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Become Monster Online~ゲームで強くなるために異世界で進化素材を集めることにした~  作者: 亜掛千夜
第七章

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第百七四話 二度目の強制招集にて

 謎の虹の卵を完成させるため、ブラットたちは動き出す。

 もともと他の三大天の神殿がありそうな場所や、密猟者など後ろ暗い者が潜めそうな場所なども資料室での情報取集の段階で集めていたのだが、それは一旦脇に置いて。



「カラスちゃんたち、ありがとねー!」

「「「「カァ~~~」」」」



 シロカラスには充分すぎるほど助けてもらったのだが、別れ際にちゃっかり加護まで貰ってしまう。

 これこそ【知の大眷属の感恩かんおん】の真骨頂。知に属したαモンスター系統なら、ここまで親切にしてもらえるのだ。


 町を再度出てからここまでの間に、シロカラス以外からも【薬草知識・初級】や【キノコハンター】、森での最適な動きが分かるようになりST消費減少に繋がる加護──【森人】などなど散策に便利なものを複数授かることができていた。

 知の眷属の加護は記憶能力や探索能力に優れたものも多いので、知の大眷属からの祝福をこれほど序盤から得られたのは大きい。


 さらにシロカラスはαモンスターの中でもトップクラスに警戒心が高く、知系統の〝祝福〟持ち以外の前には絶対に現れない。

 その上でシロカラスからのなつを最大まで上げることで得られる、隠れた物、隠されたものを非常に見破りやすくなる加護──【慧眼】。これが非常に有用な加護であったりもするので、このときのブラットたちは気付いていないが序盤のムーブとしては最適解ともいえる動きをしていた。



「さてじゃあ、残りの卵の欠片をちゃっちゃと集めていこうか」

「できれば今日中には集めておきたいね。そうすればまだ余裕をもって、攻略に挑めるだろうし」

「明日も学校だし夕ご飯までとすると~~~うん、まだ時間はそこそこ残ってる!」

「ああ、そっか。スラちゃんたちってリアル時間のご飯時までだったっけ~。

 ちなみに私は夜遅くまでやっちゃうよ~。一人でできる簡単な調合のテストとかもしときたいし~」

「あんまり夜遅くまでやってるのもよくないぞ。ランランだって仕事があるだろ」

「だいじょぶだいじょぶ~。私は皆より、おねーさんだからね~。ちゃんと自己管理もできているのさ~」

「ほんとかなぁ。パンダさんはあとちょっとあとちょっとって止め時失って、次の日きつくなるタイプに見えるけど」

「うぐっ。そ、そんなことないよ~~」



 雑談をかわしながらブラットたちは、森から帰ってくるときに決めていた次の目的地に飛ぶべく、ここカンパネラ支部にあるポータルが並ぶ部屋へと向かった。



「やっぱり赤の選択範囲はダテじゃないね。凄く行けるところが増えてる」

「赤になってなきゃ、卵の欠片もどっかで挫折してそうだ」

「その前にあの儀式で場所が分かるようになってなきゃ、たぶんお宝発見があっても見つけられなかったんじゃない?

 期間限定っていうわりに、めっちゃマップ広いよね、このゲーム」

「それは言えてるね~。他にも発見方法はあったのかもしれないけど、【お宝発見】と運だけじゃ、まず不可能だったろうし~」



 分かる欠片の位置も本当にバラバラで、あの儀式を行っていなければ行かずに終わりそうな場所もあった。

 そういう意味からも読み取れるように、運営サイドは自力での欠片の完成は想定しておらず、そのための手段をいくつか用意していた。

 ブラットたちはその手段の内の一つを、シロカラスたちのおかげで見つけられたというわけである。



「よし、それじゃあまずは一番近くのここだな──行こう」

「「うん」」「はいよ~」



 資料室でスクショを撮ってきた地図と照らし合わせ、欠片を触ったときに感じられる二つ目の場所へ行ける最寄りの町へと四人で飛んだ。




 それから二つ目、三つ目、四つ目、五つ目と、できるだけ寄り道はせずに卵の欠片探しをこなしていく。

 やはり赤の隊員以上がいける範囲はブラットたちレベルが自由に探索することを想定していない区域になっており、まともに戦闘していれば時間がかかってしょうがない。

 なのでそういった場所はランランの道具や、これまでの加護なども駆使して創意工夫で乗り越えた。

 おかげで卵はかなり元の形に戻ってきている。ここまでくれば、誰がどう見ても卵にしか見えないという程度に。


 そして最後の六個目。本日のブラットたち学生組のタイムリミットが迫ってくる中、ラスト一個なら行けるだろうと踏んで、その最後のピースがあるであろう区域に近い──『ラニント』と呼ばれる町へと辿り着いた。



