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Become Monster Online~ゲームで強くなるために異世界で進化素材を集めることにした~  作者: 亜掛千夜
第七章

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第百六六話 初緊急クエスト

 会場にはそれなりにプレイヤーもいたため、強制参加と言えど定員に達して受けられないかもなんてことも考えていたのだが、BMOの優秀なAIによりシームレスで別次元にいくつもの『ベアコング』が出た世界線が生成され、ブラットたちも余裕でそのクエストに入ることができた。


 ブラットたちは状況からすぐにそういう仕様になっているのかと感心しながら、町を出てご丁寧に森の位置情報まで付いていたクエストの受領ログを頼りに一番近くの森へと走っていく。



「周りを見る感じベアコングの強さも、それぞれ調整されてるかもしれないな」

「同じくらいの強さでまとめられてるっぽいしね。これなら何もせずに瞬殺されちゃった──なんてこともなさそう」



 会場から出て一緒に森へ向かっている他のパーティは、ブラットたちも合わせて十二組。人数にして五〇人程度の大所帯。

 それなのにブラットたちと同程度の進化帯で組んでいるパーティばかりなので、一部の最前線級のパーティに無双されてお終い──なんてこともないので安心だ。


 町の外にある草原を抜け、森へと入れば小動物型や昆虫型の資料室の情報端末で見た友好的なαモンスターたちが、人に警戒する様子もなくのんびりと過ごしているのが見て取れた。

 だがその中の一種が不意にブラットたちや、他のプレイヤーたちの前に飛び出してくる。

 それはバスケットボールサイズの毛玉かと思えるほど真ん丸なハムスター型モンスター。もちろん友好的なαタイプだ。



「案内してくれるみたいだね~」

「もふもふちゃんだ! お尻触りたい!」

「ふふっ、後で時間があったら触らせてもらおっか」

「今資料室で調べた情報のスクショをあさってたら見つけたぞ。種族名は『ガイダー』、森の案内役をやってくれてるモンスターらしい」



 こっちに来て! と身振りで示すと、そのもふもふ──ガイダーは現場まで案内を買って出てくれる。

 触り心地のよさそうな、ふわふわのお尻を見つめながらブラットたちはついていく。



「案内が終わったら木の実……特に赤いドングリみたいな『アカナッツ』を上げると喜ぶみたいだけど……誰かそんな木の実とか持ってるか?」

「ああ、それなら私が持ってるよ~。スタミナ増強剤が作れそうだったから、そこそこ確保しといたんだ~。スラちゃんにも採ってもらってたよね?」

「うん、持ってるよ! 私あげてみたい!」

「じゃあ皆であげようね」



 BMOだと精神年齢が若干下がっている気がするしゃちたんに笑ってしまいそうになりながら、HIMAはお母さんのような心持ちでそう答えた。


 案内されるままにガイダーを追いかけて行った先にあったのは、非常に混乱に満ちた状況だった。

 ひときわ大きな大木には、人が数人住めそうなほど巨大なスズメバチのような巣が。

 その周りにはNPCたちのイージスの部隊と、三つの頭を持つ巨大なミツバチのような見た目の『ミッツバッチ』の働きバチたち。それらがニメートル程度の大きさをしたクマをゴリラのような体格にし、クマの腕が一対とゴリラの腕が一対の計四本の腕を持つ『ベアコング』とよばれるβモンスターから巣を共闘して守っていた。


 戦況は五分五分で、プレイヤーたちが加わればあっという間にくつがえりそうではあった。しかし──。



「増援かっ!? 助かった! ここは俺たちに任せて奥にいる本丸を倒してきてくれ!! 気を付けろ、奴はでかいぞ!!」



 ブラットたちプレイヤーの団体を発見すると、先輩隊員の内の一人がさらに森の奥を指さした。そちらに今回の緊急クエストの討伐対象がいるようだ。

 プレイヤーたちがすぐさまそちらに向かう中、案内はここで終わりだと立ち止まる『ガイダー』に、急いで彼らの好物『アカナッツ』を渡していく。



「待っててくれたら後でもっとあげるからね!!」

「キュイ!!」



 分かった! とばかりに短い手を上げて喜ぶガイダーに和ませてもらいながらも、美味しいところを他のプレイヤーに取られても困ると、モフモフは後回しにしてブラットたちも本丸の方へと急行していく。



