第五一二話 VSヘイムダル
ブラットの周囲で舞い病原菌を腐食し壊していく灰の花弁に混じって、七つの大きな灰の光球が浮かび上がる。
それらから強力無比な腐食の光線が連続して射出され、ヘイムダルの無数の腕を脆くし撃ち砕く。
この【セブン・アッシュレイ】は下位職級の魔法ではないが、ブラットが職業スキルとして後付けで入手したものではなく種族として持っているスキルであり、かつ中位灰天使【灰華】になることで【アブソリュートリンク】で重複発動できるようになる。
それを千近い重複発動をすることで、ヘイムダルの超位職の肉体すらも壊せていた。
「はぁっ!」
「めんどうなっ」
そこへさらにブラット自身も、五本の剣を構えてヘイムダルへ突っ込んでいく。
腐食の光線のアシストにより、異様に硬かった怪物の腕もスナック菓子のように脆く斬り飛ばせた。そのまま腐食した肉体にも刃を通し、完全にブラットとヘイムダルの攻守が入れ替わる。
ブラット側も病原菌の浸食がかなり危ういが、灰天使の力のおかげでギリギリのラインで装甲値も保ち続けていられた。
不動だったヘイムダルのHPが動きはじめ、ブラットは反撃の隙も与えず一気に決め切る覚悟で猛攻を仕掛けてく。
しかし相手は元最強プレイヤー。それで決めさせてくれるほど、甘くはない。
「【災厄ノスフェラトゥ】──」
当然のように、今の形態がヘイムダルの最強ではなかった。彼もまた手に入れた超位職を、次の段階へと進化させていた。
人型を基調としながら体格は異様に細長く骨ばっており、全身が禍々しい漆黒のオーラに包まれている。
身長は六メートル近くまで巨大化し、闇そのもののように輪郭を曖昧に揺らめかせる。
無数の触手が背中や肩、腰から不規則に伸びており、その先端から牙のある口や赤い瞳のようなものが飛び出している。
顔は人間の名残を残しながらも骸骨のように削げ落ちた頬骨と、鋭い牙がむき出しになっていた。
目は光を反射しない真っ黒な瞳孔の中で、不気味な赤い光がぼんやりと揺らめいている。目を合わせただけでブラットは精神に浸食してくるような感覚に襲われ、思わず視線を逸らす。
頭には折れ曲がり不規則に分岐した無数の角が生えており、それらから赤黒い血が常に滴り落ちていた。
肌は灰色でところどころひび割れており、内側から瘴気や血のような液体が滲み出している。胸部には巨大な赤い魔眼があり、周囲を威圧するようにゆっくりと左右に動く。
両手は異様に長く、指先は鎌のように鋭い爪に変化している。腕は半透明の黒い膜に覆われており、その内側では無数の血管が脈打ち疫病を濃縮した液体が滴っている。
足は爪が鋭く伸びた獣のような形状で、かなり重いのか立っているだけで床がひび割れていた。
背中の大きな翼はよく見ると蚊の集合体で、不快な飛翔音がある程度距離を置いているブラットの耳にまで届いていくる。
そして頭部には赤黒い血液で形成された冠が雑に乗せられ、たえずそこから瘴気と病原菌が周囲にまき散らされていた。
「我が血の眷属たちよ──」
ヘイムダルの全身から血飛沫が上がり、それらが三か所に流れ集まり形をとっていく。ブラットが先んじて腐食光線を飛ばすが、蚊の群れが彼の口から大量に飛びたち盾となり、それらを守り抜く。
そうして大量のヘイムダルの血からできあがったのは、三体の眷属。
不気味に崩れた肉と骨で構成され、毛皮は病原体が染み付いたようなまだら模様の大狼──フェン。
上半身は美しい人の姿だが、下半身は骸骨のように腐り果て、両腕には疫病の霧を纏った黒い触手が生えた女性──ヘル。
左手に角笛を持った、黄金と錆びたように浮かぶ黒模様の甲冑の巨人──ギャラル。その甲冑は破損しており、隙間から疫病の霧が立ち上る。右手には巨体に見合った大きな血のハンマーまで持っていた。
