第二話 最後の一体
眠りから目が覚めるように、けれど微睡みもなく思考はクリアに瞼が開かれる。
目の前に広がるのは中世ヨーロッパのようなファンタジーな街並み。
丁寧に並べられた石畳に色とりどりの屋根をした石造りの家々が立ち並び、この町を設計したデザイナーのセンスの良さがうかがえる美しい風景だ。
そしてその町には、多くのプレイヤーやNPCたちが今日も元気に闊歩していた。
屋台が並ぶ広場が近くにあることもあって、揚げ物や肉などを焼く匂いが歓迎してくれる。
ここはBMOをはじめたプレイヤーならば、誰もが来ることになるはじまりの町──『レクーア』。
そのせいもあって、まだ最初の進化もしていないような幼い姿をした初心者プレイヤーも大勢いる。
そしてその初心者たちに紛れ込むように、半年も続けているというのに幼い姿をしたキャラクターがここにいる。
種族を悪魔として設定したものの、『モドキ』という血統はその名の通りまがい物を指している。厳密には悪魔っぽいなにかと言ったほうが相応しいだろう。
身長は七〇センチほど。ペタンとした目にかかりそうな前髪に、首筋を隠すくらいの長さの後ろ髪。
ボロの腰布のようなものを巻いているだけの恰好のせいでほとんど丸見えな肉体は、ガリガリで肋骨が浮かんでおり手足も驚くほど細い。
悪魔を示すはずの背中の黒翼は、つばさ……かな? とかろうじて認識できる、不細工な粘土細工のような灰黒色をしたものが適当に張り付けられているだけ。
自分の体の一部であるはずなのに色葉がそれを動かすこともできないので、飛ぶなどという思考すら浮かんでこないほど、ただの飾り扱いだ。
(あぁ……、相変わらずこの体は重いなぁ……)
BMOにおける色葉の肉体──『ブラット』は、見た目で分かるように貧弱。
先ほどまでの現実の肉体でいた感覚を引きずっているせいもあり、余計に全身に重しが付いているように感じてしまう。
常に【鈍足】の状態異常をかけられているようなもので、試しにフレンドに頼んで【鈍足1】をかけてもらったこともあったのだが、そのときは身動きすらできなくなってしまったほど。
ただ動きを鈍らせるだけの状態異常で身動きを封じられてしまうあたり、その弱さは察して余りあるものがあるだろう。
そのときのことを思い出しながらも、色葉──ブラットの顔には不思議と笑みが浮かんでいた。
(進化目前となった今考えてみれば、あれもいい思い出に思えてくるから不思議だなぁ)
ぽてんぽてんという足音が聞こえてきそうなほどノロノロとした足取りで、外へと続く町の門を目指して歩く。
これ以上の速さで歩くと、すぐにスタミナが切れて【疲労1】の状態異常が付いてしまうからである。
一度【疲労】が付いてしまうとさらにスタミナの消費量が増え、治すには回復の魔法かポーション、地味に長い休息時間のどれかを選択しなくてはいけなくなるので注意が必要。
まともに稼ぐ手立てもなく、回復手段を持たないブラットが選択できるのはただ休む以外ないのだから、のろかろうがこの速さで歩くのが結果的に一番早い移動方法なのだ。
けれど、そんな歩き方をしているのはブラットくらいだ。
できるだけ隅を歩いているが邪魔そうに追い抜かれたり、見慣れぬプレイヤーはもの珍し気な視線を、その光景を見慣れたプレイヤーの一部からは馬鹿にするような視線を向けられたり指をさされたり、あまり居心地がいいとは言えない状況だった。
(ふんだ。もう慣れっこだもん。それにこの状況がもう終わると思うと、寂しいくらいだよ)
本音半分、強がり半分な気持ちを抱えながら、ようやく門へとたどり着き町の外へと出る。
ここからはもう油断できない。ブラットの貧弱な体は、モンスターに先に見つけられただけで逃げることもできずにやられてしまう。
こちらは準備万端に整えて、先手を取れる状況を作り出してはじめて最弱のモンスター相手に戦闘が成り立つのだ。
注意深く視線を巡らせながら、こそこそと平原を進んでいく。何体かモンスターの影らしきものが見えるが、そういうのは相手にしない。
