扉の向こう側に行くと、一気に風景が切り替わり別空間へと飛ばされる。
ブラットの想像ではいきなり城の中にいるイメージをしていたが、そこは戦場跡地のような不毛の荒野。
雪のように白い灰がしんしんと降りそそぎ、焼け焦げた臭いと血の香りが鼻につく。
近くに流れる川はどす黒く、何故か川下から川上に向かって逆流している。
川辺には黒いバラのような花が咲いているが、触れるものを拒む針のような棘が無数に伸びていた。
ところどころにオブジェクトとして置かれた、鎧を纏った戦士たちの死体が転がっており、動物系のモンスターたちが食い漁り、放置されたままの軍事物資は今もなお燃えている。
さらに戦死者がアンデッドとなり彷徨っているという設定で、ゾンビやスケルトン、ゴースト系のモンスターが跋扈していた。
魔王城はそんな戦場跡地を彷徨うモンスターたちを抜けた向こう側に、堂々と聳え立っていた。
豪華絢爛にして禍々しい、魔を統べる女王の居城が。
「くっくっく、ここは環境デバフも採用していてね。そもそも魔王に謁見する資格すらない者は、『魔王の畏怖』というデバフがついてスタミナの減りが早くなるのだ!」
「まあでも、ザファーンを討伐できるレベルならギリギリ魔王城までは行けるかな?って難易度にはしてるつもりだ」
『魔王の畏怖』は魔王クロミアと実力に差があるほど負荷がかかり、息苦しくなってスタミナ減少量が増していく。
ただし対抗策もちゃんとある。聖属性系の浄化や勇気バフ、結界なんかのスキルがあれば、軽減もしくは無効化できる仕様となっている。むしろそれ込みの難易度だ。
四人とも管理者モードで来ているため、何も手に入れられない代わりに、モンスターたちも何もしてこない。
そのまま真っすぐ魔王城へ向かって、戦場跡地を進んでいく。
「モンスターにもそれぞれちゃんと、オリジナルのテクスチャーがついてない?
これだけ作り込むって、相当に大変だったんじゃないのか?」
「ふふん、フィールドも含めて意外とテンプレ化した素材を使いまわしているし、AIアシストで自動処理させてる所もあるから、君が想像しているよりずっと楽だったよ」
「じゃなきゃ、たった数日でここまでもの作れないよ、ブラットくん」
「そっか、あまり負担になってないなら良かったよ。お、さっそく階層ボスって感じか?」
「ああ、魔王城に入る前の腕試しだな。ちなみにモンスターの配置は俺が考えたぞ」
魔王城へ続く城壁の門番となっているのは、ガーゴイル系のモンスターが二体。
さすがにブラットの城のあちこちに、当たり前のように今では設置されているユグ・ガーゴイル程ではないにしろ、策を弄してやっとザファーンを倒せるといったプレイヤーでは苦戦する強さをしている。
さらに城壁の上にも、兵士の恰好をしたモンスターが銃や弓を持って狙撃してくるため、注意が必要。
それらに対処しながら二体の門番を倒すと、ようやく城壁門の鍵が手に入り次のステージである、魔王城の庭園に入ることができる。
庭園は戦場跡地と打って変わり、美しい光景が広がっている。
植物は緑ではなく銀や金色の葉や茎で、宝石のように硬質で透明な色とりどりの花弁を持つ。
地面は黒曜石のような石材で舗装され、歩くたびにカツカツと冷たい音が鳴り響く。
常に黄昏時のような薄暗い光に包まれており、空気中には高濃度の魔力の粒子が小さな蛍のように舞っている。
「勇者くん、ちょっとそこの花壇を掘ってみてくれないかな?」
「ん? 別にいいけど………………お、おぉ……なんか死体が埋まってる」
言われた通り宝石の花々が植わっている花壇を少し掘ってみると、その根っこが纏わりついたミイラのような死体が出てくる。
他にも腐りかけだったり、完全に骨になっていたりと、グロ耐性がないとちょっと厳しい多種多様な種族の死体が埋まっていた。
チュニのブラックユーモアが炸裂した結果である。
「破れた挑戦者たちは、この美しい宝石庭園の肥料にされているという設定だよ! どうかな?」
「綺麗なだけじゃないってところが、最高に魔王城っぽくていいかもしれないな」
