第五一〇話 VSダンガム
明けましておめでとうございます!
ブラットの前に現れたのは、二メートル半ほどの白と赤の人型ロボット兵器にしかみえないゴーレムのプレイヤー『ダンガム』。
メタリックなボディは光の角度によって格子模様がうっすら浮かび上がり、反射光が緑や黄色と特殊なコーティングされているようだ。
腰には左右に一つずつビームソードの柄と、ビームライフルが下げられている。左手の甲にはビームシールド。他にもビームが出そうな突起が腰や腕、肩にいくつか装着している。
背中には光翼を発生させ、飛行も可能にする装置が標準搭載。雷神が背負う太鼓のように、ファンネル同士が数珠つなぎとなって背中にくっついてもいた。
名称からして某アニメに多分に触発されたデザインをしており、AIが何とか著作権に触れないラインで再現してくれている。
そんな彼のフォルムは、Yuitasoと戦っていたときよりも細身の形態をしていた。ダンガムのアバターの特徴としては、戦う状況や相手によって兵装どころか各部位のパーツごと取り替えることも可能。
なので昨日と今日でまるで違う姿をしているなんてことも当たり前のようにあり、ブラットももっとごつい重量級戦士のようなフォルムであったり、全体的に丸っこかったりトゲトゲしたりする形態のダンガムも見たことがあった。
ロケットパンチが繰り出せるネタ形態なども多数あるのだが、今回はどうみてもお遊び無しの形態で勝負に来ている。
「スピードタイプにしてきたって感じか?」
「そうしなければ、ブラットの速度にはついていけないからね。それに耐斬撃、刺突、雷、風、腐食のコーティングもしっかりとしてある。やれる限りの対策はさせてもらっているよ。悪く思わないでくれ」
「悪くなんて思うわけがない。オレがダンガムだったら、そうしただろうしさ」
ブラットは五本の剣を持ち中央より数歩後ろに立つ。ダンガムは左手にビームソード、右手にビームライフルを持って照準をブラットに。そのまま後方の柱後ろにすぐ隠れられる位置に立った。
開始の合図が鳴り響くと同時に、ブラットは風雷弾を剣の先から無数に撃ち放つ。対してダンガムもビームライフルから赤い光線を複数撃ちだしてきた。
いくつかは互いに相殺し合い、撃ちだした相手に向かって飛んでいくが、既にその二人はその場所にはいなかった。
「「──!!」」
リング中央よりダンガム側に押し込んだ空中で、互いに交差する瞬間切り結ぶ。
精霊剣と英装魔剣がダンガムの二本のビームソードとぶつかり合い、火花のように魔力の粒子を散らしていく。
解放状態のナマクラは、舞い踊る光刃をまといそれを直接、あるいは撃ちだしてくる無数のファンネルからの攻撃を切り落とす。
互いに無傷のまますれ違い、ほぼ同時に柱を蹴るようにして反転しまた激突。一合ごとにギアが上がっていくかのように加速していき、光の軌跡が何度も空中でぶつかり合う光景が客席に流される。
ブラットも剣術だけでなく多彩な魔法も駆使して撃ち落とそうとするが、ダンガムは各部位についていたビーム兵器を展開し一斉掃射。拮抗した戦況は動かぬまま、また交差際にぶつかり合って魔力の光を散らしあう。
だがこのままでは決着がつかないと踏み、先にダンガムが大きな手札を切ってきた。
「そちらから来ないのなら──僕から行くぞ!!」
ダンガムの体が赤く輝きだし、残像を置き去りにして一気に機体を巡るエネルギー量が爆増する。
それはBMOにおいて失われていたはずのロストテクノロジーを復活させることで得た、ダンガムの超位職によるもの。Yuitasoの超火力の斧刃すらその力で捻じ伏せるほど、機体の性能を増強させる【オーバーフォース】が彼の切り札だ。
ブラットは観戦の際にそれを見ているため、その対抗策として準備していた雷人化を発動。アンセストルデータも使って肉体の性能も上げ、さらに【バトルオーラ】も使って赤いオーラを身にまとい、なんとかその力に立ち向かう。
(これでもきついかっ)
全プレイヤートップレベルのブラットの動体視力であっても、その動きを追うだけで精一杯。ダンガムだけバグっているかのような機動力で襲い掛かられ、こちらの反撃を一切許してもらえない。ファンネルの動きも異常なほど速く、ビーム兵器の威力まで比例して上がっている。
