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Become Monster Online~ゲームで強くなるために異世界で進化素材を集めることにした~  作者: 亜掛千夜
第三章

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第六四話 コンスタンティン

 HIMAには上で他の危険がないかを確かめてもらいながら、ブラットが船から流れゆくNPCに向かって飛んでいく。

 そのNPCは植物の弦で編んだような両腕を持ち、他は純人族といった人の要素が強い細身の緑人族の男。

 抱き着くようにトランクケースを掴みながら、飛んでくるブラットに気が付いた。



「た、たすけて……」

「ああ、助けに来たぞ! 手を伸ばせ」

「う、ううっ」



 プルプルとトランクケースに胸元を乗せるように手を伸ばし、ブラットがそれを掴んだ。



「よし! トランクケースを離していいぞ! あんた一人くらいなら持ち上げて飛んでける!」

「そ、そんなことできない! この中には命よりも大事なものが入っているんだぞ! 私と一緒にこれも運んでくれ! じゃなきゃ、ほっといてくれ!」

「はぁ!?」



 現実でこんなことを言われた日には、引っぱたいて「命より大事なものが~」みたいなことを言って無理やり捨てさせたり、もしくは「じゃあ知らん、好きにしろ」と見捨てるかのどちらかだろう。

 こちらもリスクを負って助けに来ているのに、さらに大きなリスクを負ってまで荷物も持っていきたいという我儘を聞いてやる筋合いはない。


 だがしかし、ここはBMO──ゲームの世界。

 こういうことを言ってくるということは最悪、男だけ助けた場合イベント〝失敗〟で、荷物ごと救出することで〝成功〟。

 もしくは荷物ごと救出で〝大成功〟判定となり、普通以上にいい何かが起きたり貰えたりする可能性が非常に高い。



「もうっ! ──ぐっ、ちょっと無理」

「がんばってくれ!」

「なんなんだこいつは……」



 試しに男とトランクケースごと持ち上げようとしたが、重くて断念。

 ならば海面の上を引きずるように運べないかとも思ったが、それも波の影響で思った方向に行ってくれない。

 こんなことをしている間にも、ブラットのスタミナゲージも減っていく。



「ブラット、何してるの!! 早くしないと!」

「って、もう船が──」



 船よりも先に行ったはずなのに、もたもたしている間に追いつかれてしまう……どころか、横を通過しようとしていた。


 HIMAもこれは何かあったと慌ててこちらにやってきて、二人で一緒に引っ張っていこうとするが、思っていた以上にケースが重い。

 よくこれで浮いているなと愚痴をこぼしたくなるほどに。



「ブラット、これは?」

「いいかも! ナイスHIMA。これをそのケースに結んで、早く!」

「わ、わかった!」



 HIMAが差し出してきたのは、鉤爪付きロープ。

 海賊船の戦利品の中にあったもので、何かに使えるかもと船に乗せておいた物をHIMAが持ってきていたようだ。

 急いで男にケースごと鉤爪の付いていない方のロープを巻き付けさせ、その間二人は船から引き離されないように男を押しとどめる。


 しかし無情にもロープを巻き付けている間に、船が完全に通り過ぎてしまう。

 慌ててブラットが鉤爪を投げて船にひっかけようとするが、長さが足りず空を切る。



『しゃちたん、ちょっと速度を落として!』

『ええ!? 後ろは大丈夫なの?』

『まだ大丈夫なはずだ!』

『……ならやってみる!』



 ブラットとHIMAはすかさずパーティ間でのグループ通話機能で、船内のしゃちたんに連絡を取る。

 さらにロープを巻き付けたことで引っ張りやすくなったトランクケースを二人掛かりで綱引きのように引いて、無理やり船の方へと飛んでいく。

 この状態なら持ち上げることはできないが、何とか流れに逆らって船のほうに進むことはできた。


 しゃちたんはアクセルペダルから触手を外し、ドキドキしながら速度をわざと落としていく。

 後ろの巨大魚から、せっかく引き離した距離も比例して縮んでいってしまう。

 だが、そのおかげで何とか鉤爪が届く範囲までやって来れた。


 ブラットは慎重にグルグルと重りのような鉤爪を回して、船に向かって投げつける。

 ガキンッ──と音を立てて、船の横側の縁にひっかけることに成功。

 船がトランクケースを引っ張りはじめ、ブラットたちがロープを引く必要もなくなった。



『もういいよ! アクセル踏んで!』

『あいあい!』

「ふぅ、これで──」



 巨大魚との距離もまだギリギリ許容圏内。

 トランクが壊れてしまうかもしれないので、引き上げてからジェットをまた併用して逃げれば距離もまた引き離せる。

 そう思って一息つきながら二人はロープに掴まり翼を休め、巨大魚の方を確認した。

