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Become Monster Online~ゲームで強くなるために異世界で進化素材を集めることにした~  作者: 亜掛千夜
第六章

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第百六二話 新規メンバー

 散々三人で盛り上がりクールダウンしたところで、HIMAがはるるんへと振り返る。



「あ、そうだ。はるるんさんに会ったら聞こうと思ってたんですけど」

「なんだ? 進化の情報を教えてくれたし大抵の情報ならタダで渡すぞ」



 情報には常に対価をもって応じているので、はるるんは俺に分かることならと即決で頷いた。



「はるるんさんたちは魔王関係について、どこまで知ってます?」

「ああ、そっち関連の話か。確かに最前にいるなら気になる話題だよな。

 俺たちも、いろいろとクランメンバー総出でそっちの情報収集に勤しんでるところだ」

「え? じゃあ私の進化のアドバイスしてる暇なんてないんじゃないの?」

「ううん、そっちは良いんだよ、しゃちたんちゃん。

 魔王関係の情報も大事だけど、しゃちたんの進化の情報も私たちにとっては大事だからね」

「そういうことだな。それでブラットが解き放った魔王関係のイベントの話に戻るんだが、俺たちは今のところ二種類の魔王と呼ばれる存在がいるという情報を掴んでいる」

「詳しく聞いても?」

「もちろんだ。そもそもこのBMOで魔王と呼ばれる存在には、現在二つのパターンがあると俺たちは考えていて──」



 一つ目はモンスターとして存在する魔王のパターン。

 こちらはフィールド──例えば森や洞窟などがダンジョン化されており、そこへ乗り込んでいって最奥にいるであろう魔王と呼ばれる超級のモンスターを倒すような形になっている。


 二つ目は、NPCの人間が魔王として君臨しているパターン。

 こちらは国家そのものが上記のモンスター魔王のダンジョンのようなもので、討伐するのなら国家に所属する配下たちを倒して進む必要がある。



「正直難易度的に今のトッププレイヤーのパーティでも、魔王までたどり着けないレベルだろうな。

 ただその道中まででも、強敵を倒したときの報酬はうまいから挑む価値はある──と、うちのクランでは判断している」

「……驚きました。そんなにもう情報が集まってるんですね」

「魔王関連はBMO内に点在している過去の歴史や古文書を紐解くことで、そのヒントが転がっていたからな。

 うちにはもともと古文書あさりが趣味のクラメンが貯えていた情報も大量にあったし、他のクランよりは情報面で先んじてるはずだ」

「オレはまだ全然挑めるような状況じゃないからスルーしてたけど、けっこう他のプレイヤーたちも動き出してるんだなぁ」

「そりゃそうだよ、ブラットくん。魔王なんて面白そうなイベント、ゲーマーなら一度は挑んでみたくなるものなんだから。

 私みたいな生産職だって、未知の素材が手に入るかも! ってテンション上がったんだよ?」



 それもそうかとブラットがサクラの言葉に納得している間にも、話は進んでいく。



「じゃあその集めた情報の中で、今現在のプレイヤーが攻略できそうな魔王っていますか?

 実は一か所見つけて挑んでみたんですけど、少し入ったあたりで仲間もろとも一掃されちゃったんですよね」

「それってもしかして、ハイエルン帝国跡地に現れた魔王のことか?」

「そうです、そこです。よく分かりましたね」

「今現在、プレイヤーが一番見つけやすいところがそこだからな」

「あれ? ハイエルン城跡地?」

「どったの? ブラット?」



 まだ自分が挑むには早い情報だけに、少しだけ蚊帳の外でいたしゃちたんが真っ先にブラットの呟きに反応する。



「いやなんか、どっかで聞いたことのある…………あ」



 そこでようやく、何に引っかかっていたのか思い出す。

 ハイエルン帝国とは亡国の名で今は存在しておらず、その跡地だけが残っている場所を指している。

 そしてそこではブラットのような聖と邪がともに存在する特殊な種族でしか起こせないイベントがあると、以前アメリカ人パーティ『I❤︎NIPPON』の『Osyo』から、一枚スクショを撮る許可を出すお礼にと教えてもらっていた情報があった。

 だが今やその場所は、魔王イベントの会場と化しているらしい。



(これもしかして、そのイベント起こせなくなっちゃったりして……?)