「ゴガァアアア!!」

「──うおぁっ!?」



 到着早々、先に行っていった大きな盾を持ったタンクらしきドワーフの男性プレイヤーが、八メートルサイズの巨大『ベアコング』のパンチをくらって吹っ飛ぶシーンが視界に入った。



「【ウォータークッション】!」



 そのままでは木にぶつかって追加ダメージを受けそうだったので、ちょうどこちら側に飛んできていたこともあり、ブラットが回り込んで【ウォータークッション】で受け止める。



「ブククッ!? ──プハァッ! あ、あり──って、モドキさんじゃん! ありがとう!」

「気にしなくていい。それよりも……」



 突然現れた水のクッションに目を丸くしながらも、すぐに味方側の──さらにブラットからのフォローだと気が付き、驚きつつお礼を言ってくれた。

 それにブラットは右手を軽く上げながら答え、改めて化物のような巨大ベアコングに視線を向けた。

 この男性に限らず、他パーティのタンクが次々と四本の腕から放たれる高速パンチに吹き飛ばされている。



「あれじゃあタンクでも抑えるのはきつそうだな」

「そ、そうなんだよ! 盾で受けようにも、ただの拳で吹っ飛んじまう! かと言ってデカい図体のわりに動きが早いから、攻撃を当てるのも近づくのも難しい。あんなの俺たちにどうしろって──」

「──近づけないんじゃなくて、難しいだけなら問題ないか。HIMA、オレが注意を引くから、その間に攻撃を頼む!」

「了解! こっちは任せて」

「え? あっ、ちょっとモドキさん!?」



 親切に少し合流が遅れた四人に状況を説明してくれたタンクプレイヤーが慌てて止めようとする中、ブラットは気にせず巨大ベアコングに突っ込んでいく。



「ゴォオオオオ!!」

「こんなのトート三兄弟の連携攻撃に比べたら大したことないな」

「──ッゴァ? ゴォ! ──ゴガァ!! ゴガッ! ゴァアアアッ!!」



 四本の野太いクマ腕とゴリラ腕から放たれるパンチや薙ぎ払い、虫でも殺すかのような踏み潰し攻撃をスイスイと避けながら、ブラットは大きな岩でも登る気分でベアコングの体を登っていく。


 それは一発でも無防備に当たれば即死級の攻撃なのだが、全てを魔法のように避けてベアコングの肩の上で立ち上がると、その鼻面に【補助翼・脚】──幽機鉱の翼を腕ではなく脚部に纏わりつかせる種族スキルで【狼爪斬】を放つ。

 一瞬でゴーレムのような足になり脚力が増したその斬撃が、ベアコングに初めてちゃんとしたダメージを与えた。


 足に纏わせることで肝心の狼爪は隠れてしまうのだが、それは【英装転換】でガブリエルをオオカミの爪に変形させ足に組み込むことで、【狼爪斬】が使えるように工夫されている一撃だ。威力も普通の爪より高いときている。



「ガァッ!? グルゥゥウウアアアアッ!!」

「よっ、ほっ」



 頭の周りを飛ぶハエでも払うかのように、手をばたばたとさせたり、体をブルブルと震わせたり、細かくジャンプしたりと必死にブラットを落とそうとするも、細かな動きがしづらい【補助翼・脚】は解除して、ベアコングの肩や頭の上をちょこまかとサルのように動き回って落ちる気配がない。こんなときでも曲芸師のスキルが生きていた。

 そうして注意を引き続けている間に──。



「はぁっ!!」「ちょいやー!」「ぽーいっとな~」



 ──近づいてきたHIMAやしゃちたんがベアコングの足元に攻撃していき、ランランは少し離れたところから毛皮ごしでも効く毒を投げつける。



「初見のはずなのに、よくあんなふうにかわせるな……。モドキさん、やっぱヤベェよ。

 おい皆! モドキさんが引き付けてくれてる間に、俺たちもやるぞ!!」

「そ、そうだった。呑気に見てちゃ駄目ね! 私たちもいくよ!!」

「「「「おーーー!!」」」」



 ブラットたち以外の五〇名近いプレイヤーが、一斉に好機を見出しHIMAたちとは別の場所に向かって各々邪魔にならないよう攻撃を開始していった。

 図体は無駄に大きいので、大人数で囲っても攻撃できる場所はいくらでもある。


 ベアコングもさすがにブラットばかりに構っている状況ではないと理解はしているようだが、それでも足元に注意を向ければ容赦なくブラットが目や鼻、耳の穴など攻撃が通りやすい部位を攻撃してくるので気にするなというほうが無理な話だ。