 すると不可思議な行動を取りはじめたのが視界に飛び込んでくる。



「「なにあれ?」」



 なんと水面に上半分を出した状態で尾びれだけを動かしバタバタ泳ぎながら、エビのように背を反らせはじめたのだ。

 その泳ぎの体勢をバイクで例えるなら、ウィリー走行といったところか。


 そしてデコピンを弾くように体が元の状態に戻り、──ビョンッとその勢いのまま巨体が華麗に宙を舞う。

 水の抵抗から解放されたその巨大な魚は、巨体をくねらせ滞空時間を稼ぎながら大きな口を開けて船の中央に向かって突っ込んでいく。



『『──ジェット!!!』』

『──っ!?』



 もうロープで繋がっているトランクケースが、船の引く力に耐えきれず壊れても構わない。

 今使わなければ、船が巨大魚に貪られ致命的なダメージを負ってしまう。

 そんな気持ちでブラットとHIMAが通話ごしに、しゃちたんへと叫ぶ。


 しゃちたんはほぼ反射的に、二人の言葉通り『ジェット』のボタンを押していた。

 グン──と一瞬だけ速度を大幅に上げて、前へと強引に波を切り裂き進んでいく。

 巨大魚は目測が大きくズレたことに驚き、くねらせていた体をピタッと止めて落下していく。



「ォォォォォ──」



 だがただでは終わらないとばかりに、最後の瞬間体を必死に伸ばして口を狂ったように上下に噛み鳴らす。

 ──ゴギバギンッという硬い何かがえぐられるような嫌な音が船に響き、ザバンと大きな水しぶきを上げて巨大魚は水に落ちた。



「「「…………」」」



 ブラットもHIMAもしゃちたんも、あんぐりと口を開けたまま硬直する。


 船は────落ちなかった。

 結果としては船尾の縁の部分が大きく抉られはしたが、航行能力に支障をきたすほどではない。

 だが船が傷ついたことで修復モードに入り、速度が勝手に落ちていく。


 そのことに気が付いたしゃちたんは、修復用にとっておいた資材をすぐさま投入し急速修復。

 抉られた部分が巻き戻るように修復されていき、速度も通常の状態に移行して事なきを得た。


 巨大魚の方はと言えば、大ジャンプ突撃で体力を使い果たしたかのように、その場から動かずプカプカ浮いているだけで、もう追ってこようとする気力はなさそうだった。




 緑人族の男を自分たちの船へと乗せ、トランクケースは引き上げるのを彼にも手伝わせ、三人がかりで何とか引き上げることができた。


 だがまだ安心するのは早い。

 男はとりあえず隅の方で静かにしていてもらい、ブラットとHIMAはあの魚のようなものはいないか、当たり屋や敵はいないか全力で警戒。

 しゃちたんは運転に神経を注ぎ、やっとのことでリバース海域を突破した。


 周りに敵もおらず戻してくるような海流もなくなって落ち着いたので、一度海の上に船を停めて男の話を聞くことにする。

 三人で集まって緑人族の男の前に立つ。すると彼は感激したように両手を広げ、感謝の言葉を口にした。



「ありがとう! 君たちは命の恩人だ!」

「はぁ……、それはよかったよ。それで、なんだってあんなとこで漂流してたんだ?」

「実は私の乗っていた船がモンスター海賊たちに襲われたんだ。

 船員たちや護衛に雇っていた人たちも全員殺されてしまって、私は船をくれてやるくらいならとコアを取ってトランクケースと一緒に海に飛び込んだんだ」

「よく海のモンスターにやられなかったね」

「それはこのトランクケースのおかげだ。

 これは高耐久、高浮力、高防水に加えて数時間の水棲モンスター避けの効果までついている。船の旅をするなら必需品だよ」

「それは普通に凄いな」

「なんたって、あのエービトン製の超高級トランクケースだからね」

「「「エービトンて……」」」



 エビのロゴが入った部分を見せつけるようにトランクケースを押し出してきたが、そんなパチモンブランドは三人とも知らず適当にスルーした。



「そうだ、助けてもらったのに名前すらまだだった。

 私の名前は『コンスタンティン』。史上最高の冒険家ドレークの研究をしながら、あちこちの海を巡っている冒険家兼研究者だ。

 気軽にコースでもコンシーでも好きに呼んでくれ」

「史上最高の冒険家のドレーク……? って、もしかしなくてもドレーク冒険記のドレークか?」

「もちろん! 他に誰がいるっていうんだ!

 君たちもあれか? 彼を侮辱する者どもと一緒なのか?」

「いやいや、これまでその名前を出す人は皆ほら吹きだのなんだの言ってたからさ。でもコースさんは違うのか」

「ああ、何と言っても私の祖先は彼と共に船に乗っていた一人だったんだ。そんな私が信じないでどうする」

「じゃあドレークのことは、たいてい知っていると思ってもいいのか?」

「その辺の者たちよりは詳しいと断言しよう」



 もっと直接な報酬が貰えたり、イベントを発生させないと得られない宝の地図なんかを期待していた三人だったが、それとは違ったベクトルで大きな収穫が得られるかもしれない。