ここのモンスターはブラットでは敵わないものばかり。普段倒していたモンスターであっても、こんな開けた場所ではなぶり殺しにされてデスペナルティを負うだけだ。
身を潜めながらできるだけ静かに木々の多い方へ、さらに奥の林の方へと移動していく。
(こういうときだけは、モドキって便利なんだよなぁ)
モドキ最大の利点と言っていいかは人によるかもしれないが、弱すぎるがゆえに存在感が希薄なのか、モンスターに察知されにくいという特性がある。
そのおかげで今のようにのろくさ草原を移動していても、よほど近づくか完全に視界に入るかしない限り襲われない。
けれどその代わり見つかればどこまでも追ってくる。
普通であれば距離が開いたり、逃げ回ったりしていると敵対が切れてどこかに行くことがあるのだが、モドキだけは絶対に諦めてくれない。向こうからすれば、絶対に勝てるエサ──ということなのだろう。
(よし。ここまでは、いつも通り見つからずに済んだね。あとは獲物を見繕うだけ)
やってきたのはある程度開けてはいるが、木々が程よくジグザグに生えている林の中。ここが長い時間をかけて見つけた、ブラットの狩場だ。
ブラットは手持ちの魔物素材を食べ空腹値をいっぱいにしつつ、緩慢な動きで小石を何個か拾いながら注意深く視界の悪い林の中に視線を巡らせる。
(いた──)
重量制限によって動きに支障が出ない程度に小石を拾っては自分の手持ちスロットにセットしていると、ノロノロと移動する小さなスライムの姿を目に捉えた。
音を立てないように木の後ろに隠れ、相手の進行方向を確認しながら少しずつ距離を詰めていく。
(よりによって最弱四天王で一番厄介なのが来ちゃったけど、しょうがない。やるぞ!)
最弱四天王とプレイヤーたちに呼ばれているのは、ウィーケストグラスマン、ウィーケストビーバード、ウィーケストマウス、ウィーケストスライムの四体。
グラスマンは雑草に根の足を生やしたようなモンスターで、あとは小鳥に小ネズミ、小スライム。
その中で色葉は、もっとも物理耐性の高いスライムを相手にすることを苦手としていた。
とはいえスタミナ消費と重量の関係でまともに武器を持てず、職業を一つも選択できない関係で魔法も使えない、レベルを上げるだけで覚える種族スキルすらない"モドキ"としてやっていたら、誰もがスライムを苦手に思うのだろうが。
高度なプレイヤースキルに場所選びができない者は、まずあのスライムが倒せずに詰むと言っていい。
なぜならモドキの一次進化の条件には四種の魔物の討伐数も関わっており、その貧弱さで倒せる四種と言ったら最弱四天王だけ。
ウィーケストスライムが倒せないのなら他を何体倒そうとも、最大レベルまで種族レベルを上げようとも、一生進化できないのだ。
けれど色葉は、ウィーケストスライムの討伐数は既にクリアしている。もう何百体と倒してきているのだ。
気負った様子もなく、ただめんどくさい程度の感想しかもっていない。
モドキを極めた彼女にとって、ウィーケストスライムなど獲物でしかないのだ。
(まずは──ほいっ)
小石を手持ちスロットから取り出し、スライムの近くにある木にコツンと当てる。
ウィーケストスライムは振動で敵の位置を判断する。その振動は地面を歩く微かなものから、空気の微かな振動──つまり音に至るまで感知してくる。
小石の音に反応し、プルプルと体を引きずりながら音源のほうに向かって移動を開始する。
それを見たブラットはさらに小石を木に当て、自分の狩場に誘導していく。向こうは小石の音に夢中で、まだブラットに気が付いた様子はない。
(これで誘導終了っと)
気を楽にしたまま最後のポイントへ、おびき寄せるための小石を投げる。
木の配置から地面の起伏、草がある場所、土が剥き出しなところ、尖った石が突き出ているところ。あらゆるポイントを知り尽くしたこの場所へ。
ウィーケストスライムが最後に当てた木の方へ真っすぐ這っていくのを、ブラットは息を殺し潜みながら見守る。
(今!)