三体とも油断ならない気配を放ち、ヘイムダルと共にブラットへの攻撃を開始していく。
ヘイムダルは触手を雨のようにブラットの頭上に落とし、巨体ながら素早く、かつ対人なれした嫌らしいリズムで爪や血の攻撃を振るう。
他にも闇や呪いの魔法、部分霧化、石化毒麻痺の三種の邪眼などなど、ブラットが進化できなかった半年のアドバンテージを見せつけるかのように、多彩な攻撃の組み合わせで翻弄してくる。
フェンは恐怖心を敵対者に植え付ける、ブラットからすれば大きな不快感を覚える気持ちの悪い鳴き声をあげ、疫病がたっぷりついた牙による噛みつきや爪の斬撃、突進、疫病の息吹など縦横無尽に駆け暴れまわる。
ヘルは触手の両腕を天に掲げ、大量の疫病を宿したゾンビの群れを無尽蔵に召喚。祈りを捧げるように触手を合わせれば、血のような色のアンデッドには効果のない地獄の炎を周囲に放つ。
ギャラルは音波を通して敵にはデバフを、味方にはバフかける怪音の角笛を鳴らし、疫病を鎧の隙間からばら撒きながら駆け回り、他の味方の動きに合わせて絶妙に嫌なタイミングでハンマーを叩き落としてきた。
それらに加えてブラットすら死に至らしめる疫病を持った蚊、ネズミ、コウモリの群れが絶えずヘイムダルの体から湧き出し後に続く。
その群れやヘルの召喚したゾンビはヘイムダルや三体の眷属たちが食らうことでHP、MPが回復するオマケ付きと至れり尽くせりだ。
まるでその光景は西洋の百鬼夜行。悪夢のような情景に思わずブラットは、恐怖より先に笑いがこみ上げてきてしまう。
「なんだこれっ──滅茶苦茶だっ!」
「スティングとの戦いまでは隠しておきたかったんだが、仕方がナイィイイイイ!! 大人しく潰されェテクレェェエエエエエエエエエエ!!」
ヘイムダル単体だけでもダンガムの【オーバーパワー】状態と同等か、それ以上に厄介な強さを有しているというのに、三体の眷属もそれには及ばないがとにかく面倒で嫌らしい動きばかりして鬱陶しいこと極まりない。それでいてその三体もちゃんとブラットに有効な攻撃手段を持っているのだから、まったく油断できない布陣だ。
雑魚のゾンビや蚊、ネズミ、コウモリ。これらもまとわりつかれれば動きを阻害され、身を挺してヘイムダルや三眷属たちの盾となり、死ねば大量の病原菌をまき散らす。
並みのプレイヤーでは、とうに心折れて自死を選んでいたことだろう。
だがブラットは諦めない。そして最後の隠している超位職も、まだ切らない。ナマクラと【万律の後継者】二つの超位職を軸に、それらの猛攻を神業じみた芸当で乗り越え続ける。
あのヘイムダルの嫌なリズムもかなりラーニングでき、相手にとっても脅威なレベルでその動けができるようになっていく。
そしてそれはヘイムダルの相手に動きを読ませない独特な動きに対しても、【未来予測】が効き出したということでもあった。
ヘイムダルの洗練された動きが読めるようになって来れば、それに合わせて動く三眷属の動きなど予測し放題だ。その他雑魚はもっと動きが単純なため、そのおかげでなんとか抵抗できているといっていい。
これほど圧倒的優位な状況で押し切れないブラットに、さすがのヘイムダルも苛立ちや焦りを覚えはじめる。
この力とて無限にできるようでいて、時間的な制限もあった。まだ三〇分以上はこのまま全力で戦っていけるが、それを過ぎるとこの形態の維持も辛くなってきてしまう。
ブラットからするとさすがにあと三〇分このまま耐えるのは無理だと分かっているが、そんな内情を気取られないよう立ち回っているため、ヘイムダルにはもしかしたら耐えきられてしまうかもしれないという精神的な圧がかかり続ける。
その僅かな焦燥感は隠そうとしても、ブラットほど相手の動きを見ているプレイヤーにはなんとなく伝わってしまうもの。