「ギリギリ間に合いそうだな。今日中に卵の正体が分かるかもしれない」

「分からないままだとモヤモヤして寝らんなさそうだったし、ほっとしたよ」

「でも六分の五になってもまだ、相変わらずアイテム表記は???の卵になってるけどね。それにそもそも完成させたら、ちゃんと孵化するのかな?」

「そこは祈るしかないね~。おお? なんか騒がしいね。なんだろ」



 残りは一つ。あともうすぐだと、ラニント支部のポータル部屋から出て受付の辺りまでやって来ると、なにやらNPCたちがてんやわんやの大騒ぎ。

 これは嫌な予感がすると、四人はできるだけ気配を消して出口へと向かうが、そうは問屋が卸さない。

 一人の女性NPCに見つかり、よくぞここへと言わんばかりに目を輝かせながらブラットは肩をガシッと掴まれた。



「いいところに! 君たちも──あれ? 黄色? お使いで来ただけ?」

「そ、そうなんだ。だからオレたちはこのまま行っても……」

「大丈夫! これが下級隊員なら考えたところだけど、中級なんだし別に構わないわ! 今は一人でも戦力が必要なの。手伝ってくれるわよね!?」

「あ、ああ、うん……はい」



 ここにきて強制クエストが発生。こればかりはイージスに所属したからには、断れないイベントだ。

 もし強引に断ればブラットたちの信用問題にもかかわり、これからのイージスでの活動がしづらくなるのは目に見えている。

 有無を言わさぬ様子の女性にブラットが頷いた瞬間、四人の目の前にクエスト内容が表示された。



「密猟組織『センチピード』の撃退? ってことは対人戦ってことか」

「そうよ! 怪しい動きを見つけて探っていたら案の定、産卵期でたくさんの卵を抱えてるツインヘッドスネークを狙ってきているのよ。

 今は先遣隊がなんとか抑えてるみたいだから、こっちからもどんどん戦力を送り込んでいるところなの!

 さあ、分かったら準備が調い次第すぐに行って! 私も充分な人員を確保できたらすぐに向かうわ!!」



 そういって女性NPCは、最初から最後まで慌ただしいまま去っていった。

 ここでバックレるわけにもいかないので、ブラットたちも最低限の確認と補充を済ませ、クエスト画面に表示された簡易的な地図を頼りに現場へと急行した。


 似たようなプレイヤーたちと一緒に現場についてみれば、緊急というだけあってイージス側のNPCたちとセンチピード側のNPCたちが武器を手に、やや背の高い雑草まみれの草原で大勢がぶつかり合っていた。


 件のツインヘッドスネークの群れは、ブラットたちが通り過ぎた後方にあるのでまだ安全だ。

 映画にでも出てきそうな迫力のある戦闘シーンに思わず感心しながらも、ブラットたちは途中で案内役としてやってきて、この草原まで連れて来てくれた『アンニャイ』と呼ばれる小型のネコαモンスターに好物の肉を与え、礼を言ってから戦闘へ加勢していく。



「はあっ!」

「ぎゃああっ」



 前の方にいるセンチピード側の人間は雑魚ばかりで、たいして強くもなくブラットの魔刃で数回切り伏せればあっという間にデータの粒子となって消え去ってくれる。



「前の方は弱いのばかりって感じだが、後ろの方にいるやつらはかなり強そうだ」

「──ふっ! だね、MVP狙うならあっちを狩りに行ったほうがいいかも」



 HIMAも両手に一つずつ持った槍で、二人を始末し終えたところでブラットが見ている後方へと視線を向ける。

 しかし、しゃちたんはと言えば……そちらよりも別のことが気になって仕方がなかった。



「だ、ださいっ……。なんで敵はあんな格好で平気なのっ!?」

「え~? 敵味方分かりやすくてよくな~い?」

「にしてもじゃん! なにあのムカデTシャツ! 悪の組織があれってどうなの!? もはやギャグじゃん!?」



 前方にいる数合わせのように用意されたモブ敵たちは、身軽だからか組織に予算がないからなのか、ろくに防具も身に着けずセンチピード──つまりムカデのマークがデカデカとプリントされた薄汚れた白Tシャツを揃えて身にまとい戦いに臨んでいた。

 デザインがお洒落なら目をつむれるだろうが、控えめに言ってかなりダサい揃いのムカデTシャツを。


 さすがに後方に詰めている、それなりに格の高そうな密猟者たちは揃いの赤茶色をした鎧を身に着けているので見えないが、おそらくその下には組織のマークであろうムカデTシャツを着こんでいることだろう。