目の見えないスライムが堂々とブラットの横を通り抜けたところで、後ろから襲い掛かるように爪先で蹴り上げる。
「ピギッ!?」
貧弱故に蹴ったところで大して飛ばない。しかもスライムの種族スキル【物理耐性】のせいで、蹴りによるダメージはゼロ。
しかし一〇センチほど浮いて着地した先には、尖った石が地面から突き出ており。飛ぶ勢いのままに、その先端に体が引っかかり、自重で引き裂かれるようにしながら地面にベチャっと転がった。
その地形によるダメージによって、わずかにウィーケストスライムのHPが減るのをブラットは確認した。
「少なくてもいい。この積み重ねが大事なんだ」
「ピギィイイイイ!!」
さすがに攻撃してはもう隠れることなどできない。自分のSTゲージが満タンに戻っていくのを感覚だけで理解しながら、視線はスライムから絶対に離さない。
ここからはもう、こちらから先手を打って攻撃を当てるのは不可能。いかに相手の攻撃をやり過ごし、チャンスをものにできるかが鍵となってくる。
バチン──と地面を叩く音と同時に、スライムがジャンプしブラットの腹へと突撃してくる。
一般種以上の血統ならば大した速度に見えないが、モドキの動体視力では剛速球のように感じてしまう。
「この攻撃は──こうっ!」
左足を下げながらそれを軸に半回転。ギリギリ攻撃判定外で躱すと、すれ違いざまにスライムは触手を伸ばして鞭のようにして叩いてくる。
それに対して軸にしていた左足を折り曲げ左手を支えに転ばぬように地面に伏せてこれまたギリギリのところで躱してみせる。
本来ならばウィーケストスライムの行動パターンは、ひたすらジャンプして突撃──ただそれだけ。
しかし劣等種以下の血統に対しては、触手鞭による攻撃と体を細長くし錐揉み回転しながら速度を増したジャンプ突撃をしてくるようになる。
「っと」
躱した先でさっそく錐揉み回転突撃をしてくる。けれどこれは威力も速度も上がってはいるが、攻撃範囲が小さくなる。
わずかな予備動作で見切って先ほどよりも小さな動作で、これまたギリギリのタイミングで身をよじり躱していく。
ポンッという音が聞こえてきそうなほど一瞬で元の真ん丸ボディに戻ると、今度は攻撃ではなく少し下がろうとしはじめる。
「それはさせない」
BMOには敵にもスタミナという概念がある。このスライムはこれまでの行動でスタミナが一定量を割ってしまったため、距離を空けて小休止しようとしているのだ。
けれどそれをさせるとブラットの計算が狂ってしまう。今度は自ら距離を詰めるべく、足音を鳴らし近寄っていく。
このスライムは反射とでもいうのか、振動をとらえると無意識的にそちらに向かおうとする。けれど思い出したかのうように、ST回復のために下がろうともする。それを繰り返させながら敵を動かし、ST回復を阻害していく。
一定距離まで詰めるとさすがに無視できないと、攻撃動作に戻るべくグッとスライムが一段潰れる。
(どっちだ────やった!)