(ここまできても、これ以上の手は使ってこないみたいだね。スティング用の決め技だってのも、本当だと思っていいかな)
ブラットが無理をしてでも二つの超位職だけを軸に耐え続けたのは、それ以上の切り札を後だしされるのが一番嫌だったから。
だがここまで精神的な圧をかけても、ブラットをさらなる一手で叩き潰すようなアクションを起こす気配がない。
だからといって絶対ないとまではいいきれないが、十中八九まだこの先の力をヘイムダルは手に入れてないと確信が持てた。
(初戦でいきなりこっちも引き出されるなんてね……。やっぱり相手の技量が高い──)
ブラットの尻尾の付け根から、無貌の口が尻尾のように八本飛び出し周囲の雑魚たちを病原菌ごと食らっていき、さらに三眷属たちにも食いついていく。三眷属たちは完全に【未来予測】で動きを捉えていたため簡単だった。
三眷属に食らいついた無貌の口から無貌の口がさらに飛び出し、貪り食うように消化されブラットの切れかかっていた食料値を完全回復してくれる。
無貌の口の消化力とブラット自身の特性【悪食】のおかげで、病気もほぼ無効化。装甲値は全てなくなり、体に気持ちの悪い斑点がジワジワと浮かびだしたがもう止まらない。
DOTダメージのように減っていくHPは、周囲のまだ残っているゾンビや蚊、ネズミ、コウモリの群れを食らって強引に回復し帳尻を合わせる。
「ナン──ッ!?」
まさかの超位職に対抗できるさらなる奥の手があるとは思っていなかったようで、ヘイムダルは完全に不意を突かれる。
ここまでボロボロになりながらも、必死に隠し続けた甲斐があったようだ。最高のタイミングでブラットは、三枚目の大きな切り札を出すことができた。
「食らいつくすっ!!」
「サセルカァアアアアアアアアアアッ!!」
ブラットの体から混沌が溢れ出し、巨大な無貌の怪物となって周囲を丸ごと呑み込んでいく。
ヘイムダルは眷属を再展開する余裕はないと、己をさらに巨大化させて混沌を被ったブラットに攻撃を続け食らいついてくる。
混沌から飛びださせた腕に持ったナマクラや精霊剣、英装魔剣。腐食に魔法でヘイムダルの攻撃を抑え込み、そのまま彼の体を覆って捕食していく。
ヘイムダルの抵抗も凄まじく、逆に巨大な牙で何度も混沌を貫きその身に噛みつかれ血を抜かれ、ブラットに捕食された分を補いだす。
一〇メートル以上の巨体同士が互いに組みつき食い合う光景は、さながら怪獣大決戦といったところか。
食い合う以外の攻防は非常に高度な駆け引きと技術の応酬なのだが、ほとんどの観客たちは巨体同士の原始的な戦いに気を取られ気付きもしない。
「早く食われろーーーーっ!」
「シネェエエエエエエエエエエエーーーーーーーーー!!」
そんな状態が一〇分以上は続いたが、互いに限界がおとずれ体が縮小していく。そしてほぼ同時にブラットは混沌を失い、ヘイムダルはノスフェラトゥの肉体を失った。
ブラットは体中病魔に侵されボロボロ。ヘイムダルは体中腐食に侵されボロボロ。どちらも見るも無残な姿で、うつぶせに倒れ伏す。
倒れたまま本人たちからすれば数時間、見ている側からはたった数秒の静寂の後、先に立ちあがったのは────ブラットだった。
フィジカル勝負だけなら、もはやプレイヤーの中では疑う余地もなく最強。その差がこの勝負の勝敗を分けた。
もはやナマクラも維持できず、精霊剣と英装魔剣を杖のようにして何とか立ち上がると、そのまま必死に体を起こそうともがくヘイムダルに向かってヨロヨロと視界も霞むなか近付いていく。
このままでは負けると腕に強引に力を込め、体を起こそうとするヘイムダルだったが、腐食のせいで骨ごと砕けて床に顔面をぶつけてしまう。