 やがてイライラが頂点に達したベアコングは、自分の聴覚にも影響が出るため使いたくなかった、大音量での絶叫で全員にスタンをかける音響攻撃をしてやろうと大きく息を吸いながら口を開く──が。



「それは甘いんじゃないか? 見え見えすぎる」

「ゴァアアゴアガガガボッガガッ──」

「やれやれやれーーー!」

「撃って撃って撃ちまくってーー!!」

「くらいやがれ!!」

「【エアショット】ーー!!」



 ブラットを含め、その兆候に気が付いたプレイヤーたちが一斉に空気ではなく、魔法や毒を口の中に投げ込んで、ベアコングは状況をひっくり返すこともできずに攻撃に溺れる。

 ベアコングによる音響スタン攻撃は、普段ならちゃんとそうならないよう状況を見極めてやるはずの攻撃だったのだ。しかしブラットのせいで冷静さを失い、短絡的にただ効果的であるということだけにすがったためこうなった。


 口内への攻撃は思っていた以上にベアコングのHPバーを削り、ランランの毒も当然ながら体内に直接入れたほうが効果は高い。完全に毒状態に陥りジワジワと体力が削られ、動きも鈍る。


 こうなってしまえば、もはやベアコングの親玉であろうと、まな板の上のこい同然。



「ガァアア…………」

「終わりだっ!」



 最後までブラットを肩から落とすこともできないまま、【スリーアッシュレイ】の付随効果【腐食】を最大限まで蓄積された脳天に精霊剣シルヴァーナと英装ガブリエルを突き立てられ、地面に崩れ落ちながらデータの粒子となって消え去った。



「おいっ! こっちは終わったぞ! そっちは大丈夫──だったみたいだな。よくやったぞ、お前たち!」



 そして狙いすましたかのようなタイミングで、ミッツバッチの巣を守っていたイージスのNPC隊員たちが駆け付け、お褒めの言葉を投げかけてもらえれば、クエストクリアの文字がプレイヤーたちの前に浮かび上がった。


 それと同時にそれぞれプレイヤーたちの手のひらに、パーティごとの貢献度順にランク付けされたカードが出現する。

 ブラットたちは当然ながら、最高ランクのゴールドカードだ。



「そのカードをどこでもいいからイージスの受付に持っていけば、報酬が受け取れるぞ! そのまま持ち運ぶ必要のないものは、イージスが預かってくれるから遠慮なく言えよ!」