「だろう! 勇者くんは、勇者なのになかなか分かり合えそうで嬉しいよ。私は」
「ちなみにここは呑気にしてると、後ろの城壁上と城側の窓から狙撃兵に撃たれるようになってるぞ。
第一ステージで城壁の狙撃兵を倒してても、入ったときに時間経過で復活する仕様だ」
「トラップもここからしっかり張ってるから、注意しないと引っ掛かってモンスターたちになぶり殺されちゃったりもするよ」
「狙撃される中でトラップも警戒してモンスターの相手もしろか。でもまぁソロ限定じゃないんだから、それくらいの方が歯ごたえがありそうだ」
庭師や見回りの兵士の恰好をしたモンスターと戦いながら、トラップがあちこちに設置された迷路というほど複雑ではないが、それなりに入り組んだ庭を抜けると、城門を守護する騎士の恰好をしたボスモンスターを相手取ることになる。
それを倒して魔王城の鍵を手に入れると、ようやく第三ステージ──本題である魔王城攻略がスタートする。
第三ステージ、魔王城一階──騎士団区画。
黒大理石の床に、磨き抜かれた銀の装飾。高い天井からはクロミアをイメージした軍旗が垂れ下がり、鎧を着こんだ騎士モンスターが巡回している。
ここから先は階層を飛ばすためのアイテムが手に入ったりと、今後の攻略を有利にするアイテムやヒントも散りばめられているため、初見は特に入念な探索が推奨される。
ただ庭園のボス級の兵士がごろごろいるため、そこで苦戦しているようではここではすぐに死んでしまうだろう。
「ちなみに階級認証システムにしたから、戦ってより高い階級証をドロップで拾わないと、ギミックが解除できずに進めなくなる」
「三階層の中でも区分けされてるって感じか」
一階といっても非常に広く、二階へ繋がる通路を塞ぐボスの所へ行くためには、徘徊するモンスターから、それぞれの区画のギミックを抜けるための階級章を要求される。
なので戦闘を一切せずに、スニーキングでボスまで直行はできないようになっている。
そうした先で待ち受けるのは、魔王クロミアの居城で将軍を任せた人型モンスター。そこまでの戦闘で苦戦するようでは、勝てないレベルの階層ボスが用意してあった。
そして将軍を倒すと第四ステージ、魔王城二階──研究区画。
魔法や錬金についての研究室があちこちにあり、大きな図書館も存在する。
ここでは一階と打って変わり、転移魔法陣を用いたギミックなど、頭を使って先に進むことを要求される階層となっている。
課金によりギミックの解き方はAIが毎回変えてくれるため、前回のままギミックを解こうとしても解けないようになっている。
ただ研究の失敗物とばかりに、気味の悪いクリーチャーのようなテクスチャーを張られたモンスターが跋扈していたり、階層ボスは研究の成果とばかりにキメラ型のモンスターが配置されている。
そんなキメラを打倒すると第五ステージ、魔王城三階──側近区画。
洗練された貴族的な空間が広がり、真っ赤な絨毯に金細工のシャンデリア。壁には歴代の戦果を描いた巨大な絵画や、クロミアの肖像画が飾られていた。
全体的にいい塩梅に華美に飾り立てられ、戦う雰囲気とは真逆に思えるが、側近を冠する階層なだけあって配置されたモンスターたちは選りすぐりの強者たちだ。
わざわざこのために、ブラットはまだ誰もプレイヤーが辿り着いていない、未開の危険地帯を突き進み、強そうなのを十体ずつ倒してダンジョンに出せるようにしてきたのだ。
その地では通常ポップするモブ扱いだったが、一体一体が下手な野良魔王と同等かそれ以上の力を持っている。
下の階層ボスのキメラも、似たような場所で狩って登録してきたモンスターだったりもするが、平気でそのボスを超える個体も闊歩している。
キメラ一体に苦戦しているようでは、この階層では生き残れないだろう。
要求されるのは、この側近たちを押しのける力。頭は使わなくてもいい。この先にいる魔王に強者であることを示すための階層だ。
一定数倒すとギミックが自動で解除され、先のフロアへ進めるシステムになっていて、そうして最後まで進んだ先には、ブラット激推しのモンスターが涎を垂らし待っている。
