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Become Monster Online~ゲームで強くなるために異世界で進化素材を集めることにした~  作者: 亜掛千夜
第二章

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第四九話 帰国

 完全に格下だと思っていたブラットに攻撃を受け、屈辱に塗れながら痛みが治まらない顔を怒りに染め上げ、岩石地帯の現主(あるじ)は逃げた者たちを追おうと立ち上がる。

 だがその瞬間、ズボッと足が地面に飲み込まれていく。


 ヌイが去り際の置き土産として【闇影の奈落】というスキルで、表面は何も変わらないように見えていたのに、そこに少しでも触れれば黒くどろどろとした底なしの沼に捕らわれ沈められる。


 こんなもの──と苛立ちながら黒い粘液を払いのけ這い上がろうとするも、ポロっと右翼が取れ胸に強烈な痛みが走る。



「ォォォォォォオオオッ」



 黒い沼をもがきながら取れた翼を無理やり背中に押し付け、くっつけなおす。

 これはヌイのスキルとは関係ない。このモンスターはまだ、完全に体ができあがっていないのだ。

 だというのに調子に乗って暴れた末に、ブラットにいいようにやられて体に小さな綻びが出てしまった。


 呼吸の必要がない主は窒息死することはない。

 痛みをこらえながらしばらくじっとし続け、少し治まってからなんとか強引に沼から這い出ると、疲れたようにその場にうずくまる。

 そうしていると、ようやく配下の四体が自分の元に戻ってきた。


 本調子だったのなら殺してやりたいくらいの苛立ちを覚えながら、その四体にブラットを追って連れて来いと指示を出す。

 四体は慌てて勘気に触れる前にと、ブラットたちがどちらに行ったのかを探りながら急いで去って行った。



「ゲェェェ──……」



 今は動けない。だが無性に他の人間よりも殺戮衝動を誘起させるブラットのことが頭から離れない。



「ゲケッケケケッ──」



 次は殺してやる。そのときのことを思い浮かべ、主はうずくまりながら笑うのだった。






 ブラットたちは順調に逃げていき、シカ陣営の入ってきたところに戻ってこれた。

 追手の気配もまだなく、シカ陣営もバウンダリーディアーが死んだことにまだ気が付いた様子もない。


 ヌイはブラットに貰ったMP回復ポーションで【闇影隠し】を維持する魔力を回復しつつ、皆でまた夜の森の中へと入っていった。


 帰り道も似たようなもので、未だにモンスター同士の抗争は続いているおかげで警戒網の隙も多い。

 これなら無事に帰還できそうだと考えながらブラットが進んでいると、不意に遠くの方で大きな戦闘音と、シカ陣営の魔物たちがそちらに向かって大移動するドドドドドドドドッ──という大地をかける音がここまで響いてきた。



「あの幽霊たち諦めずに追ってきてたみたいだね」

「そしてシカのやつらに見つかったようですね。

 これはバウンダリーディアーの件も、あいつらになすりつけられたかもしれません」

「この辺りのやつらの目も、向こうにいってくれてるし大助かりだよ。

 これで互いに潰し合ってくれればなおいいね。

 せっかく開拓したこのルートは、二度と使えなくなっただろうけど」

「次があるかは分かりませんが、少しもったいない気もしますね」



 配下四体を送り出したことでシカ陣営の恨みを買った上に、ブラットたちのアシストまでしているとは、あの主も思っていなかっただろう。


 結局そのおかげで帰りは行きよりもサクサクと進むことができ、大幅に時間を短縮してシカ陣営の縄張りを脱出することに成功。

 だがまだ危険地帯のすぐ側だというのは変わらない。安堵する気持ちはあれど、そのまま自分たちの国の方角へと急いだ。




 幽霊たちとの交戦から数日が経った朝の事。

 もう今日中には国に帰れるところまで既に戻って来ており、ブラットたちは休憩と補給を兼ねて地べたに座り込んでいた。

 その間バルトは干し肉を口に頬張りながら、紙に闇魔法で今回の出来事をできるだけ忘れないようにとまとめていた。

 国に帰ったら、上に報告することを簡単に覚書きしておきたかったのだ。

 闇魔法を墨のように使って文字が書かれていく様を珍しそうにブラットが見ていると、今度はあのゴーストたちの主の姿絵を描きはじめた。



(うっま)