その衝撃に骨がヒビ割れながらも耐え視線だけで上を見れば、そこには二本の剣を構えて振り上げるブラットの姿が映った。
「オレの……勝ち……………………だっ!」
「負けるも──────ぉ……」
ブラットの剣がヘイムダルの心臓と脳天を突き刺した。
だがヘイムダルの身体から最後の気力を絞って練られた血の触手が、彼の肩のあたりから飛び出しブラットの右目に突き刺さる。
「浅……い…………か…………」
血の触手は右目に深く刺さっていたが、その奥の脳にまでは到達していなかった。到達していても心臓が残っているので即死はなかっただろうが、それでも脳の核を失って病気で侵されている体で、どれだけ生きられたかは怪しいところだ。
「ありがとう、いろいろと」
「……?」
けれどヘイムダルはもっと深くブラットに刺され、砂になるようにボロボロと肉体が崩れHPが零になった。
突然お礼を言われて最後に怪訝そうにする雰囲気を感じたが、彼にとって零世界はもう存在しない場所。説明したところでブラットの頭がおかしいと思われるだけなのだから、これでいい。
アデルを残してくれたこと。ブラットにバトンをしっかりと繋いでくれたこと。色んな感謝と感情を込めて、お礼が言えたことでブラットは満足できた。
《ブラット選手WIN! ベスト4入りおめでとうございます! 他ブロックの試合が終わり次第、一〇分の休憩の後、準決勝へとお進みください!》
(無貌の怪物だけで、なんとか勝てた。これは大きいでしょ!)
本当にヤバければもっと【混沌の紡ぎ手】のスキルも全開で使うつもりではいたが、それを切るタイミングが見事に嵌まってくれたおかげで、かなり他スキルを隠したまま準決勝へと進むことができた。
三つ目の超位職があること自体は確実にばれてしまっただろうが、あのヘイムダル相手にこれなら、限りなく百点の戦いができたと胸を張っていい。
ブラットが勝利のアナウンスを聞き届けると、元いた豪華すぎる部屋に戻された。
(これでベスト4は確定だ。ってことは、あと二回。二回勝てば優勝だ。次の相手は……あれ、まだ戦ってる。もう終わってるかと思ってた)
かなり長いことヘイムダルと戦っていた気がしたが、VästerKingとSUMOーMANの戦いはまだ終わっていなかった。
第四ブロックの勝者。そのどちらか勝った方が、次のブラットの相手なのだが観客やブラットたちの予想に反してVästerKingが粘りに粘っていた。
(第一ブロック勝者はRoki……カブトが負けちゃったんだ。まぁ前回大会の五位と四位だったから、どっちが勝ってもおかしくないか。それで第二ブロックは……まぁ、予想通りか)
他の試合はブラットたちよりも先に終わっていた。第一ブロックはブラットの知人のカブトを下し、Rokiが勝利。第二ブロックのOBUGYO!とスティングの戦いは、スティングが当然のように勝利を収め準決勝へ駒を進めていた。
(そっちの準決勝はRokiとスティングか。ヘイムダルと同じクランらしいし、こっちが雪辱戦ってことでスティング相手に気合入ってそう──あ、そろそろ終わるかな)
第四ブロックの試合を観戦しながら、他のブロックについても考えていると、いよいよ戦いは佳境に入っていく。
中世の海賊のような出で立ちのVästerKingだったが、彼の船を使った超位職がSUMOーMANに豪快に破壊され、リングの端に叩きつけられていた。
その隙を逃さずSUMOーMANは一気に距離を詰め、最後は強烈な張り手で相手を殴って勝利を収めた。
「さすが前回大会三位はダテじゃないか」
ブラットの準決勝の相手は、SUMOーMANに決まった。
前回大会二位と戦った次に三位。もしここでも勝ってスティングと当たれば、一~三位の最上位三名と戦うことになるという、なかなかにヘビーなトーナメントとなる。