 これは期待ができそうだと、三人は視線だけでわかりあって質問を続ける。



「実はオレたちもドレークのことを調べていて、最終的にエルドラードを探してみたいと思ってる」

「ほおっ! それは素晴らしい! 私も同じだよ!」

「そうなのか。じゃあ助けたお礼に……という言い方はあれなんだけど、オレたちに知っている情報を分けてほしい」

「ふーむ……。君たちは命の恩人だし、まさかの同志だったということもあるから、いろいろと情報を分かち合いたいという気持ちはある。

 だが私は私で、自分自身が一番にドレークの汚名をそそぎたいとも考えている。だから全てを教えるわけにもいかない。

 よって三つ、君たちの質問になんでも私が答えられる限り教えよう。だが三つだけだ。

 もし私が知らないことでも『知らない』という答えを出すことで、一つとしてカウントさせてもらうからそのつもりで質問を選んでほしい。

 あとはそれだけだとなんだ。私の船のコアと貴重な研究資料の一つ、【ドレークの手記】の原本を渡そう」

「コアもそうだけど、その手記も私らに渡しちゃってもいいの?」

「手記は散々調べ尽くしたし写本も持っている。コアはまた新しい船を買い直すから大丈夫だ」

「え?」

「ん? どうかしたか?」

「いや、大丈夫だ」



 なにか引っかかるものを覚えたブラットだったが、本人がそう言うならまあいいかと遠慮なく貰うことにする。

 あとは三つの質問だが、これは慎重にしないと無駄にしてしまう恐れがある。

 コンスタンティンに一言断ってから、三人で何を聞くのか相談していく。



「自由に質問を選べるのはいいけど、だからこそ何を聞くか迷っちゃうねぇ」

「それに具体的に何を知っているかも、私たちはわからないしね」

「本人が知らないことを聞いた時点で一回無駄になるわけだし、ある程度ドレーク冒険記に載っていそうなことを予想したほうがいいだろうな」



 あれこれと五分ほど相談し合い、ブラットたちは三つの質問を決めた。



「じゃあまず一つ目。ザラタンはどこにいる?」

「ザラタンがどこにいるか、か。あの大亀は実は決まった周期で決まった場所を巡る習性があるようで、ドレークはその周期を割り出せる計算式を編み出していた。

 そこから今の時期を割り当てていくと──」



 コンスタンティンはトランクケースの中から紙を出して、何やら見たこともない記号と数式をにょろにょろと書いて計算していき解を求めだした。



「ふむふむ、この座標のあたりになるはずだ」

「えっと……その座標だと、ここから西北西の方角の辺りか」



 もともと目指そうとしていたドレーク冒険に記されていた座標よりも、さらに北西にいった場所にいるようだ。

 このまま知らずに行っていたら、あちこち海の上を右往左往していたかもしれない。



「おそらくね。私は一度船をザラタンに壊されて漂流し死にかけて以来、見に行ってはいないが、前に行ったときはこの計算式の通りの場所にいたから間違いないはずだ」

「そんときも海を彷徨さまよってたんだ。

 てかコンちゃん、めっちゃ船沈められてんね」

「こ、コンちゃん? まあ、いいか……。

 研究に犠牲はつきものだからね。おかげでエービトンのトランクケースは必需品さ。そのときも私はこれに助けられた。

 ──では次の質問どうぞ」



 しゃちたんが適当に名付けたあだ名が少し気になったようだが、すぐに気にした様子もなく二つ目の質問を求めてきた。



「ドレークはリーサル海賊団と大立ち回りをしたとは聞いてるけど、彼は一度その海賊団の首領なり中枢のモンスター海賊を潰したりはしたことはあったか?」