 あれだけゴタゴタしていたというのに細部までちゃんと記憶しているようで、まるで写真に写したかのようなモノクロの絵ができあがっていく。



「あのさバルトさん」

「うん? なんだ? ブラット」

「その絵、オレにも一枚もらえないかな?」

「別にいいが……こんなものどうするつもりなんだ?」



 今描き終わったばかりの主の姿絵を、そのまま差し出してくれた。

 紙に描かれた絵ならBMOでも用意できるものなので、逆輸入することができる。

 ブラットはその姿絵を元にBMOでより詳細な情報収集をして、あらゆる対抗策を搔き集めようと考えたのだ。



「ちょっと神の恵み箱に入れて神さまにこんなやつがいるけど、なにか有効な物をくれないかってお祈りしようかと思って」

「なにっ──」

「えっと、指を離してほしいんだけど……」



 言い訳にと適当に思いついた理由を口にした途端バルトは紙を摘まんでいた指に力を入れ、ブラットが無理に引っ張ると破れてしまう状況になってしまった。



「い、いや、ちょっと待ってほしい。ということは、この絵を神が見るかもしれないのか?」

「ま、まあそうかも?」

「ならこんな適当に描いたものを出すわけにいくまい。

 ここは帰国してから精神を落ち着かせ、万全の状態で最高の絵をお見せするべき──」

「はいはい。もういいから。バルトくんは、さっさとその絵を渡しちゃいなさい」

「ヌ、ヌイ様ぁあああ」



 影を操りバルトの指を無理やりこじあけ、ヌイが絵を取り上げるとそれをそのままブラットに渡してくれた。

 なにやら情けなく器用に小声で叫んでいるが、気にせずその絵を受け取った。

 これでいろいろと情報収集もはかどることだろう。


 そんなやり取りも有りながらも、ブラットたちは無事に追手を振り切り帰国した。

 その頃、四体の配下たちはといえば、消滅寸前まで多勢に無勢の中がんばったのだが、それでも広大な土地を支配するシカ陣営にそれだけで敵うはずもなく、随分と遅れてやってきた主に死ぬくらいなら戻れと理不尽な怒りのお声を貰ってすごすごと岩石地帯に引き返した。


 しかし彼らの不運はまだ続き、この件でシカ陣営にも被害が出たことでシカの主の怒りを買い、その報復行動でしばらく侵略のための行動に出られず足止めを食らい、さらに対人類用に用意していた戦力まで幾分か減らすことになる。

 ブラットたちにとっては、準備の時間も増えていいことづくめな一件だったと言えよう。


 先行してデンと負傷したのが嘘だったかのように回復した五級戦士のランダが国に知らせておいてくれたおかげで、ブラットたちはスムーズに開かれた状態の北門を通り抜けることができた。