潰れる予備動作の後どの形になるのかを見極めてから、パンと弾けるように飛んでくるスライムを迎え撃つ。
今回の攻撃動作は薄く広がるように顔面に向けて飛んできて、そのまま張り付いて口と鼻を塞ぎ窒息死させる悪辣なもの。
これはモドキ種に対してのみ行われる限定モーションの一つ。
一般人が利用できる仮想現実において、痛みや苦しみなどは規定値が決まっている。
それゆえにBMOでの窒息の苦しさはもがき苦しむほどではないのだが、水に潜った時そろそろ呼吸のために上がろうかと考えだす程度の、地味な苦しさがHPが0になるまで続く。
あまり気持ちのいいものではなく、ブラットも最初に窒息死を味わったときは嫌な気分になったものである。
しかしこの攻撃。顔面を広く覆うために、一番の急所である核を守る体──ジェル物質が薄くなる。
もしこの広がった一瞬に攻撃が当てられるのなら、モドキ種であっても物理耐性を抜いてダメージを与えることができる貴重なチャンスでもある。
ブラットは喜びながらも体は、もはや反射の域にまで達した動きを実行する。
オーバーヘッドキック……と言えればかっこいいのかもしれないが、実際はただ右足を上に上げながら、後ろに倒れるようにゴロンと背中から転がっているだけ。
その動きと限界まで薄く広がったスライムとのタイミングがピッタリ重なり、スライム核に近い部分にブラットの爪先がヒットする。
蹴られたスライムは「ピビッ!?」と奇声を漏らしながら、木にベチャっとぶつかった。
蹴りのダメージと木に衝突したダメージによって、これまでで一番大きくHPを削ることに成功した。
そしてダメージを与えた本人は受け身を取るように背中を草の生えた地面につけ、無傷で地面に仰向けに倒れた。
(倒れたときに頭を石にぶつけて死んだこともあったなぁ)
今は倒れる場所も計算づくで選ぶ余裕すらできている。コロコロと寝そべったまま転がってスライムに近づいていき、向こうが木から流れ落ちる前に立ち上がった。
わずかに削れた自分のSTが戻るよう呼吸を落ち着かせ、再びスライムのST回復を阻害すべく肉薄する。
触手で牽制されるが、それもダメージ判定ギリギリのところで躱し小突くように蹴っ飛ばす。
相手はノーダメージ。けれどそれでいい。スライムを休ませないようにするのが最も重要なのだ。
三種類の形態を使い分ける突撃に触手の攻撃、それらに最適な対処を続けると、やがて待ち望んだ行動を向こうが取り出した。
「「ピィ!」」
スライムは半分の体積になり二体に分裂した。これもモドキの血統を持つプレイヤーにのみ取る行動だ。
スライムの核が入っていないほうが錐揉み突撃をし、核の入っている方は離れようとする。
これはSTがギリギリになったときに行う行動で、分身に攻撃を任せ相手をさせることで、本体を休息させることを目的にしている。
(だからこそ、私は本体に突っ込む)
分体の攻撃をギリギリで躱し本体をまた小突く。慌てたように分体が反転し、本体も攻撃行動に移り出す。
ブラットは少し自分から体を引いて、両方が視界の端と端に映るようにする。
(これに対処できるようになるまで、何度このスライムに殺されたことか……)
もうこれで最後の苦戦になると分かっていても恨み節をこぼしたくなるが、今の状況でそんなことをしている余裕はさすがのブラットにもない。
ここぞという一瞬だけ焦点を絞って注視し、積極的な攻撃行動をとる分体と消極的な攻撃行動をとる本体を相手に一切無駄のない動作で対処していく。
今のブラットのプレイヤースキルならば、カウンターこそできないが躱すならなんとかできる。
そのせいで自分のSTも先ほどとは比べ物にならないほどに減りはじめるが、ブラットの計算ならギリギリで持つ。
(そろそろのはず──)
そしてその時は訪れた。分体のほうが溶けるように形を失い、雨水のように大地に吸い込まれて消えたのだ。
さらに本体はST切れを起こし、一時行動停止。分体に切り分けた体のジェル物質の半減状態もそのまま。
これによりスライムは物理耐性の大幅減少。STが回復しても【疲労1】の状態異常がかかるので、先ほどよりもST消費が多くなるとこちらにとっていいことづくめ。
ブラットの待ち望んだボーナスタイムのはじまりである。
まずは自分のST回復をして万全な状態に。そして動けないことをいいことにゲシゲシと蹴りを入れていく。