「私の知る限りではない。幹部レベルになると強すぎて歯が立たなかったらしい。

 戦って勝ったのも、精々その下部組織の連中だったはずだ。

 あとは、あの手この手で煙に巻いて逃げていたとか。

 英雄ドレークでもそうなんだ。リーサル海賊団なんてのは、人間が立ち向かうような奴らじゃないんだろう」



 一つ目は一番自分たちに近そうなザラタンの居場所を、具体的に特定しておきたかったからというシンプルな理由。

 そしてこの二つ目の質問の意図は、リーサル海賊団を倒す必要があるのかどうかを知りたかったから。


 聞く限りでもリーサル海賊団は、猫の首領程度でまぐれ勝ちを拾うようなブラットたちでは、なにをどうやっても勝てるような相手ではなさそうだった。

 であればリーサル海賊団の中枢の討伐がエルドラード行きの条件になっていた場合、達成はほぼ不可能ということになる。

 もしドレークがそれをやってのけていたというのなら、今回もその条件達成は必須になっていた可能性が高いと三人は考えたのだ。


 けれどコンスタンティンの答えは『いいえ』。つまり彼の知識を信じるのなら、リーサル海賊団を潰す必要性はまったくないということ。

 今後の情報次第でもあるだろうが、これなら充分ブラットたちが狙える範囲内にあると考えてもいいだろう。


 そして最後、三つ目の質問。



「ルサルカとの融和ゆうわは可能か?」

「私の見解ではあるが、おそらく可能ではないかと考えている」

「今回は断言しないんだね」

「ああ、というのもルサルカの記述はどれも曖昧なものばかりなんだ。

 彼の手記は実は私が持っているものだけではなく、複数存在している。

 そのどれもが本物であるとはわかっていて、本人が書いたであろうということもほぼ間違いないと考えられている。

 けれどなぜかところどころ違うことを書いている。穴あきのように空白になっていたりもする。

 先に君たちに答えた解答は、どれもが共通して書かれていたからこそ私も断言できた。

 だがルサルカに関しては食い違う部分も多く、穴あきになっている部分もあってよくわからないんだ。

 かといって実際に試しに行けば確実に死ぬだろう。かの存在だけは眠らされたら最後、そのまま逃げるなど考えることもできず船と共に沈められてしまうのだからね」

「けどじゃあ融和できる相手だと判断したのはなぜなんだ?」

「沢山ある情報の中で、共に楽器を奏でたのだろう……と取れなくもないような記述があったからだ。

 共に楽器を奏でられるなら、少なくとも殺されるというイメージからは遠いだろ?」

「なるほど……」



 この質問の意図はルサルカが敵対モンスターではなく、言葉の通じるNPCだった場合、凶悪な存在でも戦わずに済む融和の道があるのではないかと探るため。

 そう思ったきっかけは、ルサルカだけ複数の意見が出ていたから。ならもしかすると、ルサルカには複数の攻略法が存在するのではないかと思い至ったのだ。


 こちらもどうせ戦ったところで、今のブラットたちが敵う相手だとは思えない。

 ではそれ以外の関わり方を探していくしかないだろう。


 そして新たに出たワード『楽器』。

 歌を武器とするくらいなら、歌うことが好きでもあるはず。ならば音楽でわかりあうなんてのは、ありそうな話だ。

 どこかで用意できるなら、楽器も用意してみようとメモアプリに書き込んでいった。



「これで質問には全て答えた。あとは自分たちで調べていってほしい」

「ああ、ありがとう。コース」

