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Become Monster Online~ゲームで強くなるために異世界で進化素材を集めることにした~  作者: 亜掛千夜
第七章

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第百六五話 イージス総本部

 素敵な?加護をタヌーたちよりたまわったブラットたちは、またジムに先導されて町まで戻ってきた。

 そしてそのまま町の中心部にほど近い場所にある、真っ白で巨大な塔──保護組織『イージス』の総本部まで案内される。



「この町に総本部があったのか」

「ここは世界屈指の大国『セプテントリオン』の王都でもあり、治安もよく何より国民たちをはじめ王侯貴族たちも我々イージスの活動に深い理解を示してくれている。

 ここ以上にイージスの本部を建てるに相応しい場所はないのさ!」



 チュートリアルキャラだけあって、いろいろと説明チックに教えてくれるジムに道中あれこれ教えてもらいながら、ブラットたちはこのイベントマップの世界観を探っていく。

 そうこうしている間に本部の受付らしき場所まで連れてこられ、ジムが笑顔で四人に向かって振り向いた。



「ようこそ、ここがイージスだ! そして今日から君たちもイージスの一員だよ! それじゃあ、まずはこれを受け取って見える場所につけておいてくれ」

「これはバッジ……ですかね?」



 渡されたのは立派な盾の前で人間の手とモンスターの前足が握手を交わすという紋章を象った緑色のバッジ。

 不思議素材で着けたい場所に裏面を触れさせ、目の前に表示された装備するかどうかの選択でYESを選ぶだけで、磁石で吸い付くように落ちることもズレることもなく着いてくれる代物だ。外すときも手で触れて、装備解除を選ぶだけでいい。



「そうだよ。それがイージスの隊員である証さ。ほら、色は違うけど僕も着けてるだろ?」

「ほんとだ! でもジムさんのは赤色じゃん。何か色に意味があるの?」

「隊員としてのランクを表しているんだよ。僕は中級隊員のDランクを示す赤だ。一番上から──」



 組織の総代は番外として虹色のバッジ。その下に上級隊員と呼ばれる金のランクA、銀のランクB、銅のランクC。

 中級隊員と呼ばれるジムが着けている赤のランクD、黄のランクE。

 下級隊員と呼ばれる青のランクF、ブラットたちが渡された緑のランクG──となっているとのこと。



「本来なら見習い期間として木札の階級無しがあるんだけど、君たちは最初から加護がもらえるほどの実力を示してくれたからね!

 特例として、その期間は免除され次のランクに上がりやすくもなってるよ!」

「それは嬉しいな。ありがとう、ジム」

「優秀な者にはどんどん上にいってもらわないといけないからね。……あんな奴らがのさばる前に」

「あんな奴ら?」



 爽やかな笑みから一転、急に不機嫌そうな顔になって視線だけで彼はその『奴ら』をブラットたちに教えてくれる。

 そちらにブラットたちが視線をやってみれば、本部の片隅の一角を陣取り、三〇代から五〇代ほどまで幅広い年齢層の男女の集団が酒を呑みカードで賭け事をしてバカ騒ぎをしているのが遠目に見えた。



「皆さん気にしてないようですし、あれも普通なんだと思ってたんですけど……やっぱり違うんですか?」

「当たり前だ! あんなやつらと我々を一緒にしないでくれ!」

「でもさ~あの人たちもコレ、つけてるよ? しかもあなたと同じ赤いのを」



 ランランが魔法少女服に着けたバッジをジムにかざすと、彼は心底嫌そうに顔を歪ませた。



「……ああ、そうだよ。確かに僕と同じランクの隊員だ。だが彼らのほとんどは僕よりも強いんだ。なのに僕と同じ赤。その意味が分かるかい?」

「えーと……、素行不良で上級に上がれないとか?」

「その通りだ、ブラット。大勢の人たちからの理解の上で成り立っている我々の組織の評判を、彼らはあちこちでおとしめているんだ!