「おいどうしたんだ、ブラット。そんなふうにされると気になるじゃないか。何かそこにあるのか?」

「あーいやそれが…………ここだけの話にできる?」



 別にこの情報をどう使おうがいいのだろうが、話そうかどうかブラットは一瞬だけ迷う。けれどこういうときは素直に、はるるんを頼った方が早いとそのイベントについて話してみた。



「そんなイベントがあったのか……。さすが海外のトッププレイヤー、あなどれん。

 だがまあ、そういうことなら大丈夫な可能性が高いと俺は思うぞ」

「そうなの? でもそのイベントを発生させるには、まずはそこで誰でも起こせるノーマルイベントをクリアしないといけないんだ。なのに魔王がいたんじゃ、そのイベントすら起こせないんじゃないの?」

「うん? ああ、そうか。もしかして魔王が廃墟と化したハイエルン城の天辺にいると思ってるのか? ブラットは」

「うん、そうだよ。だって魔王といったら、一番上の階にいるのが相場でしょうが」



 そのノーマルイベントは、廃墟と化しているハイエルン帝国城の最上階まで行き、そこに住まうモンスターを討伐するというシンプルな内容。

 当然魔王──王とつくからには、天辺で勇者たちを待ち受けているというのが常識だろう。

 だが実際にそこの魔王イベントに挑戦したHIMAが、そうではないと教えてくれる。



「違うよ、ブラット。お城は入り口でしかないんだから。

 実はハイエルン城には地下があってね、そのまた下に魔王の地下帝国が眠ってたんだよ」

「地下帝国? お城の跡地の下に、もう一個別の帝国が広がってたってこと?」

「そうそう。うちの妹クラン──サブのクランの子たちが、ハイエルン城跡地に挑戦したときに見つけたんだよ。

 その子たちは普通にお城の最上階のイベントはこなせてたし、たぶんブラットが聞いたって言う隠しイベントも残ってると思う」

「そっか。なら安心だ。よかった、せっかくの情報が無駄になるかと思った」

「しかし、どんなイベントなんだろうなソレは。今のところ詳しいことは分かっていない謎の魔王が住まうとされる地下帝国と、何か繋がっていたりするんだろうか……ううむ、興味深い。

 けど聖と邪を持った種族なんて、ブラットとOsyoくらいしかいないから試すこともできない。ああっ、もどかしいっ!」

「どうどう、おちついて、はるるん」



 今すぐ調査したがるはるるんが頭を掻きむしっていると、隣にいたサクラがそれをなだめ、彼は落ち着きを取り戻した。



「ふぅ……とまあ、そういうことだ。で、話を戻すんだが今のところ現在のプレイヤーたちでも魔王にたどり着けそうな場所は俺たちも把握できてない。だから勇者の称号とかも、まだまだお預けだろうな。

 他にブラットみたいな裏技が発見されれば別だろうが……それにしたって、アホみたいな条件なんだろうし」

「ですよねぇ。うーん、ブラットとお揃いで私も普通のでいいから勇者の称号欲しかったんだけどなぁ」

「かと言って今のHIMAじゃ、オレのやった条件は満たせてないだろうしね」

「だね。たとえ私が二次進化の時に戻れたとしても、絶対に無理だったと思うよ」

「モドキ種以外は不可能だろうからな。結局はモドキ専用イベントみたいなもんだったんだろう。

 とはいえモドキであっても、俺じゃあ攻略できそうにはないが」



 今のブラットのアバターをそのままもらったとしても、炎獅子をソロで討伐できる者など色葉以外いないのではないかとすら、はるるんは考えてしまう。

 逆に言えばそれくらい難易度の高いことをしなければ、選定勇者にはなれないということでもある。

 だが普通の勇者であれば、BMOの運営側も普通のプレイヤーが取得できる前提で全体告知を出していたのだから、そこまで無茶な内容ではないのだろう。


 ──と、そんな話でまとまりだしたあたりで、ブラットにメッセージが飛んできた。

 普段からよく飛ばしてくるメンバーはここに揃っているので、いったい誰だろうと確認してみれば、そこには『ランラン』の文字が。



(なんだろ? 【絶脈の雫】の話かな? えーと…………うん?)



 内容はいたってシンプル。『次の期間限定イベント、私と一緒にやってくれない?』というもの。

 まったくもって寝耳に水で、ブラットは面喰う。



「今度はどうしたの? ブラットくん」

「ああ、いや、実は──」



 ランランのことを話すと、ブラットよりもはるるんが一番の驚きを見せる。



「なに!? あの毒パン──ランラン氏がブラットと!?