ポップ数は少ないが、その運の良さで十体倒すことに成功したレアモンスターであり、エリートたちのボスを名乗るに相応しい強力なクマだ。
見た目は巨大な熊の体格をしていて、毛並みは真っ黒というより光を吸うような暗色で、顔の一部や胸元に模様なのか傷なのか分からない白い模様がある。
目は赤ではなく、むしろ何も映していないような無光の瞳。立ち上がると異様な威圧感を、敵対者に与える。
それは近くで見ると、体の輪郭が少し曖昧に見える、存在がぼやけたクマというのが正しいか。
認識しようとしても、上手く捉えることができない。攻撃を当てたはずなのに、どこを殴ったか分からない。なのに相手の一撃は重く、耐久もすこぶる高い。
正直なんで魔王認定されていないのか、レアとはいえモブモンスター扱いなのかと首をかしげたくなる強さをしていた。
「『正体不明の暴君』って、原住民たちは呼んでたっけ」
「正直、百家争鳴のメンバーの誰を連れてきても、勝てる気がしないんだよな」
「こんなのが野良湧き地帯なんて、絶対に行きたくないわ」
「くっくっく、私はこの不気味な所が気に入ってるんだけどね。是非、ダンジョン外でもお目にかかりたいものだよ」
そんなまさに最後の門番に相応しいエニグマを討伐すると、ようやく魔王クロミアが待つ謁見間へ入ることが許される。
ブラットたちは管理者なので、エニグマを素通りして最後のステージへ行くための長い階段を上っていく。
この長い階段はセーフゾーンになっているため、ラスボス戦前の準備ができるようになっている。
「城はクロミア合わせても四階なのか」
「本当はもっと詰め込みたいが、アーリーアクセスとしてはこんなものだろう。
ここから実際に人を入れて、その反応や戦績を見て調整したりしていくつもりだ」
「この課金で作ったお城も、データキャパ的にもっと沢山階層も増やせるからね」
「ふっふっふ、私の想像力はまだ尽きていないよ。期待していてくれ、勇者くん」
「ああ、期待させてもらうよ。チュニさん」
階段を上り切り、皆で大きな扉を押して謁見の間──「天球の御座」へと足を踏み入れていく。
そこは城の最上階にありながら、天井がない構造。頭上には常に満天の星空が広がり、渦巻く魔力の奔流がオーロラのように天にかかっている。
部屋の奥には、空高くまでのびる水晶階段の先の壇上に、飾り立てられた玉座が置かれていた。
その玉座に悠然と魔王クロミアは脚を組んで座り、満月の光がスポットライトのように彼女を照らし、派手な銀髪が煌めいている。
初期案よりも随分と服装も改造されていて、かなり魔王っぽさが強調されている。
玉座まで続く道は磨かれた結晶の床で、星の光を反射してキラキラと宝石のように輝いていた。
「キャー! クロミアちゃん素敵ー!」
「くくくっ、いい魔王っぷりだ。ほれぼれするね」
「サクラはすっかりクロミアのファンだな」
「作った側の人間としては、ここまで喜んでくれると嬉しいかな」
それぞれクロミアの姿を確認すると、管理者モードで挑戦者が来た時の演出を指示した。
するとカツン、カツンとブラットたちを見下ろしながら、ゆっくり長い階段を下りてきた。
荘厳なパイプオルガンのBGMがどこからともなく鳴り響く。
天へと伸びるかのような階段から降りてくるその姿は、まるで神が降臨するかのような神秘性を帯びていた。
だがしかし、彼女は魔王である。少し顔立ちが幼いからか、女王というよりはまだ王女といった風体だ。
しかしその身に宿したプレッシャーは、今ここにいるブラットが放てるものと大差ない。
プレイヤーたちでは、この時点で心折れてしまうだけの実力差を感じさせることだろう。
「よく来たわね。遊んであげるわ、かかってきなさい」
荘厳な登場テーマから、テンポの速いクラシックのような戦闘BGMに切り替わった。
クロミアは勝気な瞳をランランと輝かせ、口元に笑みを浮かべながら容赦のない大魔法をブラットたちへとお見舞いする。遊びどころの威力ではない。
しかし管理者モードで入っているため、いくら攻撃されてもダメージが入ることはなく、すり抜けていく。
「うーん、我ながら強そうだな」