回避に専念することでようやく対処できているが、それでもじわじわと装甲値を削られ続けていた。
だがこれがずっと続くわけではないことを、ブラットは知っている。
【オーバーフォース】状態のダンガムは時間が経つにつれ、その体にまとった赤い光が強くなってき、湯気のように蒸気が機体のあちこちから上がりはじめていた。
この力は一定時間強力な力を得る代わりに、オーバーヒートを起こして暫く使えなくなるという弱点がある。だからこそ耐えるという選択が取れたのだ。
【オーバーフォース】が終わるタイミングを見計らい、ブラットは反撃に打って出る。
「ここっ」
完全に熱暴走を起こし、【オーバーフォース】が強制終了したその瞬間。ブラットは前へと飛び出し、渾身の突きをダンガムの胸部装甲の隙間に向かって繰り出した。
「え?」
そのまま冷却モードに入ったダンガムを追い込もうとしていたというのに、何故か窮地に陥っていたのはブラットだった。強烈な射撃と斬撃を何度も浴びてブラットの装甲値は消し飛び、意味も分からぬまま床に叩きつけられた衝撃でバウンドしながら天井を見上げていた。
そこには青い光の粒子を放出したダンガムの姿があった。ブラットですら追いきれないほどの圧倒的なスピードで宙を舞い、両の手の平から出てきた砲身をブラットに向けた彼の姿をようやく捉えた頃には、もう回避不可能な状況に陥っていたのだ。
全身が粟立つような濃厚な敗北の気配に、ブラットは選択の余地すらなくここまで隠し通していたもう一つの超位職を切らされた。
「【カタストロフィ・ノヴァ】」
「【アブソリュートリンク】」
真っ黒な巨大エネルギー砲と、一瞬遅れてブラットの精霊剣の先から飛び出した雷の光線がぶつかり合う。
後手に回りながらも発動速度で上回りなんとか直撃する前に対処できたが、威力はダンガムの砲撃の方が上。それが食い止めてくれている間に、ブラットは射線上から離脱。それにすぐさま反応したダンガムがビームを何本も撃ってくるが、今度はそれにしっかり反応し華麗に回避。ブラットが完全に体勢を整え終わったあたりで、ダンガムの光の色が青から赤色に戻った。
「さっきのがダンガムの本当の切り札か」
「そういうブラットも。面白いことをしていたね。もしかして二つ目の超位職じゃないのかな?」
ブラットが動き出すと、ダンガムも呼応するように動き出す。ブラットは地上から魔法を使い、ダンガムは空からレーザー兵器とファンネルで追い込んでくる。上を取られたままではやりづらいが、ダンガムが空に行かせてくれない。
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないぞ。けどもう見せたからには、出し惜しみをする気はないから安心してくれ」
「そうだね。手加減されたまま勝ったんじゃ、僕もさすがにつまらないから」
「負けたんじゃ──の間違いじゃないか?」
「そうなるといいね」
互いに一歩も引かず、派手な攻撃がぶつかり合う。ブラットは既に【オーバーロード】状態で、高速化するダンガムの動きにも対応してみせている。だが本当にダンガムが恐いのは、オーバーヒートを起こした後の青い光の状態──【オーバーパワー】のとき。
そのときに全力で戦えるよう、今は【オーバーロード】5~10%状態というローな状態を維持していた。
というのも【オーバーロード】は、発動時に大きな負荷が脳にかかる。そのためスイッチのようにオンオフを切り替えるより、なだらかな曲線を描くようにローとハイの状態を上手く推移させながら使ったほうが負担も少なく持続時間も伸びる。
その制御のための式を考えたり、体に感覚を叩きこませたりと大会までに苦労したものだが、それがしっかりと実を結び今の状況に繋いでくれていた。
また先ほどブラットが口にした【アブソリュートリンク】は、超位職【万律の後継者】の二つ目のスキル。
【オーバーロード】時にのみ使用可能で、これにより同じ魔法を何億、何兆、何京と重ねて一つの強大な魔法として使用することができるようになる。