 だがブラットとHIMAはもちろん、ランランも分かりやすくて味方を攻撃しなくてすむと、一番効率のいいポイント稼ぎはどうするべきかで戦況を見ており、敵がダサかろうが何だろうが気にしてもいなかった。



「ん? HIMA、今あいつ何かをコソコソ見てなかったか?」

「うん、してたね。たぶんこれ、シロカラスの【慧眼】効果かな。相手は隠そうとしていたはずなのに凄く目立って見えた」

「どいつのこと~?」

「ほら、あの後ろにいる木人もくじんのNPCですよ、ランランさん」



 人型をした木が鎧を着けて動いているような見た目の木人系NPC。強さ的には後方にいる面子の中でも、弱すぎず強すぎない程々の実力者といった印象を受け、あの中では目立たない部類の人物だ。


 そんな人物がこそこそと端末らしき薄い板状の何かを一瞬だけ取り出し、チラリと見てからすぐにしまうようなそぶりを見せていた。

 非常に怪しく【慧眼】の加護を持っているブラットたちには見えるが、軽く見渡した限りでは、まだ他のプレイヤーは誰も気が付いた様子は見せていない。

 四人は雑魚をあしらいつつ、しれっと通話に切り替える。



『たぶん連中のボスって感じじゃないから大金星にはならないだろうけど、絶対にアイツにはなにかあるはずだ。

 ボスっぽいやつはちょっとオレたちだと取り巻き含め厳しそうだし、あいつに的を絞って攻略してみないか?』

『でもまだ敵も多いし、もう少し佳境に入ってから行動する感じ?』

『う~ん、それだと私ら以外もあいつの怪しさに気づいちゃうかもよ~?

 相手の人数が減っちゃうと、こっちが近づくのもバレバレになっちゃいそうだし~』

『ですね。混乱に乗じて紛れ込んで、サクッとやって端末を奪うのがよさそう。ちょうど、それに向いた加護もあったしね』

『だな。けどそうなると帰りはどうするかだけど……』



 味方の陣営から大きく離れた敵陣の後方で戦闘を起こせば、どれだけこっそり行けてもバレるのは必定。

 そうなってしまえば、数の暴力でブラットたちなど磨り潰されてしまうだろう。それでは意味がない。

 どうやってうまく帰り道を確保するか。そのための作戦を四人で練っていく。



『それじゃあ作戦開始だ。行こうHIMA』

『うん。しゃちたんも大丈夫そう?』

『うん、任せて。ばっちりこなして見せるから』

『がんばってね~』



 ランランは作戦のためのアイテム作りがメインで、戦闘要員ではないので準備段階が本番だ。

 作戦が開始したら後方待機で、三人が離れていくのを安全な味方が大勢いるところで観察し、客観的な目線でブラットたちの状況を報告していく係に徹する。



『よし、バレてない。こういう慌ただしい場所だと、かなり有用だな』

『知の眷属じゃない子だったけど、仲良くなれてよかったね。ほんと』

『うぅ……でも虫系の子だったし、ちょっと私は苦手だったなぁ』



 ブラットたち三人が今、発動している加護は【隠密行動】。

 ナナフシのような見た目のムシ系のαモンスター。それが三個目の卵の欠片探しの途中で立ち寄った森の中で隠れているのを【慧眼】でたまたま発見し、仲良くなった個体から授かることができたもの。


 効果は衣服以外の装備やアイテムを一切身に着けず、攻撃行動をしない限り気配が薄くなるというもの。

 他に意識が向いていなければ気づかれる可能性がグッと上がるが、今のような戦闘に夢中になっている場合は意識外の存在として敵の群れの中、コソコソと草むらの中を移動することができた。


 ブラットとHIMAは一緒にターゲットへ、しゃちたんは別方向に向かいながら静かに気づかれないよう移動していく。



『こっちは定位置に着いたよ。そっちはどお?』

『あと少しで行けるよ、しゃちたん。ちょっと待っててね』

『………………よし、ここからなら奇襲ができるはずだ』



 ターゲットが自分たちの射程範囲内に入ったところで、できるだけ木人の周りに人がいないタイミングを草むらからジッと見計らう。

 そして周囲の意識も、ターゲットの意識も遠くに向いた瞬間──ブラットは何も持たないままギリギリまで【隠密行動】を維持し肉薄。【勇心霊気】で黄金のオーラをまとい盛大に目立ちながらも、相手がこちらを見るころには【雷刃師】で新たに覚えたスキル【雷光一閃】を横一文字に振り抜いた。