 普段は誰に誘われても、ソロで細々とやっていたというのに!?」

「えーと、そこそんなに驚くこと?」

「そりゃそうだろう! 本当に自分の研究にしか興味がないといった感じの人だからな。

 うちもその深い毒の知識を求め、何度かクランやパーティに誘ったことがあるんだぞ」

「ねーねー、そのランランって人、どんな人なの? はるるんさんがそう言うってことは、凄い人なの?」



 BMOではそこそこ有名人ではあるが、しゃちたんはランランのことを知らなかったようだ。そこではるるんが、彼女にレクチャーしていく。



「ランラン氏は錬金術師で、錬金術師の腕だけ見ればそこいらの上位層の錬金術プレイヤーたちと大差はない……どころか少し劣るだろう。

 だがこと毒の知識と毒の錬金の腕に至っては、BMOプレイヤーの中でもトップと言ってもいいだろう。

 まさに毒にどこまでも特化した、毒のスペシャリスト。彼女の毒はBMO中にファンがいるんだ」

「ど、毒にファンとかあるんだ……。はじめて知ったよ」

「アサシンとかの職業の人とかだと、よく使うんだろうしね。うちのクランでも一人だけお世話になってる子がいるよ。

 まあでも今は何故か忙しいからって、依頼を断られてるみたいだけど」



 それはブラットが持ち込んだ【絶脈の雫】の研究が忙しいからだ。

 今のランランは、ほとんどの依頼の受注をストップし、毒使いのプレイヤーたちはどうしたんだと慌てていたりする。



「とまあ、そんな人が誘ってきたわけだけど、HIMA、しゃちたん。どうしたい?

 ついさっきパーティ組むことが決まったんだし、二人にも決める権利がある。嫌なら嫌って言ってくれていいからな」

「ブラットはどうしたいの?」

「オレは別にいいかなって。ちょっと変なとこはあるけど、悪い人じゃないし」

「ならなら! 一回会ってみたい!」

「ああ、それはいいかも。私もしゃちたんに賛成。私自身もランランさんのこと、よく知らないし少しでいいから会ってみたい」

「ああ、それもそっか。ランランもオレと組むなら、二人も一緒だぞってことを知らせないとだし、今から会えるか聞いてみるよ。理由も直接聞いてみたいし」



 ブラットはすぐに返信の内容をまとめ、今組むことになっている二人の紹介もかねて一緒にいくから、そこで決めないかとメッセージを送ってみれば、『今からでもいいよ~』という返答がきた。



「いいってさ。それじゃあ、そろそろこの場は解散ってことでいいか?」

「ああ、いいぞ。HIMA、面白いものを見せてくれてありがとう」

「私も! ありがとね、HIMAちゃん」

「いえいえ、どういたしまして」



 はるるんとサクラとはここで別れ、ブラットの見せ拠点を三人で出ると、その足でランランの工房へと向かう。

 相変わらずわかりづらい場所にある入り口にたどり着き、扉をノックするとすぐに開き招き入れてくれる。



「いらっしゃい。好きなとこ座ってよ」

「おお、魔法少女パンダさんだ! かわいい!」

「おお? そこのキラキラスライムちゃんは見る目あるねぇ。やっぱ結局ね、パンダが一番かわいいんだよ~」

「え? いやいや、パンダも可愛いけど一番ってのはどうかな?」

「おやおや、パンダ以上に可愛い生き物がこの世にいるとでも?」

「それがいるんだなぁ」

「へぇ……? それは是非ぜひご教授願いたいねぇ」

「なんかはじまっちゃったんだけど……いいの? ブラット」

「いいんじゃない? 取り敢えずその辺に座っとこ」



 出会うなり突然火花を散らすしゃちたんとランランに、HIMAがどうしよう止めたほうがいいかと視線を向けてくるが、ブラットは逆にこうしたほうが打ち解けるだろうと放置することにして、さっさといつもの薬品ケースに腰を掛け二人を見守る。



「一番かわいい生き物……それはズバリ──スライムだよ!