「今回は、そういう感じになってるのか」



 先輩隊員が親切にカードの仕様を説明してくれた。

 ちなみに預けた場所とは違う別の場所でも、何度でもすぐに無料でアイテムを引き出せる便利仕様なので、預けシステムもイージスの隊員ならばどんどん活用すべきものだろう。



「いや~モドキさん! ありがとな!」

「モドキさんがいなかったら、もっとめんどうなことになってたよ~! ほんと、ありがとね!」



 口々に普段接することないプレイヤーたちからお礼を言われながら、ブラットが他三人と合流しミッツバッチの巣に戻ってみれば、今度はそちらからもお礼を貰うことになる。



「フィ~~フィィ♪」

「ありがとってことかな。うぅ……でもこれだけおっきいと、ちょっと恐いかも……」

「まあ見た目は思いっきりハチだしね。それは言えてるかも」

「私はよくハチの毒が目当てで本マップでハチモンスター狩りまくってから、何とも思わないな~」

「この子たちは狩っちゃダメだからな? ランラン」

「あははっ、分かってるって~」



 貢献度が高かった上位三パーティのメンバーのみに、ミッツバッチたちが近寄っていき、タヌーのときと同様に額にあたる場所に軽く頭突きをしてきた。

 するとおでこが数秒光り、ミッツバッチからの加護を授かることができた。


 加護の内容はイベントマップ限定で開ける加護リストから見ることができる。ミッツバッチの加護は──【蜂蜜生成】。

 花や木の近くで発動させると、蜜だけでなく樹液からもハチミツが生成されるというスキルとなっている。



「これは嬉しいね~。ハチミツは各種ポーション系にも使えるし、毒にも応用できる万能素材だし」

「普通に食べてもいいしね。甘いものは大歓迎だよ!」

「あ、しゃちたん。それもいいけど、私たちを案内してくれたガイダーちゃんが待ってくれてるよ。アカナッツ、私にもちょうだい」

「オレもあげたいから分けてくれ、ランラン」

「はいよ~」



 他のパーティの案内役として来ていたガイダーは一匹も残っていなかったが、ブラットたちが餌付けした個体だけは律儀に待ってくれていた。

 「なんでモドキさんとこだけ残ってるの!?」とモフモフ愛好家たちは叫んでいるが、気にせず四人で彼らの大好物である木の実を渡し触らせてもらう。



「おぉ……これは、これはいい。抱っこして寝たくなる触り心地だ……」

「ブラットは抱き枕とか苦手じゃなかった? なんなら今晩は私が抱き枕になってあげるよ?」

「ちょっと何言ってるか分からない。何がなんならなんだ……」

「ほわわ……もふもふ、もふもふだぁ」

「スラちゃん、私にも触らせてよ~」



 人懐っこいのか、丁寧に撫でたりモフモフする分には無抵抗で全面的に受け入れてくれる。大好物のアカナッツを食べるのに夢中で、気にする余裕もないだけなのかもしれないが。

 しかし一緒に戦った他のプレイヤーたちの中にも触りたそうにしている人もいたので、ブラットたちが気を利かせて触らせてあげようとすれば、それはダメなのか触る前に逃げてしまう。

 ブラットたちが分けてあげたアカナッツを差し出しても、君のは受け取れないよと首を振られる始末。



「これは案内してくれたパーティそれぞれの子じゃないとダメだったみたいですね。ごめんなさい」

「HIMAさんが謝る必要ないですよっ!」

「ですです! また今度チャレンジしてみます! ごめんねーガイダーちゃん」



 それでもHIMAが上手くさばいてくれて、モフモフ愛好家たちと軋轢あつれきが生じることなく他のプレイヤーたちは離れていった。

 そうして満足いくまでアカナッツを与えると、「ケフッ」と可愛らしいゲップをしてガイダーが四人のおでこに頭突きしてきた。



「これは……加護か」

「私たちだけガイダーちゃんから加護を貰っちゃたみたいだね」

「加護の内容は何だろ。毒作りに使えるかな~」

「えーとガイダーちゃんの加護は…………【お宝発見】だって! なんか良さそうじゃない?」

「そのスキルでしか見つからないアイテムとかあるかもしれないし、実はちょっとだけ当たりの部類なのかもしれないな。

 事前にランランたちがアカナッツを集めておいてくれて助かった」

「それを言うなら、ブラットと天ちゃんが情報を調べてくれてたおかげでもあるよ。

 アカナッツだけなら、道中ちょっと寄り道すれば拾えただろうしね~」

「じゃあここは皆のおかげってことだね! いいチームになって来てるじゃん、私たち!」



 ちなみにこの【お宝発見】という加護。最初に案内してもらったガイダーに、アカナッツをあげなければ貰えない条件付きのものだったりする。

 二度目以降の邂逅かいこうで仲良くなって加護を貰っても、それは【帰路きろ発見】という森で方角が分からなくなったときに、もと来た道がどちらにあるのか分かる加護になってしまうのだ。


 これは事前に好物の情報を知っておき、それを所持していなければ達成できない条件。

 なぜならミッションの途中でアカナッツを探しに寄り道すれば、「急いでるのに勝手に変な所に行こうとしないで!」とガイダーに怒られ、印象が悪くなって【お宝発見】という隠し加護を貰う機会を無くしてしまうから。

 ガイダーたちの情報共有能力は、一瞬で全土に広がるほど高いのだ。


 まさにランランという生産職が加わり、あのとき二手に分かれて行動していたことがここに生きていた。

 そんな加護だとは露とも知らず、〝アカナッツをたくさん上げれば貰える加護〟程度の気持ちでブラットたちは来た道を戻っていった。

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