「ぐぁっ!? なん──っ!」

「っは!」



 【雷光一閃】は【雷大刀】よりも格段に剣速は出るので不意打ちにはピッタリなスキルだが、威力では劣るスキル。格上らしき木人には、そこまでダメージが通っていない様子。そもそも電撃に対する耐性も少し持っているのかもしれない。

 それでも続けて威力のある【雷大刀】で縦に切り裂こうと二撃目を放つが、それは相手の持つトンファーで受け止められてしまう。しかし──。



「後ろがガラ空きだよ」

「ぐぁっ」

「前もなっ!」

「ぐぅっふ──」



 全員が目立つ金色のオーラをまとうブラットを見ている間に、後方に回り込んでいたHIMAが二本の炎槍を同時に木人の背中に突き刺した。

 思わずターゲットが後ろを向いた瞬間、今度はブラットによる【雷大刀】を無理やり火属性に書き換えた《炎大刀》が炸裂。

 ぶかっこうな書き換えのせいでとんでもないMP消費になったが、木人の弱点でもあり効果的だ。

 だがそれでも今のブラットたちでは瞬殺するほどの火力はなく、このままでは倒し切る前に敵に取り囲まれてお終いだ。なのでアッサリと次の動きに移行する。



「もらいっ」



 殺せないならと相手が怯んでいるうちにHIMAが端末を掠めとる。ここまでの時間は、まだ三秒も経っていない。

 周囲の敵は突然現れたブラットたちに目を丸くしていたが、その端末が余程重要なのか、ふらつく木人と共に急いで回収しようと群がってくる。



「ブラット!」

「ああ!」



 だが囲まれる前にHIMAが投げ渡してきた端末を、ブラットは《エアクッション》による風圧を駆使して狙った場所へ吹き飛ばす。

 当然その端末が大事な敵たちは、そちらに視線が向くので二人はその間に包囲網をかき分け逃げていく。



「きゃーっち!」



 そして端末が飛んだ先には、しゃちたんがいた。ブラットが上手く飛ばしてくれたおかげでミスすることなく彼女がキャッチ。

 方々から「そのスライムを殺せ!」だとか、「端末を取り返せ!」などという怒声と共に、しゃちたんへと敵の精鋭たちが急いで向かっていく。



「にげろーーー!」



 スマホのような形の端末を持ったしゃちたんは、ここにいるぞとわざわざ掲げて、大声で叫びながら地面を滑り、味方がいる方角とは違う方へと逃げていく。


 そうしてしゃちたんへ意識が向いてくれたが、やすやすとブラットたち二人を逃がそうともしてくれない。

 しゃちたんほどではないが、センチピード側の木人を含めた精鋭たちが少数追いかけてくる。


 だがこの状況も想定して動いていたので問題ない。

 ブラットは行きに仕掛けていた未発動の魔法を【細雷】を改変して作った起動魔法デトネーターで発動させていき、追いかけてくる相手に四方八方から魔法を打ち込んでいく。

 トラップのようではあるが、発動前の魔法を置くだけならば攻撃行動にはとられないのは実験済みだ。


 その間にHIMAはランランお手製の毒瓶を投げ込んで、相手の体調を崩し速度を落とすのも忘れない。

 そうして逃げながらチクチクチクチク地味に削っていき、手ごろな所まで削れたら反撃に出て何とか二人で今回来ていた中では精鋭だった四人を倒すことに成功。



「スライムをやったぞ!!」



 追っ手を始末し味方のいる方へ一目散に逃げていくブラットとHIMAの耳に、そんな敵の声が遠くから届いた。



「よし──端末を回収しろっ」

「これだ! ………………ん? なんだこ──うわっ!?」

「おいっ、どうしたっ!?」



 スライムを始末し回収したはずの端末が、手に持った瞬間ダメージにならないほど小さな爆発を起こして消滅する。

 これはランランが見た目だけ、それっぽく見えるよう作ったオモチャ。つまり偽物だ。

 そして彼らが倒したスライムというのは、しゃちたんのスキルで分裂し小さくなった片割れ。


 本体は分身体に敵が夢中になっている間に、こそこそと本物の端末を持って味方の陣へ戻っていた。

 まんまと騙されたことを知った敵たちは、行き場のない怒りをぶつけるように全員で一気に押し潰しにかかって来る。

 しかしプレイヤーも混ざった、イージスの部隊も負けてはいない。一方的というほどではなかったが、それでも最後はきっちりとボスとその取り巻きも含め、ブラットたちではないプレイヤーたちによって倒され、今回の事態は終結した。

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