 このプルプルボディ、つぶらな瞳、愛くるしいツルンとした流線形──どれをとってもサイカワでしょ!」

「はぁ……分かってないなぁ。このモフモフボディ、円らな瞳、ポテっとちょっと出たモチモチぽんぽん──どれをとってもパンダがサイカワじゃないの」

「そうだね、可愛いね。でもサイカワと言われると、やっぱりスライムが──」

「いやいやパンダが──」



 外野であるブラットとHIMAからすれば、どっちも可愛いでいいじゃんとは思うのだが、しゃちたんとランランにとっては譲れないものがあるらしい。



「というか、しゃちたんって思っていた以上にスライムが好きなんだな」

「今じゃスライムのグッズまで買い集めてるらしいよ。部屋中スライムグッズまみれだとか」

「まじで? そりゃあ、スライムでいることにこだわるわけだ」



 どっちが可愛いだのなんだのという問答がしばらく続くも、やがてキリがないと二人も思い至ったのか同時に話を打ち切った。



「その話をするために来てもらったわけじゃないし、今日はこのくらいにしておこうか」

「そうだね! でもいつか、パンダさんにもスライムの素晴らしさを分かってもらうからね!」

「スライム自体は可愛いと思ってるけどね」

「うん、私もパンダちょー可愛いと思ってるよ」

「「ふっふっふ、だよねー」」



 実は似た者同士なのでは?とブラットとHIMAが感じている間に話が落ち着いたようで、二人でうんうんと頷きながらブラットたちのもとにやってきて、ランランは薬品ケースの上にちょこんと座り、しゃちたんは別の薬品ケースの上にぴょんと飛び乗った。



「それでランラン。どうしてオレと期間限定イベントに? 今までは誰とも組まなかったらしいけど」

「ああ、それねー。実は今、とある素材を使った毒の研究をしてるんだけど、かなりいきづまっててね」

「毒のスペシャリストって聞いたけど、そんなパンダさんでも難しいことしてるんだ」

「そうなんだよ、スライムちゃん。ただそれを使って毒を作るだけなら問題ないんだけど、その素材だからこその物が作れないっていうかね。なかなか奥が深い素材なんだよ」

「でもそれが、どうブラットと関係があるんですか?」

「それはだね、天使ちゃん。私は閃いたわけだよ、このままじゃダメだ。ここは発想の転換が必要だって」

「はあ、でもまだオレが出てくるのがよく分からないんだけど?」

「まあまあ、そう慌てないでよ。発想の転換をするにしても、そのための刺激が欲しかったの。

 そこでBMO界きっての変な子であるブラットと、行動を共にしてみようと──」

「──え? 変な子?」

「「あーなるほど」」

「なんか二人が納得してる!?」

「あれ? 自覚ない感じ? 最近は選定勇者とかいうのにもなったみたいだし、他の人とは違う道をズンズカ突き進んでるでしょ。

 そういうのが今欲しいんだよね~、私にはない新しい刺激って感じでさー。ねーねーいいでしょーねーねー」

「へ、変な子…………」



 パンダのモフモフハンドで腕を掴まれ、円らな瞳でランランが訴えかけてくる。

 普段ならあざとかろうと可愛い!と感じていたのだろうが、今のブラットの心中は複雑だ。

 けれどブラットにしても、別に悪い話ではないのも確か。なので最後は二人に決定をゆだねることにした。



『な、なんか納得いかない……けど、それで研究が進むならオレにも意味はあるし……二人が決めてくれ。

 前にも言ったけど、オレはランランを入れてもいいと思ってる。だけど二人が嫌なら断ってもいいよ』



 ランランのいるところでは言いにくかろうと通話で伝えると、HIMAとしゃちたんは少し考えるそぶりを見せ決定を下す。



『私は別にいいよ。うちのクラン的にも、個人的にも、ランランさんと知り合っておいて損はないだろうし』

『私も別にいいよー。一緒のパーティになったら、スライム好きに変えてやるんだから! パンダが好きならスライムパンダになればいいんだよ!』

『スライムパンダて……。まあそれはいいとして、二人ともオッケーってことでいいんだな?』

『『うん』』



 もともと組む予定だった二人も賛成したことで、ランランが加わることが満場一致で可決される。

 通話していることに気づき、静かにしてくれていたランランにブラットは改めて向き直った。



「二人ともいいってさ。ってことで、次の期間限定イベントでは、よろしくな」

「おー、ありがとーブラット。それにスライムちゃんと天使ちゃんも、ありがとね。急に誘っちゃってごめんね」

「別にいいですよ、気にしないでください。よろしくお願いしますね、ランランさん」

「こっちもだよ! よろしく、パンダさん!」

「うん。よろしくね、三人とも」

「あ、でもオレたちと一緒だと、HIMAみたいに弱体化受けるけどそれでもいいのか?」



 ゲームの仕様上、期間限定イベントではパーティを組んだ際は下の進化段階に合わせて弱体化される。

 それは生産職であるランランも変わらないのだが、彼女は気にした様子もなく大きく頷いた。



「もちろん、いいよ。上位の生産スキルは使えなくなるだろうけど、初心に帰ったと思えばそれはそれで何かの閃きに繋がるかもしれないしね。

 それに上位のスキルが使えなくなった程度で、私の毒錬金を妨げることなんて不可能だよ。

 ふっふっふ、任せといて。きっと役に立ってみせるから」

「そりゃ心強いや」



 こうして戦闘一辺倒だったブラットたちのパーティに、新たに生産職である錬金術師が加わったのだった。

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