「やっと着いた……」

「ようやく人心地つけるぜ」



 国が近づいても完全に緩ませなかった偵察隊の緊張の糸が、ついに緩んだ。

 全員が疲れ切った顔をしながらも、どこかやり遂げた達成感を味わった。

 そのままの足で静かで落ち着ける場所に移動し、何日かぶりに椅子に腰かけた。



「これにて任務完了だね。あとは報告内容のすり合わせをして、解散でいいかな。報告自体は私とバルトくんの役目だし。

 あと今日に限っては警鐘が鳴っても君たちは出なくていいからね。じゃあバルトくん、よろしく」

「はっ。ではまず本題である──」



 今回得た情報を全て羅列し、それぞれの所感や気になったことも含めてまとめ、バルトがそれを取捨選択して正式な報告書を書き上げていく。

 それは岩石地帯の出来事だけでなく、道中のシカ陣営の実態や状況なども一緒に事細かく。

 こちらも敵対しているのだから、縄張り内の情報は有益なのだ。


 そして全て書きあげたところで、最後にヌイがまとめに入った。



「とまあ、こんな感じでいろいろあったけど収穫は大きかったね。

 敵の首魁と交戦状態になったときはどうなるかと思ったけど、相手の力量もある程度察することもできたのは大きい。

 そこから得られた結論としては──あいつは他の領域のボスたちよりも力量的に格下だった。

 それに長年生きてきたモンスターが持っている貫禄のようなものもない、経験の浅い若いモンスターでもあった。

 喜んでいいよ。あの程度では人類は滅びない。充分に対応できる存在だった。あれならアデルの方が強い」



 とはいえ油断していい相手ではないし、人類の敵はそこだけではない。

 幽霊たちの主が攻めてきたとき、他の陣営が漁夫の利を狙いに来ないとは限らないのだから。

 今のモンスターたちの騒乱の切っ掛けの原因を考えると、少しでも弱い部分を見せれば、やつらは迷わずそこを狙って食らいついてくるだろう。


 だがヘイムダルがいなくても対処できる悪夢だったと分かっただけでも、人類側の精神的負担も余裕が持てるというもの。

 今回の偵察任務は大成功だったと言って間違いない。


 お互いに別れの言葉を告げながら、此度の偵察隊は解散となった。



「配給券は私たちの今日の報告内容で決まるから、支給されるのは明日の朝以降になるから気を付けて。

 でも今回の成果と危険度から言っても期待してくれていいからね♪」



 皆疲れ切った顔をしていたくせに現金なもので、配給券の話になると途端に元気に喜びの声をあげた。

 ブラットもさらに生活が充実すると、次に交換しようと考えている物を頭の中に思い浮かべていた。


 それぞれが散り散りに分かれていき、ブラットもガンツたちと一緒に自室に戻ろうとしたところでヌイに一瞬呼び止められて、耳元で一言囁かれた。



「今夜たぶんずっと心配してたお姫様が行くと思うから、窓を開けといてあげて」

「ははっ、分かった。そうしとく」



 ブラットのその返事を満足そうに聞き届けると、彼女はウィンクをしてバルトを連れて国の中央へと去って行った。



「なにを言われたんだよ、ブラット。成人したときに子作りでも頼まれたりしたのか?」

「かぁ~~あれほどの強者がお相手とは羨ましいねぇ」

「違うっての。なんでワーリーもガンツもそんなことにばっかり結びつけるんだ。信じられない」



 年中頭ピンクかと、下世話な大人たちに呆れるブラット。



「いやいや、お前ならあのレベルの強者からでもお声がかかってもおかしくないだろうが」

「ただヌイ一級戦士も成人してからの戦力的に誰とも番ってないだろうし、ブラットの初めての相手には相応しくないだろうな」

「ああ、そういうのは経験者の方がいい。俺のときも──」

「あーもう勝手に言ってろ! オレは先に帰るからな。もう疲れた……」



 好き勝手に自分の成人後の最初のお相手のことを語り出すおっさんたちに、付き合ってられないと放置して、ブラットはさっさと飛んで自室へと戻っていった。



「ここもなんだか落ち着く場所になってきちゃったなぁ……」



 色葉の部屋と比べると天と地ほども快適さに違いがあるのだが、住めば都とでも言うべきか、ここに来るとホッとしてしまう自分がいた。

 ブラットはまず装備を外して服を脱いで、水が出る魔道具と木桶、匂いのいい石鹸を出して体を綺麗にしてから、こちらの交換所で引き換えてきた服に着替える。

 ずっとベタベタして気持ちが悪かったので、かなりさっぱりした。


 BMOでのイベントのために持ち帰る必要があるので、装備や衣装は全て手持ちスロットに収納していくと、そろそろ活動限界だ。

 お腹も空いているが、それ以上にベッドの誘惑には敵わない。

 何とか気力で着替え中に閉めた窓を開け、まだまだ太陽も沈んでいない頃合いに眠りの世界へ誘われていった。




 額のあたりを優しく撫でる感触、後頭部に伝わるマットレスよりも上等な柔らかで滑らかな感触。

 微睡の中でそのフワフワとした心地よい状態を味わっていると、綺麗な女性の声が上から降り注ぐ。



「ふふ、可愛い。可愛いわ。本当に可愛い」

「んん……」

「あ、起きちゃった?」

「……あでう?」

「ええ、アデルよ」



 未だ眠気は残ったまま目を薄く開けると、そこには美女の顔がぼんやりと映り込み、目覚めと共にクリアになっていく。

 そこでようやく寝ぼけた頭で現状を理解した。



「ああ、膝枕されてたのか……」

「いやだった?」

「ううん、気持ちいい……」

「そう? なら良かった」



 くわぁ~と欠伸しつつ未だに膝から頭をどける様子のないブラットに、アデルは微笑みながら甘やかしモード全開でそのまま撫で続けた。

 しかししばらくそうしていると、ブラットのお腹がクゥ~~と音を鳴らす。

 眠気に負けて、まだ帰ってから一度も食事をしていなかったことをそこで思い出した。



(う~~、もっと甘やかされたい……けどお腹すいた~)