先ほどのダンガムの【カタストロフィ・ノヴァ】を防いだ雷は、雷系魔法最弱の【細雷】。最弱クラスの魔法でも、本来なら術者の限界で数百も同時に繋げ展開しようとしても破綻するような魔法式も、【オーバーロード】の演算能力で強引にまとめ上げていくつも重ねることで、超位職にすら抗える最強の最弱魔法へ昇華させられるようになった──というわけである。
(細雷は発動速度が全魔法中トップだから、後だしでも充分に間に合うってのが強いよね。さっきは助かった)
【アブソリュートリンク】は最弱クラスの魔法だけに限ったスキルではないが、単純に弱い魔法ほど強引な多重発動がさせやすいというのと、シンプルな構造だからこそその発動も早い。
単純に練度不足で中位職級の魔法ではまだ使えないというのもあるが、ブラットは最弱の魔法に使うことで恐ろしいまでの魔法での発動速度と瞬間火力を手に入れていた。
(そろそろまたアレが────きたっ)
オーバーヒートを起こすことで、一時的に強化状態が強制解除されるという隙があればいくらでもやりようがあったが、【オーバーフォース】で熱を溜めその熱を使ってさらなる上位の超位強化【オーバーパワー】を可能にしている。
それが終われば冷却されているため、すぐに【オーバーフォース】で再強化とダンガムは常時強化を維持できるようになっていた。
【オーバーパワー】の性能が高すぎるため相対的に弱くみえているが、【オーバーフォース】も超位職によって引き起こされる現象。弱いわけがなく、実際にこれで決勝までの相手の超位職を捻じ伏せてきた実績もある。この状態でも厄介極まりない。
それでいて【オーバーパワー】状態のときは、さらに全能力、全兵装の出力上昇。HP、MP、STに常時超回復がつくため、【オーバーフォース】時のダメージも無に還され、エネルギー切れもないときている。まさに半無敵状態だ。
ダンガムもブラットたちと同じように、期間限定イベントで超位職を進化させていた。つまり彼も、超位職からさらに一歩進んだ力を持っていると考えていい。
(それでいくと未だに【名もなき剣】しか作れない、世刻奇剣複製師だけで戦うのは最初からきつかったんだろうな)
【オーバーパワー】モードに入り、青い軌跡を背にブラットに突っ込んでくるダンガム。速度にパワー、持久力。その全てが負けているが、【オーバーロード】を解禁した今なら瞬間的な反応速度は上回れる。それに瞬間火力だって負けてはいない。
「なにっ──!?」
ダンガムのビームソードごと、ナマクラが彼の腕と背中の突出したビーム兵装を斬り飛ばす。追撃してくるファンネルも叩き斬っていく。
ビームソードも【オーバーパワー】で出力が超強化されているが、【アブソリュートリンク】で初歩の初歩【雷刃】を何億と重ねてナマクラで展開することで、一瞬の火力で上回り鍔迫り合いすら発生させずに斬り勝ったのだ。
同じ超位職で作ったナマクラだからこそ、そんな無茶な魔刃の多重発動も容易に耐えてくれた。
「自分より速い相手なんて毎日見てるんだよっ!!」
自分より速くて、火力も高く、動き回れる相手なんて英傑たちで見飽きている。それらの化け物たちとどう戦うのか、試行錯誤の毎日だ。英傑たちと比べれば、今のダンガムだって常識の範囲内でしかない。
とはいえすぐに逃げられ、ダンガムの切り飛ばした部位は再生するように生えて元に戻ってしまう。
「そんな相手がいるとは羨ましい限りだね!!」
フィルムケースのような小型ミサイルを、ダンガムはばら撒いてきた。
それらを切り裂きながら爆風を何億と重ねた最弱の風魔法でいなし、死角から迫ってきていたビームソードの切っ先を顎を引いて回避。
近距離から放たれるもう片方の手に握られたビームライフルによる連射も、逃げスキルを使い最小限の動きで避けながら距離を詰め、【オーバーロード】で極限まで引き延ばされた体感時間の中で、億と重ねた雷刃を振り抜いた。
ビームライフルごと左腕を切り飛ばし、右の幽機鉱殻で握ったナマクラで脳天を叩き斬ろうとするが、それは許してもらえず一瞬で後ろに飛んで逃げられる。