「試しに何度か戦ってみたが、実際に馬鹿みたいに強かったぞ」
「そりゃあ、性別は違えどブラットくんのコピーだしね」
「まったく素晴らしいね。まさに魔王の風格だよ」
戦闘スタイルも魔法主体で剣技をサブにしているため、普段のブラットとは違う動きをしており、本人からして参考になるなと感心してしまう。
課金によってAIの頭の良さも最大限まで上げているため、許可された範囲の能力でできる最大効率の戦い方をしているのだから、それも当然のことなのかもしれない。
「今度、自分でも挑戦してみよう。魔法戦の参考になりそうだ」
「魔法だけじゃないけどな。ちょっとでも近づけば、容赦なく斬りかかって来るぞ。あのお姫さまは」
「姫じゃなくて女王様だよ、はるるん」
「それよりも勇者くん! 頼んでおいたあれはできてるかい?」
「ああ、一応複製できるようにしてきたけど、こんなのでどうかな?」
「「「お~」」」
ブラットが頼まれていたのは、魔王クロミアが持つと映える世刻奇剣。
『エクリプシア』『スペキュラリス』『ロザ・マリス』『夜冠』『灰天輪』と呼ばれていた、五本の謳われぬ剣を世碑納庫から取り出してみせた。
『エクリプシア』は黒い刀身で、縁だけが淡く月光色に輝いている剣。満月を欠いたような半円の刃紋が入っており、静かで冷たい美しさがある。
満月であるほど効果は高く、月の光を吸ってより切れ味が増す。さらに斬った相手のバフなど、良い効果をもたらすものを吸い取って自分のものにしてしまう効果もついている。
『スペキュラリス』は刀身が鏡面のように磨かれ、うっすらと紅色を帯びた剣。刀身に映り込む姿が、少しだけ遅れて動く奇妙な特性を持つ。
魔法式を刀身に映し取り、鏡写しの斬撃としてお見舞いするという特性がある。
女性限定の剣であり、使い手が見目麗しいほど強力になる。
『ロザ・マリス』は刀身の根元から先端にかけて、薔薇の蔓のような紋様が刻まれている。華美な装飾が成され、ところどころ棘のような突起がついている。
斬撃による傷は跡として残らず、代わりに刺青のように呪いの花が刻まれる。それは斬られた箇所から黒い薔薇が咲くように広がっていき、力を吸い動きを鈍らせる。
『夜冠』は王冠のような鍔を持つ重い剣。刀身は黒曜石のような艶があり、刃の奥に星のような光が散りばめられている。
夜しか使えない剣であり、振るうたび周囲に夜の領域を作り、敵の感覚を鈍らせ、音も遠のかせる。
『灰天輪』は、輪と刃が一体化した異形の美剣。灰色の光輪を思わせる形で、斬撃を円環として残し後から追尾させる灰天使の剣である。
正直どれも見た目重視で、ブラットが良く使っている世刻奇剣と比べると、少し使い勝手が悪い。
だがどれもクロミアを管理権限で止めて持たせてみれば、とてもよく映える。彼女のためにあつらえたかのような剣ばかりだった。
「いいっ! いいよ、ブラットくん。これを複製するように設定しておきましょう」
「分かってるじゃないか! 勇者くん! いいセンスだ」
「どうもどうも」
女性たちが大絶賛し、クロミアにポーズさせている中、はるるんが冷静にそれを見つめながら話しかけてきた。
「ちなみにブラット。『アビシオン』はどうする? 使わせないほうがいいよな?」
「アビシオン? なんで? 眷属なんていないでしょ、クロミアに」
「いや、この子かなり頭良くしたからか、待機中に【紛魂顕形】で眷属作ってたりすんだよ。
それがダンジョンの裏側にプールされてて、使用許可すると疑似復活させた魔王たちを召喚するんだ」
「魔王が魔王を大量召喚しちゃダメでしょ……やばぁ。この子、こわぁ……。アビシオンは封印しておこう」
「ああ、分かった。そうしておこう。理不尽も行きすぎればネタになるんだけどな」
「さすがにやりすぎだって。やばいね、クロミア。理不尽すぎるって」
しきりにやばいやばい言っているブラットを横目にしながら、「それは他のプレイヤーがお前に思ってることだぞ」と口から出かかった、はるるんだったが……空気を読んでそっと喉の奥に飲み込んだ。
次は土曜日更新予定です!