 偵察任務中はずっと癒しとは無縁だった。数日ぶりに味わう人の温かさに触れていたいという気持ちも大きかったのだが、意識しはじめると余計にお腹が空いてくる。

 仕方がないのでブラットは、しぶしぶアデルの膝から頭をあげて起き上がった。

 「あっ」と寂しげなアデルの声にまた寝転がりたくもなってくるが、我慢してご飯の支度をすることに。



「アデルもご飯食べてく?」

「私の分もあるの?」

「うん。また、あのお米ってやつでいいならだけど」

「オコメ! あなたがいいなら是非いただくわ」



 米炊き魔道具や水の魔道具を興味深げに眺めるアデルにあれこれ説明しながら、お米を炊いて今回はハムも焼く。

 二回目のご飯を炊きながら、一回目のご飯を半分ずつ分け合ってハムをおかずに食べていく。

 久しぶりのちゃんとした食事にブラットは感激しながら食べていき、アデルも噛めば甘みが出てくるお米の魅力をどっぷりと味わった。


 結局そのまま四回もご飯を炊いてしまったが、全部ブラットとアデルの胃の中に吸い込まれるように消えていった。

 お腹も満たされたことでようやくブラットの心も体もリフレッシュし、ふぅ~~と人心地ついているとアデルが膝をぽんぽんと叩いてアピールしてくる。


 これは膝に座ってもいいわよ──と見せかけた膝に座ってほしいアピールだ。

 はいはいと、もはや何の疑問すら抱かずブラットは彼女の膝にお尻を乗せた。

 満足そうにアデルは頷くと、そのままギュ~~と力強く抱きしめられた。ここ数日間の時間を埋めるかのように。


 しばらくの間そのまま好きにさせてから、ブラットは今回のヌイとバルトからの報告について、国はどう対応するのか聞いてみることにした。



「こちらから攻めに行く──というのは不可能だし、あちらが攻めてきたら迎撃するという当たり前の対処に帰結したわ。

 どうせあちらはやる気満々なんでしょうし、近い未来に自らやってくるでしょうから」

「そうだろうね。もしそうなったら、そのときの戦いって五級の戦士は参加する?」

「周囲の邪魔なモンスターへの対処で参加はするでしょうけど、ボスには一級と二級の戦士が当たることになりそうね。ここで戦力を出し惜しむべきではないでしょう?」

「あー……うん、そうなんだけどさ、オレもボスの相手をさせてもらえないかな? アイツはオレが討ち取りたいんだ」

「…………その顔からして今回の雪辱や功名心からってわけではなさそうだけど、理由を聞いてもいいかしら?」

「うん。見つけたんだ」

「見つけた? なにを?」

「オレが次の進化をするために必要な最後のピースを」

「それってもしかして──」

「うん。あいつを倒して、あいつの命と素材を使うことでオレは進化できるって、あいつを見た瞬間に確信したんだ」



 そう。だから、あの主に体が引かれた。

 一次進化する際に小太郎が言っていた『肉体がさらなる進化のために、新たな力を求める衝動』『体が、細胞が欲していると訴えかける本能』まさにこれこそがそれかと、見た瞬間に天啓がごとく理解した。