 だがあの実力者たちを何の鎖も付けずに野に放てば、もっと酷いことになる可能性が高い。

 だから上はその力を利用しつつ、監視して見張っているんだ」



 顔を真っ赤にしながら力説し、ジムは小さく手招きしてブラットたちを近くに寄せると、他の人には聞こえないほど小さな声で話を続ける。



「──彼らは外の密猟組織とも繋がっているとも言われている」

「密猟組織ってことは、人間側が良いモンスターに危害を──ってことであってますか?」

「ああ、そうだ。有名どころでは『スパイダー』『スコーピオン』『センチピード』なんて呼ばれてる大きな組織がいくつかあるんだが、あいつらはそれらのどれか、もしくは全部と繋がりがある可能性があるんじゃないかと噂されている。

 絶対に君たちは関わるんじゃないぞ。彼らは上からもマークされている要注意人物だ」

「だから本部っていう一番監視しやすい場所に、あの人らをいさせてるってことでいいのか?」

「その通りだ。話しかけられても適当に流して離れるんだぞ。特にあの中心にいる男、見えるかい?」

「あの鬼の角が生えた大男のこと?」



 はた目から見ても、あのガラの悪い集団のボスであろうことが分かる二メートルはゆうに超えた鬼人の大男。

 年齢は四〇代そこそこといった見た目で、口の周りには頭髪と同じ赤いひげがもっさりと生えている。

 お世辞にも堅気には見えない容貌で、気の弱い物なら睨まれただけでお金を出しそうだ。



「奴の名前はガストン・グラント。奴らのリーダー格の男で、一番ヤバいやつだよ。絶対に絡まれないよう注意するんだ。

 けどそれでも何かあったら、すぐに他の職員を頼ること。いいね? 君たち。大事だいじになってからでは遅いんだ」



 ジムがここまで警戒するのも分かる程度には、彼らは見た感じからして柄が悪い。チンピラというよりは半グレという言葉が合う程度に。

 ブラットたちのご時世リアルでは、なかなかお目にかかれないヤバ目の人たちだ。


 なぜこのイベントに、そして大勢のプレイヤーが所属することになるであろうこの組織に、そんな人物を運営は置くことにしたのか意図いとが気になるところだが、それでも理由なく接したいとはブラットたちも思わない。ここは素直に頷いておいた。



「分かってもらえたようで嬉しいよ! 君たちは本当にいい子たちばかりだ! イージスの未来は明るいね!!

 おっとそうだ。実は数時間後に総代から君たちのような新人に向けて挨拶があるんだけど、聞いてくかい?

 強制ではないけれど、なかなかお会いできない人だからこの機会に見ておくことを僕は勧めるけれど」

「どうする? オレは見ていってもいいと思ってるけど」

「えーなんか退屈そうじゃん」

「けど私も総代の顔くらいは、どんな人か見ておきたいかな」

「私もそうだね~。見ていくにいっぴょ~」

「ええ? みんな真面目だなぁ」



 しゃちたんは三人がそう言うならと乗り気ではないにしろ受け入れてくれた。

 本来であれば代表からの挨拶など、ブラットもHIMAも聞きたいわけではないのだが、このイベントにおいて重要な位置にいるであろう巨大組織イージスの総代の話となれば別だ。

 どこに期間限定イベントのヒントが隠されているか分からず、組織の隊員にならなければ参加できないのなら聞くべきだと。



「じゃあ、それまではこの辺りにいるといいよ。ああそれと、これはうちの組織の手引書だ。基本的な組織のことはここに書いてあるから、よく確認しておいた方がいいよ。

 それでも分からないことがあれば、僕でもいいし他の人に聞いても教えてくれると思う。奴ら以外ならね。

 というわけで、これで僕からの話は終わりだ。他に聞きたいことはあるかな?」

「いや、今のところないかな。ここまでありがとう、ジム」

「いいや、気にしないでくれ。それじゃあ、またね!」



 ジムがそう言って手引書を人数分渡し颯爽さっそうと去っていくと、ブラットたちの目の前にポンと小さな宝箱が出現した。これにてチュートリアルイベントクリア、ということなのだろう。

 中を確かめてみれば、イベントのポイントが少量入ったオーブが人数分。BMOの通貨が一人『2万』bずつ、ランランの錬金術にも使えるBMOで見慣れた下級の素材が数種類と、スターターセットのようなものが詰め込まれていた。



「お金も持ち込めないから、これはありがたいな。にしても安パイだと思ってたこの組織にも爆弾があるのか」

「ガストンとかいうNPCのことだね。でもわざわざ用意されてるってことは、どこかで牢屋に送るイベントとかでもあるのかもしれないよ」

「上の人が見張ってるって言ってたからね~。案外近いうちに捕縛されたりとかは充分にありそう」

「でもなんかめっちゃ厳つくて強そうだけど、私たちもそのイベントに参加できるのかなぁ」

「まだ、そういうイベントがあるって決まったわけじゃないけどな。

 さて、それで総代の話まで時間があるみたいだけどどうする?