お返しとばかりに撃ち込まれたビームは、【銀葉羽根】化した翼でダメージを最小限に耐え、強引に億重の【風弾】を複数撃ってやり返す。
だがそれはダンガムのビームソードやライフルで、消し飛ばされてしまった。
(さすがに不用意にこっちに来てくれなくなったか)
【オーバーパワー】の状態にならないと、ダンガムは絶対に接近戦を仕掛けてこようとしなくなった。
【万律の後継者】はブラットがはじめて、ちゃんとした順序で取得した超位職。他二つより練度の上がりも理解度も高く、現状解放したスキル三つはちゃんと使いこなせている。
それを完全解禁しナマクラと合わせて使われてしまうと、【オーバーフォース】では力不足だとダンガムも気付いたようだ。
少しでも近付こうとすれば絡めとられ、一瞬で最強状態になる前にHPを根こそぎ持っていかれかねないと、ずっと警戒していた。
だがその反面、【オーバーパワー】のときなら負けないという絶対の自信も感じ取れた。
(ならあえて、そっちを食い破るまで)
【オーバーロード】を維持できる時間は限られている。そして残り時間も、いつの間にか八分を切ってしまった。
互いに回復力は高いおかげでHPはほぼマックスを維持しているが、削った量でいえばダンガムに負けている可能性が高い。
ここで悠長に待っているだけでは、負けるだけ。ブラットは無敗できているため、一敗しても再戦できる。相手の札を最初から知った上でなら、もっと上手く戦う自信もあった。
けれどだからといって、負けず嫌いなブラットが勝ちを諦めるわけがない。
(プレイヤー最強になりたいっていうなら、一敗だって許してやるもんか──)
【オーバーパワー】に移行するダンガムを見ながら、必勝の覚悟を胸にブラットも思考を高速で巡らせる。
重力すら無視した軌道でブラットの周囲をちょこまかと動き回り、無数のファンネルで行動を阻害しながら、必殺の一撃を叩きこむタイミングを見計らうダンガム。
それに対してブラットは消耗も度外視して、億重の【風弾】の弾幕を張って敵の動きを鈍らせる。
ここぞという瞬間には京重の【細雷】を放って、作戦を透かされないよう自然な行動を心がけてもおく。
ダンガムは弾幕を切り裂き、細雷を空中で回転しながら回避し、どんどん距離を詰めてきた。
(向こうも決めに来てる? ダンガムには後がないわけだし、確実な一勝がここで欲しいか。ならちょうどいい)
ブラットは気付いていないが、ダンガムにも焦る理由があった。装甲も含めて機体全ては傷がつこうと全損しようと、【オーバーパワー】の力で全て修復される。
だが一時的に治りはするが、無理な使い方に耐え切れず自分のゴーレムコア以外の部品の寿命がどんどん削られていってしまう。
もっといい素材が将来的に見つかればその心配も減ってくるのだろうが、まだ【オーバーパワー】に耐えられる素材を見つけられてはいない。
このまま続けていれば、機体の寿命によって【オーバーパワー】が保てなくなり負けてしまう。ブラットの攻撃で破損していなければ、三〇分程度なら余裕でもっていただろうが、さすがに攻撃を受け過ぎた。
ダンガムとしても、その弱点がばれる前に決めきりたかった。そしてその焦りも影響し、彼を前に前にと出させてくれた。
ブラットの異常な威力がこもった魔法をやり過ごし、間合いに滑り込むように切り払いで肉薄。ビームソードでナマクラが一本弾かれ、ブラットの体勢が僅かに崩れた。
だがダンガムは油断しない。確かに全力で切り払ったが、あれで体勢を崩すブラットか? と突っ込まず冷静に刹那の最中視線を巡らせる。
(やはりかっ)
狙いすましていたかのように、油断して突っ込んでいれば蜂の巣にされる位置で大量の億重の【風弾】が遅延発動。ダンガムは慌てず左腕に着けたビームシールドを最大出力で展開して構え、ファンネルもピラミッド型のビームシールドを展開させ何重にも守りを重ね、その弾幕に突っ込んでいく。
シールドが壊されるよりも速く、右手の掌から放たれる【カタストロフィ・ノヴァ】でブラットを滅却するほうが先だ。ブラフだろうが、体勢を崩したのは事実。その僅かな勝機さえあれば、今の自分なら決め切れる。
(まず一勝、もらっ──………………?)