 アレを倒すことで、自分は進化できるのだと体中の細胞や本能が訴えかけてきたのだ。



「だからこそ、オレがあいつにとどめを刺さなくちゃいけないんだ」

「けどブラット……、言いにくいけどそれは──」

「無理だって?」

「……ええ。ごめんなさい……」

「謝ることないよ。だってほんとのことだもん」



 今のブラットでは勝つことはできない。今回はダメージを負わせることもできたが、奴がお遊び気分でふざけていたからにすぎず、次は同じ手に引っかかってはくれないだろう。

 そうなれば普通に考えてブラットが奴を倒すなど不可能。アデルの言いたいこともよく分かる。


 それにBMOでもあるように、進化の道は一つではない。

 地道に探せば他にもっと手ごろな進化をさせてくれる存在もいるだろう。

 だがあれ以上に次への一歩を大きく羽ばたかせてくれる存在は、いないように思えてならなかった。

 だからブラットは決意した、あれを殺して糧にしようと。



「だったら──」

「でも大丈夫。そのときは、できること全部やって殺すから」

「えっと、それはそういう……?」

「倒す手段に考えがあるってこと。まだ準備しなきゃいけないことはあるし、戦うときは誰かに手伝ってもらう必要もあるかもしれないけど、止めを刺す自信はある」



 普通にやって倒せないモンスターを倒すにはどうするか。

 そんなものは決まっている。ありとあらゆる下駄を自分に履かせて手段を用い、嵌め殺ししてしまえばいい。

 BMOでできる準備を全てやり尽くし、相手からすれば卑怯と言われるようなことも全部やり、確殺の策を持って討ち滅ぼす。

 色葉がゲームでは絶対にやりたくない、正々堂々のガチンコバトルとはかけ離れた手段でだ。



(こっちでモンスター相手に手段を選ぶ気はない。私は絶対に死にたくないし死ぬ気もない。

 殺せるという自信がない限り、絶対にアイツとは戦わない。でも絶対にあいつは私が殺すんだ)

「はぁ…………、またその目なの?」



 理解してほしいという一方的な願いと、絶対に曲げる気はない。うんと言わないのなら、無理にでも乱入するかもしれない。そんなことを思わせる目だ。



「だって一級の戦士はできるだけ取っておいた方がいいだろ?

 他の陣営だって絶対に偵察しに来て、隙あらばって狙ってくるはずだ。違うか?」

「それはそうだけど、ブラットの場合それは建前で、進化のために戦いたいだけでしょ」

「そうだね。けど絶対に勝つ自信がある方法で戦うって約束する。だから──」

「まったく…………。分かったわ、分かりました。他からどういう意見が出るかは分からないけど、そういう方向で話を出してみる。

 けどこれだけは覚えておいて。本当にあなたが危ないようなら、問答無用で引きはがして私がそいつを殺すわよ。いい?」

「うん。それでいいよ」



 アデルの深紅の瞳は戦士の力強さを持ちながら光輝き、ブラットの瞳を射抜いてくる。

 これではちょっと危なくなっただけで飛んできそうだと、過保護なお姉さんに向かって苦笑する。



「もう……、何を笑っているのかしら。ずっとず~~っと心配させて」

「うひゃぁあ~」



 両方のほっぺを後ろからプニッと抓まんで引っ張られた。痛くはないが、なんだか気恥ずかしい。

 間の抜けた声でじたばたするブラットの後頭部にアデルは自分の額をこつんと当てて、頬から手を放しギュッと抱きしめ直した。



「危なかったら自分で逃げてもいいのだからね。

 ブラットはまだ子供なんだから、誰もそれで笑ったりなんかしないし笑わせない。

 だから頼るときはちゃんと頼るのよ。分かった?」



 自分を心から心配してくれる彼女に報いるべく、ブラットは横向きに体の向きを変えて彼女の顔を正面に見据えた。



「うん、分かった。ありがとう、アデル」

「どういたしまして、ブラット」



 そう言って笑う彼女の微笑みは満天の星空に輝く月のように美しく、美形を見慣れたはずのブラットも思わず見とれてしまう。



(少なくとも、この笑顔が見られなくなるのは嫌だな……)



 そんな気持ちを抱きながら、ブラットはまた体の向きを戻し、そっと彼女の胸に背を預けたのだった。

これにて第二章は終了です。ここまでお読みいただきありがとうございます。

次章にはBMO内でも期間限定イベントがあったりと、そちらでもまた盛り上がりを見せられたらなと思っています。

本作はじめてのゲーム内大型イベントなので、上手く書けるか少し心配ですが……何とか書き切りたいですね。


それと、今後のモチベーションにも繋がりますので、もしよろしかったら評価や感想、ブックマークなどしていただけるととても嬉しいです!

あまり気にしないようにしているつもりだったのですが、やはり形として結果が出ると「よしやるぞ!」と思えてしまうようでして。


また例のごとくお話のストックがかなり不味い状況になってきたので、私の心の余裕のためにも次章は12月14日(火)を予定しています。

少しだけ期間が開いてしまいますが、その間に気力もストックも貯めて三章にのぞみたいと思います! それではまた!!

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― 新着の感想 ―
本格的に現地妻になってるな……w
[良い点] 女→男の転生してないけどTSモノこれが見たかったんです。 偵察で誰か死ぬのかヒヤヒヤしましたが、今回は無事でほっとしました。 読み始めたばかりなのでこれからも楽しみです。
[良い点] ありがちなゲームからの異世界転生ではなくて、現実とバーチャルと異世界の危うい繋がりにリアリティがあって素敵な作品です!ピンクのティアラのスライム可愛すぎます〜。
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