 オレはせっかくだし、今のうちにイージスが保有する情報を漁っておきたいと思ってるんだけど」

「なら私はフィールドワークに行きたいかな~。近場の素材を集めたり、このマップの植生ももう少し調べておきたいからね~。

 だから集中して調べられるよう、一人私に付けてくれると嬉しいんだけど」

「あ! なら私がパンダさんに付いてくよ! 調べ物より体を動かしたいし」

「なら私はブラットと一緒に調べ物だね♪」



 ブラットの腕に抱き着くHIMAに、しゃちたんはやれやれと無いはずの肩をすくめ、一時二手に分かれて行動を開始した。


 手引書によれば調べ物は資料室に行けばいいようなので、ブラットとHIMAはそこで情報端末にアクセスし、緑のランクで閲覧権限のある情報を片っ端から確認しスクショを撮りつつ通話で会話していく。

 入るときのドアに、『お静かにお願いします』と書いてあったからだ。



『見たことないモンスターも多いけど、重要そうなモンスターはいないっぽいなぁ』

『今回のイベント内容からして、モンスターが攻略に強く関わってくるのは間違いないだろうしね。

 けどたぶんそういうイベントの根幹に関わるようなのは、上級にならないと………………これは──』

『どうした? HIMA』

『なんか重要そうな情報見つけたよ。このマップには神獣『麒麟きりん』に仕えし三体の三大天さんだいてんって呼ばれるαモンスターがいるんだって。

 それぞれの詳しい特徴とか居場所は閲覧権限がないみたいだけど、少なくとも『麒麟』に三大天。この四体の存在は、この期間限定イベントの重要な存在になってきそう』

『オレもそう思う。とりあえずは、そのどれかを探して回るのがよさそうだ。麒麟に三大天か……なんかワクワクしてきた!』

『ふふっ、だね!』



 さっそく調べ物に手応えを感じながら、ブラットとHIMAは一緒に時間が許す限り調べ物を続けていった。




 そろそろ総代の新人たちへの挨拶がはじまる時間になってきたところで、しゃちたんとランランも帰ってきた。



「おかえり、こっちは少しだけど収穫があったぞ。そっちはどうだった?」

「こっちもボチボチだね~。簡単な回復ポーションとかも作っといたから、それぞれ手持ちにでも入れといて~」

「ありがとうございます、ランランさん。使わせてもらいますね」

「パンダさん凄いんだよ! 魔法みたいにポンポン毒とかポーション作っちゃうんだから!」

「スラちゃんも、あんな高速移動手段があるとは思わなかったよ~。また上に乗せてね~」

「うん、もちろん! スライムの魅力にとりつかれるといいよ」

「あははっ、ランランさん、しゃちたんの上に乗って草原を滑ったんですね。見て見たかったなぁ」



 ランランが作ってくれたポーションをしまいつつ四人で賑やかに会場に入っていけば、そこには似たような思惑で参加しているであろうプレイヤーたちが大勢待っていた。

 そんな大勢のプレイヤーたちの視線が一斉に突き刺さり一瞬会場が静かになるも、ブラットたちは気にせずに空いている席に座って時間まで通話をしながら談笑を続けた。



『お、来たみたいだ。あれがイージスの総代か? ……かなり強いな』

『え? なんで戦ってもないのにブラットはそんなこと分かんの?』

『毎日強者と戦ってるからか、そういうのが分かるようになったのかもしれない。

 あの人は前のイベントにいたロロネーとか、それレベルの実力者だよ絶対。是非お近づきになりたいところだ』

『ブラットがそう言うってことは、そうなんだろうね。戦ってるとこ見てみたいかも』

『おお? 天ちゃん、ここはいっちょ喧嘩でも売ってみちゃう?』

『売りませんよ! まったくもう』



 壇上に優雅に現れたのは、黄金の獅子の頭をした派手な獣寄りの人型獣人の男性。腕も毛皮に覆われ、本当に黄金のライオンを人型に無理やり修正したような風貌だ。