だがブラットはSUMOーMANとも、いつか本気で戦ってみたかった。相手にとって不足はなしと、右手から伸ばした魔刃を振るって煌びやかなソファを一刀両断する。
中のクッション材が飛び出すエフェクトがでるが、すぐにソファは元通りになり、ブラットは気持ちを落ち着かせるべくそこに座り直す。
「SUMOーMANもずっとトッププレイヤーで居続けた相手だ。ヘイムダルに勝てたからって、浮ついた気持ちでいたら絶対に勝てない」
スティングが台頭してくるまでは、一位ヘイムダル、二位SUMOーMANという順位がずっと続いていた。
どうしてもあと一歩届かず永遠の二番手などと言われていたが、今はスティングが割って入ったことで、その称号も失い三位常連となったプレイヤー。
二位でいたときからその悔しさをバネに次は勝とう、次は勝とうと努力し続け今に至る。そんなプレイヤーが弱いわけはなく、今回も優勝する気で来ているのだからヘイムダルより強くなっている可能性もありえる。
先ほどのSUMOーMANの戦いを倍速で見ながら、ブラットは彼の情報を脳内で軽くおさらいしていく。
「SUMOーMANの超位職は、確か【野見宿禰】だったはず」
名前から分かるように日本の相撲をこよなく愛するSUMOーMANは、その戦闘スタイルもどこまでも相撲にこだわっている。超位職ももちろん、相撲に強く縁のあるもの。
こだわるということは戦い方のパターンが固定されるということにも繋がるのだが、ただひたすらに一つの戦闘スタイルを極め続けた結果、そんなハンデを覆してしまうほどの力を手に入れた。
「相撲自体があんまり使ってる人は多くないし、英傑たちにもそれと似た戦い方をする人もいないし、本気のBMOの相撲取りが相手ってのははじめてかもしれない。
それにたぶん、SUMOーMANも【野見宿禰】を進化させているはず。時間がかかったのも次の相手にそれを見せないよう、隠したまま戦ったから何だろうな」
ブラットかヘイムダル。どちらと当たっても苦戦は必須。SUMOーMANは本当の切り札は温存したまま、VästerKingを倒し準決勝に進んできたとみて間違いないだろうと、ブラットは未知の脅威があることをしっかり念頭に入れておく。
先の試合動画を眺めているとあっという間に時間が来て、準決勝の場へとブラットは転送される。
「どちらが来てもおかしくないと思っていたが、ブラット。君が来たか!」
「ふざけて戦ったことはあったけど、本気で戦うのははじめてだな。楽しみだよ」
「ああ、こちらも存分に楽しませてもらおう!」
まわし一丁の相撲取りスタイルで、鮮やかな紅葉色の毛皮を持つ筋肉隆々の大狸。背中にはスポンサーロゴがペイントされ、それを堂々と観客に向かって見せつけながらブラットへ笑顔を向けてきた。
お互いに挨拶は済んだと、リングの中央付近で向かい合う。
ブラットはこれまでと変わらず五本の剣を持って構える。
SUMOーMANはまるでそこに土俵があるかのように、相撲取りさながらにはじまるまでの流れの動作を丁寧に行い、両の拳を床に卸して気迫のこもった瞳を正面に立つブラットへと向け前傾姿勢を取った。
「はっけよーーーーい」
行司などいないので、カウントに合わせてSUMOーMANは自分で相撲の開始の合図を口にしはじめる。
ブラットもそれが流儀ならあわせようかと、剣の構えはさすがにそのままだが、一緒に「のこった」をいうべく息を吸う。
変な顔をせず自分の流儀に合わせてくれたブラットに、SUMOーMANは闘志をむき出しにしながらも、心からの感謝と喜びを込めた笑顔を浮かべた。
「「────のこったっ!!」」
互いに叫び声を合図にし、ブラットとSUMOーMANの準決勝がはじまった。