勝ちを確信したはずのダンガムの体に、何故かビームシールドを幽霊のようにすり抜けた【風弾】の弾幕が撃ち込まれる。
マシンガンに撃たれたマネキンのようにクルクルと、姿勢制御もできぬまま空中で踊らされ、体のあちこちが欠けていく。
それでも【オーバーパワー】のおかげで耐えきれているが、こんな無防備なダンガムをブラットが見逃すはずがない。
「なん……でっ……」
「終わりだ」
説明なんて呑気にしている暇などない。この一瞬の好機を逃せば、その次の瞬間にダンガムは剣の届かない場所まで逃げていくだろうから。
ファンネルは風弾で砕かれ、弾かれそちらのシールドも解除済み。何億と重ねられた【雷刃】による【紅刃驟雨】。赤い闘気をまとったロロネー流の三刃が雨霰と降り注ぎ、機体をどんどん削っていく。
そしてダンガムのゴーレムコアが露出したを見逃さず、右手に持った精霊剣を突き刺した。
上位雷精霊の力が混ざった精霊剣は雷刃と相性も良く、超位職で硬くなっていたはずのコアの中心を砕く。
だがそれだけではまだ足りない。中心を砕いても再生がはじまるそのコアへ、英装魔剣を全力で振り抜き叩き切った。
他の大きな破片はナマクラで念入りで粉砕し、そこまでしてやっと【オーバーパワー】の効果が尽きてダンガムの敗北が決定した。
(【パラドクスルール】。ちゃんと発動してよかったぁ……。同じ系統の兵装で固め過ぎたのが敗因だったね、ダンガム)
【万律の後継者】の三つ目のスキル【パラドクスルール】。魔法に強制的に一つ、ルールを追加することができる。今回はそれで【風弾】の魔法に、ビームを透過するというルールを追加した。
だがなんでもかんでもできる神のようなスキルというわけでもなく、ブラットの知識依存な部分も多いため、複雑すぎるルールはまだ難しい。
それでもダンガムが【オーバーパワー】の力を最大限まで発揮できるのが、現状ビーム系の兵器ということもあって、それをどうにかできる式さえ大まかに考え付ければ、あとは【オーバーロード】の馬鹿げた演算能力が強引に実現してくれる。
(自分の体でも何度も受けたビームなんだから、どんな力なのかも解析しやすかったしね)
だがそんな絡繰りには最後まで気づくことなく、ダンガムはアカサンに続きブラットに二敗目をつけられ、中間ラウンドの敗退が決まる。
そしてこの瞬間、ブラットのベスト8入りが確定した。
《ブラット選手WIN! ベスト8入りおめでとうございます! 最終トーナメントへの出場権が与えられます! 残りの試合も頑張ってください!!》
(ふぅ……、さすがにしんどかったな……)
【オーバーロード】の使いすぎで倒れそうになるが、なんとか堪えてこの戦いを見ている者たちには平気そうに振舞った。
疲れた今は勘弁してほしいファンファーレがリング上に鳴り響き、ブラットは最終トーナメントの出場選手だけが使える、特別な個室へと送られた。