 そんな彼は高そうなスーツを身にまとい、胸元には虹色に輝くイージスのバッジ。背筋はピンと伸ばし威風堂々と歩く姿は、まさに自信に満ちている。

 全身のたたずまいからして、ただものではない品格が漂っていた。



「諸君、私の名前はオーギュスト・ミラー。αモンスターの保護組織『イージス』の総代を任されている者である。

 まずは入隊おめでとう。有望な者たちがこれほどイージスに入ってくれるとは嬉しい限りだ」



 壇上のマイクで語られる声は非常に渋い男性の美声。ライオンの中には素敵なおじさまでも入っているのではと疑いたくなるほどだ。

 そんな総代──オーギュストから語られる内容は、組織の理念。βモンスターや密猟者たちの悪の手から、人類の親しき隣人──αモンスターを守り抜くことを小難しく聞かせてくれた。



『やばい……私、眠くなってきた……』

『どうして校長先生の話とか、偉い人の話って眠くなるんだろうな』

『ふふん、私は社会人ですから、こんなのも余裕だよ~』

『とかいって、さっきランランさん。欠伸しそうになってましたよね』

『え~そうだったかな~?』



 そんなやり取りをしながらも、重要な情報はないかと眠気に耐えながら耳を傾けるも、いっこうに資料室で調べた以上の話は出てこない。

 話が終盤に差し掛かったところで、これはハズレだったかもしれないとブラットが後悔しそうになったその時、彼からようやく重要な情報が飛び出した。



「──であるからして、君たちもいつかは三大天に認められ、の神獣──麒麟様にお会いできるよう、日々努め奮闘することを望む次第である。以上で私の話は──」

『今、麒麟にお会い──とか言ったか?』

『言ったね。三大天に認められたら~とか言ってたし、麒麟に会うための正規ルートは三大天のところに行くところからはじまるってことで間違いなさそう!』

『ってことで、二人とも。目標が…………って、寝てるし』



 ブラットが一気に目が覚めた頭で黙ったままの二人に説明しようとしたが、しゃちたんとランランは二人仲良く寄り添って幸せそうに眠りに落ちていた。

 しゃちたんのプルプルボディは、さぞいい枕になってくれていることだろう。



『社会人がどうのこうの言ってたのは、どこのどいつだよ……』

『まあまあ、私たちだけでも聞けたんだから良しとしとこ。でもそろそろ話も終わるみたいだし、起こさないとね』



 総代も舞台から去っていき、空気が一気に弛緩したところでブラットとHIMAは眠りこけた二人を起こした。



「「おはよ~~」」

「おはようじゃないぞ、まったくもう。ほら時間は限られてるんだ。早く外に──」



 「出よう」とブラットが続けようとしたところで、会場の扉を乱暴に開き誰かが入ってきた。



「ミッツバッチたちが、βモンスター『ベアコング』に襲われてるという情報が入った! 手の空いてる者はただちに準備を済ませ、救援に向かうように!」



 イージスの職員がそう言うや否や、ブラットたちの目の前に強制参加のクエストが表示された。

 内容は近くにある森に急行し、他の隊員たちと協力して『ベアコング』なるクマだかゴリラだかよく分からない見た目をしたモンスターの討伐をして来いというもの。



「いきなり突発イベントみたいだね。こういう感じですよっていうチュートリアルの一環かな?」

「えっと……これってどういう感じなの? 参加するのは私たちだけじゃないっぽい?」

「小規模なレイドバトル的なもんなんだろうね~。早く行かないと美味しいところ取られちゃうかもよ?」

「だな! とにかくその『ベアコング』とかいうモンスターのところに行ってみよう。

 手に負えないようなら、今回は他のプレイヤーに任せられるみたいだし」

「「うん!」」「はいよ~」



 こうしてブラットたちは、さっそくイージスからの洗礼を受けることになったようだ。

次は土曜日更新です!

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