先ほどまでこれでは微動だにしなかったスライムのHPバーが、ちゃんと減りはじめる。
失われた半分のジェル物質は徐々に回復しはじめ、ダメージ量も減りはじめるが限界まできっちり稼いでおくことが重要だ。
そして相手が完全に失った体分の体積を回復させたところで仕切り直し。ただし相手には状態異常がかかっているので、ボーナスタイムまでの時間は短くなる。
次にスライムがST切れを起こせば今度は【疲労2】──次に【疲労3】と蓄積されていき、どんどん楽になっていく。
最高の【疲労5】までもっていくことができれば、相手はすぐに動けなくなる木偶の坊と化すだろう。
これを死ぬまで繰り返す方法こそが、モドキがスライムに勝つ唯一の方法。
(ここまででようやく5分の1を削ったところかぁ。ウィーケストラットなら3分の1はいけてたんだけどしょうがない)
モドキにとっての最大の難所といえるのがウィーケストスライムだとすれば、最初の難敵といえるのはウィーケストラット。
素早い動きで翻弄させられ完璧なタイミングでのカウンター以外、攻撃を当てさせても貰えない。
それ以前に、この体では相手の攻撃を躱せるようになるまでの道のりすら遠い。
しかし慣れてしまえばもっとも防御が薄く、ダメージを稼ぎやすい、優良な経験値稼ぎ相手になり変わる。
(じゃあ、残りもいきますか!)
ブラットは再び、スライムとの戦闘に集中しはじめた。
彼女──彼にとってはこれも激戦。最弱と呼ばれるモンスター相手であろうと、毎回が死と隣り合わせの決戦の日々だった。
けれど傍から見れば、のろくさザコモンスターと遊んでいるようにしか見えなかっただろう。
それ故にほとんどのプレイヤーが、それこそ本人ですら気が付いていない。
あらゆる劣弱を、これでもかと詰め込まれたモドキという血統。
その体で攻撃を避けるとなると体のひねり一つとっても微細なズレも許されない、避けに入るタイミングも小数点以下のズレすらも許されない。
全て完璧に、完成された動きを、その場の状況に合わせて瞬時にとれるプレイヤースキルが要求されるのだ。
だからこそ、ブラット──色葉はこの半年で徹底的にプレイヤースキルが磨かれた。
もとよりゲーマーだったこともあり、色葉に素養がなかったわけではない。
それでもこんなことでもなければ、どこまでいっても『上手いプレイヤー』の一人にすぎなかっただろう。
しかし彼女は今や現在のBMOトップにして天才プロゲーマーとして知られる人物に比肩、もしくはそれすらも超えるプレイヤースキルを身に付けた。
この戦いを見て察しのいいプレイヤーなら思うだろう。もしあのプレイヤーに、まともに動く体が手に入ったら、いったいどうなるのだろうかと。
「これで──────最後!!」
「ピギィィ……──」
長い時間をかけてスライムのHPを全て削り切る。
粒子となって消え去り、ドロップアイテムとして『最弱粘体の触手』というものが地面に残された。
これは触手攻撃がモーションに加わった、劣等種以下のプレイヤーにだけドロップするアイテム。
劣等種からはじめたプレイヤーからすれば珍しくもなんともないアイテム。売ったところで二束三文にしかならないゴミアイテムの一つだ。
けれど今のブラットにとっては、それがトロフィーか何かのように思えた。
《種族レベルが 30【MAX】 になりました。》
《進化への道が開かれました》
「やった! って、ん? 進化への道? なんそれ?」
他のプレイヤーの動画を見たことがあるが、そのときは《進化条件が満たされました》というアナウンスだった。
しかし今回ブラットの耳に聞こえたのは、《進化への道が開かれた》。
「ん~~? アプデで仕様が変わったとか?」
不思議に思いながらステータスを開き、今まで灰色だった進化選択の項目に意識を向けて開いてみることに。
すると──。
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★進化クエスト発生★
進化条件達成おめでとう!
進化の扉を探し、試練を乗り越え進化せよ
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──新たなクエストが発生した。
「え、えぇ………………」
どうやらまだもう少しだけ、進化はお預けのようである。