「なあに、命の恩人のためだよ」



 そう言いながらコンスタンティンは船のコアと、手記の原本の方を渡してきた。

 彼の元の船はかなり立派な船だったようで、コアの中には巨大魚に齧られた部分の急速修復に使った以上の資材がぎっしりと詰まっていた。

 なんなら情報も何もなくても、これだけで助けた甲斐があったと思えるほどに。



「そういえばこれは別に質問ってわけじゃないんだけどさ。

 親方のときも気になってたけど、さっきコンちゃんもモンスターに船を取られるくらいならって言ってたじゃん?」

「ん? ああ言ったね」

「私らは持ち主の上書きなんてできないのに、なんでモンスターはそれができるの?」



 ブラットとHIMAはそういうゲームの仕様なんだろうでかたずけていたが、しゃちたんはそこが気になっていたようだ。



「それは奴らの中に【船盗り】というスキル持ちがいるからだ。

 ある程度大きな海賊団なら、どれかの個体が持っているはずだよ。

 なぜかはわからないが、人間でそのスキルを持っている者はいないらしいが」

「じゃあそのスキル持ちがいなければ、船は取られないってことか?」

「取られはしないだろうけど、取れたとしてもたいていは自分の船でいいやと物資をあさって壊すだけだし、気に入ったとしても取れないならやっぱり壊してくるしで、我々人間からしたらどっちも変わらないんじゃないかな?

 【船盗り】で取られた船は、こちらの船に戻すこともできないしね」

「じゃあ結局、対処法は変わらないってことか」

「そうだね。船はもちろん物資だってモンスターになんか渡したくないのだから」



 こちらはドレーク関係とは関係ない、普段の会話の延長ということだったのか、しゃちたんの疑問に的確に答えてくれた。


 それから彼が知っているという、ここから一番近いポータルのある島まで送り届けてコンスタンティンとはお別れだ。



「じゃあ、また機会があれば会おう!」



 そう言って去っていく彼の後ろ姿を、ブラットはどこか釈然としないような顔で見つめる。



「ブラット? どうしたの? コースさんに何か聞き忘れたことでもあった?」

「いや、そういうわけじゃないんだけどさ。

 なんでコース──コンスタンティンはオレたちに、〝原本〟の方の手記を渡したんだろうってずっと気になっててさ」

「どゆこと?」

「だって命張ってまで守ろうとした貴重な資料の内の一つで、写本も持ってるなら普通はそっちを渡さないか? オレだったら絶対にそうする。

 なんで唯一無二の原本を渡す必要がある? 助けたお礼っていうなら、シップコアとその資材だけでも充分すぎるほどだったし、それに加えて三つの質問に手記の写本までつけてくれたら、それだけで喜んだぞ、こっちは」

「ドレークが書いた手記は複数存在するとは言ってたけど、それでも原本を渡してきたのは確かに変な気はするね」

「でもさぁ、ぶっちゃけこれゲームでしょ?

 そういう流れだったってことなんじゃないの?

 それこそさっき私が聞いた【船盗り】みたいな、ゲームの仕様ってやつじゃない?」

「その可能性も大いにある。オレの考え過ぎかなぁ」

「まあ原本貰って困ることはないんだし、今はラッキーくらいに思っておけばいいんじゃない?

 そのうち理由もわかるかもしれないしさ」

「だな。とりあえずオレたちはオレたちで、ザラタンを目指すだけだ」



 そうしてブラットは小さな疑問を隅に追いやり、次の行動を開始していった。

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